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お釜大戦  作者: @FRON
第一章 恐怖!町内巡回バスUFO襲撃事件!!
14/319

∥001-14 戦も政もカネ次第!?

#前回のあらすじ:首相視点でお送りしました



[マル視点]



「ふぉおおおお・・・!」



ぼくの目の前で、破損した車体後部の大穴が見る見る間に塞がってゆく。

()()を行っているのは、先程、ぼくの胸から飛び出した光が変じた、()()()()()()()()だ。


外から丸見えで心許なかったこの状況も、あと少しでひとまずの解決を見せそうである。


感嘆の声を上げつつ、その様子を見守るぼく。

その両脇を、風を切って何者かの影が横切っていった。


何事かと目を瞬かせると、影の正体は大柄な短髪の青年(せごどん)と、逞しい褐色の肉体を誇るムエタイ戦士(ナックモエ)の両名であった。


つむじ風のような速度でバス最後尾へ到達した彼等は、同時に腰を深く落とすと、塞がる間際の壁の穴から外へ飛び出して行く。

()()()、と風切音がバス外へと抜ける、と同時に継ぎ接ぎだらけの防壁が完成し、車体の穴が塞がった。



「彼等もまた、()()を果たしに向かったようですね」


「・・・犬養(いぬかい)首相!?」


「首相ではありませんよ。・・・まだ」



突然の出来事の連続に唖然としていると、背後に誰かが立つ気配を感じ、振り返る。

そこに立っていたのは、たった今完成した簡易防壁の作り主、犬養青年その人であった。


彼は壁の出来を確かめるように手を添えると、こちらを振り返り落ち着いた声で語り掛ける。



「―――人は、生まれながらに平等ではありません。()()()()()()、人は互いの欠けた部分を補い合い、完全な存在をも超える力を発揮しうるのです。強靭な肉体を持つあの二人は、脅威と直接対峙し、敵の矢面に立つ為、外へと向かいました。・・・私も、負けてはいられませんね」


()()()()()()()()()()・・・()



鋼鉄の車体で隔てられた先、頭上では今、3人の少女達が強大な敵と戦っている。

それに加勢すべく、男性陣のうち2名もまた、つい先程外へと向かった。


現在、車内に居るのはぼくら二人と、身動きの取れないバスの乗客達だけだ。


最初に現れたUFO達ならまだしも、鋼板を容易く破壊するような相手にぼくが一体、何が出来るというのだろうか?

()()()()()()()()()()!・・・などと、意気込んで飛び出した先が()()では、先が思いやられるというものだ。


―――無力感を感じる。

すっかり弱気になってしまったぼくは、内面を吐き出すようにして()()()と呟きを漏らした。



「・・・そんなの、本当にあるんでしょうか?ぼくに出来る事なんて、何も―――」


()()()()()


「えっ??」


「先程、私を信任してくれました。車体の仮修復がより早く終わったのも、そのお陰です。これもマル君が、(きみ)が貸してくれた『()()』があったからこそ、出来た事ですよ」


「犬養さん・・・」



力強く響く否定の言葉に、()()と視線を上げる。


思わず漏らした弱音に帰ってきたのは、思いがけず心温まる一言であった。

()()、と目頭が熱くなってつい、俯いてしまう。


そんなぼくに、詰襟姿の青年は穏やかに微笑みながら白い歯を見せた。



「それに、万が一に備えてこうして、自陣で待機するのも十分立派な役割です。()()()()()者は何もしていないだろう、と揶揄するかもしれません。ですが、何も起きないとは即ち、()()()()()()()()()()()()という事。本来それは喜ぶべき事なのです」


