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8.堕ちた枢機卿は復讐の夢をみる

 



 どうも、あっちいけだ。


 ああ、また1週間経っちまったな。待たせちまってすまねぇ。


 ただ、何故こんなに時間を空けちまったかの理由は今回の感想読んでいけばそのうち分かるだろう。だから今日も早速やっていくぞ……と言いてぇところだが。


 今日もまた本当にどーでもいい話からしていくぞ。いいか? 観客席にもいる奴らにも関係ある話だ。よーく聞け?


 俺はこんな日誌を書いているがな。ああ、外野から『スコップは殴る物』だの『斬る物』だの『死んだ作者を埋める物』だの色々言われるくらいに辛辣に感想を書いている自覚はあるがな。


 一切、作者の筆を折ってやろうなんて気は持っちゃいねぇ。結果筆を折っちまう奴も出てくるかもしれねぇが、俺が『本気』で感想を書いているのはあくまで切磋琢磨が目的だ。それはここまで読んでくれている奴なら分かってくれると信じている。


 そしてそれが俺と作者の単一なやり取りで収まらず、色んな作者同士の繋がりを生んで、互いに切磋琢磨し合うような関係を築いてくれるんであれば、それは素晴らしいことなんだと思っている。


 だがな。


 関係も築いていねぇうちに激辛の感想を送り付けるのはやめておけ。結果、受け入れてくれる土台や器を相手が持っているんであれば事なきを得るが、そうでなかった場合1人の作者の筆を折るだけだ。


 ……ああ、ここまで言っておいてなんだが。非常に誤解を与える内容になっちまっている自覚もある。よって、ここで1つ例を挙げよう。


 例えば『サウセン』を踏み台としてささげてくれた、せひろ君。彼は自分を指して豆腐メンタルと語っていたが、俺の『本気』に触発され、奮起して『本気』でぶつかってきてくれた。他人の活動報告の中になるが、この企画を知って怖いけど出そうかどうしようか、悩んでいた彼のコメントを見かけたことが実はある。


 そうして、結果おずおずと差し出してきた豆腐を粉々に打ち砕くような感想を俺は送ったわけだが、彼はそこから何かを得ようともがいている。きっと今も自分を見つめなおし、己の牙と魂を尖らせようとしているだろう。


 だが、ここで勘違いしないで欲しい。彼は『俺に向かって』ぶつかってきてくれたわけだ。そんじょそこらの誰とも知らない輩に『本気』の感想を求めたわけじゃない。『俺に』対して、ぶつかってきたんだ。


 例えば、そんなせひろ君に対して『あっちいけのスコップにエントリーしてたってことは好き勝手言っていいんだよね?』と言質を取った気になり、好き勝手に刃を振りかざすことだけはやめろ。メンタルが鋼じゃねぇやつが、身構えもせずに色々言われたらきついに決まってんだろ。


 まあ、一応今のところ、俺から見える範囲ではそのようなことは起こっていない。現時点ではこのスコップによる犠牲者は出ていない……と思っている。


 つまりはお前ら、『本気』で殴るつもりであればきちんと関係を築いた上でそれをしてくれ。


 ああ、ただし。活動報告や前書き・あとがき、あらすじなんかに『どんな感想でも大丈夫です』みたいな文言があればそれは俺のあずかり知らないところの話だ。好き勝手にしろ。むしろその条件下であれば俺も好き勝手にやらせてもらう。


 まとめると、俺が言いたいことはただ1つ。


 この日誌にエントリーしている作者は『俺の本気』を待っているだけだ。それにかこつけて突撃し、作者の心を傷つける行為は絶対にやめろ。


 『本気』で書いているということは、その作品は作者の心そのものだ。安易に貶したり、悪く言ってはならない。だから俺もこうした企画に則ってしかそういうことは言わない。(さっきも言った通り、作者がそれを容認してくれているなら別だが)


