表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/24

16.異世界スナック「ま・ほ・ろ・ば・♪」(飲み放題二時間銅貨30枚)

 

 どうも、あっちいけだ。




 さて、今回もどーでもいい話から語っていこう。今回の話題は『あっちいけという読み手の読解力及び読み方』についてだ。


 まず、俺は自分の読解力について無い方だと思うようにしている。小説だろうが新聞だろうがネットニュースだろうが、一回読んだだけでは、ん???となることがある。2~3回読み直してようやく理解が追いつくということがざらにある。


 さて、あえて言っておくが別に俺はここで不幸自慢だとか謙遜だとか卑下だとかそういう類の話をしているつもりはない。ただ単純に『俺は自分のことをそういう人間だと思うようにしている』という自己紹介でしかない。よって『あっちいけさんに限って読解力がないとかないですよ!』というフォローだとか『そういうの、私もよくあります! 一緒ですね!』とかいう舐めあいも求めていない。


 『読解力が足りないからこそ俺は小説を読む時、最低2回以上読むこと前提で読んでいる』ということを言いたかっただけだ。1回読んだだけでは足りない。俺が気づけなかったところ、見逃していたところがあるかもしれない。それであるのに『この作者はこんな不自然な描写をするのか!!』とか憤慨して作品を駄作扱いしてしまうのは勿体ない。もう一度読み返してみて、『あぁっ、あの時莫迦にした俺を許してほしい! ここはこういう意味だったのね、誤解してた、すまない!!』と出来れば謝らせて欲しいと思っている。


 そしてもし2回目読んでも理解できない場面があったらどうするか? 3回目に突入するしかあるまい。そうして3回ほど読み返して、依然として俺的不明瞭な点が残っていたとしたら、もうそれは『作者の表現ミス』か『俺の読解力・想像力不足』のどちらかだ。あきらめて感想欄にその旨残して回答を貰うしかあるまい。


 ただし、ことこの日誌に関しては上記の限りではない。俺にだって意地と見栄がある。『3回読んでも意味が分からねぇんだよ! どういうつもりで書いてんだ? 教えろやごらぁっ!!』と声を荒げた結果、『いや、そこについてはここで説明してますよね?』とクールに返されたりでもしたら俺は、恥ずかしさでしばらく寝込む。


 よって2~3回なんて腑抜けたことは言わず、原因が分かるまでとことん読み返す。4回、5回、、、いや、わからなければ何十回でも読み返す。そうして『そういうことかあああ!!!!』と納得するか、あるいは『いや、これ絶対に作者のミスだろおおお!!!』って判断できるまで読み返す。スマホで読んでわからなければパソコンで読んでみる(媒体を変えると見えるものが変わるのだ)。


 そうしてこの日誌で感想をぶつけた結果、なんてことはないすれ違いだったってことは今まで幾度もある。その度俺は顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしてきた。結局、俺は俺単独で持ち得る目と脳しか持ち合わせていないので、思い込み・見逃しというのはいつでも発動し得るのである。


 そんなこんなで、結局これだけ文字数稼いで何が言いたいかっていうと。


 繰り返し読んだ回数が多ければ多いほど、俺にとってお前の作品は読みづらかった。そういう指標だと受け取ってもらえればいいってことさ。












 さて、そんなこんなで本題に入るぞ~。


 今回踏み台を差し出してきてくれたのは『稲村皮革いなむらひかわ道具店本館どうぐてんほんかん』君だ―――いや、すげぇ名前だな。どこからどうツッコミすればいいのか分らん。人の名前らしさが皆無過ぎんだろ…


 と、そんなわけで。名づけの由来は気になるところだがひとまず彼のことはここでは『稲村君』と呼ぶことにする。唯一人の名前っぽいところだしな。


 ただ油断すると『虫から魔王』を差し出してきた稲生君と間違えてしまいそうだ。実際感想書く際に何回か間違えていたし(←おい)








 閑話休題。








 さて、そんなわけで稲生君……違う。稲村君がハラキリ覚悟で差し出してきた作品は以下の通り、募集要項から引用する。


 ------


【作品名】異世界スナック【ま・ほ・ろ・ば・♪】飲み放題二時間銅貨三十枚

『URL』https://ncode.syosetu.com/n1885fc/


【簡易的あらすじ】主人公ハルカは出戻り転移者として、異世界へと連れ戻されるが召喚主に現世で食事をせがまれる。その時に訪れた店はスナックだった……。異世界を舞台に見た目幼女のノジャと、見た目クールビューティー中身は迷える子羊のハルカ……二人の生活に彩りを添える様々な登場キャラ達と共に、世界唯一の異世界スナック経営の幕が上がる!


【フックポイント】第一話から。毎章各々に魅せるポイントは必ず入れているつもりで書いています。

『悩み所』何でも有り、と銘打って書いてきたせいか……これ!と強く推せるポイントが果たして読者の心を掴んでいるのか?とは思う。しかし書きたいから書いているので後悔は無い。


【本気かどうか】検索してごらん?世界唯一の異世界スナックのタグは……伊達じゃないよ?……我が進む道こそ先駆者として進む道。

 大人が読めるラノベが書きたくて、なろうを続けて二年弱。最新作が最高作として邁進するのみ。

 御精読を……!!


 ------


 引用ここまで。






 さて。


 さてさてさて!


 とうとう来てしまったな、異世界スナック……! そう。異世界スナックだ。


 『異世界スナック』という造語からくる期待感、わくわく感。

 『【ま・ほ・ろ・ば・♪】』から溢れてくる小癪さと自信の表れ。

 『飲み放題二時間銅貨三十枚』から滲み出る、良い感じの抜け感。


 絶妙なタイトルだ、と俺は思った。個人差はあるだろうが、この日誌にエントリーされてきた33作品の中からタイトルだけで読みたい作品を1つ選べと言われたら間違いなくこれを手に取るだろう。それほどに高いセンスと訴求力を持っている(俺個人的に)。


 どんな作品なのか読む前から期待が高まるばかりである。さて、そんな『異世界スナック【ま・ほ・ろ・ば・♪】飲み放題二時間銅貨三十枚』(以下、まほろば)について。まずは以下いつものごとく読んでねぇ奴らのための概要だ。






 私の名前はハルカ。日本生まれの日本育ち―――のはずなんだけど、な~んか違う気がする。何か忘れてる気がするのよね~。なんだろう。


 って、何か窓がガンガン叩かれてる!? ここ3階なんだけど!? それに窓の外で誰か叫んでるんだけど!? これ、緊急事態じゃない?!


『おーい、ハルカ! ここを開けるのじゃ!!』


 ドンドンドンと更に窓が強く叩かれる。え、なに、怖い! 思わず警察に電話をかけようとするけれど―――あれ? ちょっと待って、どうして私の名前を知ってるの? それになんだか声に聞き覚えがあるような、ないような……?


 ちょっと覗いてみよう。


『キーッ! ようやく顔を見せたな、このバカハルカ! お主、どうして2年も帰ってこんのじゃ!?』

『………』


 そこにいたのは女の子。おとぎ話に出てくるような魔法使いみたいな恰好をしていて―――えっと、うん。残念ながら見覚えがない幼女だった。


『え~と、私のことを知ってるあなたはどちら様?』

『は……? お主、それは何の冗談じゃ?』


 話がかみ合わない。すると超級魔導士を名乗るその女の子は魔法を使って私の記憶を呼び覚まさせる。


 っ、あ、そうだ―――私は―――。異世界でこの子、ノジャと一緒に暮らしていたんだ!!




 日本生まれ日本育ち。しかし一度は異世界へ転移して日本へ出戻り。そうして再び異世界転移の転勤族なハルカ。そんな彼女がどういうわけか、異世界でスナックを経営し始める!?


 得意なのは料理と過度なスキンシップ! 笑いあり、涙あり、なんでもありな異世界スナック!


 唯一無二の看板に偽りなし。チャージは銅貨30枚、あとは好きなだけ飲み食いしていきな。


 誰でも彼でも飲みに来い! かわいいメイドさん(←宇宙生命体)もいるからさ!









