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お釜大戦  作者: @FRON
第六章 震撼☆フレーズ!!
253/343

∥006-01 音楽ホールの怪・前編

#前回のあらすじ:(あきら)さん魔性のロリ時代



[マル視点]



()()()()()()()!』


()()()()()()()!』



薄暗いホールの中、ライトアップされた舞台の上に奇怪な笑い声が響く。

声の主は頭上、4m程の高さに()()()と浮かんでいた。


少女だ。


10歳程の白人の子供がふたり、()()()()と笑い転げながら()()()()()()と、円を描くようにダンスを続けていた。

その身には古風な白のドレスを纏い、ターンの度にフレアスカートが()()()と広がる。


平時であれば微笑ましい光景であろうが、此処は本来、生身では来ることのできない『()()()』達の巣窟。

しかも、何の原理か重力を無視したように空中に浮かんでいる。


この異常な状況下で、それはひたすら恐怖を誘う光景であった。

そして、少女達の眼窩は()()()()()()()()()()()()()、着色したガラス玉のように不気味な艶を放っていた。


―――『黒い目の(Black-eyed)子供』(children)という都市伝説がある。


20世紀末のアメリカ西部が発祥とされ、大抵は唐突に戸口へ二人の子供が現れる、という場面から始まる。

彼等(彼女等)は家に入れるよう要求するが、不気味な印象を受けた家主はそれを拒み、結果何らかの不幸が起こる―――と、いう内容のものだ。


そして、今。


目の前には、その怪談を彷彿とさせるような少女達が居る。

恐らく―――いや、()()()()()()()、都市伝説をヒトに恐怖を与える()として纏った【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)の一種であろう。


スポットライトの下では怪異(シング)がふたり、狂ったように哄笑を上げている。

その足元には、愛用の桃の木剣を構えたマルと、その背に隠れ様子を伺う(かなえ)少年の姿があった。




  ・  ◇  □  ◆  ・




―――少し、場面を戻そう。


今更言うまでもない事だが。

【神候補】とは、異次元からの侵略者である【彼方よりのもの】の脅威から人知れず世界を守る秘密組織である。


彼等は日夜『シング』の襲撃を防ぎ、時として彼奴等の巣窟と化した怪奇スポットを巡り、『シング』の間引きを行っているのだ。


マルが訪れたのはそんな、魑魅魍魎の巣窟と化した建物の一つ。

アメリカ大陸西部に位置する、小さな音楽ホールであった。


かつてはハイスクールとして利用され、火災により焼失した後に再建されたこの建物。

生徒の幽霊が現れる、という噂が囁かれるうちに、いつしか()()()()()が棲み付くようになってしまった―――という訳だ。


こうした『シング』の巣は『常設任務』(クエスト)としてピックアップされ、経験の浅い【神候補】達の鍛錬の場となっていた。



「それが、どうしてこんな事に・・・!」


「ひぃぃぃ・・・!!」



すっかり怯えてしまったのか、華奢な身体を()()()と縮こまらせ叶くんが背後からしがみ付いてくる。


ちょっとドキドキ・・・()()()()

友人として、ここは頼れる所を見せておく場面だろう。


シャツの裾を掴んで震える白髪の少年を庇うようにして、ぼくは大きく両手を広げて怪少女達の前に立ちはだかった。

それを嘲笑うかのように、交互に場所を入れ替わりながら双子の怪異は()()()()と笑い声を上げる。



()()()()()()()()()()()()()!』


()()()()()()()()()()()()()!』


()()()()()()()()()()()()!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!』


『キャハハハハハ!』『キャハハハハハハ!!』


『『・・・()()()ッ!!』』


「うわっ!?」



()()()


少女達の声が重なった瞬間、目に見えない()()がマルの至近距離へぶつかり、大きな音を立てた。

薄く白く輝く光のヴェールが、眼前で()()()()と瞬いている。


叶くんの【静寂(セイジャク)帳】(トバリ)だ。

こんな事もあろうかと、異様な少女達が出現した時あらかじめ使用していたのだ、



「な、何ですか今の。・・・念動力(サイコキネシス)!?」



怪少女の瞳が妖しく輝くと同時に、ぼくたちは攻撃を受けていた。

UFO型シングのようにビームを放ったり、物を投げつけてくるような素振りは全く無い。


文字通り、()()()()()で対象を攻撃できるのが、この怪異の固有能力のようだ。



「叶くん。『()』の耐久度は大丈夫?」


「だ、大丈夫です!でも、何度も攻撃されたらどうなるか・・・」


()()()。何とか反撃したい所だけれど、飛び道具のある叶君は防御で手一杯だしなぁ。ぼくが守りを担当してもいいけれど、あれを防ぐとなると・・・。【バブルシールド】を常時張りっぱなしにしなくちゃ」



そう言いつつ、()()()と頭上の二体へ視線を投げる。

相変わらず、黒い目の子供達は()()()()と笑いながら空を舞っていた。


動きも不規則で距離もある。

あれを狙うのはいかにも難儀しそうだ。


ぼくは小さく舌打ちすると、この場に居ない()()()()()()()()の顔を思い浮かべた。



「全く。こんな時に、あの()()()は一体何処に行ってるのさ・・・!」


「逸れちゃってから今まで、全然行方がわからないですもんね・・・」



アルトリア(Arturia)=ジャーミン(Jermyn)

イギリス貴族の血を引く混血の少女。


森の賢人(ゴリラ)の愛称で知られる彼女は今回、一行のアタッカーとして同行していた。

だがしかし、入口すぐの所で()()()()()()暴走し、明後日の方向に向けて突進したきり行方知れずとなっていたのだ。


降霊術を扱う彼女は、いわゆる『()()()』を降ろすと制御の利かない暴走特急と化してしまう。

扱いには一癖あれど、有用な霊を降ろす事ができれば非常に頼れる戦力となり得る。


そんな彼女が居ない事実に嘆息すると、ぼくはこの場を切り抜けるべく、灰色の脳細胞をフル回転させるのであった―――


今週はここまで。

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