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お釜大戦  作者: @FRON
第一章 恐怖!町内巡回バスUFO襲撃事件!!
20/342

∥001-20 パートナーを選ぶのですよ

#前回のあらすじ:大ピンチ!その時マルは・・・



[マル視点]



「いいですかー?よーく聞いてくださいねー?まず、お兄さんにはこれから神様になる為の第一歩として、【神使】(ファミリア)と契約して貰いまーす」


「はい!先生質問です!【神使】・・・って、何ですか?」



何処から出したのか不明なホワイトボードを前に、女教師ルックの褐色少女が鞭を()()()()説明する。

それに対し、ぼくは身を乗り出して元気よく右手を振り上げた。


一面が白一色に絞められた、謎の空間。

ここはヘレンちゃんのテリトリーにして、()()()()()()()()()()()的な場所だ。


その中心にて、ぼくはサマードレス姿の少女と一対一で向き合っていた。


時系列としては、ぼくの肉体が死に瀕してから、この空間へとサルベージされた直後のこと。

自身が置かれた状況について未だ理解が追い付かぬままに、ぼくはヘレンによるレクチャーを受けていた。


その内容とは―――『()()()()()()()』。



「【神使】とは―――。一言で表すのなら、お兄さんの本質(イデア)です」


「本質・・・?」


「ですです。神様とは()()()()()()。つまりお兄さんが暮らす物質界と重なって存在する()()()()()()()『本質』(イデア)の領域に属するモノです。()()を目指すにあたって、必ず道案内を果たす存在が必要になります。道に迷ったり、見当違いの方向へ進んじゃったりしたら大変ですからねー?」


「・・・なるほど?」



先程の質問に対し返ってきた答え。

それをゆっくりと反芻しつつ、ぼくは腕組みしたまま()()()と首を傾げた。


なるほど、わからん。



「・・・まー、何はともあれ!考えるより生むが易しってコトで・・・早速、お兄さんの【神使】にご登場願いましょー!()()()!!」


「ちょっまっ・・・。()()()ー!!?」



()()()()、と頷くぼく。


しかして、先程の話を半分も理解できていないのが正直な所だった。

それを見抜いていたのか、ヘレンは有無を言わさず展開を先に進めるべく、宙を滑るように移動しぼくの前へと来る。


そして可愛らしい掛け声と共に、片手をぼくの胸に向かって突き出した。

少女の小さな手は服や肌といった障害物を無視するかのように、半ばまで()()()()ぼくの胸部へ吸い込まれてしまった。


()()()、と得体の知れぬ感覚が身体の奥から沸き上がり、わけもわからず悲鳴を上げるぼく。

対する褐色少女は、ぼくの様子なぞ気にも止めぬ様子で、()()()()と手先で何やら探り続けている。



()()()()()()()?お兄さんの中って、こーんなカンジなんですねー」


「あっちょっ、やめてやめて!それ何だかすっごい()()()()()の!!」


「大丈夫デース、直ちに害はありません。心配無用の問答無用―――ほい!()()()()()!!」


「ア"ッ―――!?」



少女に胸(の内部)をまさぐられるという、ちょっと傍目に説明しづらい状況が続く事しばし。

流石に恥ずかしくなって上げた抗議の声をよそに、ヘレンは尻子玉よろしく『()()』を胸の奥底からすぽーん!と勢いよく引き抜いた。


再び情けない悲鳴が上がる。


空に向かってまっすぐ掲げられた少女の掌には、光り輝く珠のようなものが収まっていた。

それはひとりでに宙へ浮き上がると、高度を落としてぼくの目の前へ移動し―――()()()()



『・・・・・・』


「こ、これは・・・?」



()()()


透明の、僅かに(あお)みがかった液体。

それがゆっくりと()()()()ながら、球状にまとまり声も無く眼前に漂っている。


じっと見つめる前で、水球は僅かに気泡を生じさせながら、なおも()()()()と漂っていた。

―――不思議と、その外観には既視感を覚える。


無言のまま、水球と睨めっこを始めたぼくにヘレンは()()()と語り掛けた。



「お兄さんの本質は、こういうカタチなんですねー。・・・『不定』(flexible)、・・・『潤い』(moisture)、・・・『癒し』(healing)?そういったエッセンスが、この【神使】からは感じられます」


「これが・・・ぼくの本質?」


()()()()()ですけど、ね。神様とは、己の眷属―――『化身』(アヴァター)を持つモノです。それは動物であったり、あるいはヒトであったり、物や生命なき現象であったりします」



古今を問わず、神仏の類は現世にその影響を現す際、先ぶれとして人や動物の姿を取る。

お稲荷様として知られるウカノミタマの使いが狐であるように、【神候補】となった少年もまた、己の眷属を得たのであった。


少女の呟きにつられるように、ぼくは宙に浮かぶ水塊をじっと観察する。



「神を目指す道行を歩む、貴方がたへのささやかな贈り物として。()()()である『本質の世界』から、皆さんの()()()()()姿()をこの場へと喚び出しました。このコは必ず、お兄さんにとっての導き手となってくれる筈です」


「神様の化身・・・【()使()】?」


「ですです」



なるほど。


自分自身の写し身であり、本質でもある存在というならば、先程から感じる既視感にも納得が行くものだ。

得体の知れぬ塊の正体に、ある程度納得が行ったところで、ぼくは再び褐色少女のレクチャーへと耳を傾けた。



「・・・まあ、大抵は縁があったりだとか、性格を表すような動物が出てくるモノですが。()()()かつ()()()とはまた、随分とレアですねー?自慢してもいいですよコレ」


「・・・いやいやそんなまたー」


「それだけの事はありますよー?・・・まあ、レアだからといって、強い弱いとかは全く無関係なんですけどねー」


()()()()