 さて、いつも通りフィーリングでの概要だ。大体こんな感じだった気がする。


 ちなみに俺はスナックというものに精通していない。チャージなんて単語を訳知り顔で使ってみたものの用法があっているかは不明である。


 というわけで稲村君。文句や不備があったら感想欄でご指摘願おう。









 さて、そんなわけで。







 さっそく感想に入っていこう。まずは良かったところから語っていく。


 まず、何を語るにもこれを避けては通れまい。タイトルである『異世界スナック』ーーー本人も言っている通り、異世界転移ものとスナックが融合しているのは世に本作くらいだろう。抜群のユニーク性がある。


 そしてパッと見のインパクトも絶大であり、『異世界スナック【ま・ほ・ろ・ば♪】』の文字が飛び込んできた瞬間、これは何物なんだ?と興味を抱かざるを得ない。前回の『なまどり』同様、タイトルの出オチ感が半端ないのである。





 そして内容について、登場人物の幅の広さというか突飛さ。


 序盤こそは主人公ハルカが住んでいる異世界の住人のみ来店してくる。ちなみにこの訪問してくる客ってのは結構特殊で、マスターであるノジャが作った『どこでもド(あ~都合により以下略)』を介して入店してくる。


 この『どこでもド(あ~突然だけど自由に空を飛びたいな~)』というのが結構癖のある代物で、世界各地に突如出現し、ドアの前にある足拭きマットを踏むと問答無用で入店させられるという、歌舞伎町のキャッチもびっくりな性能を持っている。


 つまり冒険中の彼女も、入浴中の彼も、急に目の前に現れた扉を怪しんでいるうちにマットを踏んでしまい無理やり入店させられただけの被害者なのである。


 そんな彼らもスナックの居心地の良さに浸ってしまい、わりとそのまま酒におぼれてしまうのだが、本題はそこじゃない。序盤こそさっき言った通り異世界住人が入店してくるが話数を重ねるごとに宇宙の連結思念体が作り出したガイノイド(女性型ヒューマノイド)だったり戦時中の日本人だったり、あるいはなろう作家までもが入店してきたりする。


 もうなんでもありなのだ。それでいて各客ごとにきちんとそれらしいエピソードを用意してあげて形にしている。


 そこに異世界スナックの懐の広さを垣間見えるのである。


 以上。

















 さて。













 ここからはいつも通り、『本気』の感想ゾーンになるわけだが。


 あらかじめ1つ注意をしておこう。


 今回、この『まほろば』に対して感想を書くにあたって、俺は大いに荒れた。


 こうして投稿する寸前まで手直しして少しでも読みやすいものにしようとしてきたが限界に至った。故に、読みにくい部分もあるだろうし、いつも以上にまとまっていない部分もある。だけど許してくれ。


 そんなわけで、まずはいつも通りの注意だ。


 ※ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。





 ―――さて、いつもの儀式が終わったところで、まず今回は感情グラフを出すところから行く。


 ほらよ。これが『まほろば』を読んだ際の俺の感情グラフだ。





【PC版】


挿絵(By みてみん)




【スマホ版】


挿絵(By みてみん)







 よーし見たな? いろいろとツッコミどころがあるだろうがひとまず無視しろ。今回はある程度この感情グラフに基づいて説明していくからさ。




 それじゃあ早速行くぞ。まずはタイトル。70点。異世界スナックという圧倒的インパクト。興味を持たざるを得ない。ここまでユニークさとユーモアさを出してこられるのは珍しい。どれどれ覗いてやろうという気になってしまう。


 そんなこんなで開いてあらすじだ。……な~んか嫌な予感がする。正直言ってあらすじが下手なのだ。こっちが求めていない情報を羅列されているような感じで、『異世界スナックってなんだろう、ワクワク!』という気持ちで挑んできた昂ぶりが急転直下していくのを感じた。


 一応、引用しておこう。



 -------------

 これは全世界で唯一の異世界スナックを舞台にした物語……。


 主人公の伊地 (ハルカ)はとある事情が元で、異世界スナック(店主はロリBBAのノジャ)経営に深く関わっていく。女冒険者や巻き込まれタイプの一国の王様、時には戦乱の現世から迷い込んだ幼い姉妹やなろう作家の皆様まで……様々なお客様がやって来る異世界スナック【まほろば】を舞台に、大酒飲みのノジャや居候のロボ娘のビスケットと共に採算度外視の料理を振る舞いながらハルカの奮闘は続く!

 -------------


 引用ここまで。



 さて、俺もあらすじ書くのが苦手な部類の人間だ。それでも前回『なまどり』の時に言った通り、俺は自分が出来ていないことを棚に上げて、感じたまま好き勝手に語っていく。


 まず、序盤の(店主はロリBBAのノジャ)って部分。そんな情報求めてねぇよ。いや、書いてるお前的には重要なことなんだろうけどな。そうやってキャラクターを安易なステータスで売ろうとしている姿に辟易する。どうしてこいつは初手で媚びを売ってるんだろうな?って気持ちになる。あと、情報挟むタイミングが変だ。違和感でしかない。


 それ以降、大酒飲みのノジャだったりロボ娘のビスケットだったり、まあなんか色々へんちくりんな組み合わせを羅列しとけば受けるだろう的な作者のしてやったり顔が見えて、げんなりする。


 偏見かもしれねぇけどさ。俺的にこういったすげぇユニークさ溢れるタイトルつけられた作品って、『めちゃくちゃ上手い作者がわざと崩して面白くなっているパターン』と、『下手な作者がなんとか読者を釣るためにタイトルだけ仕上げてきたパターン』のどっちかしかないと思ってて。


 あらすじを見た時点で、「あ、これ絶対後者だわ」って思ってしまったんだよな。


 まあ、こればっかりは俺の感性と好みの問題だ。今のあらすじのままの方がいいって言う奴もいるだろうよ。


 けど俺は初っ端このあらすじだったら、ブラバとまでは言わないが結構テンションが下がる。『異世界スナック!? いったいどういう話なんだろう』とワクワクしてやってきたのに、求めてねぇキャラ・属性の押し売りをしてこられて「ん、この作品は危険な匂いがするぞ」という警戒心が首をもたげてくる。そういうわけで40点だ。









 さて、あらすじに突っ込むのは以上にしておこう。あらすじはどこまで行ってもあらすじでしかなく、作品の中身が良ければそれでいいのだ!


 ―――そうして気を取り直して第1話を読み始めた俺は、速攻でブラバしたくなる。


 第1話、20点。本当なら0点をつけたくなったのだが、まだ第1話でありこの作品の良さというのを俺が理解していない為、『0点=作品の質をすごく貶める超絶糞回』という判断にはならず、単純にくそつまらん20点になったというわけである。


 さて、第1話で何が起こったのか。詳細を語る。


 まず、初っ端重苦しい且つ謎めいた雰囲気の3人称から始まる。この作品のタイトル見てやってきた俺はそんなシリアス描写求めてねぇっての―――と思いつつ、いや、なるほど、そういう始まり方か。このタイトルでそういうのもなくはないのかも、ふむと思いなおす。どちらにしてもこの先の展開次第で判断しようという気持ちになる。


 そうして読み進めて行った先で、俺が3つ持っている爆弾の1つが爆発する。非常に内輪くさい流れによって主人公ハルカと相方ノジャが出会うからだ。


 内輪くさいといっても、別に主人公達にしか分からないやり取りや言語が交わされているわけじゃねぇ。内輪くさいっていうのは単純に「稲村君が好き勝手にしゃべっているのを黙って聞かされている感」に起因している。


 どういうことかというと、いつぞやの感想の時に俺は『物語始まった感ベスト6』を挙げたと思う。そこで堂々のナンバー1に輝いたのは『ボーイミーツガール』だったことは覚えているだろうか?


 それでいうとこの『異世界スナック』では第1話、上述の通り主人公ハルカと後のスナック経営における相方ノジャが出会う。両方とも女性であるからして、ガールミーツガールではあるもののこれはボーイミーツガールの原則から離れていない。立派に物語始まった感と言えるだろう。


 だがな。


 ハルカとノジャが出会うまで、俺がハルカについて知り得た情報は以下の文脈からだけである。以下、第一話冒頭からの引用だ。



 -------------

 気がつけば夏も終わりを迎え、陽射しも随分と低くなった。


 仕事が休みだったので、部屋の窓を開けて、外の格子に掛けておいたバスタオルを取り込んで部屋に入れると、昼間に干して居間に置いておいた布団を、寝室として使っている部屋に運び込んだ。


 ……コンコン、コンコン……


 それから暫くして、閉めた窓を外から叩く音が聞こえてくる。


 ……誰か来たのかな? って、この部屋……三階だよ?


