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15.なまこ×どりる

 


 どうも、あっちいけだ。






 さて、今回もまずどーでもいい話からしていこう。この日誌を書くにあたっての俺のスタンスについての話だ。


 まずこの日誌で感想を書いていくにあたって、実は俺が色々と気を遣っているのは知っているな?そこは異論が挟まる余地がない部分なので、ここではあえて深掘りしない。


 さて、それでだ。その一方で、実は全く気を遣っていないことが一つある。それは『自分が出来ていないことにも平気で文句つける』ということだ。


 どういうことか。知っての通り俺は今まで気に食わないと思った部分を容赦なく殴ってきた。だがその殴ってきた部分ってのは俺の作品にも類似するところがあって、実際に今まで『お前も同じことやってんじゃん!』とか、『ブーメラン乙www』とか感想を送られてきたことがある。


 ただ、実はそもそも俺は自作品と日誌応募作品を全く比較していない(つもりである)。つまり俺は、『げへへ、ここは俺の出来ている部分だから安心して殴ってやろう!』だとか、逆に『あ~、ここ俺も出来ていないところだからちょっと弱めに殴っておこうかな~』だとか、そんな考慮を一切していない。


 一見するとめちゃくちゃ矛盾している奴に見えるだろう。ただその矛盾こそが作者と読者の視点の差であり、作者視点では気づかなかったところでも、読者として挑めば見えてくるものがあるのがこの日誌を進める意義なのである。


 つまり俺は『吸血鬼の作者としての感想』を残してるんじゃなく『あっちいけという一物書きが読者になった時の感想』を残しているだけということだ。よって俺は自分でも出来てねぇことにも鉄面皮の如く殴っていく。




 ちなみにまったくの余談になるが、上記のスタンスで感想を書くことは、他人から貰う酷評よりも俺を深く傷つけてくる時がある。特に、今更ながら言うが『時フラ』の感想の時はめっちゃくちゃに心が折れた。


 『時フラ』に対して抱いた感想が、強烈な返し刀となって俺を切り裂き、茫然としてしまった。俺がそれまで自分の強みだと信じていた部分を、俺が抱いた感想がめちゃくちゃに否定してきて、挫折した。


 ちなみにその心折れた部分がどこであるかは言わない。無論その感想は日誌の中にきちんと文章化されているがそれがどこでどう俺に影響を及ぼしたかまでは今のところ明かすつもりはない。


 1つ、俺はそこで宝を手に入れたんだ。他人様から感想として送られてこようが強い言葉で否定されようが恐らくまったく省みようとしなかった部分にメスが入り、光明が見えた気がした。それは恐らくただ単純に『時フラ』を読んだだけでは見つからなかった。こうして日誌という体裁をとって、本気で読んで本気で感想を書いたからこそ見えたものなんだと思う。『あぁ、こういうのって面白くないのね』ってな。


 だからこそ俺はこれからも日誌を書くときに、自分も出来ていないなと思ったことでも文句をつけていく。それが『本気』ってもんだろう?


 ってなわけだ。もしそのスタンスが気に食わない奴がいれば遠慮せず俺の作品に文句をつけに来い。俺はそれも糧にしてやるつもりだ。以上。









 さて、酔っぱらったような自分語りはこの辺にしておいて、そろそろ本題に入るぞ~。


 今回、にょろにょろ縦ロール( ξ˚⊿˚)ξ ←これ)巻きながら踏み台を差し出してきたのは『ξ˚⊿˚)ξ<ただのぎょー(Gyo¥0-)』君だ。


 いや、すげぇ名前だよな…昔は『Gyo¥0-』だけだったのに、いつの間にか絵文字に縦ロールに吹き出しまでついてるじゃねぇか。随分と豪華ななりになっちまってまぁ。(ちなみに完全に余談だが、俺は感想を下書きする際にメモ帳を活用するんだが、上の絵文字を保存しようとするとエラーを起こしてこんな感じ→ξ?⊿?)ξになる。個人的にちょっとツボだった)


 さて、そんな彼のことは毎度内輪ネタっぽくて申し訳ないが『なまこ君』といつもの如く読もう―――と思ったが、この日誌でその名前を使ってしまうと感想のところで滅茶苦茶弊害が起こるので、ここではあえて『ナマコ君』と呼ぼう。ひらがなとカタカナの違いだけだが、これが後々大きく響いてくる。詳細は感想でな。


 そうしてそんなナマコ君が応募してきてくれた作品について、まずは募集要項から引用してこよう。以下、まずは目を通してくれ。


 ------


【作品名】:

 なまこ×どりる


【簡易的なあらすじ】:

 伯爵令嬢であるアレクサンドラが、魔術学園の授業で使い魔としてなまこを呼び出す。

 天然脳筋系縦ロール令嬢と、使い魔のなまこ、なまこに困惑する周囲が織り成す、バトルあり、婚約破棄ありの混沌とした学園モノ。


【セールスポイント】:

 なまこに無知な人になまこの知識を植え付けたい。

 そのために広く読まれて欲しい。

 内容的には男性向け作品で女主人公ものが楽しめる人が1番向いているかな。


【フックポイントの話数】:

 0話、タイトル。なまこ×どりる

 さもなくば主人公視点となまこ視点で対となってる2話と3話。


『悩み』:

 今更直せないが、主人公を巨乳にすべきだったか。

 第1話、三人称の雰囲気はわたしの好みなんだが、これが合わずにブラバする読者は多いのか。

 特に6~15話あたりか、話として面白いと思っているが(わたし、この作品大好きなので!)、メインストーリー的な意味での展開が遅く、読者が離れるのか。それともここをスピーディーにしてしまうと、むしろ作風が壊れるのか。

 ありがたいことにレビューも頂いているし、ブクマもついてる。凄く嬉しいことに感想や活動報告へのコメントも頂いている。……の割には読者数が少なめなこと。


【本気で書いているかどうか】:

 この世界観のベースを考えてから15年近く。

 この作品の主人公、アレクサと彼女のなまこがわたしの脳内に産まれてから、5年以上の月日が経っているんだ。

 面倒くさがりでやる気のねーわたしの反対よりも、こいつらが表に出たいという想いのが強かったんですわ。

 そりゃもう、本気にやるしかないよね。


 ------


 引用ここまで。



 そう、なまこだ。ここまで来たら彼のことを知らない奴でも、どうして俺が彼のことをいつも『なまこさん』と呼んでいるか、どうして今回に限って『ナマコ君』と呼ぶようにしたか分かるだろう?


