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お釜大戦  作者: @FRON
第五章 ダゴン・マル・アズサ 北海の大決闘!!
171/342

∥005-49 地底での再会

#前回のあらすじ:ギョロ目親父見つけたった!



[マル視点]



『泥艮』(ディゴン)・・・!!」



突如、真っ黒な海水溜まりを割って現れたのは、その頭部だけで10mはあろうかという巨人。

深泥(ミドロ)族』の祖霊とされる怪物、『泥艮』だった。


突然の事に混乱しつつも、必死に状況の分析を試みる。


何故ここに『泥艮』が?

ここに来るまで、『深泥族』の気配は全くと言っていいほど感じられなかったのに・・・。


―――いや、よく考えてみれば、それもおかしい。


ここは片洲の地下。

【深きもの】(ディープワン)としての変異が進み、水棲生活を送るようになった彼等に取って、本来の住処と呼ぶべき場所の筈だ。


それが全く姿が見えなかったのは、まさか―――

()()()()()()に気づき、ぎくりと身体を強張らせたところへ、後輩の焦りを含んだ声が届く。



「先輩!お魚のヒトも出てきた!いっぱい!」


「なんだって・・・!?」



見れば、海面に佇む巨人の足元が波立ち、次々と海中から何者かの影が飛び出して来る。

『泥艮』をサイズダウンしたかような異形―――『深泥族』だ。


上陸した後、岩だらけの岸に()()()()と濡れた足跡を残しつつ、次第に数を増やしつつある闖入者達。

その姿を岩の格子越しに指さし、チョビ髭を逆立てながら生田目(なまため)が叫びを上げた。



「あ・・・あいつだ!あの妙な被り物どもがおれをここに放り込みやがったんだ!!畜生、次から次へと一体、どうなってやがる!!?」


「どうなってるも何も、これは完全に―――」


「待ち伏せされていたでごわすな!」



油断なく周囲に視線を配りつつ、じりじりと後退を続ける犬養(いぬかい)青年に、巨漢の少年(西郷)がにやりと口元を歪め応じる。


続々と数を増やしつつ、じわりじわりとにじり寄って来る『深泥族』達。

牢屋の前は既に、おびただしい数の彼等によって半包囲されていた。


その姿は、千差万別だ。


『泥艮』のように、人間と水棲生物の特徴が完全に混じり合った者。

変化の程度が軽く、顔立ちの変異が多少認められる程度の者から、逆に関節の変異が進み、四足歩行でしか歩けなくなった者まで。


その全てに共通する、閉じることのないガラスのような瞳が、ぼくらの顔を一斉に見つめる。

思わずごくりと唾を飲み込んだぼくの前で、不意に彼らは進軍の手を止めた。



「と、止まった・・・?」


「ふむ」



睨みあいを続けるマル達と『深泥族』達。

意図は不明だが、今すぐ大挙して押し寄せてくる様子は無いようだ。


―――そして、この状況を作り出した巨人(ディゴン)は、海水溜りの中に佇んだまま動きを見せない。


奇妙な緊張感が場を支配する中。

静かに頷くと、精悍な顔立ちの青年は一歩前へと進み出た。


周囲からの視線が、一斉に彼の元へと集う。



「・・・住処へ土足で踏み込んだことは謝罪します。ですが我々は、争いに来た訳ではありません。出来うるならば、貴方がたの指導者とお話させて貰えませんでしょうか?」


指導者(シドウシャ)・・・?』『(オサ)・・・』


「しゃべった・・・!」



滔々と流れるように語る犬養青年に、()()()()()()とざわめきを上げる異形の群れ。

互いに目を見合わせ、当惑するような様子を見せる彼等はそれでも動きを見せない。


しかし、そこへ()()()()()()()()が響く。



「―――郷のお爺ちゃん達はみぃんな、海の底に残ったわよぉん?生まれ故郷からは離れられないって、ほんとアタマが固いんだから。そんな訳で、今はアタクシが若い衆の取り纏め役という事になってるわねぇん」


「その声は―――」


()()()()()()()()()!」



ざわめく『深泥族』を掻き分け、現れたのは一人の男だった。


ダークグレーのダブルのスーツに、同じくダークグレーのフェルト帽子を頭にちょこんと乗せている。

そのウエストは樽のように太く、キングサイズのベルトが辛うじて、一番外側ギリギリの穴でその腹回りを留めていた。


帽子の下から覗く両の眼は、皿のように真ん丸で、その容貌はナマズを戯画化したような、どこかユーモラスなものだった。

それはあの日、斜陽の町外れで出会った奇妙な風体の人物。


玄華孫六(ゲンゲマゴロク)を名乗る、あの男であった―――


今週はここまで。

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