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お釜大戦  作者: @FRON
第一章 恐怖!町内巡回バスUFO襲撃事件!!
11/340

∥001-11 ボス登場!

#前回のあらすじ:わんこ温い



[エリザベス(Elizabeth)視点]



『TuLi!』『TuLiLiLi!!』『TuLi―――!』


「・・・これは!?」


「皆、下がって―――」



バス外、中空に張り巡らされた石灰岩の回廊の上。

残り僅かとなった『UFO型シング』が、アラームのような音と共に菫色のスペクトラムを放つ。


追い詰められた獲物たちが見せた異様な行動に、私は追撃の手を止め距離を取るよう味方側へ指示を出しました。


窮鼠猫を噛む、と言いますもの。

焦って手を出すよりは、ここは相手の出方を伺った方が得策ですわ。


そうして私達が事の推移を見守る、その一方。


銀盤の怪物達はその場で()()()()と円を描いて回りながら、菫色の光を更に強めて行きました。

―――高鳴る警笛、光の渦、鈍く輝き回転する円盤。


それらは次第に高まってゆき―――唐突に、砕け散ってしまいました。



「・・・へ?」


「諦めて・・・自爆したのでございましょうか?」


「根性無しですわね。まあ、それも仕方のない事かしら?彼我の戦力差は圧倒的でしたもの。・・・おーっほっほっほっほ!」


「―――ま、待ってくださいまし!あの光、()()()()()()()()()()でございます!!」


「「!?」」



耳障りな高周音を残し、光の粒子を残し消えたUFO達。

それを敵前逃亡と取り、高笑いを上げる私の耳に抄子(しょうこ)さんの慌てたような声が届きました。


何事かしら?


細い指が差すその先に、3人の視線が集まります。

私達が再び見上げた上空には―――



『LILILILILILILILILILILILLILLLILi!!!』


「銀色の、巨人ですって・・・っ!?」



菫色の渦の奥から、異様な雄叫びが響きます。

圧倒的なプレッシャーに、その場に居た全員の顔色が()()と変わりました。


渦巻く光の向こう側から、()()()()、と空間を捻じ曲げて巨大な五本指が姿を現します。

それは渦の()()を掴むと、引き裂くように広げ―――


渦の奥に潜む『()()』が、この世界へと現れようとしていました。


世界の隔たりを繋ぐ菫色の光の奥、悲鳴のように軋み上げる渦を断ち割り、全身を露にした『もの』(thing)

それは全長十数mにも及ぶ、銀色に輝く無貌の巨人の姿でした。




  ・  ◆  □  ◇  ・




[マル視点]



「なっ・・・何じゃありゃ~~~~!!?」


()()()―――現れましたか」



窓ガラスに顔を押し付けるようにして、ぼくは外の景色に食い入る。

菫色の燐光が降り注ぐ上空、そこには()()()()()()()()()が繰り広げられていた。


薄れゆく光の渦を後光のように纏い、ゆっくりと降下してくる巨大な『()()』。


―――()()()()()()()()()()()()

不定形にして、金属光沢を放つ肉体。


その全長、ゆうに10数mはあったであろうか。

見上げる程のサイズにも関わらず、どこか現実味が無い巨体。


間違いなく其処にあるのに、捉えどころのない―――正しく『霧の巨人』(フォーモル)と呼ぶべき異形が、そこに存在していた。



「・・・身の丈九丈にして光沢を帯び、ぶよぶよと不定なる体と目鼻口を持たぬ顔。深山に潜みて空を駆け、迷い込んだ人を喰らう。我が国の故事に【野衾】(のぶすま)の名で記される怪異、その正体が―――()()です」


犬養(いぬかい)さん・・・。あ、アレは一体・・・!?」


()()()



ぼくは呆然と空を見上げつつ、背後に立つ短髪の青年に疑問を投げかける。

じっと窓の外、上空に現れた怪物を注視しながら、青年はシンプルにそう答えた。


あれこそが打倒すべき真の敵(エネミー)である、と。



「マル君。我々が戦う『()』には、大きく分けて二つの系統があります。一つは『UFO型シング』。『空飛ぶ円盤』の名で知られる怪飛行体です。エリザベスさん方が相手していたのは、その()()()に位置する存在でした。そして、たった今姿を現したのはもう一つの系統―――『宇宙人型』に分類される敵性体。それも確認されている限り()()()のものです」


()()()()・・・()()()!?」


「その通り。彼奴は英語圏における都市伝説に倣い、『()()()()()()()()()()()()()()()()』と呼称されています」



―――『フライングヒューマノイド』。

それは全世界において目撃証言の挙がる、未確認生物(U M A)の一種である。


2004年1月16日、深夜。


中南米の()()()国にて、警邏中の警察官から緊急援助要請が寄せられた。

警察車両が空を飛行する、謎の怪物に襲われているのだという。


駆け付けた同僚達の前で、憔悴した様子の警官は怪物は上空よりボンネットの上へ飛び乗り、フロントガラス越しに幾度となく掴みかかって来たのだと語った。

しかし、現場に怪物の存在を示す痕跡は無く、警官は精密検査を受けたが何の異常も認められなかったという。


はたして、怪物の正体は白昼夢の産物か、はたまた痕跡を残さず暗躍する狡猾な獣か―――?


件の怪物の全長は3M前後、体色は黒または焦げ茶だと言われる。

今、眼前に浮かぶ巨体とはあまりに異なるが―――あくまでモチーフはモチーフ、別の物に過ぎない。


現世へ実体を持たず、霧状の粒子を3次元世界へと投影させる高次元生命体。

【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)として彼の怪異の名を借りる存在は、甲高い咆哮とともに不定形の巨腕を天高く振り上げた。



『LiLiLiLi―――!!』


「【ネフェルティティ】、全力防御・・・!!」


『(にゃ!!)』



巨人の狙いを一早く察知したローブ姿の少女が、影絵の【神使】(ファミリア)に指令を飛ばす。


小さく可愛らしい鳴き声が響くと、【石灰岩の回廊】(セラピウム)が燐光を帯び唸りを上げた。

瞬時に厚みを増した天の回廊へ、黒く変色した巨大な腕が菫色のエネルギー光を纏い、叩きつけられる!



「(持たない・・・!?)盾よ、間に合って―――!!」


「ああっ!」


「バスが・・・!?」



【神力】(プラーナ)を追加で注ぎ込まれ、強度を増した回廊は黒変した腕に触れた瞬間、紙切れのように千切れ飛んでいた。

その、あまりに危険な威力に顔色を変え、マルヤム(Maryam)は十重二十重に【猫女神の盾】(ペルシウム)をその進路へ滑り込ませる。


しかし―――それを意に介さぬかの如く、石板の盾は砕け散ってゆく。

そのまま全ての障害を吹き飛ばすと、行く手にあったバスの車体後部へ巨人の拳は振り下ろされた!



「・・・()()()っ!?」



轟音、衝撃。


激しい揺れにぼくはつんのめって転び、盛大に床とキスしていた。

くらくらする頭を押さえ、なんとか立ち上がる。


視線を上げた先にあったのは、ひび割れた床とガラス片。


そして―――

外壁がごっそりと削り取られ、外の景色が丸見えになった後部座席であった。


※2023/09/25 文章改定

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