 なろうにいるみんなが、とは言わない。少なくとも袖すり合った同志だけでも、健やかなる執筆活動が続けられることを俺は祈っている。








 閑話休題。








 さて。それじゃあ今日も感想を言っていくぞ。


 今回、至って軽いノリで踏み台を差し出してきたのは同志、『夕立』君だ。ああ、今回も特にツッコミどころはない名前だな。そのまま夕立君と呼ばせてもらおう。


 さて、そんな夕立君がエントリーしてきた作品については以下、募集要項からの引用だ。先に目を通してくれ。




 ――――――――――――――――――――――――


【作品名】

『堕ちた枢機卿は復讐の夢をみる』

 https://ncode.syosetu.com/n8900eh/


【簡易的なあらすじ】

 財産とか地位とか、それまで積み上げてきたものを謎の組織に奪われたおっさんが復讐しよっかなってしてる話。

 復讐方法に周囲の迷惑への配慮はあんまり含まれません。


【フックポイントの話数】

 あらすじの「良心や良識? んなもんドブに投げ棄てろ。」部分。


 って、それじゃ駄目ですよね~。

 1-9ってお話で硫酸とかを使って簡易爆薬作ってボカンするところがあるので、そこですかね~。


 先に進めばC4とか麻酔薬とかも出てくるので、まぁ、現実世界にある化学物質とかを攻撃にどう利用するかに興味がある人はここにトキメクかもしれませんね。


【セールスポイント】

 ・30歳↑の男女。

 ・鬱を楽しめる人。

 ・中二病患者。

 ・自然科学スキー。


 こういう属性持ちの人にはお楽しみいただけるかと思います。


『悩み』

 初動の弱さなんですよね。

 奇抜なストーリー展開思いつくコツがあれば教えてけろ!


【本気かどうか】

 本気の練習作っすよ!

 自分、SF書くの始めてだったんで!


 作品持ち込みが落ち付いてきて、続きを読んでもよいかな~と思える出来だったら、10万字以降の感想も貰えると嬉しいっすわ。

 完結済なので、続きが気になるわうぼぁにはなりません。

(マーケティングに本気)←


 作品外であれこれ語るのもあれなんで、読んでいただければよいです、はい。


 ――――――――――――――――――――――――


 引用ここまで。



 さて、ここでこの夕立君について、ちと紹介しておこう。


 なにを隠そう、彼こそが俺の『吸血鬼』に対して一番重たいボディーブローを放ってきた張本人だ。ある日ちらっとメッセージを送り付けてきて、開いたら1万文字にもわたるダメだし。しかも最新話(およそ60万文字)まできちんと読み切っての感想だ、逃げ場がねぇ……ああ、今思い出しても胃が縮まるぜ。本当に恐ろしい、恐ろしい内容だった。


 だが、その感想は俺が求めていたからこそ送り付けてきてくれたものであり、俺は一時どん底に落ちたが何とか這い上がってこれた。そして、そんな出来事があったからこそ、俺の中で彼は友でありながら、こてんぱんにぶん殴りたい相手にもなった。


 殴りたくて殴りたくて仕方がねぇ。俺は奴の順番が回ってきた今回、嬉々として粗探しをしながらこの『堕ちた枢機卿は復讐の夢をみる』(以下、枢機卿)を読み始めたわけだが―――


 さて、以下はそんな『枢機卿』の内容についてだが、いつもの如く。まずは読んでねぇ奴らの為に以下概要だ。





 第五次世界大戦終結後の28世紀。地上や海の大半が原子力汚染により人が住める環境でなくなった世界において、奇跡的に戦火を免れたヨーロッパは旧イタリア領ヴァチカンが本作の舞台。


