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13.魔王の人間転生 ~美少女勇者と紡ぐ英雄譚~

 

 どうも、あっちいけだ。




 さて、今回もどーでもいい話からしていこう。俺が感想の最後に載せている10点満点の点数のことについてだ。


 何となく語ったつもりでいたが見直してみるとこの日誌上では採点基準を言ってなかったからな。改めてこの場で言っておく。


 ぶっちゃけフィーリングだ。ただ、ある程度そのフィーリングを言語化してみると以下のようになる。



 10点:崇拝対象レベルの神作品

 9点:愛読書レベルの優良作品

 8点:他人に薦められるレベルの優良作品

 7点:非常に素晴らしい作品

 6点:素晴らしい作品

 5点:なかなか良い作品

 4点:気持ちは分かる―――分かるが、惜しいのよ。もうちょっとなんとかならんかね?

 3点:あ~、やっちゃうよね、そういうの。うんうん、分かるわ~

 2点:あ~、いや~……うん、ごめん、読むの厳しいわ

 1点:いやいや、いかんでしょ(真顔)

 0.5点:気持ちだけは受け取った

 0点:読む価値なし



 ってな感じだ。感情グラフにおける面白さと若干似ている部分もあるな。


 まず、2~7点の間は単純に面白いかそうでないかで判断している。まあ、俺の個人的な嗜好がかなり反映されているからあまり真に受けすぎてもいいことないぜ?


 そしてそれ以下だな。2点未満のところは作品の質じゃなくて作者に対しての怒りだったり嘆きだったりが多い。まあ、これも同じだ。真に受けすぎるな。


 そして8点以上。これはもうレビューをつけたくなるレベルで素晴らしい作品に対してつける点数だな。つまり、他人にも薦めたくなる作品につける点数ってことだ。もちろん、この日誌で俺的評価8点以上を出す作品があったらレビューするつもり満々だ。


 今俺の前に並べられている踏み台の中に、なんのケチもなく8点以上の評価をつけさせてくれる作品があることを俺は願っている。












 ―――閑話休題。










 さて、そんなこんなで本題の感想に行こう。


 今回踏み台を差し出してきたのは同志、『時雨』君だ。特にツッコミどころのない名前だ。彼のことは捻りなく、時雨君と呼ぶことにしよう。


 ってなわけで、今回時雨君がエントリーしてきた作品については以下、募集要項からの引用だ。先に目を通してくれ。




 ――――――――――――――――――――――――


【作品名】

 魔王の人間転生 ~美少女勇者と紡ぐ英雄譚~

(https://ncode.syosetu.com/n1768er/)


【簡易的なあらすじ】

 悪魔と天使に封印された魔王。

 封印前になんとか転生を果たすが人間に!?

 元魔王が人として生きていく中で一人の少女と出会う。

 少女との出会いがもたらしたものとは?

 王道ファンタジー、ここに開幕!


【セールスポイント】

 ・異世界転生・転移、レベル、スキルが存在しないハイファンタジーが好きな人

 ・主人公の成長物語が読みたい人

 ・ヒロインの可愛さに萌えたい人

 ・バトル展開に燃えたい人


【フックポイントの話数】

 21~24話

 ※1章の最後まで読んで頂くと10万字と少しになります。


『悩み』

 構成上1章の序盤~中盤が弱い。

 ユニークアクセスを解析すると1章のフックポイント前(※)で切られることが多いことも確認済み。

 ※1話のユニークアクセスと比べると40%ぐらいまで減る。

 ただ最近は以前よりも最後まで読んでくださる方が多くなっているので、手を加えずこのままでもいいかなとも思っています。


【本気で書いているかどうか】

 子どもの頃から色々な物語を頭の中で描き楽しんでいました。

 それらの世界を物語として形にしたい。

 それが書く理由です。



 ――――――――――――――――――――――――


 引用ここまで。





 さて、前回に引き続き魔王ものだ。ただ、前回のものは魔王要素が薄かったような気がするのに対し(なんせ初心者魔王だったからな)、今回はガチ魔王が主人公だ。転生とは書いてあるものの、俺がアレルギーを持っている異世界転生ものではなく、同世界内転生らしい。


 ちなみに活動報告を覗いてみたところ、どうやら昔は副題がちょっと違っていたらしい。うん、今のくらいの方が俺的に好みだ。旧題である「~裏切り者の悪魔たちを倒すため、人間になっても最強目指す~」ではなく、今の「~美少女勇者と紡ぐ英雄譚~」の方に一票俺は投じておこう。


