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お釜大戦  作者: @FRON
第五章 ダゴン・マル・アズサ 北海の大決闘!!
202/342

∥005-78 集団戦・第八幕

#前回のあらすじ:なんか龍馬っぽいのがきた



[マル視点]



【伏龍(フクリュウ)盤】(バン)の周囲にヘレンちゃんが配した半透明の(ボード)が浮かび、各地の戦況をリアルタイムに伝えてくれる。

居並ぶ面々が現在、固唾を呑んで見守っているのは―――左翼側。


【イデア学園】の有志が集い結成された、混成船団の戦況を伝えるものだ。

つい先程、船に乗り込んだ『深泥(ミドロ)族』側戦力と【学園】側との間で、白兵戦が開始されたばかりだ。


戦況は―――5()()5()()、といったところか。


攻め込まれてはいるが、かといって易々と守りを食い破られる程、【神候補】達も弱くはない。

あらかじめ【装備型】を中心に、近接戦闘に慣れた者達が船団へ乗り込み、今のような状況への備えとしていたのだ。


―――ここ、いろは丸もそうした戦場の一つであった。


甲板の上では異形の戦士達と、船を護衛する【神候補】が睨み合っている。

身体の端から海水を滴らせ、矢のように飛びかかって来る異形の戦士。


その一人を危なげなく回避すると、男は()()()と腰に佩いた長刀を抜き放った。

―――闇夜に一筋の銀光がひらめく。


鋭い悲鳴が上がり、片足を失った『深泥族』の男は甲板の上に()()、と倒れ伏した。

そこへすかさず返す刀を突き出し、首筋に刃を深々と突き立てる。


()()()、と最後に痙攣をひとつ残し、異形の戦士は()()()()()()()()()()()()


後に残された長刀にひとつ血ぶりをくれ、男は油断なく周囲を見渡す。

彼の頭には―――思い切り場違いな、間抜けな表情の()()()()()が乗っかっていた。


【揺籃(ようらん)寮】の住人である猫侍―――寅吉(トラキチ)である。


船上の()()()()()では同じようにして、異形の戦士と【学園】側勢力との小競り合いが発生していた。

刀剣類で、槍で、あるいは弓や銃のような遠距離武器で。


迫りくる戦士達を何とか押し返し、あるいは猛攻に耐え切れず鋭い爪に刺し貫かれ、悲鳴を上げながら()()()()()()()()()()

これまでに少なくない敵を撃退していた【神候補】達だが、次から次へと追加される増援に一人、また一人と、敗退する者が増えつつあった。


―――何処かへ、助太刀に入るべきか。

寅吉は猫面の下で、僅かな時間思案する。



「いやあ、見事なお手前じゃのう!今の居合、伯耆流じゃろ?」


「・・・!」



そこへ唐突に、片手に拳銃をひっ下げ、もう片方の腕を着物の胸元に突っ込んだ姿勢のまま、一人の男が話しかけてきた。

猫面の下から胡乱な視線を向けると、男の背後には額を撃ち抜かれた異形の戦士が一人、倒れ伏したまま()()()()()()()()()()()()()


素早く船内へと眼を移すと、襲撃者の撃退も一旦落ち着き、戦いは小休止となりつつあった。

そこまでを見て取ると、寅吉は男の質問には答えず、()()()と一言呟いた。



「・・・そういうお前は、()()()()は使わんのか」


「腰?・・・あぁ!()()()()より、(こいつ)で撃った方が手っ取り早いぜよ」


「―――ふん」



一瞬、何を言われたのかわからず眼を()()()()させる男。

しかしすぐに気付くと、腰に佩いた一振りの刀を()()と叩き、次いで右手に持ったリボルバーを軽く振ると、にっかと朗らかな笑みを見せた。


それに対し、どこか不機嫌そうに嘆息すると、寅吉は()()()ときびすを返す。

そのまま反対側の舷側へと歩いて行く猫侍を眺める男に、そっと近づいた船員が声を潜めて話しかけた。



「―――龍馬(リョウマ)さん、知り合いですか?」


「いや、知らん。けんど、()()()()()()()()()()()()()()()


「それは、つまり・・・」


「同じ幕末からの客人。『()()()』―――ちゅう訳じゃろう」



―――【学園】に属する【神候補】には、大きく分けて2つのタイプが存在する。


【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)の襲撃により一度命を落とし、ヘレンの介入によって一命を取りとめた『スカウト組』。

そして、ヘレンが直接交渉し、現代へと喚び寄せた過去の人物―――『召喚組』。


いろは丸の主であり、クラン『海援隊』のマスターでもあるこの男、坂本(サカモト)龍馬(リョウマ)

彼もまた、ヘレンの誘いを受け、現代にて第二の生を受けた一人であった。


かつての人生で彼が為した偉業の数々も、生前なんらかのきっかけで覚醒し、その身に宿した異能が原動力だった―――かも知れない。


そして、彼の瞳に映る後ろ姿。

素顔を隠し、()()()()()()()()、【学園】の片隅にて自堕落に生きる一人の男。


彼もまた、激動の幕末を生きた『()()』だというが―――その正体は如何に?



「・・・ま、何にせよ。この場を生き延びんと話にならんちゅう訳じゃな!」


「総員、戦闘準備!()が来るぞ―――!!」



よく日に焼けた顔に不敵な笑みを浮かべ、龍馬はリボルバーを構える。

その瞳は飛沫を振りまきながら甲板へ降り立つ、『深泥族』達の姿を捉えていた。


膠着状態のまま、左翼側の戦況は続いてゆく―――


今週はここまで。

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