「……あ、はい事件です。アパートの三階の窓の外に人が……いや、だから誰かなんて知りませんから!」


 思わずスマホを取り出して慌ててタップしながら、先走って叫んでいると窓の外からガラス越しにくぐもった声が聞こえてきた!


 《うっさいわボケッ!! ハルカ~ッ!! とっととココを開けんかいっ!!》


 不審者らしきそいつは、窓の外からギャーギャー叫びながらゴンゴゴゴンと乱暴に窓を叩き続けて……って、え? ハルカ……?


 ……不意に自分の名前を呼ばれて硬直してしまう。


 と、言うか名前の呼び方、いやイントネーションに何となく聞き覚えがあり、つまり……不審者は……私の知り合い?

 -------------


 引用ここまで。




 はい、以上の部分が本作を読み始めて俺がハルカと出会い、そしてハルカがノジャと出会うまでの期間である。


 短すぎる。まだ主人公がどんな人物であるのか理解できない間に主人公は更なる登場人物とすごく意味ありげな出会いを果たし、俺的には『知らない奴が知らない奴に出会った』くらいのどーでもいい情報がそこに載っているのである。


 ようするに、読者たる俺が要領を掴むよりも前に勝手に物語が始められてしまったのだ。蚊帳の外である。


 これがボーイミーツガールの原則から外れた、例えば『孤児騎士』なんかであったように幼馴染と会うくらいだったら物語始まった感にならず、主人公がどんな人物であるか理解できない間でも俺は違和感を覚えずに済んだと思う。むしろ幼馴染と主人公の関係性を見て、彼らの人となりを理解できる役割を果たすので良いことだと思う。


 だが、『まほろば』は違う。ハルカとノジャが出会った時点で物語が動きだしてしまうのだ。ハリー○ッターがどんな人物であるか知らない間に9と4分の3番線に突入していったり、中○陽子の人物像を掴めないまま蓬莱へ連れ戻されたりしても没入感は生まれねぇだろ?


 物語が始まった感が生まれる前に、ある程度読者が主人公へ寄り添えるように(あるいは憑依できるようにと言っても良い)、主人公がどんな人物でどんな状況にいるのか。それを説明しておくべきでないかなと俺個人的に思ったって話だ。









 そしてその後―――その後、ね。もう至る所で主人公の考えが行方不明なのよ。


 というかこの主人公、その場に合わせて思考や態度や言動がひょいひょい変わっているように見えて、正直付き合いきれない。


 たまに自分の記憶がないことに違和感を覚えたり、ノジャの我儘に危険な匂いを感じて警戒心を抱いたり、ノジャの保護者のような振る舞いをしたり、戦時中の子供へ過保護になったり原爆や戦争の話をやけに饒舌になって話したり、至って冷静な店員っぽい時もあったり、ノジャや明子みたいな幼女に対して積極的にセクハラしたり、シリアスな場面でもそのセクハラシーンを思い出したり。


 ああ、つらつらと文句垂れてきたが分かりやすいところで、この主人公の描き方で気に食わないところを挙げてみよう。(あくまで気に食わないのは『描き方』だ)


 まず事前情報として、『まほろば』における主人公ハルカは日本生まれの女性だ。そして数年前に自殺未遂を起こし、その際異世界人である超級魔導士ノジャに助けられ、そのまま異世界へと旅立った転移者だ。


 しかしハルカは思うことがあって日本へ少しの間だけ戻ることを決意する。異世界で一緒に暮らしていたノジャは寂しいながらもハルカを見送る―――が、ハルカは日本に戻ってきたタイミングで異世界に行っていた記憶と自殺未遂を起こした経緯の記憶を失ってしまい、普通の日本人として暮らしていた。そうして帰りが遅いハルカのことを心配してやってきたノジャがハルカと再会するのが第一話冒頭、って感じだ。(事情が複雑すぎんよ…)


 で、記憶をなくしているハルカがノジャの魔法により記憶を断片的に思い出すっていうのが第一話のおおまかな趣旨だ。


 さて、複雑な事情があるが故に無駄に文字数稼いぢまったが、ここでのミソは『ハルカの記憶は断片的に蘇っている』ことだ。


 そして、こういう主人公記憶喪失ものの場合、主人公と読者の認識はある程度ギャップを生じさせないようにして欲しいという願望が俺にはある。もちろん、そうでなくても面白い作品というのはあるだろう。ただ、よっぽどのことがない限り主人公と読者の認識ズレは無い方が話について行きやすいと俺個人的には思っている。


 さて、それでいうと本作『まほろば』においてはこの要素が大いに狂っている。俺が「は?」とか「え?」となった数は計り知れない。


 例えば。


 第2話で結構な歳のスナックママ(推定70〜80歳くらいのママだ)がノジャを可愛がってるシーンを見て、『……ママさん、コイツたぶん私やママさんよりもずーっと歳上なんだよね……あと基本的に幼女のニートだよ?』とハルカが心の中でつぶやくシーンがある。


 いやいやいや……待ってくれよ稲村君。ここを読んでいる時点でお前が読者おれに対して開示したノジャの情報は、マジで『超級魔導士と呼ばれる幼女であり、ハルカのことを異世界から迎えに来た』くらいしかないんだよ。それなのにどうしてハルカはノジャが御年80歳くらいのスナックママより年上だなんて言ってるんだ? そして『幼女のニート』っていうのはどっから出てきた情報なんだ???


 マジで、こういったところは稲村君の怠慢にしか俺には見えない。『そうそう、ノジャロリは基本的にみんな規格外の年齢だよね~。それでいて社会不適合者ばりのニート生活を送ってるよね~』という脳内設定をあたかも事前共有できている共通言語として扱う姿に苛立ちが芽生える。


 それでいて、第3話でノジャの歳が800歳超えであることが判明するとハルカは天地がひっくり返らんばかりに驚愕している。は??? こいつの驚くポイントはどこにあるんだよ??? お前はノジャが幼女のなりをしていて80歳以上であることを知ってるんだろ??? それでいて800歳であることにどうしてそこまで驚くんだ?????


 と、こんな感じの例があちこちに頻出する。つまり、主人公記憶喪失ものであるのにいつの間にか読者が持っている以上の記憶を主人公は持ち合わせていたり、かと思えば『え、そこは普通に驚くの?』といった展開もあったり。


 何が言いたいかというと、『ハルカがそういう感情を抱くに至った経緯が断片的に蘇った記憶の方にあるのか、それとも元々のハルカの性格・性質に依るものなかが分からない』といったシーンが頻出するのだ。


 例えば、さっきのノジャの年齢の話でいうと『ハルカがノジャの年齢を80歳以上と推測しつつも800歳と聞いて驚く』というのが、

 ①断片的に蘇った記憶の中でノジャと年齢の会話をしていた過去を思い出し、その時かなりの高齢であることは回答してもらっていたが正確なところまでは教えてもらっていなかったので、改めて800歳という数字を聞いて驚いている

 ②ノジャの容姿が明らかに断片的に蘇った記憶のものと同じで、あれから2年が経過しているはずなのに成長していないところからノジャの年齢が見た目通りでないことをハルカが看破していて、さらに短いやり取りの中で80歳以上であると見当をつけていたがまさかの800歳でびっくりしている

 というどっちのパターンなのかが分からないのだ。


 上記例でいうと①はハルカが記憶を少しずつ取り戻している描写になり、②であればハルカがかなり切れ者というか洞察力が優れているという描写になる。さて、それではこのシーンはどっちの意図で稲村君は書いたのだろうか?


