∥001-19 ピンチ!そしてまたピンチ!!
#前回のあらすじ:愛と友情のツープラトンでごわ!!
[エリザベス視点]
西郷とツン、一人と一匹から生じた巨大な竜巻。
それはうなりを上げ、紫電を迸らせながら空をカッ飛び―――巨人の胴体へと衝突した!
「うぉりゃああああああ!!!」
「わぉーーーんっ!!」
『!?!?!??』
天が裂けるような大音響。
それと共に、凄まじい衝撃波があたりを薙ぎ払った。
慌てて【猫女神の盾】の後ろへ隠れるエリザベス達。
―――爆風が収まった後。
彼女達が目にしたのは四肢が千切れ飛び、巨体の大半が菫色の光へと変じた『フライングヒューマノイド型シング』の姿だった。
明滅する巨体は再び途切れ途切れの断末魔を上げ、それは次第に弱まってゆき―――
・ ◇ □ ◆ ・
[マル視点]
「うわっ!!?」
「何処から・・・!?」
一方、その頃。
横合いからの激しい振動が車体を揺らし、ぼくは慌ててたたらを踏んだ。
上空の決戦に気を取られていた時、不意を突くように起きた出来事である。
ぱらぱらと細かい埃が降りしきる中、ガラス窓を通して外へ視線を飛ばす。
窓のすぐ外には、灰色のレンガで造られた防壁が四方を取り囲んでいた。
先程の場面から、『シム』達が協力して築き上げた壁だ。
その強度は十分らしく、敵の攻撃らしき先程の衝撃にもビクともしていなかった。
更に視線を巡らせてゆくと、壁の隙間からきらりと光るものが僅かに垣間見える。
その辺りへじっと目を凝らしていると、少し間を置き、再びそれは壁の側を通り過ぎた。
「鈍色に輝く、銀色の円盤―――!」
「UFO!?西郷どん達の回りからは一掃された筈なのに・・・」
「恐らく先程の戦闘で散ったUFO達が、再度集まってきたのでしょう・・・」
ちらりちらりと、壁の向こうに見え隠れしていた襲撃者の正体。
それは頭上の戦いで大量に召喚された、空飛ぶ円盤達であった。
【猫女神の盾】によって周囲へ弾かれた彼等は、果敢にも再突撃し撃破された一派と、手薄になった地上側へ降下した一派とに分かれていたのだ。
壁の周囲を旋回しながら、ごつごつと体当たりを繰り返す円盤群。
しかし、犬養青年によって築かれた無骨な防壁は、その見た目通りの防御力を誇っていた。
「何ともない・・・?一瞬焦ったけれど、これなら放っておいても大丈夫かな?」
「!?いけません・・・っ!」
窓ガラスに頭突きを続けるウスバカゲロウの如く、無策に突進を繰り返すUFO達。
一向に破られる気配のない壁の丈夫さにそっと嘆息すると、ぼくはぽつりと呟いた。
一方、油断なく外部の様子を宙に浮かぶパネルを通し伺っていた犬養は、上空で起こりつつある危険な兆候に思わず声を荒げる。
何事か、と彼の方を向いたその時。
先程とは比べ物にならぬ程の衝撃が突如、車体を襲った!
「うわあっ!?」
「マル君・・・上です!!」
「・・・上!?」
ついに立っていられなくなり、床へ手をついたぼくの頭上に青年の声が降りかかる。
慌てて顔を上げると、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
バスの後部を覆う継ぎ接ぎの壁、それが再び弾け飛び、上半分がごっそり無くなってしまっている。
その向こうにあるべきレンガ壁も崩れ、その奥からは銀色の巨人の、のっぺりとした頭部がこちらを覗き込んでいた―――!
「ひっ―――!?」
「くっ、間に合ってください・・・!!」
巨人の腕が振り上げられる。
視界の端では、『シム』を操りそれを迎え撃とうとする犬養の姿が映る―――間に合わない。
このままでは、恐らくぼくらはバスの乗客もろとも、仲良くぺしゃんこだ。
再びの絶対絶命。
今―――この場において、自由に動けるのはきっとぼくだけであろう。
だが―――何ができる?
その時、ぼくの脳裏に浮かんだのは此処へ来る前の場面。
謎空間にて、サマードレス姿の神様と語らったあの時の出来事であった―――
※2023/11/20 文章改定




