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お釜大戦  作者: @FRON
第五章 ダゴン・マル・アズサ 北海の大決闘!!
213/343

∥005-89 集団戦・第十九幕

#前回のあらすじ:エピソードボスがついに動いた!



[泥艮(ディゴン)視点]



『同胞ガ―――!』


「落ち着きなさぁい」



ここまで苦楽を共にしてきた同胞―――『深泥(ミドロ)族』の戦士達が、次々と斃れてゆく。


水上を走る人族の乗り物から放たれた飛礫が、爆裂し、仲間達もろともを巻き込み巨大な水柱を立てる。

敵を一手に引き受け、多くの人族を屠った英雄も、ついには虚を突かれてその膝を突いた。


その全てを―――『()』はこの場所から見続けていた。


『泥艮』は一族の象徴。

故に、軽々しく動くべきではない。


そう、戦いが始まった時点でいい聞かされ、ここまで『()』は沈黙を守り続けてきた。


しかしそれでも、その胸の内を焦がす憤りまでは隠せない。

そんな内心を見通したのか、肩の上より()()()()()()が『()』を引き留めた。



『母上。シカシ・・・』


「・・・優しい子ね。でも、心配することは無いわぁ。今回に限っては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のよ。アタクシ達ミドロも人間達も、これ以上、奪われる心配は無いってこと。だから安心なさぁい?」


『ソンナ、手立テガ本当ニ・・・!?』



産みの親であり、その知恵で一族内でも一目置かれる母の言葉に、巨人は思わず閉じる事の無い両目を見開く。

その反応が期待通りだったのか、小さく肩を震わせたコート姿の人物は片手を上げ、海の向こうを指差した。



「本当よぉ。ベイビーちゃんの心配はわかるけれど、今は何も言わずアタクシを信じてちょうだい。ちゃぁんと、後で事情は説明してあげるから、ね。・・・それよりも、()()()()が来たみたいねぇ?」


『アレハ、同胞ヲ爆撃シタ―――!』



母の指差す方向を見やると、人族の乗り物のうち一隻が群れを離れ、こちら目掛けて真っすぐに進んでくる。

黒光りする金属板に覆われたその甲板からは、爆裂する飛礫を打ち出す筒が何本もこちらを目掛け、狙いを定めていた。


―――向こうは、()()つもりのようだ。



「ここらで一つ、アタクシ達の力を見せてあげましょうか。ベイビーちゃん、行けるわねぇん?」


『御意・・・!!』



肩の上から()()と表皮を叩く母に、『()』は大きく頷く。

それと同時に鋼鉄の乗り物から菫色の光が弾け、無数の飛礫が放たれた。


無言のまま水面の上に巨大な掌をかざすと、巨人はさっと弧を描くように振るう。


次の瞬間。

亜音速で飛来した砲弾は巨体の中心へと吸い込まれ―――ない。


砲弾は命中する寸前に、『()()』によって遮られていた。


それは、()()()()()()()であった。

海神の権能によって生じた水壁はその内部に海流を有し、直撃コースを取っていた砲弾のベクトルを変える。


先程の腕の動きと同じく弧を描くようにして、巨人の周囲に生じた水壁内部を、反時計回りに導かれてゆく砲弾。

ついには海流の勢いそのままに、空中へと放り出されてしまう。


―――その行く手には、鉄の戦艦の横っ腹が広がっていた。



「アラ、素敵な()()ねぇ?」


『マズハ、一ツ・・・!』



水壁により方向を狂わされた砲弾は、自らを発射した母船へと逆戻りする形で着弾していた。


巨大な水柱が上がる。

残骸となった鉄の船はゆっくりと沈み―――()()()()()()()()()()()


それを確かめた巨人の視界には、続いてこちらへ向かい、集結しつつある人族の船団が映る。

彼等と死闘を繰り広げていた同胞達は、既にあらかた倒されてしまったようだ。



「次はもっと、派手に行きましょうか」


『デハ・・・()()デ』


「ギョフフ。一体どうなっちゃうのかしらぁん?」



そんなやりとりを挟み、もう一度、水面に掌をかざす。


今度は、両手で。

ありったけの神力(チカラ)を込めて。


―――最初、その変化は目に見える形では現れなかった。


唯一。

低く、う()()ような音が遠方より、巨人を中心としてゆっくりと、近づいてくる。


やがて、ついに敵の大ボスを攻略せんと再集結した船団は、『深泥族』本陣を目指し舵を切り―――

()()』を目撃した。


最初、あの巨人―――『泥艮』が忽然と姿を消した、ように見えた。

しかし、すぐにそうではないことに気付く。


『深泥族』本陣があったであろう場所。


その手前には、巨大な―――

()()()()()()()()()()()()()()()()()()


それは、小山のような『泥艮』の巨体を完全に覆い隠し、なおも見上げる程の高さへと成長していた。

()()()()()()()()()()


()()


遠くに見える、陸地側の岸からは完全に水が引き、海底が露出してしまっている。

海岸線であった場所はすべて剥き出しの地肌へと変貌し、伝承にある大海嘯の先ぶれの如く、不気味な光景が広がっていた。


一方。


周辺海域、見渡す限りの全てを掌握し、()()()()は己の周囲へ海水を集め続けていた。

既に空にも届かんという高さにまで達した水壁の前に、両掌を再びかざす。



『オォ・・・オオオオオオオオオ!!!』



地響きのような吠え声が上がる。


両腕を振るい、その動きにつられるように水壁は()()()と震え、姿を変えた。

冗談のような巨大質量が怪神の動きと呼応し、その背後へと集う。


―――()()()()()()()m()()()()()()


再び雄叫びが上がり、振り下ろされる両腕。


集っていた全質量が一挙に解放される。

怪物の巨体を追い越し、頭上を飛び越え途方もない水塊は陸地を目掛け、進軍を開始した。


渦巻き、うなりを上げて突き進む海神の一撃。


それは開戦直後の大波すら霞む程の巨大津波、正しく天変地異の再現であった。

超・超巨大質量による圧倒的破壊が、【学園】側本陣へと迫る―――!


今週はここまで。

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