 そう、なまこ君なままだとなまこな話題が出た時になまこ君なのかなまこなのか分かりにくくなってしまうのでなまこ君とは呼べないんだなまこ。


 というわけで、なまこだ。うむ、ちなみに俺は本作について読んだことはなく、にも関わらずなまこなまこ言ってたミーハーな人種だ。以前、俺と友人で立ち上げた企画にスピンオフ作品を差し出してきたことはあったが、本編については初見だった。


 そんなわけでだ。もう細かい説明は不要だろうと思うが、あえていつもの適当なノリでの概要説明に入ろうと思う。


 したらば以下、本作『なまこ×どりる』(以下、なまどり)の概要だ。






 わたくしの名前はアレクサンドラ・フラウ・ポートラッシュ。アイルランド辺境伯の長女で親しい方はわたくしのことをアレクサと呼びますわ。


 今日はサウスフォード全寮制魔術学校4年次前期期末試験、使い魔との契約を行う日ですの。うふふ、何が召喚されるか、楽しみですの!


「我が傍らにあらんとするもの。我が声、我が魔力に従いて、遍く地平の彼方より疾く来たれ!」


 さあ、何が召喚されますの? わたくしが全力を込めた魔力ですもの。普通の獣や魔獣が出てくるはずありませんわ。天使か、悪魔か、はたまたドラゴンか。うふふ、楽しみですの。


 ―――ん。何も召喚されてませんの。失敗してしまいましたかしら?……いや、よく見てみたら地面を這って何か黒い棒状のものが動いていますのね。


 たしか、あれですわね。海でにょろにょろしてる……え〜と……あれですわ。なまこですわね。


 ……それで、なまこって何が出来るんですの? あ、握ると固くなって―――きゃ、なにか白いべとべとしたものが飛び出してきました。ふぇぇ、顔がべたべたになってしまいましたの。


 ……どうしましょうか。とても使い魔としては使えそうにありませんし、試験には落ちてしまいますがこのなまこさんは送還してしまいましょうか。


『はじめまして、人間のお嬢さん。わたしは名も無きなまこです』


 って、このなまこさん、しゃべりましたわ! いえ、違いますわね。これは<精神感応>の魔術!!


 もしやこのなまこさん、ただのなまこではありませんわね。ええ、よく考えてみればわたくしの魔力量でただの動物が召喚されるわけがありませんもの。


 俄然、興味が湧いてきましたの。


「決めましたわ、なまこさん。わたくし、あなたと使い魔の契約を交わしますの!!」

『感謝します。我が主』


 そうして使い魔の契約を結んだわたくし達。なまこさんにはクロという名前をつけて――って、クロ! わたくしの知らない魔術をたくさん使って、あなた本当に何者ですの?!


 え、なまこの神様? 年齢5億歳? 泳がぬ海の王?


 一体全体、どういうことですのー!!?




 これは武闘派魔術師アレクサンドラと、棘皮動物の神<泳がぬ海の王>ことクロの2人が織り成す、幸せが鼻から垂れてきたりする至極健全(R-15)な物語である。









 さて、いつもの如くノリで書いている。うん、細かいところが違うなってのはまた理解したうえのことだ。


 でも、おおよそこんな感じだったはず。ナマコ君、いつもの如くだ。反論があったら感想欄で大いに暴れてくれ。










 さて、それじゃあ概要説明も終わったところで、今回の感想の書き方について語っていこう。


 まず―――感情グラフについて!!


 今回も作ってないッ!! というか作るつもり無し!! どういう意味で作るつもりなしと俺が言っているかは、この後の俺の感想を読んでそれぞれ察してくれ。


 そして今回は―――良いところから! 感想を述べていこう。









 そんなわけで本作の良いところについて。


 まず何といってもタイトルの出オチ感、及び第一話たるプロローグの掴み。


 なまこである。え、なまこ?って誰しも思うに違いない。いや、すげぇ個人的な話をしてしまうとあまりに友人界隈でなまこなまこ言われていたからなまこが出てくるのは読む前から知ってたんだけどさ。


 それにしたって、なまこである。しかもナマコ君は出オチ的になまこをぶち込んでいるだけではなく、きちんとなまこをストーリの根幹部分に組み込んでいるし、なまこ自体のキャラクター造形だったり背景だったりが作り込まれており、至って真面目且つ盛大になまこを主役に抜擢している。そういった「あ、出オチなだけじゃないのね」っていうのは続く第2話、第3話で察することが出来る。


 つまり、安心して出オチ(なまこ)に付き合っていける作品だというのが序盤を読むだけで分かるのだ。なかなかにしたたかな作者だなというのが序盤を読んだ時の印象だ。




 そして次に癖があるようでないような絶妙な文体。一部分―――というか第一話だけか? そこは綺麗な三人称で物語が綴られている。うん、なかなかに取っつきやすい三人称文体である。序盤である故に情報量は多いものの、わりとすんなり消化できたと俺は感じた。つまり、この作者は『基本が巧い作者だ』とも察することができる。


 それでいて第2話以降は主人公たるアレクサンドラだったりクロだったり、他サブキャラだったりの一人称視点で語られる。その際、一人称の中でもわりとフランク寄りな文体に変化するんだが、この『フランク寄りの一人称』というのはわりと作者の力量が出やすい。それというのも情報量が多い場面になった時に文体と情報量のバランス制御をしきれず、一人称小説の強みである『自然さ・親しみやすさ・そのキャラらしさ』等々というのが掻き消えてしまうことがある。あとは主人公と作者だけが分かった気になって話が進み、読者が置いてけぼりになるとかな。


 それでいうとこの『なまどり』についてはそういった失態はほとんど見られなかった。全く無かったとは言い切れないが、それはまあ一人称小説の性みたいなものだろう。(俺的に、ここら辺を完璧に仕上げてきたのが『テーベ』だと思っている)


 常にキャラが自分(=読者ではなく、あくまで自分の思考)に向かってしゃべっており、一人称文体の強みである親しみやすさも備えつつ、各キャラごとのらしさも維持できている。そしてきちんと最低限読者が理解できるだけの情報を不自然ではない形で提供してくれる。