ヘレンの放った容赦のない一言に、ぼくは思わずがっくりと項垂れてしまう。

ゲームじゃあるまいし、レアだからといって強いとは限らないらしい。


ま、そりゃそうか。



「さてさて。気を取り直しまして、レクチャーの続きです。先程の説明で、お兄さんが右のお耳から左のお耳へスルーした『()()()』というのが正しくコレ、【神使】のことです。【神候補】と【神使】は()()()()()、互いに不可分のパートナー同士なんです。大事にしてくださいね?」


「ふむん。・・・ちなみに、二つも三つも【神使】が居る人というのは?」


()()()()。一人につき一つが大原則です。お兄さんが神様になれるかどうかは【神使】次第、いかに()()使()()()()()かに掛かっているんです」


「マジかぁー・・・」



モンスターをゲットして育てる()()()()でも、最初の手持ちは3体から選べるというのに。

どうやらぼくに残された選択肢は他に無く、この水球を育成するしかないらしい。


ひどい話もあったもんだが――ー神様を目指すというからには、その道のりも平坦な物ではありえない。

むしろこの程度、呑み込んでしかるべき試練なのだろう。


ガッツポーズで気合を入れなおすと、ぼくはパートナーとなった水球と改めてハイタッチを交わすのだった。



「・・・ところでヘレンちゃん。()()()の名前って、何か決まってるの?」


「ありません!なので―――今、ここで決めちゃってくださいな」


「まだ無いのかあ、ううん・・・。うーん、う~~~~ん・・・?」



気分一新。

未来に向けて頑張るぞー!と拳を振り上げたところで、()()、と新たな問題に突き当たる。


この【神使】、()()()()()()()のである。


いつまでも『()()』だとか『()()』だと、流石に据わりが悪い。

ヘレンの言もあり、ぼくは()()()()唸りつつ新たなパートナーにピッタリの名前を考え始めた。



「スライム・・・スラ蔵・・・スラ○ン・・・リ○ル。いや―――何だかこの方向性は、()()()気がする。国民的JRPGからは一旦離れよう、うん」


「賢明ですねー」


「それなら、水・・・不定形?・・・形のないもの、変幻自在の―――?()()


『・・・?』



眼を瞑り、脳内で連想ゲームのように、次々にイメージを移ろわせてゆく。

やがてそれは、一つの形をとり脳裏にて確固たるイメージを結んだ。


・・・再び目を開くと、ぼくは視界の中央を占める水球をじっと見つめる。



「―――()()()()()()


『・・・!』



自然と、()()()()が口をついて出ていた。


古代ローマにおいて、ヘルメス神と同一視され、時代を経て錬金術の創始者として語られるようになった名。

それを唱えると同時に、宙に浮かぶ水球は()()()と震え、コバルトブルーの輝きを帯びた。



変幻自在(メルクリウス)とはまた、ピッタリな名前を付けましたねー。ひょっとして、中二病よろしくこーゆーシチュエーションに合わせて、予め考えてたりしました?」


「いや、完全に即興。なんか、()()()()()()()()()()って思ったから。・・・だよね、()()


『・・・・!』



少女の言葉を首を振って否定すると、ぼくは水球改め【神使メルクリウス】―――略して()()に向かって微笑みかける。

物言わぬ水塊は()()()、と小さな気泡を生じさせると、何処か嬉し気に揺らめくのだった―――




  ・  ◇  □  ◆  ・




―――そして、現在。



「・・・【()使()()()()()()()】っ!!」


『・・・・・!!』



銀色の巨人を前に、ぼくは己の分身たる名前を叫ぶ。

それと同時に、眼前の空中にコバルトブルーの光が生じ、見る見るうちに膨らみ一抱え程の水の塊へと変じた。



「マル君!それが()()()・・・!?」


「そうです!ぼくの唯一無二の相棒は、()()()()()に備えて取っておいたんだ!一か八か、出た所勝負だけど―――【()()()()()()()】ッ!!!」


『・・・・・・・・!!』



隣から上がる驚きの声に、()()()と口角を上げる。

あの時、謎空間でメルを初めて召喚した後、ぼくは何か一つ『()()()()()()』を習得するという課題に取り組む事となった。


それに対しぼくが出した答えは―――()()()()()


敵を倒すのではなく、()()()()()()

そして、()()()()()()()()()()()()()()()にこそ、ぼくは力を振るう。


あの時の決意を胸に、()()()()()()の姿を視界の端に捉える。

ヘレンから授けられた『切り札』は、今、この時の為のものだ。


彼女から伝えられた言葉を思い起こす。

必要なのは()()()()―――そして()()()()()()だ。


メルを操り、敵の攻撃を防ぐ。

でも、水の塊であの巨人の一撃を無効化するには―――?


()()()()()()


水―――球―――()

ぼくが想起したのは、()()()()()()()()()()()()()()


脆く弾けて消えてしまう儚き存在を以て、見上げるような巨体の一撃に抗するには?

答えは―――()()()()()()()


両手を伝わり、目に見えないエナジーが流れ出てゆくのを感じる。

神の端くれとして授かった力―――【神力】(プラーナ)は対象となるモノへ、()()()()()()()()()()()ことを可能とする。


今、この時、泡の壁へ授ける力は―――『()()』。


決して()()()()()()、受けた力を()()()()逃がし、攻撃者へと返す。

破れずの泡のイメージを今、ここで―――()()()()()!!



『!!!???』


「泡の壁が・・・()()()()()()()()!?」



車体の外、後部座席を狙い振り下ろされた巨椀。

菫色の燐光を纏い、鋼板をも容易く引き裂くそれを巨大化したメルの身体が受け止め―――


そして、()()()()()()()()()()()()()


※2023/11/27 文章改定

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