 まともに読むと、ぶっちゃけ正解がマジで分からない。しかしその後読み進めていき、読み進めるごとにこういった『どっちの意図で書いているか分からないシーン』が登場し、段々と稲村君という作者のことが知れていくと恐らく答えは前者であろうと推測ができる。


 つまり、ハルカの記憶がどれくらい蘇っているのかが読者に対してブラックボックス化しているだけなのだ。それも、それは主人公の記憶をブラックボックス化しておくことによって『作品の質を高める』だったり『読者の裏をかく』などの効果が全くない場面に頻出しており、ただ単純に稲村君が読者に対して配慮をしていないのだということが知れる。


 他で言うと、例えばいきなりハルカが百合的な行動をしたり苦悩を暴露してきたりする。そういった話の際、ハルカは自分が百合めいた言動を取っているのに違和感を抱いておらず、一読者たる俺は元々ハルカがそういった性的嗜好を持っている女性なのか、ノジャに対してだけ特別違うのか、何の説明もないしヒントもないからどう解釈すればいいのかマジで分からないのだ。


 一応、昔ハルカが自殺しようとした経緯に男性に裏切られたという原因があるため、それをきっかけに男性不信になり女性を好きになった―――と読めなくもないが、後日登場する男性キャラにわりとあっさりホの字っぽいフラグが立つので『結局どういうことなの?』と思わなくもない。


 他にも色々とあるが、マジできりがない。というか俺が違和感を抱いたシーンは第4話~第10話を除いてほとんどだといっても差し支えない。マジで主人公の情報が定められない。


 続々と出されてくる主人公情報によってデータが更新されるのではなく、矛盾によって崩壊していく。そして再度得られた情報は本当に積み上げていいものだろうか分からなくて途方に暮れる。そんな感じの繰り返しだ。




 さて、話がまとまらなくなってきた。一度ここで主人公の考えが行方不明という点に絞って、総括してみよう。


 いつだったか主人公の心が訳分からなさ過ぎてクソ!って言った作品があったと思う。正直、俺がこの主人公ハルカに対して感じた気持ち悪さは〇ー〇ャ以上だ。


 そして、その気持ち悪さとはキャラの魅力だったり性質と直結していない。俺がハルカの言動にほぼ常に感じていたことは、『色々と過去の苦悩が合ってキャラがぶれてしまうほど自己が確立できていない』とかではなく。『作者のその場のノリ、思い付き通りに行動させられている』というものだ。


 もう、そこかしこだ。ハルカに対する矛盾というか気持ち悪さはありとあらゆる場所に存在しており、それは作品の本質とは無関係の部分で気持ち悪いのだ。


 主人公の気持ちが理解できない、不気味、気味が悪いなどといった作品も世にはあるだろう。しかし、そういった作品から感じる芯めいたものを本作には感じない。作者のお遊びに付き合わされている憐れな人形か、あるいは作者の力量不足or努力不足により投げっぱなしにされている抜け殻のようなナニカだ。


 ただ、それを可哀そうだとも思えない。何故なら俺がハルカに出会って以降、一度たりとも彼女の本質に出会っていないからだ。


 〇-シャの時は、『ああ、彼っていうのはこういう生き方をしてきて、こういう思いを今抱いているんだろうなぁ』というのがあったから、その後その考えを裏切られて『あぁっ?! おい作者、ルーシャどうなってんだよ!!!?』っていう憤慨になったんだが。


 ハルカに対しては全然そんな風には思えない。残念なことにね。


 そして上記で『俺がハルカの言動にほぼ常に感じていたことは~~~』と言っていたが、つまり例外的にこれこそがハルカらしいんだろうなと思ったシーンがいくつかある。それはさっき挙げた第4話~第10話までの間のことだ。


 異世界スナックが異世界スナックらしい話になっている部分。あそこらへんのハルカは、ハルカのことを知らない俺でも『そういう店員っぽい』と思えるのだ。その『そういう店員っぽい』ってのがつまりハルカらしさの一部なのかなとは思った。


 ただそれ以降色々と崩れる。そして明子たちが来た以降もハルカらしさっぽいものが見えそうだったのだが、ハルカらしさよりも作者の悪癖(後述)の方が目立ってきてしまったので分からなかった。











 さて、もう1つ語ろう。さっきからたびたび出てきている明子達のシーン。


 いきなり日本の戦争の悲惨さを語り始めるハルカに、作者のドヤ顔(この場合、ドヤ顔という言葉が当てはまるかどうかは知らないが)がちらつきすぎて、鬱陶しかった。


 というか俺的にこの戦争の話全般で、作者のドヤ顔がうざかった。どういうドヤ顔かっていうと、「俺、こういう話も書けますぜ!」っていうのと「俺、戦争が悲惨だって語れるんだぜ!」っていうもの。


 いや、稲村君には大変申し訳ないけれどさ。稲村君は本当に戦争の悲惨さを俺以上に知っているかもしれないし、俺みたいな平和に生きてきた人間より戦争の痛みを経験しているのかもしれないけどさ。


 だったら尚更、そんな話をこんなタイトルで語るなよって思ってしまったんだ。


 言ってしまえばこの『異世界スナック』、タイトルが表す通り娯楽小説のジャンルから離れられないと思うんだ。そんな娯楽小説の枠組みで、突然それまでの流れぶった切って戦争の悲惨さを真顔で語られると鼻で笑いたくなるんだよ。


 一応、俺が鼻で笑っちまったシーンを以下引用しておく。


 -------------

「……ハルカ、どうしたのじゃ?顔が怖いぞ?」


「うん……あの二人、戦争が有った頃の私の世界から来たみたい……」


「……戦争?……珍しくも無かろうに……」


「私の世界の戦争は……たぶん、こっちの世界の戦争と()()()()()()()()()()だよ……南国のジャングルで飢えた兵隊さんが……仲間や地元の人を殺して食べたり……一瞬で何十万人が死んじゃう魔法みたいなバクダンを平気で敵の町に落としたり……」


「……現世には、禁忌はないのか?」


「……たぶん有るけど、大小関係なく戦争が始まると消えちゃうと思う……」


 二人の様子を感じ取ったからかは判らないが、そんな重たい空気を打ち払ったのは意外にもビスケットだった。



(間に複数話またいで中略)



「……私達、ニホンジンにとっては、最後の戦争の、最後の大惨事が《ヒロシマシの原子爆弾》だったのよ……」


 いつもの調子は鳴りを潜め、深刻な面持ちで語り出したハルカに向き直ると、ノジャは彼女の次の言葉を促した。


「《ヒロシマシのゲンシバクダン》とは何の事なのじゃ?大惨事と言う事は……敵が攻めてきたのか?」


「ううん……ノジャに判るように説明すると、そうね……もし、物凄く強力な魔法で相手の国を攻撃するなら……首都と農村なら……どっちを攻撃する?」


「なんじゃ?……まぁ、形勢逆転を狙うなら首都じゃろうなぁ……」


 ノジャの言葉を聞いたハルカは、(……普通の戦争ならそうなんだけどね……)と内心思いつつ、


「……【殲滅戦】って、言ってね……相手が反抗する気力すら無くなるように、農村や首都の区別無く無差別に破壊して叩きのめす目的で……そして、《実験》の為に《原子爆弾》って破壊兵器を……《広島市》って言う町に使ったのよ……その結果……何万人って人が一瞬で【消えた】わ……」


「消えた?……転移の魔導か何かを無差別に使ったのか?」


「違うわ……私も詳しく説明は出来ないけど……その兵器が町の空で爆発した瞬間……」


 ……ハルカは知っている限りの事を、ノジャに語った。直下の人間は瞬時に蒸発し、やや離れた人間は熱波で全身が燃え上がり炭になり、遠く離れた人間すら、兵器の爆発に面した体表が溶ける程の致命的な火傷を負い……その後に降り注ぐ【放射能】によってジワジワと生きたまま死へと導かれていき、その無差別な死の洗礼は老若男女問わず、全ての人間へと向けられた事を。


「……狂っとるな、そんなモノを作り、使う輩等は……」

 -------------


 引用ここまで。



 一応読んでねぇ奴のために補足しておくと、ここでは第二次世界大戦末期の広島市から『明子とみね』という姉妹が来店してきて、『第二次世界大戦末期、広島市在住』であることを聞いたハルカが表情を暗くし、そのわけをノジャに説明しているシーンだ。


 さて、そんなわけで本題だが、ここで戦争の悲惨さや原爆の恐ろしさを迫真の表情で語っているハルカはいったいどんな奴なんだ? 広島や長崎在住だったり、戦争マニアだったりするのか?