 そして、魔王が人間に転生するっていうのはたまーに見かける設定だな。なんなら俺の第二処女セカンドバージン作も魔王が人間に(古傷が抉れるため以下略


 それとセールスポイントを見るになかなか硬派な王道ファンタジーっぽい路線のようだ。ふむふむ、こういうのは作者の力量がストレートに見れるので楽しみだ。また悩みの点でわりと自分で作品のことを分析しているところも乙だ。うむ、作者として共感もできる。


 さてさて、そんなわけでいつも通り、読んでねぇ奴らの為に以下、『魔王の人間転生 ~美少女勇者と紡ぐ英雄譚~』(以下、まにてん)の概要だ。









 主人公の名前はシヴァ。何を隠そう魔王である。


 彼には悩みがあった。あまりに強すぎるが故、挑んでくる勇者を悉く軽く返り討ちにしてしまい、『強者と心ゆくまで戦いたい』という願いを叶えられないのである。


「あぁ、伝説の勇者と戦いたい…」


 そうして今日も俺は玉座のうえでため息を吐く。生きて帰らせた勇者が強くなり、再び自分に挑んでくる日を心待ちにしながら。


 ―――そんな憂鬱な彼の前に、突然敵対者である天使たちと、部下である悪魔たちが徒党を組んで押し寄せる。


「突然ですがあなたには死んでもらいます」


 上級天使と上級悪魔。本来手を組むはずのない彼らが力を合わせ、主人公を封印しようとしてくる。ほう、これも面白い余興だと、魔王はわざと封印にかかってみたものの意外と解呪に手こずり焦る。


(致し方ない…こうなっては奥の手だ!)


 そうして魔王は転生術を使用する。肉体は天使と悪魔によって封印されたものの、魂は無事に逃げおおせたのだった。


 ―――が、とんだ不幸が魔王を襲う。悪魔になるはずだった転生先が何故か人間になってしまっていた。


 そんな予想外なことに見舞われつつ、彼は誓う。部下でありながら自分を裏切った上級悪魔たちへの復讐を果たすと。


 そうして日々剣と魔法の鍛錬を積む俺のもとにある日、一人の少女がやってきた。


「わたしはアリス。よろしく」


 そう名乗った彼女は勇者の加護持ち、つまりは幼き勇者であるらしかった。


 これは復讐を誓った元魔王と、誰よりも勇者たらんとする少女の2人が紡ぐ、努力と絆の英雄譚である。







 さて、こんな感じだった気がする。いつもの如くフィーリングだ、フィーリング。


 ちなみに上の概要で1つ俺は罠を張った。気づいた奴はいるかな? 違和感なく読んでしまった奴はもう一回読んでくるといい。


 もう1回読んでも違和感なかったのであれば―――まあ、しょうがない。どんな罠を張ったかはこの後の俺の感想を読めばすぐに分かるだろうから気にせずさっさと読み進めてくれ。











 ―――さて。











 実は今回、俺は非常に悩んでいる。どうやってこの『まにてん』の感想を書いていっていいやらと本気で悩んでいる。


 文字にすると一瞬だ。だけど知っておいて欲しい。俺は上の行を書いてからここの行に至るまでで2分くらい思い悩んだ。(短い?)


 そして悩んだ結果―――決めた。俺は今回、この作品の気になったところの方から書いていく。







 まず、本作を読むにあたって俺が最も苦しめられた部分について語っていく。『視点のブレ』についてだ。あぁ、概要のところでもちょっとお遊びしちまっていたが、そういうことだ。


 もうな、言っちゃなんだけどすげぇえげつなかったよ。ちょっと前までは主人公の一人称だったのがいきなり三人称になったり、逆もあったり、かと思えば急にヒロインの一人称になったり。


 それがさ、『話数またいで』とか『ちょっと長めの改行挟んで』とかなら分かるのよ。だが時雨君はそういった作法をまるで無視して通常の改行の範囲内で視点変更を混ぜ込んでくる。


 俺は最初、それを誤字だと思っていた。元々三人称だった作品を改稿して一人称に直した際に修正漏れでもしたのかなと思っていた。だってよ、そんな間違いを犯すような文章力には見えなかったからな。


 だが、読み進めれば進めるほどその事象は出てくる。ちなみにそれは第1章(約10万文字くらい)の終わりらへんまで続きそれ以降は鳴りを潜めるんだが、俺は当初本気でそれが誤字だと思っていたので手あたり次第に誤字報告をしてしまった。恐らく時雨君のところには大量の誤字報告が一気に押し寄せてきただろうからびびらせてしまっただろう。申し訳ない。