 腰に銃をぶら下げながら、夜の町を飄々と歩く彼の名をジョエレという。彼は人殺しも行う裏家業を生業にしながら、それを隠れ蓑に更に裏で暗躍する復讐者であった。


 武器は銃火器、そして化学知識。イタリア気質なチャラさの裏に、ひた隠しにしているのは明晰な頭脳と冷たく燃える復讐心。


 臨むのは実態も名も掴めぬ巨大な組織。それに立ち向かっていく彼の生き様は苦く、痛々しく、そして激しい。


 右の頬を殴られたら徹底的に殴り返せ。良心や良識なんぞかなぐり捨てろ。


 キリスト教の教義をモチーフとした世界観と、倫理観を吐き捨て復讐を心に誓った男の生き様。


 相対するのは世界と彼か。過去と現在か。愛か憎悪か。それら全てに、善も悪も存在しない。


 時に甘く、時に冷たい。彼が追い求める夢の先を、見届けよ―――





 ……いつも以上に変なレビューになっちまった。


 すまねぇな。内容が内容なだけに、感傷チックになっちまった。夕立君、文句があれば感想欄で大いに暴れてくれて構わない。





 さて、流れでこの作品の良いところを語っていこうか。


 まず、世界観。これがいい。


 本作は第五次世界大戦が終了した後の28世紀という設定で、マトモに生き物が住める環境がヨーロッパの限られた範囲だけになってしまっているんだが、その狭い生活圏の中でも秩序を持って生きている人間たちが描かれている。


 秩序を取りまとめているのがキリスト教をモチーフにした『聖府』(もしくは教皇庁? どっちが正式名称かは分からねぇ)という組織であり、そしてその『聖府』も宗教的な側面だったり政治的な側面だったりを持っている都合上、いろいろと思惑やら教義が絡み合っていて、組織運営上健全ではない状態に陥っている。


 そこが詳しく掘られることはなく、各章ごとに断片的な情報しか与えられないんだが、読者的な立場から見ると世界を統べる組織が一枚岩ではないところに色々と胸躍らせることが出来る。世界観の奥深さを堪能できる部分だった。


 次にキャラクター。これもまたいい。


 本作の登場人物はほとんどが20歳以上、むしろメインとなる人物は30歳やら60歳だったりするもんだから、それぞれが抱えている想いや闇がなかなかに煮詰まっている。若者が抱える抽象的な悩みではなく、世の中の清も濁も飲み下し、倫理観や世間体なんかに苦しみながらも、それでもそれしか道がないんだと定め、突き進んでいった者達の物語となっている。


 必然、主人公が敵や味方に対して『そんなことはない!』とか説教じみたことを言うシーンなんて一切ない。敵も味方もそれぞれが悩み、選択をしたうえでの行動しかしておらず、それら大人の選択同士がぶつかり合う様は激しさこそないものの、キャラクターの生きている証をまざまざと見せつけられているようで、非常に良い。


 あとはキャラクターの深掘りの仕方。これまた素晴らしい。


 本作は3人称視点であり、基本的にはキャラの心情の方に寄って行かない文体になっているが、ここぞという場面で『ほんの少しだけ』人物に寄っていく。


 心の吐露とまではいかない。ほんの少しだけ、感情の昂りを、嘆きを、悲しみを、嬉しさを、垣間見せる表現をそっと添えてくる。


 常はキャラクターの動きだけしか描写しないくせに、ちらっと垣間見える表現から、どうしたってそのキャラが抱える胸の痛みを想像せざるを得ない。なかなかに趣深い表現方法であったと言っておこう。うん、素晴らしかった。


 あとはストーリーの進行。これも素晴らしかった。


 本作は『分かりやすさ』や『派手さ』といった取っつきやすさを排除し、落ち着いた描写でストーリーを進行しつつ、至る所で伏線をちりばめてくる。


 第1話からもうわけわからん言葉だったり隠語だったりがちりばめられており、読者は雰囲気でそれらの内容を推測しながら読み進めていく。ああ、ただ言っておくと『読みにくい』とは決して思わなかった。基本的に文章は読みやすく、隠語めいた言葉が出てきても『そういったもの』と捉えて、むしろ世界観の構築のパーツとなり、のめり込んでいける要因ともなっている。


 そしてちりばめられた情報は章の中で、もしくは章をまたいだどこかで回収される。その時、自分の中で引っかかっていた情報と掛け合わさり、『なるほど』という納得感に変わるのは非常に良かった。


 この作品は情報がある程度インプットされた状態、つまりは2周目を読むとまた読み方が変わる作品だ。そういった作品が好きな奴、ハードボイルドな雰囲気が好きな奴は読みに行ってみると楽しめるだろうと思う。








 ―――さて。







 ここまで語ってきたのは良いところだったが、今回は流れでついでに気になったところを2つばかり言っておこう。


 …ああ、待て。その前に番外編としてもう1つ、非常にどーでもいいところの指摘をしておこう。


 夕立君、この『枢機卿』なんだが『悩み』にあった通り初動が遅い。っていうか盛り上がりに欠けるシーンが続いている。


 後でグラフを上げるがこの作品。個人的にフックポイントは4章だと思っている。ああ、13万文字相当読んだところだ。


 正直、1-9のシーンで簡易爆薬作ってボカンだなんてどーでもいい。っていうかあれはフックになりえるのか?