 つまり、この『なまどり』の基本的文体は各キャラごとの癖を微妙に織り交ぜながらも、地力のある作者がキャラと必要情報を御しきった構造をしている。アレクサの『ですの』口調によって一見すげぇ癖があるように見えつつも、なんて事はない、すんなり情報や感情が入ってくる文体になっているので俺的に安心して読める作品になっていた。




 さて、続いて話の内容にも触れて行こう。


 まず、魔法学校ものとしてのワクワク感。これが良い。非常に良かった。


 この作品では魔術設定及び世界設定が随所で練り込まれている。世界設定としては今俺たちのいる地球の歴史の延長線上にあり、世界各都市の滅亡から魔力の復活(発生ではない)、魔族の襲来や他種族の出現などなど、設定の時点でワクワクする要素が盛沢山である。


 そして面白い設定盛沢山の魔術設定の中で、俺的に特に「ほう」と感心したルールがあり、それが『制限をつけると魔術の発動が有利になる』というものだ。まあ、言ってしまえばその発想自体は別にありきたりなものになるんだろうが、この『なまどり』世界ではちょっと癖が強い。


 例えば、主人公アレクサンドラが独自開発した魔術の中に『達人の一撃』というものがある。この魔術の効果としては「拳が届かない距離にいる相手の急所(特に男へ有効な部位)へ直接攻撃が可能になる」というものだ。


 本来、こんな魔術を行使するには長時間の詠唱が必要になるはずなのだが主人公アレクサンドラはたった1フレーズ唱えるだけで行使してしまう。それというのもアレクサンドラがこの『達人の一撃』に課した制限として「対象を視認している・近距離にいる・自分がすでに対象へ拳で攻撃している・対象から攻撃を受けて出血している・同一対象には2度までしか使えない」というものを設けているからである。前半2つはまあよくある制限の範疇だと思うが、後半3つのように超局所的な制限というのはなかなかユニークだなと思った。


 そして、その超局所的な制限をさらにユニークなものにしているのが、『一度制限を課した魔術は一生仕様を変えられない』というものだ。ただしこれは何となくそうかな?と思わせられる程度のものであり、作中で明言はされていない。とはいうもののその推測を補完してくれそうな情報が最終盤に出てくる。それというのは主人公アレクサがある特別な魔術を継承した際に、その魔術の扱いにくさに苦労しているシーン。最終的にこの魔術使用対象は生涯ただ一人一回きりだろうとアレクサが決断し、発動対象をとある人物に限定するシーンを見て、俺個人的には一生仕様変えられない説はわりと濃厚ではないかと推測している。


 つまり、制限を課した魔術というのは重みがあり特別感がある。そしてそうと思ったうえで作品を読んでいくと、例えば主人公を特別ライバル視しているドロシアという女の子が作った創作術式はどんな制限をしたのかな?とか妄想するのが楽しかったりするのだ。(もしかしたら制限なんてしてないかもしれないけど)



 そして、引き続きになるが本作における重要なテーマの1つとして、上記挙げた『制限』と似ているものになるが『誓約』というものがある。例えば主人公は物語開始時点で『立場の低い者を慈しみ、見捨てず、招きを断らない』という誓約を自分に課している。この設定はわりと序盤に軽めなノリで出てくるのだが、この誓約があるせいでアレクサは友人たちの可愛らしい謀に付き合う羽目になる。


 そしてその時は読者たる俺も『誓約』というものをそんな重い話とは思わず聞くのだが、次に『誓約』絡みで出てくる話がアレクサの父ブライアンの『一日たりともアイルランドを離れない』というものである。この誓約があるが為に父ブライアンは文字通り一日たりともアイルランドから離れられないという話が出てきた段階で読者たる俺は「ん? もしかして誓約っていうのはただの宣誓とは違ってもっと重たいものなのか?」と気づかされる。


 そうして『誓約』というものが意外と重たいものであることを読者が理解したところで、満を持して登場するのが本作で最もきっつい内容の、アレクサの義兄レオナルドの誓約である。これは物語の根幹たる部分なのでここでは言及しないが、この誓約をどうにかして解除しなければ主人公たるアレクサは幸せになれない。


 そしてその誓約を解除するためには絶望的な戦いがアレクサを待ち構えている。その絶望的な状況でどう足掻くのか、どう画策するのか、どうなまこが活躍するのか―――というのが本作における終盤の見どころとなっている。


 そしてそれら見どころでナマコ君は余すことなく力を発揮し、上手く描き、物語を完結するに至ったのである……って、ああ、この流れだと良いところ談義が終わってしまうな。


 違うぞ? まだまだ語りたいところはあるからな。もうちょっとだけ付き合ってくれ。




 引き続き良いところとして、魅力的なキャラクターが豊富な点。こればっかりは枚挙にいとまがないので気になる奴は見てくれとしかいいようがない。


 ちなみに俺が一番好きになのはドロシアだな。主人公含めても、俺的ランキング1位はドロシアだ。いやぁ~、いいっすね!! アレクサがかなり武闘派魔術師であるのに対し、ドロシアはかなり王道な炎系魔術師。且つ授業の一環である魔術決闘においてでも、主人公に勝つためなら銃器を取り出すなど手段を厭わない徹底ぶり。慢心はなく常に全力。そして主人公に勝つために積み重ねてきただろう努力と、なりふり構わない行動力! 後腐れもなくメリハリがありながらも女性らしさと気品がある! そして照れ隠しのツンデレ属性まであるときた。もうたまらんね。好きだわ~、いいわ~って感じです。はい。




 そして最後、戦闘シーン。主人公アレクサの武闘派寄りな魔術師戦闘。なまこたるクロの神的且つなまこ的戦闘。それらもそもそもが凝られまくって練られまくっている設定のうえで戦っているので、どの戦闘シーンも爽快感がありユニークさもある。特に素晴らしいと思ったのは上述したアレクサVSドロシア戦ともう1つ、ラストバトル。


 ラストバトルは本当に素晴らしかった。アレクサが海水及びそこから伸ばした水の触手を足場にして空を駆け、天空の巨大な敵と戦うシーンは神々しさがある。立体的且つ変則的であり、めちゃくちゃ絵的に映えまくっている。いや~、素晴らしいっすね。いいわ~、好きですわ~、こういうの。って感じです。





 以上、良いところ終わり。










 さて、それじゃあ今回も気になるところを語っていこう。


 実は今回、俺は半分くらい消化不良気味のままこの感想を書いている。上で語ってきた本作の良いところも、正直半分くらいは気乗りしないままに書いてしまった。途中から熱が入ってしまったが。


 いや、本当に本当のことを言うけれど、この作品、すげぇ面白いのよ? 読むときのモチベーションでいうと、この日誌史上最もべた褒めだった『まにてん』を上回る程のものがあった。なんなら、仕事があるのに朝の4時まで起きて貪り読むほどの瞬間風速があった。


 だけど、なぁ。これも正直に言っちまおう。この作品、最終的な評価として、俺的に他人に薦めるほどには面白くなかった。


 面白いんだよ? 面白いんだけど―――なんだかなぁ、すげぇ言い方に悩むんだけどさ。


 俺的に、要所要所面白いし、おっとなるシーンもあるんだけど、最終的にグッとくるものがなく、他人と語って楽しめるような作品ではなかったかなって思ったんだ。(あくまで俺的にね?)