 ただ、第1章の途中まで読み進めて『これ誤字じゃなくて時雨君がごちゃ混ぜにして書いてるだけじゃね…?』と気づき誤字報告するのをやめたのだが……それ以降も第1章を読み終わるまで出てくるので、気になって気になってしょうがなかった。


 ちなみにどんな感じの視点変更になっているか、引用して例を出してみよう。


 ここでの文章は主人公の一人称。『俺』と言っているのが主人公であり、彼の名前はシヴァだ。ガイという師匠がいて、アリスというヒロインが隣にいる。それだけ覚えておいてくれたらいい。それじゃあ以下、引用だ。



 ――――――――――――――――――――――――


 門下生たちの元気な返事にガイはうなずいて答える。俺たちは靴を脱いで広間へと上がり、ガイに続いて掛け軸の飾ってある奥のほうに向かって歩いていく。門下生の前を横切るときにアリスを見た何人かが「誰だあの子?」「おぉ~、可愛いじゃん」などと小さく呟いている声が聞こえた。掛け軸の前まで着いたガイは門下生たちのほうへと振り向いてアリスのことを紹介し始める。


「諸事情によりこの子は俺が預かって稽古をつけることになった。その関係上この道場を使うこともあるから何かあったら面倒を見てくれ。アリス」

「はい。私の名前はアリス・ガーネット、今年で十歳になります。よろしくお願いします」

「お前ら、アリスが可愛いからといって変なちょっかいかけるなよ。話は以上だ。いつも通り素振りから始めるぞ!」

「「「はい!」」」


 勇者の加護やシヴァと打ち合える程度の実力があることには振れずにアリスの紹介を終える。

 話が終わると門下生たちは互いにぶつからないように広がってから稽古を始めた。その様子を一通り確認してガイはシヴァへ指示を出す。


「シヴァ。着替えたら空いている隅のほうでアリスを見てやってくれ。ナナリーから基本の型は教わっているはずだからその確認からだな」

「アリスの着替えはどうしますか?」

「奥の部屋に新しいのがあるはずだから取ってこい」

「わかりました。アリスはここで待ってて」

「うん」


 俺はガイの指示に従ってアリスが着る上着と袴はかまを取りに行く。


 ――――――――――――――――――――――――


 引用ここまで。




 ここでは急に『俺』視点ではなくなる部分がある。そう、会話文の間に出てくる文だ。


 >勇者の加護や【シヴァ】と打ち合える程度の実力があることには振れずにアリスの紹介を終える。

 >話が終わると門下生たちは互いにぶつからないように広がってから稽古を始めた。その様子を一通り確認してガイは【シヴァ】へ指示を出す。


 ここで何故【俺】ではなく、【シヴァ】となっているのか。ひとによっては気にならないかもしれないが、俺はこの【シヴァ】という文言が出てきた時点で『あれ?! ここって主人公の一人称じゃなかったっけ!? 今俺は誰の視点なんだよ!?』ってなってしまった。


 とまあ、ここはいいよ。最悪、『ああ、作者の誤字だろうな』ってスルーできるレベルだよ。時雨君が仕掛けたトラップの中の松竹梅でいうと梅レベルだ。


 もっと上位のものがある。次は竹レベルだ。


 ここでの文章はヒロインの一人称。『私』と言っているのがヒロインであり、ヒロインの名前はアリスだ。主人公であるシヴァを見送り、道場の先輩であるダリウスとジルベールから絡まれるシーン。それじゃあ以下、引用だ。



 ――――――――――――――――――――――――



 シヴァが離れて行く。私は立ち上がり、大柄な少年と向き合った。


「名前を聞いてもいいですか?」

「あん? 俺はダリウス・グレイグルだ。グレイグルの家名ぐらい聞いたことあるだろう?」

「そして俺はジルベール・アンドレイヤだ。ちゃんと覚えておけよ」


 大柄な少年がダリウス、そして細身の少年がジルベール。心の中で名前を反復する。グレイグルとアンドレイヤの家名は記憶に無いけどさっき自分たちのことを高貴な存在とか言っていたから貴族の家系なのかな?