 もしあそこのシーンで『うぉぉ!! 硫酸と硝酸とグリセリンを掛け合わせたらニトログリセリンだよな! うん、うん、かっこいいぜー!』ってなる化学オタがもしいたとしてもだな。


 『え? ニトログリセリンを調合してしまうその非科学的な杖はいったいなんなの?』って逆にポカーンってなるシーンでもあるんじゃねぇのか? それまでは銃火器と化学の融合でハードボイルドサイエンティフィックな世界観だったのに、いきなりファンタジーアイテムが出てきて、へ? って少なくとも俺はなっちまったよ。


 まあ、言っても28世紀の話だし、そういったトンデモアイテムが出てきてもおかしくねぇかって自分を納得させることにしたが、それまでに描かれた『未来なんだけど大戦によって21世紀くらいまで技術が退行してしまった』という世界観とのギャップがあって、俺的にはなんだかなぁって感じた部分ではあった―――が、まあ、ほんの些細なつまづきだ。そう思った読者もいるってことにしておいてくれ。





 そんでもって話を戻すが、気になる点だ。ちなみにこっからは猛烈にネタバレラッシュだ。少しでも読む可能性がある奴らは見ない方がいいかもしれねぇ。


 まずはいつもの如く、グラフを出しておくぞ。ほれ。



【PC版】


挿絵(By みてみん)



【スマホ版】(レイアウト崩れ注意)


挿絵(By みてみん)



 さて、この感情グラフを見て分かる通り、3章後半まではほぼ50点or55点といった感じで非常に盛り上がりに欠ける物語だなぁと思って読んでいた。ただ、上で言ってきた通り、描写やストーリ進行も丁寧だったから読むのに苦は全くなかった。着々と張り巡らされていく伏線めいた存在から、この後大きく物語が動いていくのだろうなという期待感をもとに、俺はずんずんと読み進めていく。


 そして第3章に入り、とうとう感情グラフが大きく揺れ動くことになる。


 3-12から始まる『在りし日の1ページ』。ここの回想シーンは良かった。というか、ほとんどが過去の回想になる4章については神回続きで大いに楽しめた。ああいう在りし日の人間模様を描いてくれるのは俺的に好みだし、物語を盛り上げてくれる要因たりえるだろう。うん、非常に良かった。特に4章は。


 だがな。その後大いに盛り下がってしまった部分がある。グラフでもあるよな? どこか分かるか?


 3-17『反撃の狼煙』から続く3話だ。ジョエレが学校に乗り込んで、『魔王の懐刀(へしきり)』を使い始めたところだな。そこいらを読んでいた時の正直な感想を言おう。


 ……は? 待て待て。それまでのハードボイルドサイエンティフィックな世界観はマジでどこいった? なんでいきなりブリーチみたいな展開になってんだ? 刀を振ったら真空波が飛んでいくってマジで普通のファンタジー世界かよ!?


 ってげんなりしちまったよ。


 明らかにそれまでの展開から考えると異質だと俺は思ってしまった。世界観的にも、その後の話の展開的にも『励起』という現象が必要なことは分かる。だがそれならもっと早めに読者に提示しておいてくれ。


 それまで銃と化学知識に頼って事件を解決してきた主人公がな、聖遺物である刀を持ったら『励起』とかいって武器の制限を外していきなり無双し始めて、尚且つそれが『選ばれた者しか出来ない』なんて厨二病設定ならな、先に言っといてくれ、マジで。そこまでこの作品は厨二病要素とは無縁だったから、いきなり『この武器を誰よりも俺が扱える!』的な感じになっちまった主人公の、どこにハードボイルドさを感じていいのか分からなくなっちまったじゃねぇか。