 さて、本気の感想に入る前にいつものやつを挟んどくぞ。


 ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。


 あと、ここからは容赦なくネタバレしていく。そういう意味でも気をつけて読んで欲しい。よし、じゃあ行くぞ。







 まず、この作品が俺的に『他人と語って楽しめるような作品ではなかった』と思った原因。それは大きく分けて3つある。


 1つ目が『学園ものからの方向転換』


 2つ目が『終盤の展開と、広げたキャラクターの風呂敷の畳み方が見合っていない』


 3つ目が『読まなくても先が分かる終盤展開』


 それぞれ、好き勝手に語っていくぞ。






 まず1つ目、『学園ものからの方向転換』だ。


 俺はこの作品を読んでしばらく、この作品に対して某ハリー〇ッターのように魔法学園もののワクワク感を味わっていた。まあ、某作とは主人公が魔法というものに既知であるか否かで違いはあるが、読者たる俺的には未知の魔法世界に触れていく楽しさ、魔術を使っての熱い決闘、あとはイギリスらしい貴族社会・雰囲気みたいなものから刺激をすごい与えられ、『うわ、何この作品、めっちゃ面白いやん!!!』ってなテンションで貪るように読み進めていたのだ。


 ところが、今でも覚えている。明確にその話数に問題点があるわけじゃないんだが、この作品を頭から最後まで3回読み直して、いつもいっつもそこでテンションががた落ちする話数がある。


 それは第96話「ねごしえーしょん」の部分。いっつもここで『あぁ、もうこの作品読むのやめようかな…』ってなってしまうんだ。それっていうのも該当話数のある第5章から、明確に学園ものでなくなるからだ。


 第4章までは魔術学校内の話がメインだ。授業の一環でなまこを召喚したところから始まり魔術決闘の話だったり痴情のもつれだったり(ジャスミンの話は俺的には学校生活の延長線上で捉えている)。第4章のクライマックスは魔術決闘で優勝した主人公のエキシビジョンマッチで、盛り上がったまま終わった。そこまでは何ら、一片たりの問題はない。俺のモチベーションは100を遥かに上回る勢いだ。


 しかし俺的に問題の第5章。序盤はまあいいとして、義兄を助ける手段を模索し、方法を見つけ、学校に休学届を出して実家へ帰るアレクサ―――この時点で『ん???』と俺的に黄色信号が浮かび始める。なんかおかしいぞ、学校はどうした?という感じになる。


 そして実家方面で色々としでかすアレクサ。いや、なんかなぁ~。よくあるなろう展開ってやつ?なんかいきなり話が安っぽくなったなぁって感じなのよ。


 しかもあれほど第4話まで性知識皆無だったアレクサがさ、いきなり性知識完備の出来た女上司みたいな感じになっててさ。誰お前?状態なわけ。いや、別に第4章までのロリアレクサ至上主義ってわけじゃないんだけどさ。


 第4章のイベントで体が大きくなったら性知識まで目覚めたってか?早すぎねぇか? だってさ、第3章終盤時点では『裸の付き合い=お風呂に一緒に入っている』という知識であり、『初潮』の意味すら分からず、第4章で初めて『生理』が来て、そいでもって第5章始まったら『彼らも戦闘で精神的にやられて帰ってくるだろうから貴女達は存分に慰めてやりなさい(=アレ的な意味で)』とか『あなた童貞を捨てましたの?ああ、夜の話ではなく戦場の話ですの』とかって―――いや、お前誰だよ?って俺がなるのもうなずけるだろ?


 そこさ、キャラクター造形掴む上ですげー重要なとこじゃねぇの? 例えばナタリーとかモイラ先輩とかクリスとかがさ、頑張って主人公に性知識教えてるシーンだとか、シーンがなくてもアレクサの思考内で『あの時モイラさんとナタリーが気色悪げな顔を浮かべながら話してましたの』とかさ、そういった回想めいた発言が1個あるだけでも大分変わるんじゃねぇの?


 性知識皆無だった主人公が何の説明も経緯もなしにいきなし性知識完備になっちまってまぁ、俺の知ってるアレクサと今のアレクサを繋げるための情報は出してくれよ。ほんと。やれやれだよ。


 あと、それまではわりとアレクサがクロだったりジャスミンだったり他キャラに振り回されつつ自分の力で対処していくような物語構成だったのが、第5章になっていきなり『私、あなたが知っているよりも強いし強かだし色々考えてますわ』みたいな感じに徹頭徹尾なっちまって、よりなろう感が浮き彫りになった気がしたんだよなぁ。


 これが最初からだったらまた印象が違うんだろうけどさ。第4章までは俺的に完璧に面白かっただけに、第5章からは相対的に駄作としか見れなくなっちまったんだよなぁ。


 おっと、ちょっと話が逸れた。『学園ものからの方向転換』について語ってたんだった。


 それでさ、学園ものの代表例で俺がさっきからハリー〇ッターを挙げてるじゃない? 俺、実はあの作品も第4巻までは読めるんだけど第5巻からマジでつまらないって思っている性質の奴なんだよ。


 もし読んだことなかったら申し訳ないけど、この『なまどり』と同じで第4巻までは学園ものがメインなんだけど、第5巻からは第4巻までで広げてきた風呂敷を更に広げて畳みにいくために学園を軸としない物語構成になるんだよね(と俺個人は感じている)。俺、あの作品も第5巻以降駄作って言っちゃう人で、もしかしたらマイノリティー側なのかもしれないけど。


