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お釜大戦  作者: @FRON
第五章 ダゴン・マル・アズサ 北海の大決闘!!
235/344

∥005-107 北海の大決闘・メイキングその三

#前回のあらすじ:スポンサー契約締結!



[マル視点]



そして―――()()()()()()


ぼくは単身、『深泥(ミドロ)族』の実質的トップであるコート姿の怪人こと、『玄華孫六』(ゲンゲマゴロク)氏と対面していた。

ロケーションは薄暗い地下通路の中、()()()()()()()()()深くに存在する、隠し港からすぐの場所である。


目の前には、水棲生物めいた正体を現した『深泥族』の戦士達が数名。

そして、その中央に佇むコート姿がある。


今も()()()()と、海水混じりの水滴が滴る濡れすぼったコートを()()()と見ると、ぼくは勢いよく口火を切るのだった。



「―――玄華さん。()()()()()()()


「あらぁん、奇遇ねぇボーヤ。お友達はどうしたのかしら?・・・悪いんだけれど、アタクシ達今、忙しいの。お話はまた後にして貰えないかしらん?」


「・・・みんなは別の所で、準備を手伝って貰ってます。ぼくがここに来たのは、一族の指導者である貴女と直に、話を付ける為です。後とは言わず―――()()()()()()()!」



『深泥族』達がこの場に現れたのは、十中八九、()()に囚われた同胞達を助け出す目的であろう。


しかし施設側も、度重なる襲撃に警戒心を募らせている。

このまま放置すれば、恐らく両者の全面衝突は免れない。


争いを回避し―――こちらの『()()』に巻き込むには、彼等に襲撃を一旦待ってもらう必要があった。


そんな思惑に対し、玄華の見せた反応は冷淡な物だった。

怪人は軽く()()()を振ると、温度の感じられない声で告げる。



「その話は()()()()()()()()。アタクシ達はあくまで、アタクシ達のルールに則って動かせて貰うわぁ。そういう訳で―――()()()()()


『ゲッ!!』『ゲゲッ!!』


「・・・!!」



目配せすると共に、左右に陣取っていた異形の戦士達が()()()、と前に進み出る。

それに気圧され、逆にぼくは一歩後ずさった。


一触即発の空気が流れる。


()()()()()()()()()

何とかしないと、と内心思いつつも、打開策が見つからず、ただ焦燥感のみが募る。


そんなぼくに向け更に一歩、包囲網が狭まり、思わず息を飲む。

その時―――!




『はいはーい、そこでストップです!埒が明かなそうなんで、ここらで口を挟ませて貰っちゃいますねー?』


『!?』『何者ダ・・・?』



あっけらかんとした少女の声が周囲に響くと同時に、ぼくのズボンのポケットから白い光が溢れ出した。


慌てて中のもの―――()()()を取り出す。

薄暗い通路は束の間、昼間のような明るさに包まれた。


眩さに戦士達が一瞬、怯んだその瞬間。

スマホの画面に指をかけ、「()()()()()()」と可愛らしい掛け声と共に()()()が中空へと躍り出た。


―――周囲の視線が一挙に、()()へと集う。


健康的な褐色の肌と、対照的な純白のサマードレス。

ブラウンの瞳、肩口までのセミロングの黒髪、溌剌とした愛嬌のある貌。


ぼくが夢世界で幾度となく目にした、()()()()()()()姿()()()()()()()()()


一方、彼女の姿を初めて目にしする異形の戦士達は、突然の闖入者に警戒を露にしている。

彼等が距離を取って様子を伺う中、場違いに明るい声が通路に響き渡った。



『何者かと言えばそれは私、ヘレンちゃんです!どもども、お初にお目に掛かりますー。まあ、言うなればそこのお兄さんのボス的なカンジ?』


「何で疑問調・・・?ていうか、ここで出てくるって、()()()と違くない?」


『そこはまあ、高度に柔軟かつ現場に即した判断、という事でー。・・・それに、あのまま放っとけばバトル展開へ突入してたんじゃないです?今の』


「うっ、それはまあ・・・」



ぼくは若干、釈然としないものを感じつつも、助け舟に対し素直に「助かりました」とお礼を告げる。

それに対し、ミニマムサイズの胸を張って()()()、とドヤりつつ、褐色少女は視線の少し上らへんを()()()()漂っていた。


その様子を、呆気に取られて眺める異形の戦士達。

一方、コート姿の怪人は一歩進み出ると、()()()()とヘレンちゃんの姿を眺め、合点が行ったようにひとつ頷くのだった。



「・・・アナタ、『()()()()()()』ね?」


『ピンポーン、正解です。よくわかりましたね?』


「身近に()()()()()()が居るから、感覚的にねぇ。・・・ボウヤ達のこと、なんだかこの舞台に()()()()()子達だと思ってたけれど。とんでもないものが背後に控えてたものねぇ」



