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お釜大戦  作者: @FRON
第一章 恐怖!町内巡回バスUFO襲撃事件!!
21/341

∥001-21 ひとかけらの希望

#前回のあらすじ:バブルシールド ヲ ソウビシマス



[エリザベス(Elizabeth)視点]



少しだけ場面を戻し、上空にて。


力を合わせた若き【神候補】達は、強敵である銀色の巨人をあと一歩という所まで追い詰めていた。

初見の時は圧倒的な存在感を放っていた巨体も、今や半分程にまで萎み、体中の()()()()()から血潮のように菫色の霧を噴出させている。


ずんぐりしたフォルムの四肢は全てエリザベス愛用の鞭―――【髭鞭サイクラノーシュ】によって拘束され、現在進行形で高熱により焼き焦がされ続けていた。

更には、鈍色に光る体表には漆黒の体躯を持つ獣たちが張り付き、荒々しく爪や牙で切り裂いている。


仲間の一人、抄子(しょうこ)の造り出した墨絵の生命達である。

更に言えば、西郷(さいごう)とツンが先程与えた損傷も未だ残されており、大きな傷跡として怪物の身体に深く刻まれていた。


ありていに言って、()()()()であった。



「いい加減―――倒れるでごわすっ!【紅蓮棒(ぐれんぼう)手裏犬】(しゅりけん)ーーー!!!」


「わおおーんんっ!!」



駄目押しとばかりに、巨漢の少年が放った棒手裏剣が巨人の胴体へ()()()と突き立つ。

続けてツンが投擲したものと二つ並び、深く皮膚を貫いた手裏剣は火柱を吹き上げ、()()()()()()と回転しながらその身体奥深くへ潜り込み―――()()()



『!!???』



轟音。


それと同時に、()()()、と巨人の全身が強く痙攣を起こす。

それまで藻搔くように抵抗を見せていた四肢は、それきり()()()と脱力すると、端のあたりから徐々に崩れ始めた。


やがて―――巨人の全身が、菫色の燐光に包まれる。



「終わった、のでございますか・・・?」


「・・・()()()()のですけれど」



どこか不安げに呟く苅安(かりやす)色の令嬢。

エリザベスは()()()とそう返すと、油断なく崩れ行く巨体を見守った。


『フライングヒューマノイド型シング』―――

彼の怪物は、彼女がこれまでに戦ったどの敵と比べても、類を見ない程の強敵であった。


その巨体と攻撃力も()()()()なれど、無尽蔵に思える耐久力には思わず舌を巻く程だった。

だが、それもようやく終わりが来たと見える。


豊かな胸を()()と撫でおろすと、真紅の令嬢は小さくため息をついた。



「みんな・・・気をつけて!()()()()()()()()!!」


「マルヤム、それは一体どういう事ですの・・・?」


「・・・はっ!?巨人の他に、()()()()()()()()()がするでございます!」



僅かに空気が弛緩した、その時。


ローブ姿の少女より鋭い一声が飛び、その場の全員がはっと目を見開いた。

慌てて周囲を探る彼女達であったが、時すでに遅し。


気配すら微弱となっていた眼前の怪物とは別に、足元から()()()()()()()()()が膨れ上がる。


視線を下ろした先には―――バスを覆う防壁を崩しにかかる、()()()()()()()()()()が居た。

この世を去る瞬間、巨人は残る全エネルギーを使い、新たな『フライングヒューマノイド型シング』を()()()()()()()()()のだ。



()()()()―――!!)



完全に油断していた。


上空に展開された【石灰岩の回廊(セラピウム)】から地上まで、どれだけ急いでも間に合わない。

視界の中、新たな巨人は膨れ上がった腕を振り上げ、今まさにバスを叩き潰そうとしている。


見れば、先程の個体と比べそのサイズは半分にも満たない。

文字通り、最後の悪あがきとして、大幅にパワーダウンした()()()を呼び込むことしか出来なかったのだろう。


しかし、それでも巨大な片腕だけでゆうに座席数個分のサイズがあった。

あれが振り下ろされれば、絶対に()()では済まないだろう。


最悪の未来を想像し、エリザベスは我を忘れ悲鳴を上げた。



キャシー(Cathy)・・・っっ!そんな―――」


『一か八か、出た所勝負だけど―――【バブルシールド】ッ!!!』


『LILI・・・!?』



恐怖のあまり瞑りそうになる両目を必死に見開き、間に合わないと知りながらも地上を目指す。

その先で、ついに巨椀を振り下ろした銀色の怪物は一瞬、その動きを止め―――


何故か、()()()()()()()()()()()()()()()()()


一体、何が起きたのか?

理由はわからないが、何れにせよ―――少しだけ、タイムリミットが伸びた事だけは確かだった。


なお、巨人の腕とバスの車体が衝突する寸前、小さくマルの声が響いていた事を彼女は知らない。



「何だか知りませんが・・・この機は逃しませんわ!ノーシュ・・・ッ!!」


『(にゃおん)』


「風よりも速く!Sonic(ソニック) Whip(ウィップ)―――!!!」



己の半身へと呼びかけ、手中の愛鞭にありったけの【神力】(プラーナ)を注ぎ込む。

次いで繰り出した鞭の一撃は音速の壁を越え、瞬きよりも早く眼下の敵へと到達していた。


超音速の鞭は巨体の左半分をしたたかに打ち据え、バスの後部から怪物を引きはがす事に成功する。

でかい()()()が退いたことで、ようやく様子が見えるようになったバスへと視線を向け―――エリザベスは、思わず首を傾げた。



()()()()()・・・?」



バスの周囲を()()()()覆うレンガ造りの壁、その一部が崩れた中からは、コバルトブルーに輝く水の壁がわずかに覗いていた。

どうやらあれが、先程巨人の一撃を受け止め、エリザベスの攻撃が間に合うだけの隙を作った()()のようだ。


だがしかし、仮にあれが誰かの神業(スキル)だったとしても、あんな能力を操る者を彼女は知らない。

脳裏を占める疑問に眉を顰めていると、水壁はひとりでに()()()と弾け、()()()()が露になった。



「・・・そう、()()()()()()



シャボンの壁の向こう、バスの後部に居たのは、一人の小太りの少年であった。

先程、バス内部にて一度だけ見かけた人物。


丸海人。(マルカイト)


あの日本人が危うい所で、バスとその乗客を守ったのだろう。

一瞬、その姿に目を留めると、すぐに()()()を向くようにして少女は銀の巨人へと視線を移す。



(感謝は、言いませんわよ・・・)



()()()、と唇を噛みしめ、口の中でそう呟く。


白状しよう。

エリザベスは()()()事情により、マルに対し一方的にライバル心のようなものを抱いていた。


キャシー(Cathy)―――羽生梓(はにゅうあずさ)の一番の親友には、()()()()()()()()()


そんな彼女の内心がマルを敵視させ、彼等の協力を断るきっかけとなったのである。

だが、それも()()()()だ。


―――今だけは、背中を預けてあげましてよ。


胸中に抱いた確執を今は呑み込み、少女は倒すべき敵へと対峙する。

決意を新たに、真紅の令嬢は手中の愛鞭をひときわ強く握りしめるのであった。


※2023/12/04 文章改定

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