 『あの作品の第5巻以降を駄作って思った一読者が『なまどり』の第5章以降を読んだ時に同じ感想を抱いた』ってことがここでは言いたかったわけ。


 学園ものってさ、結構終わらせ方というか終盤の風呂敷の広げ方と畳み方が難しいと思うんだよ。でも俺的にはさ、学園ものの終わらせ方は卒業とか次の学年にあがるとか、なんかそういう学園ものらしい感じであって欲しいって思うわけ。序盤から学園ものを基軸に物語やってるんだったら、終わり方も学園ものらしくしてよって思うわけ。(ちなみにこれが物語当初から学園ものじゃなくて、主人公の人生ストーリーを追う上で途中で学園に入学したとかなら、別に学園パートの終わりが卒業じゃなくてもいいと思っている。分かりやすいところでいうと『無職〇生』とか)


 俺みたいな奴は、『ハリー〇ッターとかなまどりとか、学園ものなら学園ものらしく終わらせればいいのに、どうして途中で変な方向に話を広げていくんだろう?』って思っちゃうわけ。学園を卒業して、後輩には惜しまれつつ同級生と新たな門出をしつつ、違う環境になった主人公のその後みたいなのをちらっと語ってFinみたいな感じ。


 その終わり方をさせるには終盤の盛り上げ方が難しいのは分かるよ?だけどさ、それが出来なくて物語から学園要素取っ払うくらいだったらさ、最初っから学園ものっぽい雰囲気出すなよって俺なんかは思っちゃうわけ。


 分かるのよ? この物語のストーリーをざっと眺めると、クロと出会った主人公がそうやって学校生活の途中でレオナルド助けるために方々出向くのは至って自然な考えなんだよ。キャラが変な動きをしているわけじゃ断じてないんだよ。


 だからこそ、そこは作者の腕の見せ所でしょ。学園ものから急にラブロマンス大活劇に変貌を遂げるんじゃなくて、最初っからそっち方面の話もありますよって序盤からでも継続的にそれらしい要素を目立つように出しておいてくれたなら俺も納得しようもある。もしくは学校生活の中でラブロマンス解決できるように作者が血を吐くくらいまで頭悩ませて描いてくれたら俺は嬉しい。


 今のままでは俺的には、作者が風呂敷の広げ方・畳み方みすった作品にしか見えない。








 さて、次だ。『終盤の展開と、広げたキャラクターの風呂敷の畳み方が見合っていない』について。


 この作品には良いところで挙げたように非常に魅力的なキャラクターが多く登場する。特に主人公が住んでいるディーン寮だったり、魔術決闘で戦う同級生だったり、滅茶苦茶に良いキャラクターがふんだんにいる。


 しかし残念かな。それらのキャラの多くが終盤において空中分解しているようにしか俺には見えなかった。物語のクライマックス近く、主人公が義兄を助ける為に遠方へ旅立っている最中、学校が魔族に襲撃されるシーン。


 ここは主人公不在の中、今まで登場してきたクラスメイト達が力を合わせて魔族の侵攻に立ち向かうというシーン。主人公は主人公でクライマックスを迎える中、俺のようにサブキャラクターの方にも思い入れがある読者にとっては待ちに望んだ、最高に盛り上がれるシーンである―――はずだった。


 ただ俺的にはここ、正直言って必要?と疑問を呈してしまいたい。ナマコ君が『やべぇ! このままだと主人公だけで話が終わっちゃう! 学校の友人たちの存在感が薄くなっちゃうから盛り上がれるシーン入れておかなくちゃ!』って付け足したんじゃないかってくらい(実際にはそんなことはないんだろうと思うがな)、どうでもいいシーンだった。


 まず、こいつらの頑張りは物語の大勢になんら影響を与えない。正直、ここで学校が襲われなくても物語上違和感ない仕上がりになっている。(唯一、ディストゥラハリ戦における伏線の回収先がなくなるくらい)


 物語全体を俯瞰して見た時に、ここで魔族の侵攻が発生する必然性もなければ運命性もない。言ってしまえば『作者の一存で決められた』以外に俺には理由が見当たらなかった。


 もちろん、ストーリーを作るのは作者の仕事であるからして作者の一存で決められたのに関しては文句は言わない。だが、そこに理由・根拠・必然性が欲しい。あ、「魔族が人間の領地を襲いたがっているのは描写していただろ?」みたいな言い訳は求めていない。それなら「どうしてこのタイミングで、どうしてこの学校を襲ったのか」の理由が欲しくなる。まあ、それも「ジャスミンがビーコンを埋め込めるように潜伏していたし、魔力櫃があるから」って回答になるんだろうけど…なんだかなぁ、それって後付けじゃん?ってなるんだよなぁ、俺的には。


 もうちょっと魔族側の動きが分かるように事前に読者にだけ提示しておくとか、不自然にならないよう気を付けないといけないけどジャスミンを倒した後にでも「調査した結果彼女が何かしていた形跡があるけど結局何か分からなかった。なんだろうなぁ、モヤモヤ」みたいなサブイベント挟んでおくとか、ないとは思うけどアレクサンドラ不在のタイミングを魔族が狙った!とかだったりしたら、もうちょっと必然性要素が上がるのかなって思った。


 つまり、俺的にはこの防衛線仕込むのは最終盤に作者都合で植え付けられただけに見えるので、もうちょっと序盤中盤の方からそれっぽい伏線を蒔いておくのが必要じゃねぇかってこと。ディストゥラハリ戦だと伏線と回収の距離が近すぎて『あぁ、そうだったの!?』ってなるよりも『あ、作者が無理やりねじ込んできたな』って印象になっちまうだけだからさ。(俺的にはね?)