 いや、別にハルカが言っていることは一般教養レベルであるだろうし知っていたとして別におかしくはない。ただ、これを語るためのバックボーンが読者にまったく提示されていなくて、ハルカは上記文脈を『一般教養で知っているから言っているのか、身近に戦争体験者がいてそれを常々聞かされていたら言っているのか、それとも完全に妄想で言っているのか』が分からねぇ。


 ようするに、それを語る土台が分からなければ、ハルカがそこまで身につまされるように語っているのは同情、恐怖、憐憫、怒り、知ったか等どの感情が起源となっているのかが分からないのだ。


 このような話で、鼻で笑ってしまうなんて言ってしまっている俺は不謹慎の塊だろう。ただ、俺にとっては同じ情報でも誰がどのような想いで語っているのかが重要事項なんだ。


 例えば、これが『戦争体験者が直々に語った話』だとしよう。そうであれば俺は恐怖に震え、当時亡くなった方々の無念や痛みを思い涙も流したりもするだろう。


 それとは別に『戦争体験者が身近にいて、その話をよくよく聞かされていた人たちが語った話』だとしよう。それも上記に近しい反応になると思う。


 一方で、『ネットで軽く戦争のことを調べた奴がソースもなしにネット掲示板で訳知り顔で適当にしゃべっている話』だとしよう。それはもはや核心に迫れない。俺は鼻で笑い、スルーするだろう。


 以上のように、未だ根深い問題となっている原爆・戦争なんてデリケートな話題であればあるほど、俺は『誰が/どのように/どこで/どのような想いをもって/どんな根拠をもとに語っているか』が重要だと思っている。


 そうしてハルカに話を戻してみよう。どうだろうか、彼女が戦争の悲惨さを語るにふさわしいバックボーンは披露されていただろうか?


 皆無だったと俺は思う。少なくともハルカの年齢設定上戦争体験者でないことは確実であって、であればその情報の正確性だったり、思わず語れずにはいられなかったその原動を示してほしいと思ったのだ。


 もちろん、情報の正確性だの言ったが文献示せとかは言っていない。あくまで『作中でハルカがこう語っているのは、例えば戦争体験談を聞いたからだとか、一般教養で知っているレベルでしかなく細かいところで間違っているかもしれないが等、情報の出どころ及び正確さ・不正確さを示してほしい』と言っているだけだ。今のままでは最悪『一般教養でもなんでもなく、完全にハルカの独断と偏見による妄想話である』とも受け取られかねない状態になっているから、それを示してほしいと思っているという話だ。


 そうして、現状それらハルカの原動がないため、ここのハルカの台詞はまんま稲村君の意思が反映されているとも読めてしまう。つまり、ハルカを通して稲村君が言いたいことを言っているということだ。そうなると、稲村君がこれをどうして語りたかったのか原動や情報の正確性を推測せずにはいられなかった。


 そしてその推測をしようとした際、それまでの稲村君の書き方及び悪癖(後述)から察するに『どうせこいつは好き勝手適当にしゃべりたかっただけだろう』という結論に残念ながらなってしまい、俺目線ではここで語られているハルカ及び稲村君の台詞は『ネットで軽く戦争のことを調べた奴がソースもなしにネット掲示板で訳知り顔で適当にしゃべっている』ものと同義となってしまい、鼻で笑ってしまったというわけだ。


 こんなのは不幸でしかない。それを避けるためにはハルカがどうしてこれを語らずにはいられなかったのか、それを書くだけで構わないと思っている。もしくはあとがき等で出典なんか示されればガチ感があったり『昔こんな話を聞きました』等の表記があれば納得感も出るんだろうが、それだと作品に対して作者が出しゃばりすぎている印象になってしまうので、あくまで作品としての体裁を維持するのであればハルカに原動を示させればいいかと俺は思っている。


 稲村君には今の日本人の実態に配慮して欲しい。戦争のことを知らず、戦争体験者から直々に話を聞く機会もなく、原爆平和記念資料館に一度も訪問したことがなく、8月6日や8月9日などにテレビでやっている戦争特集を見ない輩など多くいる。さらにそれらをクリアしたところでハルカほど自分ごと化して語れる奴なんてどれくらいいるだろうか。


 つまり俺が言いたいのは、こんなご時世の中でハルカがここまで語れる原動を少しでも示してくれれば『知ったかで好き勝手しゃべっている感』がなくなるので有難いという話だ。誰もがハルカほどに戦争の悲惨さを語れるわけではないからこそ、どうしてそこまで語れるのか。それを提示してくれたら現状の『ハルカ及び作者が好き勝手しゃべってる感』がなくなるって話なだけだ。


 ※読解力がねぇ奴がいると面倒なのであえて言っておくが、俺は戦争の悲惨さを描写すること自体を否定しているわけじゃねぇ。『実際にあった戦争の悲惨さ』を語るには、聞く側に莫迦にされないようorスルーされないよう配慮して語れって話だ。以上、つまらねぇ注意書き終わり。







 さて、戦争の話のところで1つ軽めの話を挟んでおこう。


 さっき上で引用した部分の会話で俺的に非常にモヤッとした部分がある。それは『ハルカが異世界の戦争を、よく知りもしないくせに一方的にサゲている』ということだ。


 正直、戦争の悲惨さでアゲサゲマウント取り合うのも莫迦らしいとも思っているが、ハルカが先に日本と異世界を比較したのだから俺もそれに乗っかってしまおう。大戦末期の日本だったりそれ以外の各国戦争・紛争など確かに痛ましいものがあるのは事実だろうが、それでも一方的且つハナから異世界の戦争を格下に見ている態度が鼻につく。


 結果、ノジャの回答から察するに『現世の戦争の方が悲惨!』と軍配が上がったようだが、どんな戦争にしろ人の生き死にが関わってくる以上どちらも当事者にとっては等しく悲惨であるだろうと思う。そしてもしこれでノジャの回答が『いや、そんなのこっちの世界でもいくらでもあるのじゃ』とか言ってきたら雰囲気が悲惨なことになるだろうよ。


 そんなわけで、俺的にここのハルカの語り方はメンヘラ感というか構ってちゃんというか、『私達以上にかわいそうな人はいない!』みたいな図々しいことを言っているようにしか見えないので、ハルカがより嫌いになりましたって話だ。


 これが、ハルカがきちんと異世界の戦争を知っているうえで、両方とも比較し圧倒的に現世の戦争の方が悲惨だって言っているなら話が別だがな。ただし引用した通り、ハルカは『たぶん』って言葉を使っているので恐らく知らないで言っているのだろうと俺は思い、上記の考えを抱いたってわけだ。








 さて、そうして戦争関連の話では最後だ。あまりこの話題で文字数稼ぐつもりもねぇから端的に話す。該当部分の引用すらしない。


 稲村君。戦争関連でのクライマックスシーン。原爆で死にかかっている人を目の前にして、その人の娘のことを思い出せって言われて、娘と一緒に風呂入ってイチャイチャしていたシーンを主人公に思い出させるとか、なんだろうな。もう、こいつは、あかんなって思っちまったんだわ。


 あくまで俺目線での話だが、稲村君。お前は戦争の悲惨さを語っているつもりでその実非常に貶めている。この作品でそんな話をお前が書く資格なんてない、と俺は思った。思いながら読んだ。


 『そんな資格』なんていうものはそもそもないだろう。だからこれは俺が勝手に言っているだけでありいくらでも反論してくれて構わないけれど、俺は正直くっそほど笑えなかったし、作者は〇〇だなって思った。


 なんだろうな。お前は何が語りたいんだ? あの話をどういう気持ちで書いたんだ?


 悲惨さを語りたかったのか? 悲惨さに対してユニークな物語性を敷いて昇華させたかったのか?