ぽつりぽつりと呟きつつ、顎に手を添え幾度となく頷く玄華。

その姿からは、先程までの威圧感は失われている。


・・・どうやら、突発的な衝突は回避することができたらしい。


しかし、新たな疑問がぼくの胸の内に沸き上がっていた。

見慣れたサマードレス姿を見上げると、恐る恐る問いかける。



「ヘレンちゃん、『大いなるもの』って・・・?」


『端的に説明すると、()()()()()()()()()()の一つです。【()()()】と【()()()】を果たし、肉体のくびきから解き放たれた、真に偉大なる存在。―――故に『()()()()()()』。ざっくり言えば、すごい神様のコトですねー』


「ヘレナちゃんが、その・・・?」


『ですです。―――さてさて、話は変わりますが私、ヘレンちゃんがこうして現れたのは、みなさんへ()()()に乗る場合のメリットと、リスクを提示する為です。()というのは勿論、先程お兄さんが瞬殺された提案の事ですねー』


「し、瞬殺じゃなかったし・・・!」



疑問に答えるついでに、先程の体たらくを()()()と刺され、ぼくは呻くように抗弁する。

―――が、当のヘレンちゃんは()()()()と笑いつつ、こちらの事なぞお構いなしに()()()()と横回転しながら器用に宙を漂っていた。


()()()



「そ、それだけなら別に、態々ヘレンちゃんが出張ってくるまでも無かったんじゃあ・・・?」


『違いますー、全然違いまーす。こうして直に『説得力』の()()、つまり私が()()()()()()だって見せる事で、ここから話す内容に信頼感が産まれる訳です!交渉事ってこういう、()()()()がモノをいう場面って多いんですよー?』


「・・・そうねぇ、それはアタクシも、はっきりと感じてるわぁ。―――それで、貴女は我々にどんな()()()()を提示できるのかしらぁ?」


『・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「―――!!」


『何ダト・・・?』『本当カ?』『ワカラン・・・。ダガ、ゲンゲハ()()()()()()()



―――異形の戦士達の間に、戸惑いと驚きが走る。

少女が提示したのは、正しく彼等が()()()()()()()()()だったからだ。


興味をそそられつつ、戸惑うように戦士達が互いに顔を見合わせる一方。

交渉の矢面に立つコート姿の怪人は、内心の動揺を()()()にも出さず、淡々と疑問を投げかける。



「・・・流石に、鵜呑みにはできないわねぇ。それだけの芸当、いくら真なる神であろうと容易くは実現できない筈よぉ?」


『それは勿論。数年から数十年のスパンで、徐々に片付けるつもりですよー。特に、海底のお掃除は規模が規模なんで、()()()()()と思います。逆に治癒の方は、()()()()()可能ですねー。丁度いい機会ですし、貴女からまず手始めにやっちゃいますか?』


「まさか、本当に?・・・いえ、それでも―――」



放射能に汚染された海底の浄化と、今もなお被爆に苦しむ水底の民。

その両方を、時間はかかるが一挙に解決してしまおうという。


圧倒的なメリットの提示に、『深泥族』の面々は興味を示しつつもむしろ、困惑が先に立っているようだ。

―――()()()()()()()、と。


そんな彼等の様子を観察しつつ、ヘレンは更なる一手を打つ。

『深泥族』側の指導者たる怪人を相手に、実際に治療をして見せると言うのだ。


周囲の視線が、たった今、選択を突き付けられた張本人へと集う。

今や、会話の主導権は完全にヘレンが握っていた。



()()()()()


「・・・同胞。でも、アタクシだけでは―――」



被爆により()()()()肉体が、不可思議な働きにより逆転した()が、()()()()()()()()()()

狂おしい程の渇望を感じつつも、玄華はそれを胸の内に押し込もうとしていた。


今の自分は一族の指導者、()()()()()()()()()()()()()()()()


そう、自らに言い聞かせ、決意を口に出そうとした瞬間。

()()と肩に添えられた手の感触に、怪人は背後を振り返った。



『ゲンゲ、頑張ッテル』『我等ノ誰モ、異ヲ唱エハシナイダロウ』


「そんな―――。・・・いや、そうね。ここは素直に()()()()()、と言っておくべきかしら」



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


()()、と肩の力を抜いたように、穏やかな笑みを浮かべる(ように見えた)玄華。

それを肯定ととらえ、ミニサイズの褐色少女は空を舞うと、コート姿の前に()()()と静止した。



『同意とみなしてよろしいですかー?では、じっとしててくださいねー。リラックスして・・・私を、受け入れてください。()()と・・・。()()と、()()と、()()()()()()!・・・はい、()()()!!』