 あ、ちなみにこの防衛戦のところで1つめっちゃ気になるところがあってだな。モイラ先輩の使い魔が人間であることが初めてここで開示されるんだが、第24話の時にアレクサが父に向かって「人間を隷属するのは学生では禁じられている」って言ってるが矛盾に当たらないのか?正直、ここら辺は言葉の解釈として『本来禁じられているけれどモイラ先輩がそのルールを力技でねじ伏せた』と読めなくもないし、『隷属と使い魔は厳密に違うけどアレクサが認識間違いしていた』と解釈できなくもないし、ちょっとしたモヤッとで終わったが。


 さて、話が大幅にずれてしまったが、ここで言いたかった本題は、中盤までディーン寮以外のキャラもたくさん良いキャラいたのに、そいつらが全く出てこないところにまず1つ目の消化不良感がある。例えばテッドとかハオユーとかハミシュとか。まあ、女子寮の話だから男は出しゃばれなかったんだろうし、ハミシュに至ってはアレクサと一緒に行動していたから間に合わないってのもあるんだろうけど。


 それ以外でもクリスやナタリー、モイラ先輩やドロシア、サリアにもそれぞれスポットライトが当たる瞬間があるものの、どれもそれほどパッとしない。いや、フォーカスはされてるんだけど、クライマックスの盛り上がりに見合うほどの功績がない。


 俺的に「うおぉっ!」と盛り上がれるほどのキャラクターの働きが起こるよりも前に、結局全部遠方にいるアレクサと寮母のメリリースがなんとかしちゃってくれるあたり、肩透かし感が半端ない。寮のサブキャラの存在感を出す為に差し込んだ話なのに結局主人公が全部持って行ってしまうような展開に、俺個人的に失望してしまった。


 なんかなぁ、ここってもっと面白く出来たはずなんじゃねぇのか? いや、正直ここの面白い面白くないってのは個人差が激しいところだ。ナマコ君、もしここの部分をお前は『存分に面白く書いたつもりだ!』って自信を持てるんだったら、俺とお前で絶望的なまでに感性が違うってだけだ。俺の意見を気にするんじゃなく、お前の感性をさらに尖らせていけばいい。


 だけどサブキャラに思い入れがあり過ぎる俺はここのシーン、マジで不必要だと思った。いや、上でも言ったけどサブキャラ―――特にドロシアが大好きな俺にとっては本来あって欲しいと願うシーンなんだよ? ただこんな盛り上がれない展開ならいらないってだけ。(完全に余談になるが、なーんか似た話を『枢機卿』の時にも話した気がする。俺はどうやら終盤にサブキャラの扱いがぞんざいになってしまうのを許せない性質らしい)


 序盤及び中盤であれだけ広げて深掘りもしてきた寮生及び同級生たち。主人公に安心して付き合っていけたのも彼ら友人や級友の存在があったからこそだったかもしれねぇな。それが終盤ナタリー以外はマジで空気になり、主人公のキャラが行方不明になり、俺的にこの作品に付き合いきれなくなった第5章以降。


 う~ん、勿体ない。ナマコ君、第5章以降でもしかして作品への向き合い方変えた? な~んか別人が書いたんじゃないかってくらい違うんだよなぁ。文体じゃなくて、キャラとか作品自体への向き合い方ね。


 終盤へ向かうにあたっての気負いなのか、早く終わらせたいという焦りなのか、評価がいっぱいついて読者がいっぱいついたことによるプレッシャーなのか、長期連載している間にラブロマンス大活劇を書きたくなったのか。何か原因があって、作品書く時の気持ちが変わったんじゃないかって思っちまったんだよなぁ。








 閑話休題。







 さて、最後の3つ目だ。『読まなくても先が分かる終盤展開』。


 俺は第90話で、義兄レオナルドを助ける為にはゼウスを倒さなくちゃいけないと明示された時点でこの作品を読むモチベーションが陥落した。というのも、その時に感じた気持ちを正直に言語化すると「あぁ、ゼウス倒してこの作品は終わるんだな」となり、その直後にもうすでにゼウス倒したくらいの気持ちになっていたんだ。もうちょっと詳しく言うと、「まあ結局は何とかしてクロとアレクサがレオ義兄様を助けるんでしょ? はいはい分かった分かった」っていう気持ちになってしまったのだ。


 つまり、最後まで読まずして最後まで読んだ後みたいな感じになってしまった。どうしてこんなことが起こったか、それには2つの理由がある。


 まず1つ目、話数問題。こればっかりはナマコ君は悪くない。完結済み作品のさがでもある。


 ゼウスを倒さなくちゃいけないという話が出てきたのは第90話。そしてこの作品を読み進めている俺にはこの作品が既に完結済みであるという情報と、この作品が148話までしかないということが開示されている。


 第90話時点で上記情報が出てくる。でも直近ハイランダーのところにいって祖父に会いに行かないといけないイベントが残っている。今までのこの作品の展開スピードからするとその2つのイベントとそれに付随するエピソードを挟んだら完結話数に到達しそうだなと、俺は感覚で悟ってしまったのだ。


 つまり、『ゼウスを倒す』という情報が出てきた時点で、俺はそれがこの作品におけるラスボスであると察してしまい、そうなるとゼウスを倒したらレオナルドが人間に戻るらしいしそこで話が終わるってことはこの話は学校メインでなんやこんな騒動があってそれを解決して終わりではなく、ゼウス倒して義兄様と結ばれて終わりってこと?というところまで察知してしまい、結果、前述の『学園ものからの方向転換』に気づいてしまいモチベーションが激減してしまったという経緯がある。


 ようするに、俺が望んでいない方向に進むだろうプロットが見えてしまったのだ。そうして読み進めていくと俺の想像から外れたり予想を超えたりする展開はなく、逆に『これいる?』的な話だったり『え、いやこの主人公誰なのよ…』状態に陥ったりで真っ当に作品を読めない心境に至ってしまった。


 そして2つ目。アレクサとクロが強すぎる問題。


 これは実際のところ、アレクサは並みの人間と比較すると強いんだけど神様と比較したら弱いというのは理解している。そしてクロも神様の中では弱い部類であるということも承知している。


 だけどこの2人が『ゼウスを撃退する!』と言うと、まあ出来るんじゃない?ってなるのよ。それは物語序盤や中盤までなら「この2人なら何とかしてくれる!」っていう安心感であったんだけど、いざ終盤に滅茶苦茶強い敵を持ってこられても「まあ、この2人ならなんとかしてくれるだろ」って変わらず思ってしまい、そして結局本当になんとかなってしまうのだ。


 この「なんとかしてくれる」って読者が思う気持ちって、理論理屈のところじゃなくて感情面の問題だと思うのよ。いくらゼウスが強いとか、島が吹っ飛ぶくらい一撃の威力が強いだとか言われても、そんな理屈じゃないところで「まあ、大丈夫でしょ」って感情が出て来ちゃうんだよね。


