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お釜大戦  作者: @FRON
第五章 ダゴン・マル・アズサ 北海の大決闘!!
194/343

∥005-72 友情ブレイカーズ

#前回のあらすじ:なんというトラップ・・・!



[マル視点]



「「くぉの・・・裏切りモンがぁぁぁあああ!!!」」


「突然の謂れなき中傷っ!?」



―――見知った顔が二つ、口の端から唾を飛び散らせながら鬼の形相(見えないけど)で襲い掛かって来た。


ガチムチ体形のバケツヘルムと、ひょろりと上背の高いモヤシ体型のバスネット。

それぞれに異なる形状の金属兜を被った()()が二名、フルヘルムにサーコート付きチェインメイルという、見るからに重そうないでたちで全力疾走してくる。


それも、ぼくの顔を見つけたかと思いきやの、これだ。


ぼくはとっさに、二人の前に【バブルシールド】を展開する。

勢いのままに、淡く輝く水膜へと顔から突っ込む鎧野郎共。


()()()、と彼等は水膜に半ばのめり込むと、発条が戻るようにして()()()!と弾き返されて行った。


()()()()、と汚い悲鳴が上がり、()()()()()()()()()と甲高い金属音がそれに続く。

騒音が収まるまで待った後、ぼくは仰向けに横たわる二人の側に小走りで近寄ると、金属兜のつるりとした表面を()()()()と指先で突いた。



「・・・で。何で急に襲い掛かってきたりしたのさ?」


「―――それは無論!貴様が!裏切者だからで!あ~~るっ!!」


(それがし)たちをさしおいて彼女を!そぉれもこんな美少女を侍らすなんて!まごうこと無き裏切りですぞキィィ!悔しいぃ妬ましいぃぃ!!」


「えっ」



()()()と勢いをつけて起き上がった彼等は二人揃ってこちらを指差し、口々に恨み節を唱え始めた。

しかし、こちらはその内容に()()()心当たりが無い。


ぼくは()()()と首を倒し、改めて眼前の二人組をしげしげと眺めた。


―――この、見るからに騒々しい連中、出会うのはこれが初めてではない。

ぼくは以前から【学園】の『任務(クエスト)』で、何度か彼等と顔を合わせている。


名前は、バケツの方がDaniel(ダニエル)、バスネットの方がJames(ジェームス)


煩悩と承認欲求に全開な感じの、実に十代男子らしい人達だ。

彼等とは毎度、出会う度にバカバカしくも楽しい一時を過ごさせて貰っている。


そんな訳で、行く先々で騒動を巻き起こすこの二人とは、文句を言い合いながらも楽しく友達付き合いさせて貰っていた筈。

―――その筈、だった。


それが、何故いきなり襲い掛かられるような事態になったのか。


ぼくは()()()、と更に首を倒し唸ると、その理由を求めゆっくりと首を巡らせ始める。

―――そして、90度右へ視線をスライドさせた辺りで、ぼくの背後に縮こまって隠れた(かなえ)くんと()()()()目が合った。



「・・・なるほど!」


「え?・・・えっ?」



()()と膝を叩き、大きくうなずく。

謎は全て解けた!


それに対し白髪の少年は、戸惑い混じりの声を上げ()()()()、と両目を瞬かせている。

サーチライトの光を受け、ふたつの瞳はルビーのように妖しく、美しい光を一瞬放った。


―――抜けるように白い肌と、幼なげだが、極めて整った顔立ち。

ふわふわの新雪のような髪と、紅い瞳のコントラストが非常に美しい。


その容姿といい、どこか儚げな雰囲気といい、『彼』は見た目だけで言えば、文句なしの美少女であった。


うん。

要するに、ぼくはいま()()()誤解を受けているらしい。


()()、と小さくため息をつくと、再び二人の側に視線を戻した。



「・・・裏切者だなんて酷いです。ぼくは何時だってお二人のよき理解者のつもりですよ?」


「嘘である!吾輩は騙されんぞ!!」


「そうですぞそうですぞ!現に今、マル氏は彼女同伴でラブラブランデブーな一時を過ごしている!そぉれが何よりもの証拠ですぞ~~!!!」


「男です」



()()()()と両手両足を振り回し、悔しさを全身で表現する二人。

それに対し、ぼくはきっぱりと、簡潔に、事実を伝えた。


()()()、と同時に、二人は動きを止める。



「はっ?」「えっ?」


「―――だから、男です」



()()()、と錆付いた人形のような動きでこちらを向いた彼等に対し、もう一度同じ内容を繰り返す。

一瞬、言われた内容が理解できなかったのか、二人は同音異句に疑問の声を上げた。


それきり、()()と静まり返った彼等に向けて、諭すようにぼくは言葉をつづける。



「・・・今、何て?」


「こちらの叶くんは、()()()。そしてぼくは、()()()()。普通に女の子が好きで、同性は恋愛の対象外な人です。つまり、彼と一緒に居たとしても、先程仰った『彼女同伴』にはあたらないという訳です」



あーゆーあんだすたん?

ゆっくりと、噛んで含めるように説明を終える。


そして、二人は唖然とした表情のまま、ぼくの背後へと視線を送った。

びくり、と緊張に身体を強張らせる気配が背後から伝わってくる。



「・・・・・・()。」


「これが―――()?」


「えっと・・・はい。男です・・・ごめんなさい」



初対面の相手に人見知りが発動したのか、()()()()と見るからにうろたえた様子で後ずさる叶くん。

()()()()()()と、消え入るような声でそう答えた末に、彼は再びぼくの後ろに隠れてしまった。


()()()、と音を立てて、二人は地面から起き上がった姿勢のまま凍り付く。



「「Oh・・・My.GOD・・・」」



そして彼等は天を仰いだ。


―――見れば、二人の背後では、謎の鎧集団が続々と膝から崩れ落ちていっている。

あっという間に目の前には、虚ろな様子で「男…」と呟く野郎共の屍が、死屍累々と横たわっていた。


どうやら、ぼくたちのやりとりをコッソリ聞き耳を立てていたらしい。

思わず嘆息するぼくの後ろに隠れるようにして、白髪の少年は奇妙な光景を怯えたように見つめている。


どーするんだこれ。


戦端が開かれる前から、早くもグダグダになってしまったこの状況に、ぼくは思わず頭を抱える。

『フィアナ騎士団』と『深泥(ミドロ)族』、二勢力による衝突はもう、すぐそこにまで迫っていた―――



今週はここまで。

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