 お前が書いていること、お前がハルカに言わせていること、お前がハルカに考えさせていること、もう全てが矛盾だらけのチグハグ継ぎはぎだらけで、読むのが苦痛だった。


 現実にあった話なんだから、もっと真面目に色々配慮して書いてくれよ。俺は原爆被害から比較的地域も年代も遠い人間だからそうは思わねぇけど、あの話、読む人が読めばブチギレどころじゃすまねぇかもしれねぇぞ?と俺は思った。


 お前がもし御年80歳越えの広島市出身者であればギリ許されるかもしれない。まあ、その許す許さないに関してもたかだかネット小説1つに何熱くなってんだっていう感じだけどさ。


 俺は気になった。それだけだ。












 さて。









 ようやく戦争関連の話は終わりだ。しかし俺の感想はまだまだ続く。行くぞ? 稲村君。


 さて、本作『まほろば』全体にかかる話として。さっきの戦争の話にも当てはまるんだが、本作の致命的欠点として話の一貫性がない。なさすぎる。作者が考えなしに詰め込んだ闇鍋を食べさせられている感じがして、俺的には付き合いきれない。


 料理の話もある。スナック経営の話もある。戦時中のつらい話もある。お遊び要素もある。


 そういったものがスナック経営という一本軸が通っていて、そこで話を昇華できているのであれば何ら問題ない。ただ、異世界スナックとは全く関係のないハルカとノジャの過去話とか、過去作キャラが出てきて一緒に現実世界のバッティングセンター行って5話くらい消化し始めたり、もううんざりなんだよ。


 この話、何が書きたいわけ???? どんな思いを俺は受け取ったらいいわけ????


 もうこの作品の方向性が行方不明なわけ。ただ単純に作者がその場で思いついた話を適当に披露されるだけだったら短編読み切りの小説を読み漁ってた方が俺の心的に何十倍も健全だわ。


 ノジャとハルカの過去何があったか書きたいならスナック通さずに書けよ。もしスナックを通してしか描けない話だったらきちんとスナック経営と過去話の連動性をもっと序盤から見せてくれよ。


 単純に異世界スナックというユニーク性とそこから来る楽しさを推したいんだったら、経営側の話じゃなくてウェイウェイ楽しんでるところだったりしっぽりする話だったりを息をつかせぬ間で披露してくれよ。間のノジャとハルカの話が余計すぎて読む気をなくすわ。


 シリアスなノジャハルカ話。面白そうと興味を惹く異世界スナック話。こいつらは今のところ一切まったく親和性がない。互いが互いに邪魔し合っているだけだ。


 異世界転移した主人公がスナック経営して、色々な客と面白おかしく日々過ごして、たまにしっぽりした話もあったり、時たま大きな騒動に巻き込まれたり、そんな感じでいいじゃねぇか。それで10話に1話くらいのペースで経営側の苦悩とか、実はの過去話とかそういうのを挟んで、終盤に向かっていくにつれて段々と主人公たちのバックボーンが見えてきて、最後に何かしら過去に紐づく騒動があってそれを解決して円満解決! 異世界スナックは続く~ってなノリでいいじゃねぇか。


 今のままじゃ何がしたいの? どこを目指してるの? 過去作出してきたり他のなろう作家出してきたり、本人はそんなつもりないんだろうけど内輪ネタっぽさをどうしても感じてしまって、お前が盛り上がるほどにこっちは盛り下がってくるんだよ。


 最終更新から2年以上経ってもまだまだ更新するつもりはありますって言ってるから、何かしらすごい想いを込められた作品なんだろうけど、最新話まで読んでも俺には作者がこの作品を特別視したくなるだろう要素を感じなかった。しいて言えば入店の仕様の関係上、どんな世界、どんな立場の客だろうが入店してくるだろうから、突拍子のない話・出会いでも話を作りやすいってことくらいだ。


 それで何か書きたいことがあるのか? それはこの異世界スナックでないと書けないものなのか? 短編の別物として書いた方が内輪ネタ感だったりそういうのが出てこなかったりしないんじゃないのか?


 あるいは、この異世界スナックを書き続けたいという思いがハルカとノジャの話に起因するとしよう。


 はっきり言って、現状では俺個人的には異世界スナック要素が邪魔過ぎる。あまりにも異世界スナックの看板と特異性が目立ちすぎてしまい、ノジャハルカの話を追おうという気が起きない。


 いつぞや、『蜥蜴の尻尾』の感想の時にも語ったが、この『異世界スナック』についてもキャラ小説の節が多々ある。というわけで俺はこの作品をキャラ小説と見做している。


 そのキャラの造形だったり、そのキャラの生い立ちを披露したり、今抱えている問題を解決したりしてキャラへの愛情を深めていくタイプの話だ。今回はキャラにも当てはまるし、異世界スナックま・ほ・ろ・ば♪という舞台もいわば1つのキャラと見做して、その空間ごと好きになっていくタイプの作品だな。


 それでいうと本来、ノジャとハルカの2人の話めいたものは刺身におけるタンポポくらいの存在感であるのが俺的には理想じゃないかと思っている。もしくは唐揚げの下に敷かれるキャベツとか。


 見たことがあるかどうか分からないけど、『ごち〇さ』ってアニメあったじゃない? 俺、あの作品1話だけ見て合わないなって思ってそれ以降見て無い(日常系とかキララ系がほんと合わないんだ…)から、全くの想像でこれから語っていくんだけど、あの作品と『異世界スナック』って本来似た位置にあるんじゃないかなって思うのよ。


 『ごち〇さ』の方はタイトルではオチてはいないんだけどさ、多分前評判であのアニメは雰囲気がいい!とか言われて、じゃあ見てみようかってなった人がカフェだったりキャラだったりの雰囲気を好きになっていく感じの作品じゃない? 『異世界スナック』もそういう雰囲気めいたところで尖っていけれていれば、同じように居心地よく俺も読者でいれたと思うんだよね。少なくとも俺は、幼女や少女がキャッキャウフフするアニメよりかは、有象無象・酸いも甘いも経験した大人たちが酔いながらに人生語っていく話の方が好みだ。


 それで、『ごち〇さ』に主軸たるメインストーリーはあっただろうか? 見てないから何とも言えないし、ファンの人がいたらもしかしたら『見当違いなこと言ってんじゃねぇ!!』って怒鳴られるかもしれないけれど、多分なかっただろうと思う。(少なくとも俺は第1話でストーリー性がなさそうだと思ったから離脱した)


 あれは架空世界上の健やかな日常(という名の現実世界での非日常)を求められている作品だと俺は妄想している。ちょっとした日常的な出来事を介して少しずつ仲良くなっていく、少しずつ友達の輪が広がっていく、少しずつお互いの理解が深まっていく、そういったことが主軸な作品だっただろうと俺は妄想している。そこに対して複数話またいでの葛藤やシリアス、挫折、不信や裏切りみたいなものは恐らく入る余地はなかっただろうと思う。


 お前がやっているのはそれだ。少しずつ理解していく、少しずつ雰囲気が好きになっていく、少しずつキャラのことが好きになる。そういう過程をすっ飛ばしてシリアスな伏線をこれみよがしにぶら下げてきて『こういう話もありますよ~』って言ってくるのがお前だ。鬱陶しいことこの上ない。俺はキャラとスナックを見に来ているんだ邪魔するな!ってなるわけだ。


 ああ、すまない。すごい妄想話に付き合わせてしまった。つまりここまでで言いたかったことは『異世界スナックのユニーク性や雰囲気を押し出したいならノジャとハルカの話を消せ。あるいは最終盤まで見せるな』ということだ。ちなみに、見せるなとは言いつつも匂わせるなとは言わない。今やっているみたいな目の前にブラブラと吊り下げられる伏線は鬱陶しいだけだが、『おや?』と思うような伏線があれば物語のテンポや雰囲気を崩さずに溶け込めるだろうし、俺みたいな読者にとっては最終盤まで読んでみようかというモチベーションにもなる。








 さて、色々つらつらと語ってきたが、この際読んでいて思ったことを全部素直に言ってしまおう。稲村君、俺はお前の作品を読んでいて、随所でそれなりに書けているところもあるから『書く地力』はあるんだろうけど、『自分が語りたいことを制御できない作者だな』ってずっと思っていた。これがさっきから度々言っていたお前の悪癖だ。(あくまで俺個人の意見でしかないがな)


 この、『語りたいことを制御する』って2つの面があって、1つが『語りたいことを他人が読んで分かる形に仕立て上げること』。稲村君が語りたいように語った時に、運よくその語り口がストーリーと読者のテンションと噛み合った時にはスムーズに作品を読むことができるんだけど、そうでない時が悲惨。完璧に独りよがりな展開と文体になり、読んでいるこっちがへ???ってなってしまう。


