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お釜大戦  作者: @FRON
第五章 ダゴン・マル・アズサ 北海の大決闘!!
215/342

∥005-91 集団戦・第二十一幕

#前回のあらすじ:坂道できた!



[避難民視点]



―――地上と、国会議事堂めいた建物の屋上とを繋ぐスロープが完成してより、1分足らず。


【イデア学園】本拠地前には今や、黒山の人だかりが出来上がっていた。

周囲に目を走らせれば入ってくる、おびただしい数の人、人、人。


これらは全て、スロープの端で順番待ちをする避難民達であった。


彼等は皆、左右防衛ラインと本拠地付近に待機していた【学園】側人員である。

自陣に攻め入った『深泥(ミドロ)族』を辛くも撃退した後、水平線の彼方より迫る巨大な水壁を目にした若者達は、一目散にこの地を目指したのだ。


当然―――()()が起こる。

見渡す限り、背の低い草むらと砂しかないこの辺りに、水害から逃れられそうな()()などここしか無いからだ。



「まだ進まないのか!?」「お、押すなって!」


「こんな所でチンタラやってる場合じゃないってのに・・・!」



灰白色の坂道をゆっくり登る人の列を前に、苛立った様子の群衆が()()()()と列がはけるのを見守る。

今の所均衡が保たれてはいるが、我先にと列を無視する者が増え始めれば、パニックに至るのも時間の問題だった。


そんな彼等の耳に、地鳴りのように低く重い音が届く。

顔を上げ、不安そうに視線をさ迷わせる人々。


その背後で、列へ合流しようと海岸線を移動する集団の一つが立ち止まり、呆然と海の彼方を指差した。



「あれは―――!?」


「海が、()()()()()()()・・・」



―――音の正体は、真っ黒な海の向こうから来ていた。


戦場を照らすべく、国会議事堂の上から照射されたサーチライト。

その光は現在、海神の『()()』を防ぐべく展開された、巨大な半円状のフィールドによって遮られている。


今や青い月の光と、星の煌めきだけが僅かに海の彼方を照らしていた。


そんな乏しい視界の中、輪郭だけとなった海の端は高く、不気味に盛り上がり続けている。

進むにつれ、星明りをかき消してゆく()()は、まるで天をも呑み尽くさんとしているかのようであった。


一方。


国会議事堂めいた建造物の前には、(かなえ)少年が再構成した防御フィールドが張り巡らされていた。

『静寂(セイジャク)帳』(トバリ)―――空間を固定することにより、物理的な影響をシャットアウトする光の幕。


その強度は、戦端が開かれた直後、『深泥族』による大波をびくともせず受け止めた事からも確かである。

それが今や一点集中、雨傘のように海に向かって半円状に展開することで、更に強度を増している。


順当に行けば、今度も問題なく防ぎきれる―――筈。

その筈―――()()()



「光のヴェールと黒い塊が、ぶつかる―――!?」


「間に合わない・・・。まだ、避難している人だって居るのに!」


『―――オオオォオオオオオオ!!!』



()()()、と。


未だかつて耳にしたことも無いような、重く、不気味な響きが大地を揺るがす。

避難の完了を待たずして、途方も無い質量の塊と光壁は接触を果たしていた。


―――と、同時に水平線の彼方より、海神の咆哮が上がる。


それまで、ただゆっくりと陸地を目指していた水塊。

しかしそれは、途端に生命を吹き込まれたかのごとく、()()()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――



「黒い塊が・・・小さくなった!?」


「何だ・・・この音は」


「見ろ!光のヴェールの色が変わって―――」



周辺海域から集めたありったけの海水を、更に凝集、超高圧化し一点にぶつける。

怪物が取ったのは、至ってシンプルな戦法であった。


インパクトの瞬間に収束し、途方も無い圧力となった水弾の一撃は『静寂の帳』と接触し、せめぎ合いを始める。

()()()()と、()()()()()()()()ような音と共に、ゆっくりと光の帳は純白から、赤みを帯びた色へと変じつつあった。


―――空間そのものを固定する事により、無敵の盾と化す『静寂の帳』。

しかしそれも、空間を歪ませる程の超エネルギーの前には意味を為さない。


新雪のような純白のヴェールは、今や悲鳴のような音と共に赤く染まりきっていた。

もはや、破られるのも時間の問題。


―――誰もがそう思ったその時、誰かが視界の端に、()()()()()()()()()


何処からともなく飛来した一本の槍が、漆黒の水弾へと吸い込まれる。

次の瞬間、雷鳴のような轟音と共に、()()は弾け飛んでいた。


加重から解放され、崩壊の危機から脱する光のヴェール。


一方、凝集していた膨大な量の海水は一挙に元の体積へと戻り、渦巻く濁流となって周辺一帯へと拡散を始める。

その先には、未だ国会議事堂を目指し、避難を続ける人々の列が続いていた―――



今週はここまで。

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