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お釜大戦  作者: @FRON
第一章 恐怖!町内巡回バスUFO襲撃事件!!
15/340

∥001-15 膠着と肉球と

#前回のあらすじ:犬養(いぬかい)内閣発足



[エリザベス(Elizabeth)視点]



バス上空―――


たなびく群雲(むらくも)のごとく、車体の周囲に幾重にも広がる【石灰岩の回廊】(セラピウム)

その上では、3人の令嬢達による一進一退の攻防が繰り広げられていた。


彼女達の前に立ちはだかるは、銀色の輝きを放つ不定形の巨人―――『フライングヒューマノイド型シング』。


()()()()と形の定まらない巨椀を振り上げ、叩きつける。

たったそれだけのシンプルな動きで、周囲へ破壊的な威力を伴う菫色の光輪が迸り、巻き込まれた回廊が木っ端のごとく吹き飛び崩壊してゆく。


空中回廊があらかた崩れ、空白地帯となった空間。

そこへ颯爽と現れたのは、一匹の黒猫だ。


影絵のように厚みのない小猫が()()()()()と小さな四つ足を動かし、縦横無尽に空の散歩を始める。

重力を無視したかのようなその動きに合わせ、黒猫が通過した後には()()()()()()と灰白色の轍が生えていた。


そうして1分足らずで、元通りに空中回廊が張り巡らされる。

その上を、舞い踊るような華麗な動きで真紅の令嬢が駆け抜け、苅安色の和装少女が描き出す墨の烏が空を飛び、巨人へ痛打を加える。


全身にたかる攻撃を嫌がるように、膨れ上がった両腕を振り回す巨人の動きに合わせ、再び周囲の回廊が崩壊する―――

そんな、いたちごっこにも似たやりとりを、彼女達は先程から幾度となく繰り返していた。



「もう!いい加減倒れなさいな・・・【Crimson(クリムゾン) Whip】(ウィップ)!」


「合わせます!【墨燕招来】(ぼくえんしょうらい)―――っ!!」



リズの叫びに応じ、手中の愛鞭がうなりを上げる。


赤熱化した【髭鞭(しべん)サイクラノーシュ】が空を引き裂き、巨人の首元を狙い打った。

その直後、顔面に相当する部位へと漆黒の燕が流星のごとく吸い込まれ、【霧の巨人】の巨体が大きくのけぞった。



「LILILILIILILIILILIIIIII!!!!!」


「くっ、また・・・どんだけタフなんですの・・・!?」



攻撃を受け一時的に霧散した巨人の頭部であったが、即座に再生され、苛立ちを募らせるように甲高い咆哮を放つ。

そのまま片腕を大きく振りかぶる巨人、狙う先はバスの車体。


轟音と共に振り下ろされる巨椀―――!

だが、スピードが乗り切る前に集中配置された【猫女神の盾】(ペルシウム)と衝突し、あさっての方向へと振り下ろされるのだった。



「Good job、さすがマルヤム(Maryam)ですわっ!!」


「ん・・・。ようやく合わせられるようになってきた」


『(んなぁ~~)』


「動きは単調でスピードはあっても読みやすい、その点では楽な相手。・・・けど、あのパワーと巨体はシンプルに厄介」



()()()()()()と抑揚のない声で語るローブ姿の少女に、足元から空の散歩から戻った影絵の猫が鳴き声を上げ、応える。


()()、と浅葱色のフードの陰から、頭上の巨体を観察する。

マルヤムは油断なくその戦力を分析し、脳裏で勝利への筋道を組み立てようとしていた。



(このまま行けば、恐らく押し切れる―――でも、()()()()()()()



浅黄色のフードの下で、端正な顔が僅かに歪む。


少しでも想定外の事態があれば、それだけでた易く均衡が崩れうる。

敵に()()()の一つでもあれば、それだけで戦線が崩れかねない。


それほどに、危ういバランス。


そんな想定に柳眉をひそめつつ、マルヤムは仲間たちの健闘を見守る。

その時―――



「うっし、腕ば鳴るばい!!」


「戦いの時間ネ!」


「「「!?」」」



突如、背後から響いた野太い声に令嬢達は思わず振り返る。

彼女達の視線の先に居たのは、恰幅のよい(西)着流しの()少年と、筋骨隆々な褐色肌のムエタイ戦士(シンサック)の二名だった。


バスの中で待機していた筈の彼等の登場に、彼女達は揃って驚きの表情を浮かべる。



「あ・・・貴方達、手出しは無用と言った筈ですわよ!?」


「それば言うたんなあん(のは)UFOが出とった時、奴等はもうおらんとやけん(居ないから)無効でごわす!」


「早い者勝ちネ!」



そう言うが早いが、二人の追加戦士達は素早い身のこなしで回廊を駆け抜け、はるか頭上へと躍り出ていた。

それを追うように、柴犬のツンも遜色のない動きで追従する。


二人と一匹の肉弾が、銀の巨人へと肉薄する―――!



【回天十字(かいてんじゅうじ)手裏犬】(しゅりけん)---っっっ!!」


「わおーんっ!!」


ソーク(切る) タット(ヒジ)!ヤーーーーーッ!!」



二つの影が【霧の巨人】へと突き刺さる。


一の矢は西郷とツン、絆で結ばれた彼等は互いに手を取り、キリモミ状に回転しながら巨人へとタックルを仕掛けた。

回転力を破壊力に変換した一撃に、巨体が大きく『()』の字に折れ曲がる。


反動で下がった頭部の前へ現れたのは、褐色の二の矢。


流れるような動きでヒジを入れ、見る見るうちに巨大な頭部をズタズタに切り裂いてゆく。

最後におまけとばかりに脛を打ち込むと、見上げるような巨体は綺麗に弧を描いて仰向けにフッ飛んだ。


反動を利用し、二人と一匹はバスの天井部分へ颯爽と降り立つ。

驚愕の表情を浮かべるエリザベス達を前に、彼等は高らかに宣言するのであった。



「ぐわはははは!我ら【立犬政友会】(りっけんせいゆうかい)・・・義によって助太刀させてもらうばい!!」


チェンカン(私も)!」


「わふっ!」

※2023/10/15 文章改定

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