 例えば、そう思った一例を挙げよう。第12話の終わり際、現実世界に買い出しのために戻ってきたハルカとノジャ。その際ノジャが現実世界のクレジットカード(しかも制限なしのブラックカード)を取り出してハルカが驚くシーンからの抜粋だ。


 以下、引用する。



 -------------

「あんた、まさか……変な肉体関係のオッサン後援者がゾロゾロ居るんじゃないでしょうね!?」


 私の真剣な心配(している理由は闇過ぎるが)を呆れ顔で受け流しながら、


「お主の思惑は的外れもいい所じゃろうが……コレの所有者は()()()()()()()()()()()()じゃぞ? 古くからの知り合いで、現世にやって来てから蓄財を重ねて、今はこちらに会社とやらを幾つか持っておるそうじゃ」


 あっけらかんと言い放つ内容に、言葉を失う。そんな私に毎度お馴染みの【出来の悪い生徒に教える先生風】の上から目線(立ち位置は下からだけど)のノジャが言う。


「……お主ら現世の住人は、【自らの中に有る現実】を強く持てない連中が多過ぎるのじゃ。……例えば、ハルカよ、お主の童わらべの頃は、自らの行いに疑念を持った事はあるか?」


「……はぁ? ……そりゃ、小さい頃なんて、世間に対する影響力なんて全く無かったから、いちいちこーしたらあーなる、みたいな事は考えてなかったわよ?」


「じゃろう? それが【自らの中に有る現実】という物じゃ。童の頃は失敗を恐れず、自らの願望へと一直線にひた走るからこそ、無自覚のまま現実を強く保持していられるのじゃぞ?」


 それから暫くの間、ノジャは私に現実を保持し続けることが大事だってことを説き続けた。まぁ、そーならいいんだけど、私みたいに弱い人間は……無理なんじゃないかなぁ……

 -------------


 引用ここまで。



 さて、ここで問題にしたいのはノジャの『……お主ら現世の住人は、【自らの中に有る現実】を~~~』という台詞以下の展開だ。


 残念ながら、俺にはここの会話の意味が何十回読み返しても意味が分からなかった。まず、ここでノジャが言っている『【自らの中に有る現実】を強く持てない連中』ってのは、意訳すると『現世のひとたちは『自分たちの世界は自分たちだけのものである』と妄信してしまっていて、現世に異世界人が紛れ込んでいる現実に気づけていない奴が多い』って意味だよな?(まず、ここの前提が狂っていると以降の俺の感想が意味不明なものになってしまうんだが、それまでのノジャの言っていることからすると恐らく大枠間違えていないとは思っている)


 さて、そうしたニュアンスのノジャの台詞前半に対して、後半の『例えば、ハルカよ、お主の童わらべの頃は、自らの行いに疑念を持った事はあるか?』という質問について。


 いや、意味わからんよ。どうしてそこでハルカに対して小さい頃の自分の行いについて疑問を抱いたことがないか聞いてるんだよ。そこは『自分の身の回りで起こった不思議なことを信じれたのは何歳までじゃ?』とかじゃねぇのか?


 それに対してハルカが『小さい頃はお化けを見た!って騒いでいた記憶があるけど、それも中学生くらいまでかなぁ』とか回答して、その後に例えばノジャが『じゃろう? それが【自らの中に有る現実】という物じゃ。童の頃は自分の過ちを恐れず、自らの認識に素直であるからこそ、無自覚のまま現実を強く保持していられるのじゃぞ?』とか言っていれば、(俺的に)話は通るんだよ。


 今のままじゃ、少なくとも俺的にはいかようにもフォローできないほどに意味不明な会話が交わされているようにしか見えない。もし上記俺の認識が誤りで、お前が真に考えていたこの会話の真意があれば教えてほしい。それはきっと今の俺では絶対にたどり着けない価値観から成り立っているものだと思うから。


 (((……さて、もしかしたらと思って感想投稿前にここの部分を追記しているんだが、この【自らの中に有る現実】というのは本当に単純に『失敗を恐れず、自分の願望に向かって走ること』という意味なのか? その要素があるから異世界人は現世においてもブラックカードをノジャに渡せるほどの成功者になっているって意味なのか? それだと俺的には【自らの中に有る現実】という言葉のチョイスに疑問を覚える。そしてその後のハルカとノジャのやり取りも変わらず作者にとって都合よく交わされている会話にしか見えず…うん。結局意味が分からないままだな……以上、追記終わり)))


 それとついでだ。『語りたいことを他人が読んで分かる形に仕立て上げること』についてもう1つ例を出しておこう。48話でハルカが得体のしれない怪物に襲われるシーン。


 この怪物というのが『見た事も無い程の触腕を幾本も備えた得体の知れぬ巨体』が家の床を突き破って登場するのだが、こいつの描写が全くといっていいほど出てこない。


 読んでねぇ奴はチンプンカンプンな話になるだろうが、ここで起こっていることの時系列は、

 1,床を突き破って得体のしれない怪物が現れる。孤立したハルカがピンチになる

 2,ビスケットが覚醒する

 3,ビスケットがハルカに頭を下げるよう指示をする、その隙にビスケット攻撃

 4,ビスケット攻撃中断。ハルカをキタカワさんが助けにくる

 5,ビスケット、範囲攻撃はやめて物理攻撃をするために玄関へ行ってバットを持ってくる

 6,ビスケット、いろいろと口上を垂れて(ギャク込み)からようやく攻撃。怪物撃退。

 という流れになっているが、この間、怪物サイドの動きに関する描写は一切!!ない。


 どういうことなの??? 上記1~6の間、この怪物は何をしてたの? ずっとその場でじっとたたずんでたの?


 というかそもそもこの怪物に対しての描写がマジで『見た事も無い程の触腕を幾本も備えた得体の知れぬ巨体』、『吸盤だらけの触腕』、『ユラユラと揺れる触腕』しかなくて、人型の形をしているのかイソギンチャクの形をしているのか、どんな形をしているか全く不明なんだが???


 これがあっという間に倒される敵だったら文句は言わねぇよ。だけどこれ見よがしにクライマックス的な敵だしさ、あと48話でこの怪物が登場した後の49話、ビスケットが覚醒して凍結した時間の中で状況把握する描写が長々とあるじゃない?


 あのシーンで味方サイドの描写は事細かに書いているのに敵の情報がひとっつも載ってないのは何故なんだ???? 真っ先に把握するところはそこだろ、普通。


 まあ、ここは何となく事情が分かるよ。ビスケット覚醒で盛り上がったお前が敵サイドの描写をすっかり忘れちまったんだろうなって。もしくはそもそも不要と思っていたか。


 いや、どんな敵と戦ってるか全く分からないとこっちも盛り上がれないから。俺目線では床突き破ってゆらゆら揺れていただけの触腕君がビスケットさんにいきなりタコ殴りされて死んだ被害者にしか見えないから。


 きちんと他人が読んでスムーズに理解できるよう、配慮した方がいいと思った。






 そうして『語りたいことを制御する』のもう1つの面。『語りたいと思っていることが今語るべきことなのかどうか判断すること』。これが稲村君の作品を読んでいて多々思ったことだ。作者の「語りたい!」が優先され過ぎてしまい、登場人物のキャラクター性を歪めているように感じた。


 稲村君、そこは我慢しとけよって何回も思った。そこまで書くのは欲張りすぎだって。逆にそこまで書いておいてどうしてこっちは書かないのかってのも何度も思った。大体は必要最低限な情景描写よりつまらねぇギャグ優先させた結果起こっている。上の方で語った戦争のクライマックスシーンとかまさにこれが該当する。


 情報の取捨選択。読者ききてが状況把握のために求めている情報については考慮せず、語りたいように勝手に語り「こうして何でも語っていいのが異世界スナック!」って一人で満足しているのが、お前だ。少なくとも俺にとってはね。


 そうなるとこの作品、誰が読者なの?ってなる。そうだろ? なあ、わざとじゃないかもしれないけどさ、募集要項のセールスポイント(どういうひとに読んでもらいたいか)を書いてきていないの、実はお前だけなんだよ。


 なあ――――この作品はいったい、誰に読んでもらいたい作品なんだ?