「ダリウスさんにジルベールさんですね。よろしくお願いします」


 一応というぐらいの気持ちで礼をして、木剣を構える。

 アリスの殊勝な態度に気を良くしたのかダリウスが口の端をゆがめて笑う。


「あぁ、こちらこそ。じゃあいくぞ。ちゃんと手加減してやるから、なぁ!」


 言葉とは裏腹に、ダリウスが全力で切りかかる。寸止めなど考えていない上段からの袈裟けさ切り。ダリウスと同じ年頃の門下生と比べると鋭い一撃。剣を学び始めたばかりの小娘であれば、まず防ぐことはできないだろう。その切っ先を――アリスは一歩、後ろに下がって躱した。剣先がアリスの体の前を過ぎ去り、そのまま止まること無く床まで振り下ろされた。ダリウスは避けられるとは思っていなかったのか唖然となり、前のめりの体勢で体を強張らせる。

 その隙をアリスは見逃さなかった。両手で構えていた木剣を右手だけで握り直し、相手の喉元に突き出す。

 ただの一度も剣を重ねることなく、勝負がついた。


「なっ、んだと!?」

「私の勝ちですね」


 私は勝利を宣言して木剣を引き戻す。これで終わりだろうと、そう思っていたら……


「なに勝手に終わった気になってんだ! 次は俺が相手だ!」


 二人の手合わせを見物していたジルベールが、ダリウスと立ち替わるようにして割り込む。ぶら下げていた木剣を中段に構えて静止する。先ほどのアリスの動きを警戒しているのか動きを見せない。

 アリスはジルベールに対面するように無言で構え直す。視線をぶつけ合う二人。

 今度はアリスが動いた。木剣を振り上げ、間合いを詰めて、ジルベールの木剣へと打ち据える。そのまま剣先を巻き込みながら振り上げた。一連の動きを刹那の間に行い、ジルベールの手からは得物が飛び抜ける。空を舞った木剣がジルベールの背後へと落ちて乾いた音を響かせた。


「はぁっ?」


 ジルベールは何が起きたのか理解できず、空になった両手と背後に落ちた木剣を交互に見比べる。

 アリスはゆっくりと剣先をジルベールの顔に向けて問いかける。


「まだやりますか?」

「……ちっ」


 ジルベールが舌打ちをして身を翻ひるがえす。ダリウスと合流するとそのまま道場の外へと出て行った。

 二人が道場を出たのを見送り、私はほっと息をついた。


 ――――――――――――――――――――――――



 引用ここまで。



 まあ、なんだ。この引用した短い文章の中で『アリス一人称→三人称→アリス一人称→三人称→アリス一人称」と合計4回も視点変更が行われている。いや、最初は普通に誤字だって思いたかったよ。でもどう考えても三人称視点のところの『アリス』を『私』に置き換えても不自然なんだ。つまり、時雨君はここを三人称視点のつもりで書いているということだ。俺はここらへんでようやく『あれ、これって誤字じゃないの…?』と思い始めた。


 ちなみに、勘の良い奴なら気づくだろうが、時雨君が何を基準に一人称と三人称を書き分けているか分かるか?


 そう、恐らくだが彼は『俯瞰して書きたいシーン(戦闘シーンとか人物の対比シーンとか)』を三人称で書いて、それ以外の心の動きとかを一人称で書こうとしているんだ。


 ―――いやいや。待ってくれ時雨君。そういうのはよ、二者択一であるべきなんじゃねぇのか?


 分かるよ。お前がそうやって書き分けたい気持ちは非っ常〜に分かる。同じ作者なんだからさ。非常に気持ちは分かる。


 だがよ、それってどっちを採用するかせめてシーンごとに判断して視点を統一してやるべきだろうが。こんな視点があっちこっち動いてちゃ読者が振り回されちまうだろうが。


 例えば上記のシーン、読者たる俺はアリスに憑依して一緒に物を見て動きを感じて世界に触れていたんだよ。それなのに突然途中で三人称視点に変わっちまうと、読者として立ち位置が行方不明になっちまうんだよ。まあ、多少大げさな言い方かもしれないが、実際没入感がそこで一回途切れるんだよ。一応言っておくが逆もしかりで、三人称視点で俯瞰してみていたはずなのにいつの間にか一人称に切り替わるとそれもそれで世界への没入感が途切れちまうからな?