「「「・・・!?」」」


『こ、()()()・・・!?』



一瞬、眩い光が弾け、再び通路を白く塗り替える。


反射的に眼を瞑ったぼくが、恐る恐る眼を開くと―――皆の視線が集う先ではコート姿の怪人が、自分の顔を()()()()と触っていた。

・・・特に何も、変わった様子はない。


一方、『深泥族』の面々が見せた反応は劇的だった。



『同胞・・・!!』


「まさか・・・アタクシ、()()()()()()()!ねえ見て、この美しい身体・・・!!」


()()


『オオ・・・!』『見違エルヨウダ・・!!』


「まさかこんな事が起こるだなんて・・・♪速く、ベイビーちゃんにも見せてあげたいわぁ」


「・・・()()??」



・・・どうやら今、目の前では感動的な光景が繰り広げられているらしい。


()()()()()

ぼくの眼には寸胴体型の半魚人が、()()をつくってセクシーポーズを取っているようにしか見えなかった。


見た目では()()()()()()()()()()()()()()()

確かに、『()』は『()()』へ戻った―――らしい。


本当に?



「あの~~~。・・・ヘレンちゃん?」


『しーっ。()()()()!人には、口に出してはいけないコトがあるんですよー?・・・まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。治療は確かに成功した筈です、()()


「まじかー」



()()だった。


眼前では、魚顔の集団が感動のハグを繰り返し、大いに盛り上がっている。

虚ろな表情で拍手を送るぼく。


・・・あ、こっち来た。


()()()のハグを要求する集団に、陽気な観光客を受け入れるマインドで、ぼくは黙って両手を広げる。

すると、意外に筋肉質な腕が背中に回された。


ちょっとしっとりしてる。


そんな感じに場もひとしきり盛り上がったところで、空気を変えるように()()()()と手を叩きつつ、褐色少女が周囲を見渡す。

あくまでこれはデモンストレーション、肝心なのは()()()()なのだ。



『・・・はい!皆さん喜ぶお気持ちもわかりますが、ここは一旦落ち着いてくださいねー?ミドロの皆さんを治療出来るという事は、たった今、実演して見せた通りです。()()()()()()の方は、また次の機会に証明して見せるという事で、よござんすか?』


『ア、アア・・・』『素晴ラシイ、力ダ』


『どもども。とりあえず、一定の信用は得られたと思いますのでー。残りのお話しについても続けさせて貰いますが、よろしいですかー?』


「あら、ごめんなさい・・・。アタクシったら駄目ね、()()取ると感動屋になっちゃって。貴女の事は、信頼することにするわ。是非ともお話し、聞かせてちょうだい?」



どうやら、『深泥族』の信用を得る事に成功したらしい。

二人の会話を聞きつつ、()()と胸を撫でおろす。


そんなぼくを尻目に、褐色少女は宙を漂いつつ()()()と意地の悪い笑みを浮かべて見せた。



『あら、いいんですかー?私はまだ()()()の部分を話してませんし、何か企んでるかも知れませんよー?』


「少なくとも、貴女はこうして力と、誠意を見せてくれたわ。それだけで信ずるには十分。―――無論、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ヒェッ・・・」



和解の証とばかりに、軽口を叩き合う二人。

・・・かと思えば、最後、()()の聞いた低音を耳にしてしまう。


ぼくは驚きのあまり、思わずその場で数cm飛び上がってしまった。

やはり甘くはないというか、相手はこちらが何か企んでいたら()()()()()()()()()()()()()のようだ。


一方のヘレンちゃんはと言うと、たった今浴びせられた威圧など無かったかのように()()()()と微笑んでいる。

こちらはこちらで、役者が違うらしい。



『同意が得られたということでー、続きをお話ししちゃいますね!さてさて、私からみなさんに提示する『リスク』。()()()―――』


「・・・(ゴクリ)」


『2012年12月21日から12月23日の間。()()()()()()()()()()()()()()()()、【()()()()()()()()()()()()()()()()のです。私たち―――【イデア学園】と一緒に』


「【()()()―――」


()()()・・・!?』


『ですです』



()()()()()()、そして【()()()()()()


突然飛び出してきた聞き慣れないワードに、ぼくと玄華さんは揃ってオウム返しにその単語を呟く。

それに()()()()と微笑むと、ヘレンちゃんはいよいよ話の核心となる部分へ言及を始めるのであった―――



今週はここまで。

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