「・・・ですね!」


「ふふ。―――さあ!我々も負けてはいられません。あの巨人相手では、現在の守りでは少々心許ないですからね。後衛の我々で次の敵の攻撃に備えるとしましょう」


「おお!・・・でもそれって、どうやって?」


()()、するのです」



そう言うが早いか、青年は虚空に向かって()()と右手を閃かせる。

手の動きに連動するようにして、彼の目の前には宙に浮かぶ半透明のパネルが出現していた。


液晶モニターのように、パネルの表面には『予算申請:議事堂外壁施工 金1,000(ジェム)也』と表示されている。

青年は、懐中から出した小袋に手を差し込むと、掌に収まるくらいの()()()()()()を取り出した。


事の推移を横から見守っていたぼくは、見たことも無い輝きを放つ宝石(?)の出現に、思わず目を()()()()させる。



「コレ・・・何ですか?」


()()です」


「・・・()()!??」


「戦も政治も、昔から殊に経費が掛かる物です。なに、この場に囚われた人々の無事を思えば安い投資ですよ。―――()()



そう言い放ちながら掌中の宝玉を放ると、()()は放物線を描き、半透明のパネルへ()()()、と呑み込まれる。

やにわに菫色の淡い輝きを放ちだしたパネルを認め、青年は【秩序の小槌】(ギャベル)を振り上げると、パネルの中央へと叩きつけた。


周囲に甲高い衝突音が(はし)る。


犬養を中心とした数m四方が、突如出現した光の柱に飲み込まれた。

またたく間に白い光は質量を伴い、大小さまざまな構造体へと収束してゆき―――二人の足下へ()()()()と降り注いだ。


それは、白く輝く光のラインで構成された立方体だった。

継ぎ目も凹凸もない、ただ光の輪郭のみを持った物体。


うず高く積みあがった()()を前に、何時の間にか車外から戻った『シム』達が綺麗に横一列に並び、主の命を待ちわびている。



「再度の招集に応じてくださり、誠にありがとうございます。皆さんにお願いしたいのは第二防壁の施工、それも()()()()()()()。度々ご苦労をお掛けしますが、どうかよろしくお願いします」


『―――!!』



声にならぬ叫びと共に、光の小人達が敬礼する。

―――と同時に、彼等は先程に輪をかけて俊敏な動きで駆け出す。


光る立方体を両手に持ち上げ、四方へと散った彼等の動きを目で追っていくと、ドアから出た小人達は()()()()に、光る立方体を路上に積み上げているようだ。

ラインフレームの立方体は道路の上に置かれると同時に、光を失い灰色のコンクリート色へと変化している。


そうして1分も立たぬうちに、窓の外には腰程の高さの壁が出来上がりつつあった。



「すご・・・」


「これも、皆様の協力あってのものです」



こうして見ている間にも、凄まじい速度で第二の防壁は完成へと近づいている。

それを組み立てる小人達はもはや、動きが速すぎて残像しか見えていない。


先程、窓の外に見えた少女達の戦闘力にも舌を巻いたが、彼もまた違う形で卓越した能力者なのだろう。


【神候補】を名乗る彼等は、その名が示す通りに、()()()()()力を持つ少年少女達だと言える。

―――では、その末席に新参とはいえ加わったぼくに、()()()()()()()()は果たしてあるのだろうか?


何か、出来る事は無いのだろうか?



「―――()()



()()()、と小さく口の中で呟く。


たった一つ、ぼくにはこの場で出来る事がある。

先刻、謎空間でヘレンによって授けられた『()()』がそれだ。


それは、直接敵と戦い、倒す事の出来る力()()()()

しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな力だ。


その為の力を欲し、扱えるようになるまであの場所で特訓してきた。

ヘレンちゃんにも一応、お墨付きを貰っている。


問題は、今、この場でちゃんと使えるかどうかだ。


チャンスは恐らく一度きり。

その『()』、ぼくは決断しなければならない。


そして、それは恐らく()()()()()()()()()()()()()

ぼくは密かに決意を固めると、頭上で繰り広げられる死闘へ視線を移すのだった―――


※2023/10/15 文章改定

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