 せめて、せめてさ。視点変えるときはいつもより長めの改行入れるとかさ、してくれよ、マジで。まあ上で引用していた部分は流れがあるから、改行で視点変更を示すんじゃなくてきちっと流れのままに一人称or三人称のどちらかで書き切った方がいいと思うけどな。


 ちなみに視点変更ばらつきの松レベルは―――ここではあえて引用しない。12話で特に目印なく『主人公の一人称⇒三人称⇒ヒロインの一人称』と流れるように視点が変わっていった時には「へはぁ~ん???」って変な声が出ちまったからな、マジで。


 時雨君。お前個人では気にならないかもしれないし、『語りたいことが色々あって視点ばらついちゃうだろうけど必要経費!』とか思っているかもしれないが、読む側にしてみればこれは非常につらいストレス要因なんだ。


 早急に直した方がいい。これはマジで深刻な脱落要因になってるぞ、きっと。少なくとも俺はこの企画の強制力なくしては10話以内に見切っていただろうよ。







 さて、俺が今回最も言いたかったことが終わってほっと一息だ。


 次、非常に細かいところではあるが『世界観に浸る為の五感表現の物足りなさ』について言及しておこう。この『まにてん』について、何となくだが五感を刺激する描写が不足しているように感じ、俺的に若干の物足りなさを感じてしまった。


 どういうことか。つまりはせっかくの王道ファンタジーなのにファンタジー世界観というか異世界情緒に関わるような描写がほとんどないのだ。


 とてつもなく惜しいんだ。せっかくの王道ファンタジー物語で、中世ヨーロッパ風のザ・王道な世界観だろうに、『王都に行ったら城壁があって遠くに城が見えるんだろうなぁ』とか、『聖教会についた。すごい荘厳な教会があって鐘がリンゴン鳴ってるんだろうなぁ』とか、『ギルドについた。ちょっと年季の入った建物の匂いとか建付け悪い扉とかがキィキィ鳴ってるんじゃないかなぁ』とか、そういった妄想を膨らませてくれるというか世界に入り込むための情報が一切ないのだ。いや、所によりあるにはあるんだが序盤の主人公が育った孤児院の内外くらいでしかそういった描写がない。


 別にいいんだよ。めっちゃ細かく語れとは言わない。でもさ、ほんの一文だけでもあっていいじゃない? 損じゃないよきっと。


 時雨君は結構、必要最低限その場を把握できるだけの描写はしてくれているんだよ。だから俺もストーリーを追う分には全く問題はなかったんだけどさ、ある程度読み進めた後にふと『この作品読んでて異世界情緒感がないなぁ』って思ってしまったわけ。


 物足りない。ちょっとだけ、俺的に、物足りない。


 この小説って例外はあるけど基本的に主人公の一人称じゃない? それで主人公が新しい土地や町に行った時に、何も刺激を受けない(=何も描写がない)っていうのは寂しいと俺は思った。『新しい街についた!』ってさ、ゲームとかだとわりとテンションが上がる瞬間じゃない? そういうところの機微をやっぱり王道ファンタジーなら大事にして欲しいなぁ!!なんて、わがまま言ってみたわけさ。


 そうして本題に入るわけだけど、経験則ではあるけれど五感表現―――特に味覚とか嗅覚とか聴覚とかの方が顕著だけど、そういった描写があるシーンは印象に残りやすい。基本的に小説って目で読むものだからさ、視覚から取り入れた他の五感の刺激ってわりと読者を楽しませられると思うのよ。


 もちろんそれが本筋ではないから目立ちすぎるのもいけない。けれどこの『まにてん』ではそれらの描写がなかったように思えるので、そっと添えてあげれたらいいなぁなんて、一読者の感想でした。


 以上、気になったところ終わり。












 というわけで、今回はいつもと逆のパターンだ。ここからこの作品の素晴らしかったところを語っていこう。


 まずな、この作品にはアリスというヒロインがいるんだが、その彼女がめちゃくちゃに可愛いんだ。


 そして戦闘の書き方もいい。その中でもアリスを応援したくなってしまう。主人公もいいんだけど、アリスがいいんだよなぁ〜、これが。


 それでもって、日常パートでもアリスが可愛い。全編通してアリスが可愛い。


 以上。















 ―――さて。














 ああ、すまない。クソみたいな感想になっちまったな。だがこれにも深いわけがあるんだ。だからその振り上げた拳を一旦下ろして言い訳を聞いてもらえると助かる。


 まず、ここから先は若干のネタバレ要素が含まれている。ただ本音を言うとな、なるべく今回の作品はネタバレしたくないんだ。でも感想を言うにあたってどうしてもネタバレは避けられない……と、そんなわけでここからは悩みに悩んだ末の、極力ネタバレ要素を削って削っての感想になっている。


 だってさ、例えばここで俺が『以下重要なネタバレがある。だけど今回の作品は俺の感想を読む前にお前らも読みに行って欲しいんだ』なんて仮に言ってもお前ら読みにいかないだろ? 俺がべた褒めしてたりしたら読みに行ってくれるかもしれないが、どちらにしろ俺の感想読む前に行くことはしないよな?