 あともう1つ。第4章でグラフが急転直下している話があるよな? あれはジョエレがエルメーテの真似をし始めようと言ったところだ。


 あんな状況に陥れば主人公が自棄になるのも分かる。だがな、夫を亡くしたディアーナの前で、その亡くした夫であるエルメーテの真似をし始めて、は? え? なんでそんなことが出来る? ってマジでドン引きしちまったじゃねぇか。


 いや、マジで。ベリザリオが今までの自分を捨ててジョエレと名乗るのは分かる。100%納得できるよ。だけど自分のせいで亡くした友人を、その嫁の前で演じ始めるとか正気の沙汰じゃねぇだろ。戦慄したわ、サイコパスかよって。


 あのシーン、ジョエレがエルメーテの真似をし始めたシーンが不自然だと捉えてしまった俺目線の話だがな、『ジョエレってもしかしてエルメーテなのか?』って読者をミスリードさせたいが為にエルメーテの口調をあんな風にしたんじゃねぇだろうな?って思ってしまったよ。


 そもそもジョエレとエルメーテの口調が一緒な時点で、俺的には『あ、これミスリードだな。ベリザリオの方がジョエレだな』って第3章の回想シーンの時から思っていたよ。第4章でエルメーテが死んでも、『え、こっからどうやったらベリザリオはあんなおちゃらけた風の、むしろエルメーテっぽい雰囲気になっちまうんだ…? よっぽどの理由がない限り、ディアーナに絶対キレられるだろ』とか思って読み進めていたらな。


 まさかの理由ナッシング!! いや、それっぽいこと言っていたけどな、まったく!!納得できる要素はなかった。少なくとも、俺から見ればな。


 作者に振り回されたベリザリオとディアーナって感じがして、俺は嫌だった。





 ―――さて。





 いつもならな。上で挙げていた2つのことをとことんまで追求していく流れなんだろうけどな。


 今日はそれをしない。


 何故なら、そんな細かいことを気にしていてもしょうがないくらい、非常に納得いかない部分が他にあるからだ。


 それは上に載せた感情グラフには反映されていない。当然だ、それはグラフの先にこそある。


 ―――そう。俺はこの作品、最終話である183話(53万文字相当)まで読破した。俺が真に突っ込みたいところはそこにある。


 ちなみにここで改めていっておく。俺がこの企画内で読むと保証しているのはあくまで10万文字(+キリのいいところ)までだ。それ以降はみ出して読むとすれば興味によるところが大きい。非常に言うのは難しいが、単純に面白いから読み進めるのとは違う。どうしても殴るにあたって気になる箇所があればそれが解決するまで、もしくは腑に落ちるまで先を読んでやろうじゃねぇかという延長戦でしかない。


 よって、今回この作品を読破したのは『俺の作品を最新話まで読んでくれた』からでも、『俺の友人だから』でもない。しいて言うのであれば単純に面白かったから以外にも『気になることがあったから』ということで理解しておいてくれ。


 わざわざこう言うってことの意図は汲んでくれるな? ―――よし、ならば続きを語っていこう。








 さて、そんなわけで俺はこの『枢機卿』を読破した。その上で夕立君、お前に言いたいことがある。


 この作品。造りが丁寧であるのに、至る所で整合性が取れていない―――ように俺には見えた。


 ……いや、造りが丁寧であるからこそ、細かなところで整合性が取れてねぇんじゃねぇかって気になっちまったってのが本音だ。


 それは5章以降を読んだ時にもそう思ったし、全部読み終わって改めて2周目読んだ時に、は???ってなった部分もある。それを今から、つらつらと語っていくぞ。


 ちなみに、こっから先は今まで以上にマジで読了済みじゃねぇ奴ら置いてけぼりの話だ。超絶ネタバレでもあるが、そもそも読んでいねぇ奴らには何言ってるのか分からねぇ内容になっている。


 だが、俺は気にせず語っていくぞ。そもそもこれは夕立君へあてた感想なんだからな。今回、俺の感想でもって我が身を省みようとしている奴らは残念ながらそれが出来ねぇだろう。まあ、仕方ないと思って諦めてくれ。





