∥004-O 大して仲良くもない他人と個室に閉じ込められるとか苦痛なアレ
#前回のあらすじ:「何か隠してない?」「カクシテナイヨー」
[マル視点]
「―――これは、あたいの友達の話なんだけれど」
「友達。」
ランタンの淡い光が照らす中、壁に背を預けたアンジー。
恋愛相談もしくは怪談でも始まりそうな出だしで、彼女が語るさまをぼくはじっと見守る。
「その子も【神候補】なんだけど、臨時PT組んで任務行ったらしいんだ」
「今のぼく達みたいに?」
「そう、あたい等みたいにだ。そしたら初対面の男二人組と一緒に戦う事になってね、その時はまあ、普通に片がついてそのまま帰ったんだ」
―――どこかで聞いたような話ですね。
ぼくは何となく、今この場に居ない二人組の姿を思い浮かべながらこくこくと相槌を打った。
「―――けれど、次から同じように臨時PT組むとさ・・・きまって居るんだよ、そいつらが」
「・・・二人組の?」
「そう。戦いの最中は普通に連携も取れるし、まあ、二言三言くらいのコミュニケーションなら出来るんだけどさ。表情の見えない金属兜被ってて、しかも戦闘してる時以外はずうっと離れた所からあたいの事見てるの。じーっと」
ストーカーじゃん!
危うく叫びそうになったぼくは数度、深呼吸して心拍数を落ち着かせる。
―――早とちりはいけない。
どう考えてもあの二人のことだけれど、実際に言葉を交わした限り、犯罪に走りそうなアブない人物という訳では無かった筈。
努めて動揺が出ないようにしつつ、話の続きを促すようぼくは口を開いた。
「へ・・・へー!偶然ってあるもんですねえ。ち、ちなみにその人達、こっそり家に付いてきたり・・・してない・・・です、よね?」
「・・・多分無いと思うけど。顔見るのは決まって大ホールの中か、任務先へ飛ばされた後だし―――」
ストーカーじゃなかった!
二人を勝手に犯罪者扱いしてしまったことを心の中で謝りつつ、ほっとため息をつく。
言いたかないけど、あの外見だと誤解とか招きやすいよね。
そしてもう隠す気無いみたいだけど、これってやっぱり自分の話ですよね。
ぼくは曖昧な笑顔を浮かべると、再び彼女へ話の続きを促した。
「ちょいと話が逸れたね。―――まあそんな感じで、そいつ等とは顔見知りの域を出ない程度の付き合いが続いてたんだ。そんなある日、何時ものように任務に出かけたら、最近できた友達と偶然、一緒になったのさ」
「友達。」
「そいつとは共通の友人も居るし、素顔もわからない連中と四六時中一緒に居るよりゃずっと気も楽だし、楽しいだろう。そう思ってたのに―――」
一旦言葉を切った彼女の目が、すっと細められる。
続いて語り出す声は低く、人知れずぼくはごくりとつばを飲み込んでいた。
「そいつは何故か野郎二人組とつるんであたいの事なんか放ったらかしにしやがった。これって一体―――どういう事なのさ?」
「・・・・・・あっ」
蒼い瞳が正面からこちらを見据える。
言葉の端々から何となく感じてはいたが―――
アンジーは予想していたよりずっと、静かに怒っていたようだ。
これはいけない。
ぼくは潔く頭を下げると、二人組に協力する事になった事情を丸ごとゲロってしまうのであった―――
ちょっと短いですがここまで。