 それでいうと今回、俺にとってそれは本意ではない。たっぷりとネタバレ感想披露して、それを読まれた後に作品を読みに行かれるのはちょっと寂しい。ということで今回はほんのりネタバレ要素しかここでは言わないように努力する。


 もしかしたら思うがままに垂れ流しになってしまって、ネタバレになってしまっている部分もあるかもしれないが。そんなわけで存分に俺の感想を読んでから、興味を持ったら読みに行くといい。


 つまり何が言いたいかって言うと、こっから下は感想の体を為したレビューみたいなもんだってことさ。






 まずな、この『まにてん』において、ヒロインであるアリスがとっても良い子で可愛いんだ。芯があって強いんだけど女の子していてとても可愛い。そして勇者としての責任と自覚を強く持っていて向上心も持っていてそして超可愛い。


 つまり(つまり?)、典型的な萌えではない。いや、そういった要素がまったくないとは言わない。だが、時雨君はこのアリスという少女の心を極めて良く掴んでいて、それを最高の形で表現してくれているのだ。


 ちなみに、いつぞや最高のヒロインを持ってきたにもかかわらず主人公がクソ過ぎて読むに耐えられなかった作品があったな、うん。それとは違って主人公もまた真っ当に良い奴なのだ。人間に転生しなければならなくなった要因である、魔王時代の部下たちへの復讐を心に誓いつつ、もはやそれよりもアリスを想う気持ちが心を占めすぎていてどうしようもないのだ。いや、どうしようもないって言っても感情が暴走しているわけじゃない。なんか溢れてるんだよ、愛が。


 そして主人公とアリスの関係性がまた良いんだこれが。主人公最強ものにおけるヒロインって、結構守られる系になりがちなんだけど、この作品ではわりとそうではない。お互い切磋琢磨していく感じなのだ。もちろん主人公は強いわけなんだけど、決して常に最強なわけじゃない。


 主人公の身体自体は普通の生い立ちからスタートしていて、そこから魔王時代の経験や知識をもとに強くなっていくんだが、倒さなくちゃいけない相手である上級悪魔は勇者レベルの加護があっても普通に負けるレベルの強敵だ。普通に戦ったら主人公も普通に負けてしまう。ではどうやって戦うのか?


 仲間との共闘、ヒロインであるアリスの覚醒、それでもって主人公の力と知恵、愛と友情。そういったものが勝利のキーファクターであり、主人公たちが強敵を打ち破った際には万感の思いで拍手喝采なのである。もちろん、感情論的な勝ち方だけではなく、俯瞰的にその戦闘を眺めてみても敵味方とも非常に合理的に動いており、どんな見方をしても戦闘が成り立っている。


 もちろんケチをつけようと思えばつけられる。例えば上で言っていた視点のばらつきなんかが起こると若干萎えるし、滅茶苦茶ユニークな戦闘シーンが見られるわけじゃない。


 だけどそこにある仲間との絆。誰かが欠けていたら負けていただろうと容易に想像できる状況。戦闘シーンというファンタジー小説における一番の盛り上がりポイントにおいて、舞台・状況設定のお膳立てが非常に上手い。上手いのだ、時雨君。


 あ、そういえば思い出したぞ、時雨君。めっちゃ話の腰を折っちまうんだが、君がセールスポイントで謳っていた『異世界転生・転移、レベル、スキルが存在しないハイファンタジーが好きな人』というやつ、残念ながら第3章の途中からスキルっぽいものがあったようななかったような気がしたんだがどうなんだ? ……まあ、あれは剣技の部類であってスキルじゃねぇのか? うん、ちょっと浮いている気がしたんだ。いや、作品の質を貶めるってほどじゃないんだが、出てくるのがいきなりだなぁって思った。第1章くらい(師匠が戦っているあたりとか)から名前だけでも出しておいた方がいいんじゃないかってそういえば読んだ時に思ったぞ。


 ―――ってか、待て待て。俺はアリスが可愛いって話をしていたんだ。それなのにいつの間にか戦闘シーンを褒めていた。おかしいな、話を戻すぞ。


 とにかく、時雨君が描くこのアリスはとてつもなく可愛いのだ。その『可愛い』というのはひとえに、時雨君が彼女の心理描写というか仕草というか、そういうものを最良のタイミング且つ最高の形で表現してくれるからに他ならない。


 媚びはないのだ。いや、全くないとは言わないがな―――ってさっきも似たようなこと言ってたな。つまりは仕草にしても台詞にしても、時たまズバッと煌めくようなシーンがあるのだ。常に強い光源で光っているわけじゃなくて、ふらふら~っとストーリーを追いかけていったら油断したタイミングでグサッとやられるのだ。