 最終盤で読者を盛り上げる為には、読者のハラハラを理屈じゃなくて感情面でも誘わないとダメだと俺個人的には思ったんだ。理屈面では『主神クラスだからクロとかよりも全然強い』って情報でカバーできると思うんだけど、感情面では絶望が足りなさすぎると感じたんだよね。


 例えばほら、最近話題にし過ぎかもしれないけど、ダイの〇冒険で某魔王様が「今のはメラゾーマではない、メラだ」って言うじゃない? 他に有名どころだと「私の戦闘力53万です」とか。あれって理屈面もあるけど、その時に主人公たちが陥っている状況も相まって、読者が感じる絶望感って半端ないと思うのよ。(もし、上で例として挙げたそれらのシーンで、主人公側が「は?wそれがどうしたの?全然こっちも負ける気はないんだけどw」的な態度だったら、それらのセリフは今でも語り継がれる名台詞にはなり得なかっだろうと思う)


 つまり、結局はアレクサとクロが何とかしてくれるかもしれないんだけどさ、例えば第90話時点でクロとゼウスが戦って、クロがなすすべもないくらいけちょんけちょんにやられたりしたら、俺でもやべぇって思えたと思う。それでクロが自信喪失してしまって、一度はアレクサのもとから去っちゃったりして、それでもなんだかんだのイベントをこなしクロが「アレクサと一緒ならもう一度戦ってみます」みたいに自信を復活させて、いざ最終決戦!!みたいな感じだったら、俺でも燃えられたと思う。


 つまり、結末が分かっても応援できるかどうかが問題なわけ。「どうせ何とかできる二人組」よりも「一度は負けて絶望を知ったけど、そこから這い上がった二人組」の方が応援に能うってこと。事実、ゼウスが敵だと分かった時点でのアレクサの反応は「ふん、追い返してやりますの!」だったし(←強がりだと思うけど)、クロも「無茶無謀ではありますが決して不可能ではないと思いますよ」みたいな感じだった。これが2人とも絶望のふちに追いやられていり一回仲違いしていたりのドラマ性があったなら、こんな俺でも第5章以降への付き合い方が変わっていたと思う。もちろん、滅茶苦茶いい方向でね。


 そんなわけで、話数問題と主人公たち強すぎ問題の2つが相まって、第5章以降は俺的に読み進める労力に対してのリターンが見込めなくなりモチベーションが陥落。読む価値がないとまでは言わないが、俺的に読み続けなくてもいい作品へと格下げになってしまった。


 読まなくても先が分かるというよりも、読まなくても読んだ気になってしまうストーリー展開っぽいのが透けて見えてしまって、残念だったという話だ。








 以上。そんなこんな語ってきたところで総括に入ろう。


 まず、この作品の出来は素晴らしいものがある。特に第4章までは一片たりとも文句をつける余地すらないし、俺がつらつらと文句垂れてきた第5章以降に関しても、俺じゃなければ喜び楽しんで読む輩もいるだろうと思う。(世の中にはハリー〇ッターの第5巻以降こそ面白いという奴だっているんだ。感性の差っていうのは恐ろしいよな)


 ただ、以上で述べてきた通り、あくまで俺的な感想ではあるが、

 ・この作品は途中まで学園ものであるが、第5章以降ラブロマンス大活劇めいた話に方向転換する

 ・広げたキャラクターの風呂敷の畳み方をみすっている(俺的に)

 ・終盤にかけて読まなくても透けて見える展開になっている

 という3つの要素が絡まり合って、主に物語の軸に一貫性がないと感じてしまい、他人と膝を突き合わせてまで語ろうという作品に最終的になっていないと思ったのだ。


 素晴らしい作品だ!

 だけど途中から方向転換するんだよなぁ…


 魅力的なキャラがいる!

 だけどフェードアウトして空気化するんだよなぁ…


 すごい練られた作品なんだよ!

 だけど終盤でオチが見えちゃうんだよなぁ…


 ってな感じだ。面白いんだけど飛躍しないというか、心にグッとくるというよりもスラスラっと読んで終えてしまうというか。


 うん、第4章までは滅茶苦茶完成度の高い小説であり、第5章以降は風呂敷畳む為だけに用意された小話的な?


 第5章以降でもっとドラマチックな話があればなぁ……あ、レオナルドとの話はね、わりと綺麗にまとめられてるんだよ。それは良いところだと思う。


 けどさ、第1~4章読んできた俺はそういうラブロマンスを求めていないわけ。人それぞれだろうけど。俺はもっと人対人での感情面でのドラマ性が見たかった。特に、ダブル主人公ともいえるアレクサとクロの間に、一回もグッとくる感情面のシーンがなかったのが残念極まりない。いや、魔術的なところで深い関わり合い・分かり合いがあるのは分かるんだけどさ―――そういうのじゃないのよ。上でも言ったと思うけど、『絶望的な相手へ戦いを挑む2人を応援したいと思えるかどうか』なのよ。


 そう。何度も言うけど俺的にこの『なまどり』という作品、第1章~第4章まではストーリーもキャラも最高なのよ。だけどその最高だった部分っていうのは『学園ものを軸において色々なキャラと魔術決闘だったりそれ以外だったりでばちばちやりあうアレクサ及びクロ』っていうのが面白かったのであって、第5章からは『ヒロインたるアレクサが愛する義兄レオナルドを助けるためにイギリス内を旅して絶望的な相手を倒す』という主軸になってしまって、もう、は?どうした?って感じなのよ。


 分かるんだよ。そういう第5章以降のね、綺麗どころが好きなひとはいるだろうさ。っていうか俺だって最初からそっち方向だったら寄っていけれたのよ。


 だけど途中で方向転換するのだけはやめろ。いや、お前的に方向変わってないのかもしれない、俺の読み方の問題なのかもしれないけどさ、俺の読み方は今までつらつら上で語ってきた通りだ。


 せっかく途中までは面白かったのに、終盤で『けど…』がつく話では他人に薦めたいと思えないし、他人と語ろうとも思えない。


 非常に、俺的に、もったいない作品だった。以上、感想終わり。


 以下、恒例の2つだ。









 って、ああ。またお悩みのコーナー忘れてた。


 これ、忘れがちなんだよな。投稿寸前で思い出して今大慌てで書いている。


 それで、ナマコ君のお悩みについて以下引用だ。


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『悩み』:

 今更直せないが、主人公を巨乳にすべきだったか。

 第1話、三人称の雰囲気はわたしの好みなんだが、これが合わずにブラバする読者は多いのか。

 特に6~15話あたりか、話として面白いと思っているが(わたし、この作品大好きなので!)、メインストーリー的な意味での展開が遅く、読者が離れるのか。それともここをスピーディーにしてしまうと、むしろ作風が壊れるのか。

 ありがたいことにレビューも頂いているし、ブクマもついてる。凄く嬉しいことに感想や活動報告へのコメントも頂いている。……の割には読者数が少なめなこと。

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 さて、まず主人公を巨乳にするかどうするか、これは非常に難しい問題だ。何故なら、『巨乳』というステータスを与えるだけである程度主人公のキャラ設定・方向性が決定づけられてしまうからだ。逆に『貧乳』というステータスも然りである。


 作者が如何様に気を付けても、『巨乳だからこういう思考も内包しているに違いない』とか『貧乳だからこういう思いもあるだろう』とか読者が勝手にキャラ付けしてきてしまうと俺は思っている。もちろん、巨乳だけでは個性たりえない。しかし、例えば『朗らか』とか『恥ずかしがりや』とか『ツンツンしてる』とか『クール』だとかそういう内面ステータスと胸のステータスがくっつくとほら、もう非常に呆気なくキャラ造形を想像できてしまうだろう?


 例えば『朗らか巨乳』なキャラがいたとする。ほら、何もキャラの言動を示していないのに何となく『このキャラはきっと自分が巨乳であることを深く受け止めておらず、他人へ慈しむ行動をとる時には惜しげもなく胸を押し当ててくれそうだ』とか思わなかったかい?


 他にも『クール貧乳』とか『ツンツン貧乳』とか、何も言わないでもキャラが自分の胸に対してどういう思いを持っているか、コンプレックスを抱いているかどうかを想像できてしまわなかったかい? そしてそこからさらに自分の胸に対する思いだけではなく、他者への距離感みたいなものまで連想できてしまわなかったかい?


 胸の巨貧(←そんな言葉はないだろうけど)というのは文章化してしまうと恐ろしいほど大きな先入観を読者(特に野郎ども)に対して植え付けてしまう。一方でその先入観を利用して後でギャップ萌えさせるという手法もありだ。


 つまり結論を言おう。真面目に考えるだけアホらしいので適当に決めろバーカ。


(※※※上記で述べてきた胸の話はあくまで空想上のキャラの造形についてのみの話であり、現実女性に対しての思い込み、偏見、理想、妄想を示しているものでは一切ないのでご容赦願います※※※)




 そして第1話。ん~、私は好きだったけどな~。ワクワク感半端ない感じで、良いところで挙げた通りすんなり読めるし。


 ただ、わりと気になったのは話の重複と話が前後する現象が多いかもしれませんね。例えば第2話と第3話、同じ話を視点違いで話しているのでテンポが崩れます。まあ、ここはここで違う視点で見たからこその面白さもあるので、必要経費といえばそうなんでしょうが。


 しいて言うならここの第2話の終わりで“彼にはクロという名前をつけましたの”みたいなことを言っているのに、第5話で名づけを行っているので『さっきもう聞いたよ!!』ってなってしまったこととか。


 それと第5話でミーアがアレクサの部屋に訪れるのと、第6話でメリリースがミーアにアレクサの部屋へ行くよう指示するのとで時系列が逆になってしまっているので、ちょっとしたフラストレーションにはなったりとか。そういった時系列違和感なところがこの『なまどり』ではよくあるので、段々と慣れてくるものの『あぁ、またか』ってちょっとげんなり気味に思ったこともありました。


 特に序盤は勢い付けて読者を読ませてあげた方がいいと思うので、私個人的な感覚では、第1話と第2話の時系列かぶりは必要経費。ここはこういう描写でないと面白さが出ないでしょう。それ以降の時系列が逆になってしまったりすると読者が『ん?』となって一旦冷静さを取り戻してしまうので、没入感的にはデメリットが大きいかなぁと思います。


 あとは時系列違和感が演出的に効果を発揮するメリリース回想が入る第4章閑話はそのままで、それ以外は時系列違和感を出さない方がいいかなと思ってます。


 ああ、良い例がありました。めっちゃ細かいところですけれど第58話。あそこ、レオナルドが空中を掴んでハズラフィールを斬るところでいきなり回想入るじゃないですか? あれ、説明が必要なのはどうしても分かるんですがそこで回想入ります? めっちゃ戦闘の盛り上がりをぶった切られちゃいましたけど私?ってなっちゃいました。


 もう少しやりようあるかなぁと思いました。時系列は無視しないで盛り上げたまま、戦闘終わった後でクロからネタばらしでもいいですし。(レオナルドはしゃべれないですからね~)


 なんかそういう細かいところで、一人称小説の制約になまこさんが苦しめられてるなぁ感が見えて、同じ作者として『あ~、分かる分かる。そうしたくなるよね~!』ってなりながら読んでいました。


 まあでも、本気の感想で言及するほどにイラッとしたわけではないので、気にしなくても構わないと思います~ってなところでお悩みのコーナーも終わりましょうか。


 以上!




 ※ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。






【作品名】なまこ×どりる


【URL】https://ncode.syosetu.com/n3777fc/


【評価】6.5点(第4章までなら8点以上。第5章限定なら4点(←ラストバトルの加点を除いたら2点))


前書きのどーでもいい話と引用部分を除くと、この日誌史上最多の文字量更新!(感想部分だけで1万7千文字!)


まあ良いところが多かったのと、気に食わない部分で好き勝手にしゃべり過ぎた。


さて、そんな話はともかく次回は調理師野郎だな。


ニャハハハハ~♪ なのじゃ!

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― 新着の感想 ―
[一言] なまどりの方向転換、風呂敷の畳み方については、自分は学園モノのデメリットが全面に出たかな、と感じました。 まぁ、これは作者さんにしか真相はわからないですし、作者さんに直接確かめても答えが得ら…
[良い点] 完結問題は完全に言いがかりのよーなw ほとんどの読み手さんは最後は主人公が勝つと思って読んでいるだろうし、その上でどんなエンディングが待っているかに期待していそうな? んでも、作品を読ん…
[良い点] 面白そうな所多数あるのですね! まだ最序盤しか読めていないのであっちいけ様の推しキャラ推しポイントの登場、楽しみにしながら読んでいきます! [一言] 作品方向転換問題かー、難しいですよねー…
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