 なんでもありを謳っているから、どんなひとにでも読んで欲しいとかはやめろよ。少なくとも、其の⑤までならそのノリは許せるがそれ以降のノリは俺的には許せない。


 過去作からキャラ出してきて野球をし始めたり、実在する別のなろう作家を登場させてお悩み相談したり、別のなろう作家の作品のキャラを端役で出してきたり、内輪ネタが満載だ。もう辟易だ、うんざりだ。そう思ったことは数知れない。


 うんざりだ。うんざりだった。だけど俺は知りたかった。この作者はこの作品を通して何が言いたいんだ。何を描きたいんだ。どんな思いをもって書いているんだ。それを知りたいってな。だから俺は無数に匙を投げつつも最新話まで幾度も読んだ。


 結果何もなかった。俺は何も感じなかったよ。


 ただ単純に『なんでもありな異世界スナックだから、なんでも入れてしまえ!』という作者の思い付きのもと、好き勝手に闇鍋のごとく入れられる小話が続く。もういいよ、短編集でいいんじゃんこれ。


 異世界スナックという偉大な屋号に対して、品ぞろえが伴ってないと俺は感じた。


 あとさ、今だから言っておくよ。お前だけだよ、自作品のキャラクターの名前を盛大に間違えているのはよ。


 第18話の明子たちがやってくる場面。突然にティティアとアリタリアという名前のキャラが出てくる。俺的にはこの時点で???だ。一回も出てきたことないキャラが準レギュラー的な扱いで描写されているんだからな。


 それが第4話から登場していたフィルティとアミラリアのことじゃないかって気づいたときにはもう俺は何本目になるか分からない匙を30本くらいはまとめて投げた。


 もうね、真面目にやれよ。なんでも受け入れるっていうのは誤字すら受け入れてくれるのか? いや、キャラクターの名前を数話にまたがって間違えるなんて誤字どころの騒ぎじゃない。っていうか最終的によフィルティさんは人物紹介のところでティティアになってるんだよ。もうどういうこったよこれ。改稿でもして名前変えたのか??? だったらきちんと直してやれよ。第25話とか、話の途中まではティティアなのに最終的にフィルティに名前が戻ってて、うんざりだよ。






 あとさ。内輪ネタがわからない一読者たる俺が、別のなろう作家作品や過去作品のキャラが出てきた時にどう思うか理解できねぇかな? あらすじ読んだらなろう作家が出てくるのは予測できるけど、まさかそれが実在する作家だとは思わねぇから。


 何が言いたいかっていうとさ。俺は今まで他作品への感想で『俺はこの作品にとっての読者になれなかった』みたいなのをちょくちょく残してきたと思うんだけど今回は違う。『お前が俺を読者にさせなかった』、それに尽きる。


 いいんだよ。矛盾するようなことを言うが、過去作品や別作者のキャラを出すこと自体は悪くないんだよ。そのキャラが過去作に出てこようが他作者のキャラだろうが、その事前情報を知らない一読者たる俺に対しても内輪ネタであることを悟らせず、他のキャラと同等にバックボーンや心情を書いてやって、普通の一キャラクターとして真っ当に深堀りしていってくれればそれでいいんだよ。それで分かる奴だけに『おっ、ここで過去作のキャラが登場してる!!』って思わせておけばそれでいいんだよ。もしくは話がひと段落ついたところで『実は過去キャラでした!』とかであれば俺も「お、そうだったんだ」で済んだんだよ。


 だけどお前はそういったキャラが出てきたらすぐにあとがきで『こいつらは過去作品のキャラです!』みたいに紹介を始めるし、なろう作家が出てきたらすぐに『友情出演ありがとうございます!』みたいにあとがき書いてるし、別作者キャラが出てきたら『○○様のキャラをお借りしました。この場を借りて御礼申し上げます!』とか書いてるしさ。なろう作家はともかく、過去キャラと別作家キャラは造形やバックボーンの描写不足があって『過去作品・別作家作品を読んでいる人にしか分かりません』感がすごいしよ。もういいよ、うんざりだよ。内輪ネタ書くのはいいけど内輪ネタであることを新参者に悟らせるなよ。


 そんな風に内輪ネタであることを喜々として公表するお前は読者の層を圧倒的に狭めている。俺はそれらあとがきによってはじき飛ばされた側だ。もう一度言う、俺が読者になれなかったんじゃない。お前が俺を読者ではなくしたんだ。


 となると、この『まほろば』は俺にとって小説ではない。ネタが分かる奴らだけが楽しめる二次創作同人誌だ。つまり内輪ネタが分からない俺にとって本作は駄作であり、読む価値は皆無である。


 そうなるとそもそも稲村君が俺にこれをなぜ読ませようとしてきたのか謎である。お前が本来俺に読ませるべきは過去作品のキャラが一切出てこず、その話一本で真っ当に勝負できる作品であるべきだったんじゃねぇの? それかこの『まほろば』を薦める際に「其の⑥からは過去作キャラが出てきます」とでも先に言ってくれていれば、俺もそれを覚悟したうえで読み進めただろうさ。もしくはあとがきでも黙っておけばよかった。


 それなのに、本当に、どうしてだ? どうして過去作のキャラや他人のキャラまで引っ張ってきた作品なんかを、お前のファンでもなんでもない俺なんかに読ませたんだ?


 つっまんねぇから。これ以上ないほどオ○ニー感満載の駄作を見させられて辟易してるから。お前はきっと陳列しているそれらが俺にとっての爆弾になることに気づかずこっちへ差し出してきたんだろう。途中までは普通の小説の風体をしているから、まさかそんな小さな内輪ネタに俺がここまで噛みついてくるとは予想してなかっただろう。


 逆だから。途中まで小説のなりをさせていたのに内輪ネタを挟んで興ざめさせてきやがったお前の無節操さ、配慮のなさ。マジで俺は許さねぇから。


 繰り返し言うけど、これが例えば過去作キャラであることを知らない俺がそれを知らないままでも楽しめるようになってるんだったらいいんだよ。にもかかわらず登場早々に喜々として内輪ネタであることを知らせてくるお前の、読者に対する配慮のなさったらよ。


 まあ、ごめんけど。他の奴は別にそこまで気にしねぇかもしれねぇけど。『まほろば』という1つの作品を、稲村某という作者のオ○ニー落書きに変えてしまったその行為。


 ほんと、無念で仕方がない。








 ってなわけで総括だ。


 本作は光るところもあるし、手放しで面白いと言える部分もあった。


 だが俺と作者間で決定的な価値観ギャップがあり、作者が喜々として行っていることを許せないということが生じてしまった。ほかに重要人物の名前を長期にわたり間違えるという致命的ミスを犯していたり、キャラクターの心の動きや言動などで俺的に違和感を覚える箇所が多くあった。


 8万文字くらいまでのところを10回弱、最新話たる16万文字くらいの部分までを3回読んだが、読めば読むほどに気になるところが増え、しかもそれが作者の力量不足ではなく配慮不足要因であるとしか思えなくなり、次第にこの作品が嫌いになっていくという沼に陥り、最終的に全てが気に食わなくなってしまった。


 本当に申し訳ないが以上で感想は終わりだ。


 以下、恒例の2つだ。







 ※ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。




【作品名】異世界スナック【ま・ほ・ろ・ば・♪】飲み放題二時間銅貨三十枚


【URL】https://ncode.syosetu.com/n1885fc/


【評価】0点



 まさかの文字数(空白・改行除く):26,267文字で文字数最多更新だ。もちろん、引用部分が今回は多いからそのまま俺が書いた文字量ってわけじゃないが。。。それでも長すぎ。。。




 そんなわけで次回は地図作り探索者野郎の出番だな。


 アルトさん、話長すぎっ!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i546984
― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様でした。
[良い点] 相変わらずの凄まじい読み込み量。 そこからくる「なるほど」と言わせる説得力。 準レギュラーキャラ名の誤字に関してはどうあがいても言い訳できないわな。 良いところも、確かにタイトルの所は私…
[良い点] 主人公が定まらない。 結構聞く話ですよね。 あっしも基本的に主人公に共感できた方が、物語の追体験感が増してより面白くなると考えています。 なので主人公さんには「支離滅裂な人物である」とい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