 特に18話、こいつぁはやべぇ。やべぇ破壊力だった。こんなヒロインの台詞は俺じゃあ思いつかない。具体的にどこかと言うと前回の日誌のあとがき部分参照だ。完璧パーフェクトだ、時雨君。


 そんなわけで時に弱く、時に甘く、時に強く、時にかっこいいのだ。ずるい、ずるいぞ時雨君。こんなことされたら主人公じゃなくてもアリスを応援したくなってしまうだろうが。


 そして、そう。俺をこの作品のファンたらしめた要素はなんといっても『アリスも強い』ことなのだ―――あ、いや、これはあれだぞ。俺の作品の主人公もアリスで強いからとかそういうつまらない話じゃなくてだな。つまりは、今まで上で語ってきたように、読者はいつの間にか『アリスを応援したくなる』んだけど、実際に『アリスも強くなっていってくれる』のがたまらなく気持ちよく心地いいって話なんだ。


 主人公はアリスを庇護下に置くようなことはしない。対等な意識でもってアリスに接している。「アリスが強い勇者になるまで守ってやろう」ではなく「アリスが勇者になるその時まで、俺はその隣を共に歩んでいきたい」というスタンスなのだ。なにそれ萌える。萌えるシチュエーションじゃないかっ!!


 げふんげふん、一回落ち着こう。


 さて、この作品は恐らく主人公とアリスのダブル主人公ものなんだが、比率としては主人公視点の方が多い。読者は主人公と一緒にアリスを応援して、支え合って、時に仲を育んで、そして強くなっていく。強敵と共に戦い、あるいは二手に分かれてお互いを信頼し合いながら戦い、でもちょっと心配で、でも足を止めない、といった感じで非常に萌えるのだ。萌えるシチュエーションがオンパレードなのだ。


 そして今まで褒めてきたそれらキャラ、シチュエーション、戦闘シーン、ついでに世界観などなど様々な王道要素を表現する際に邪魔していない時雨君の文体も素晴らしい。視点のブレという俺的欠点を抱えつつも、それ以外に作法で気になるところはなく、読みやすく、さらさらっと読んでしまっても意味が頭に入る癖のない描き方だ。(あー、ただ後のお悩みのコーナーの時にも言うが、序盤はちょっとつらかったかも?)


 細かいところは読者の想像に任せ、しかし読者を惑わせないように重要なところはきちんと描き切るという心配り。偏屈読みとして自覚のある俺ですら、一個も矛盾点や読者置き去りポイントを感じなかった仕上がり。素晴らしい、素晴らしいぞ時雨君。


 (視点のブレさえ目を瞑れば)文句なし! 文句なしで王道ファンタジーの至宝ッ!! つまりこれは素晴らしい作品であり、もう上で流れのままにバラしてしまったが、俺はこの作品のファンになったのだ。


 ただし、読んだのは第3章の終わりまでだ。大体30万文字くらいのところか? 今現在投稿されているところの約2/3くらいのところまでだな。


 続き? 気になるに決まってるだろう。あそこからどうなるのか気になりすぎている。すげぇ癖がありつつめっちゃこれも推せる仲間が加わって、主人公とアリスとその新メンバー、そのほか仲間たち。彼らがどういう関係になっていくのか楽しみで仕方がない。きっと時雨君ならそこの人間模様を美味しく調理していってくれるだろうと、ハイクオリティーな3章分付き合ったからこそ安心して期待できる。


 だが―――俺は極力完結していない作品を最後まで読むことはしないのだ。この作品は一応第4章まで掲載完了していて、現在第5章を更新中だ。本当は第4章の終わりまで読み進めてみようかとも思ったが、もしその章終わりでめっちゃ続きが気になる展開になってたら困るのは俺じゃない? ってなわけで、ギリギリ耐えられる第3章終わりで俺は一旦読むのを止めたのだ。


 というわけで時雨君、完結したらいの一番で見に行くから言ってくれ。あ、いや、作者にプレッシャーを与えるのはモチベ的に良くないよな、うん。


 絶対完結させろよな!!!!!!!