 ―――それじゃあ語っていくぞ。


 まずは6-16『終幕』で。


 ジョエレがユーキを殺そうとしたシーンだが、ディアーナから何故殺しを止められた? 殺すと何故刑務所入りになる? そんな慣習や法律について、今まで語られていたか? 突然すぎて興ざめしたわ。


 色々考えた挙句、『元となったキリスト教の教義(例えば隣人愛とかか?)が絡んで、罪人と言えど殺すことは認められない、みたいな法律でもあるのか?』と納得させようとしてもよ。


 第3章でバルトロメオがめっちゃ組織の奴ら殺してるよな? っていうか第3章で励起された『魔王の懐刀(へしきり)』を使ってジョエレがめっちゃ殺してるよな? それを身内のディアーナだけではなく、メルキオッレすら見てるよな? あれだけでジョエレは罪人となって然るべきなんじゃねぇのか?


 あれらのシーンでは殺しが罪に問われてねぇのに、いざ6章の大一番で変なツッコミによって冷やかされた俺はな、盛大に肩透かしを食らわされたぞ。せっかく、せっかくそれまでのアウローラとジョエレのやり取りで感動していたのに、すごい感情移入していたのに!! 台無しだ。


 それらのシーンでは何が違う。どんな差があって一方では罪が問われず、一方では罪が問われた? それの理由を説明をしろ。(例えば、目撃者がディアーナとメルキオッレだけだったら黙認できるけど、一般人の前で殺人を犯したらさすがにディアーナも擁護できない、とかな。今んところ一切そんな描写がねぇから納得できねぇけどな)




 次、2-11『貧民街での遭遇 前編』で。


 ルチアが組織の人間に追われるよな? あれはなんでだ? 2週目読み直した時に違和感ばりばりだったよ。


 ルチア視点だと『組織と親がつながっている』という認識であり、1周目読んでいた時の俺は『ああ、ルチアの親と、ジョエレが追っている組織は裏で繋がってるんだな』っていう伏線かと思っていたんだがな。結局最後まで読んで思ったのが、ルチアの両親と組織が繋がったのはエアハルトがルチアを治療したその1回きりだよな? それきりで、エアハルト自身も追跡調査をかけようとしてたけど途中からルチアを見失ってそれも出来なくなったとか言っていたよな?


 どうしてこのシーンで組織のメンバーがルチアを追い回しているんだ? ルチアも組織の追手が迫るのを『またか』みたいに言っているし、どういうことなんだ? 謎すぎるぞ、あのやり取り。




 あと3章前半部分なんだけどな。


 組織のことを追っているのはジョエレとディアーナ。そして組織の存在に気付いているのはレオナルドくらいなんだろ? どうしてバルトロメオとかが組織の人間を殺しまわっているのかが理解できない。


 バルトロメオ達はどういった名目で青い司祭服を着ている奴らをぶっ殺しているんだ? レオナルドやディアーナから指示があってのことなのか、でもバルトロメオ達が組織のことを知っている様子もねぇし、それでいて殺すことに躊躇いを見せていねぇし、どういった流れで殺しているのかまったく分からねぇ。2週目読んだ時に、納得が出来なかったよ。






 あと、これも3章。ディアーナとダンテ、ルチアが合流するシーンがあるよな? あれ、1周目読んだ時には違和感はなかったが2周目に読むとなんでこいつら、こんな辺鄙なところで会ってるのに何の反応もないんだ? 『ディアーナ、なんであなたがここにいるの?』の一言くらい、ルチアから出てこないとおかしいだろ。元同居人だろ? 話の流れ上、ここでルチアとディアーナ側に関係性があると『読者』にばれるのをよしとしなかったお前が、あえてその言葉を削ったとしか見えなかった。





 あと5-1、『ジュダが引き起こした騒ぎはレオナルドにはさしてダメージが入らず』なんて言葉があるが、いやいや大ダメージだろ? ジュダはレオナルドの直属の部下だし、さらにその部下も数十人レベルで殺されていて、極めつけに聖遺物も失っている。実際、6-3でディアーナが『戦力としては大損害』って言っているし。レオナルドは軍事部門の長なんだろ? 自分の部門の不始末且つ損害なのに、『さしてダメージが入っていない』なんて考え、ちぃっとお気楽すぎやしねぇか?