 以上。








 さて、それじゃあ久しぶりにお悩みコーナーへの返信をしていこうか。


『悩み』

 >構成上1章の序盤~中盤が弱い。

 >ユニークアクセスを解析すると1章のフックポイント前(※)で切られることが多いことも確認済み。

 >※1話のユニークアクセスと比べると40%ぐらいまで減る。

 >ただ最近は以前よりも最後まで読んでくださる方が多くなっているので、手を加えずこのままでもいいかなとも思っています。


 さて、俺的に思うに『視点のブレ』はかなりきついと思う。それは直した方がいいと思うぞ。

 それ以外で言うと―――読み始めた時に気になったんだが、第1話の部分、説明が長すぎると思った。出だしがシヴァの結構軽めなセリフから始まったのに対して、地の文でだら~っと説明されてる部分、あるじゃない?あれを出来るだけ会話形式にして、足らない情報は読者に想像させてあげればいいと思うんだ。


 序盤を結構会話文多めにして読者の足を駆け足にさせて、ついついっとアリス登場まで軽く読ませてやればいいんじゃないかなと思った。俺的にはわりと4~6話あたりで既にフックかけられてた気がしたからな。読んでてアリスが普通のヒロインだったり守ってあげたい系ヒロインかと思ったら、なんかそうじゃなさそうだぞって気になっていたからな。


 ―――うん、こうして改めて見直しても良い作品だ。(視点のブレさえなければな!!)


 以上。







 ※ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。





【作品名】魔王の人間転生 ~美少女勇者と紡ぐ英雄譚~


【URL】https://ncode.syosetu.com/n1768er/


【評価】7.5点(視点のブレを加味しなければ8.3点)




【PC版】


挿絵(By みてみん)




【スマホ版】


挿絵(By みてみん)



 感情グラフは第1章まで。ちなみに視点のブレを気にしなかった時想定のものだ。正直テーベと同じく大体面白さが50~55点だったのでグラフが意味をなさないと思ったので作る気はなかったが、まあ、何となく一章だけ作ってみた。


 ちなみに視点のブレを加味すると30点の部分が増えて10話くらいまででモチベが陥落するからな。時雨君、他の読者は知らんが俺はそうなる、ということを改めてここでも伝えておこう。



 さて、ちなみに8点以上の点数の作品に対して、どうしたらそれ以上の点数が取れそうかなんて、言うつもりは俺にはねぇ。


 だって、恐らく8点を叩き出している時点でその作品が持つポテンシャルを最大限に活かしているはずで、例えば今回の『まにてん』を9点にしようとしたら、そもそも世界観を変えたり主人公の性格を変えたりストーリーを変えたりしないといけないだろう。つまり、「この作品では俺的評価の8.4点以上は取れない」ということだ。


 フィーリングだ。つまり、この『まにてん』は8.3点満点中8.3点ってことだ。(視点のブレさえなければ)


 9点以上にする為には世界観をかなり作り込んだり、ストーリーに大きなユニーク性を持たせたり、読んだ俺をはっとさせてしまうほどの価値観をぶつけてきたり、そういったものが必要になってくる。例えばそうだな…今までの作品で9点以上を軽く取れそうなポテンシャルだったやつは畢罪の花くらいか。もちろん、それ以外の作品も頑張りゃ取れるだろうよ。


 そしてそういった要素は今の『まにてん』にとって邪魔になるものばかりだと思うので、結局はこの『まにてん』が『まにてん』である限り、8.3点満点なのだ。少なくとも俺の中では。


 あ、ちなみに俺的な9点を取っても世の中全般で受け入れられるとは思うな?あくまで俺という一個人の評価の話でしかねぇからな?じゃねぇとこうして偉そうに他人様の作品にケチつけたり点数つけて公表したりしねぇよ。


 もし公明正大な評価が欲しいんだったら公募やウェブ大賞にでも出しちまえ。その方がよっぽど為か金になる。いいな?


 そんなわけで、俺はこれからも俺が思ったままの『本気』の感想を書いていく。もしその感想を受けて話の内容や書き方を変えたとして、その改稿が俺1人を喜ばしてその他全員の奴が望んでいないものだったとしても俺は責任を取らない。


 いつも言ってるだろ?俺の個人的意見でしかねぇから真に受けるも聞き流すも好きにしなって。ま、そんなわけだ。


 以上、さて次は乞食氏……じゃなかった、孤児騎士野郎だな。


 愛の鉄拳(ヒーリングナッコウ)ッ!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] お久しぶりです。時雨です。 スコップして頂きありがとうございます! >ちなみに上の概要で1つ俺は罠を張った。気づいた奴はいるかな? 違和感なく読んでしまった奴はもう一回読んでくるといい…
[良い点] 表現力文章力以外はほぼベタ褒め…だと……? つまりこれは媒体が漫画やアニメであれば非の打ち所のない完璧な作品であるという事! ジャンルも私の好みっぽい。ブクマしてきました。 [気になる…
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