 あとルチアだよ、ルチア。奴がどうして指の先から糸を出せるかの謎が残ったまま話が終わってんじゃねぇか。ああ、ルチア目線では『あの手術が原因だと思う』みたいな描写はあったけど、それが正解だとは言ってねぇよな? しかもその手術に使ったウィルスはジョエレもエアハルトも使ってんだ。あいつらは糸を出せない。


 あれだけ重要そうな伏線をあちこちに張り巡らせて、最後の最後で『私、実は糸を出せるの!』で終わらせるなんて、はあああああ?????? 肩透かしもいいところだよ。


 実はな、俺がこの作品を今回最後まで読んぢまった理由がこのルチアの糸の伏線がどこで解消されるんだろうなって思ったからだ。普通はな、あれだけ分かりやすい伏線をしかけていればすぐに解消されるもんだと思うんだよ。


 あの糸がこれみよがしに出てきたのは2章だよな? その伏線が解消されたっぽいのはどこだ?


 10章の12話だよな? ほぼ最終話だ。しかもあんな出し方だけで終わらせて……お前、マジでふざけてんの?


 あれだけ重要そうな舞台装置を伏線回収しきらず、ぽいっと放ったのを見て唖然としたよ。ぜってぇこの作者、この糸の伏線回収の方法を考えてなかったわって絶望したよ。


 もし、どこかの描写でルチアの特異体質を読者が解明できるヒントが隠されていて、俺がそれに気づいていないだけだったら謝るよ。だけどな、あそこまで大きな特徴をな、何も説明せずに終わらせるのはひどい。ひどすぎる。涙が出てくるわ。


 俺の作品でなんで主人公が血を飲めないのか、結局説明せずに物語を終えたら怒るだろ? いや、怒らねぇ奴もいるかもしれねぇがな。俺はぶち切れる。


 お前の作品はきちんと説明するタイプの作品だと思っていた。ノリと勢いだけで誤魔化して読み進めていくような小説じゃねぇだろ? だったら、説明してくれよ。俺はそういった説明を求めているんだよ。


 そうでなくとも、解明できるヒントとなるものを求めているんだよ。それで舞台と世界設定に納得した上で、そのキャラに共感していきたいんだ。その根幹となる設定をないがしろにされたら、俺はもう、知らねぇ。糞くらえだ。




 あとな、ルクレツィア。あいつの死に方なんだ? マジで。マジで。大真面目に。


 あれだけ重要なキャラを、よくたったの2行の間で殺したな? 唖然としたよ。お前、それまであれだけあいつを登場させておいて、滅茶苦茶キャラ深掘りしておいて、殺すときはあんな呆気なく殺して。キャラへの愛着がねぇのか? 何を思って戦っているのか、最後に何を思って死んで逝ったのか。それを見せずにあれだけの文量書いてきたキャラを殺すのか? マジで、なんでなんだよ……


 いや、お前が言ってくるだろう言い訳は推測できる。『そういう書き方だから仕方ない』とか『物語の展開上仕方ない』とかだ。


 この『仕方ない』ってさ…登場人物に思わせるものであって、作者が思ってちゃダメだろ。いや、ある程度のところは許すよ。『世界観を演出するために物語の展開が遅くなるのは仕方ない』とかさ。何かしら長所を出すために短所が出てくる『仕方ない』なら許すよ。全然、それはいい。むしろもっとやれ、尖らせてやっていいところだ。


 だけどさ、この類の作者の『仕方ない』ってさ。もう、うんざりなんだよこっちとしては。


 登場人物の死に方とかさ、死ぬタイミングとかさ、そういうのには文句を言わないよ、俺は。ルクレツィアがあの場で戦っていて、ゲイボルグを手に入れたジョエレが出てきたら瞬殺されるのも分かるよ。最後にルクレツィオが『仕方ないか…』って思って死ぬ分にはこちとら何ら怒らねぇよ。むしろ共感できるよ。


 魅せ方ってもんが、あるんじゃねぇのか? それかそこでルクレツィアの見せ場を作る為に頭捻るとかさ。


 この作品の最後、特に10章さ。風呂敷の畳み方が雑すぎるだろ。ストーリー追っていくだけなら素晴らしい出来だよ。ああ、感動できる。こういう終わり方も俺は好きだ。


 だが、魅せ方が本当に、信じられないくらいに、がっかりだったよ。それまで4章だったり6章だったり、内面を美麗且つ鋭く、綺麗に丁寧に魅せてきたお前の手腕はどこにいっちまったんだ? 1章や2章の展開を緻密に練っていたお前の物語構成能力はどこにいっちまったんだ? 5章や7章で大いに読者を興奮させてくれたあの演出力はどこにいった??


 最後の10章、息切れ感が半端ない。同じ内容でも、お前だったらもっと魅せられただろう? どうしてそんな、伏線投げっぱなしの、描写適当の巻き巻きエンドにしちまったんだよ。


 本当に、読んで、がっかりしたよ……特にルチアの伏線と、ルクレツィアの死に方には。ベリザリオとの闘いは、非常に感動していたのに、その後冷や水をかけられたみたいで、もうその後まともに読んでいられなかったよ……


 お前ならもっと、うまく書けたんじゃねぇのか……? あんな、キャラの行動原理にも紐づいている特異体質だったり、絶対の敵でありながらも主人公と駆け引きしながら時に味方に、時に中立になっていたような女だったり―――それらを活かして、もっと感動できる終わり方を、目指せたんじゃねえぇのか…?


 俺だったら、あんなキャラの扱い方しねぇよ……と、思っちまったんだ。





 ―――俺が言っていることが間違っているのは知っている。お前の中ではあれで完成された話なんだろうと思っている。


 だから、決定的に書き方が違っている、見ているものが違うっていうことが今回分かった。俺は、お前とは違う作品の作り方を目指していく。


 今回俺がお前に送った感想は、今までの作品の中でも最も俺の牙を研いでくれた。俺は、俺にしか見えない、俺にしか書けないものを見据えることが出来た。


 お前の作品は素晴らしく面白かった。それは間違いない。


 ただ、見ているところが決定的に違ったって、ことなんだろうな、多分。上でつらつらと語ってきた気になった点についてだが、『俺には理解できなかった』だけだと思っている。


 だって、あそこまで面白い作品を書ける奴が、キャラクターへの愛をまざまざと色んなところで見せつけてきた奴が、そんな適当なことをするなんて思いたくない。


 だから、上で言ってきた気になる点っていうのは、俺の敗北宣言だ。俺では、理解が及ばなかった―――誤解される言い方だったかもしれねぇから言い直すが、本当に、理解できなくて申し訳ねぇと思っている。


 嫌味じゃねぇからな。突き放しているわけでもねぇ。


 ただ―――いや、これ以上言葉を重ねるのはやめておこう。


 お前の作品、すごく面白かったよ。







 さて、気分を変えてお悩みにこたえていこうのコーナーだ。


 >『悩み』

 >初動の弱さなんですよね。

 >奇抜なストーリー展開思いつくコツがあれば教えてけろ!


 そんなコツがあったら俺が教えてもらいたいわ!!


 まあ、でもこの世界観では今の1-1以上にフックとなり得る話は―――難しいんじゃねぇかなぁ。そしてそこのハードボイルドさで引っかからなかった俺みたいな奴は4章まで引っ張られると。


 ただ、正直ハードボイルドでひっかけたいならジョエレのおちゃらけ成分が若干邪魔している気がしないでもない。いや、すごい好みなんだけどな? それとは別に、ハードボイルドな作品に感じられる鉛と煙草の匂いが感じられない。


 っていうかそういえば! この作品、見た目とかはわりと頭の中で想像しながら進んでいたんだけど匂いをほとんど感じなかったな。演出の一環でジョエレに煙草でも吸わせてみれば意外とハードボイルド感が増していい感じになるかも?って思った。









 さて、最後に恒例の2つを言って終わるぞ。






 ※ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。






【作品名】堕ちた枢機卿は復讐の夢をみる

【URL】https://ncode.syosetu.com/n8900eh/

【評価】7点


 さて、次はビビリ野郎の出番だな。


 ヘイヘーイ!

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