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12.虫から始める魔王道

 

 どうも、あっちいけだ。




 さて、今回はまずどーでもいい話を一個挟もう。俺の空白の1年9カ月に関わる話だ。


 あ? 違う違う。俺がどう過ごしていたかなんてそんなつまらねぇ話じゃねぇ。俺がマジでなろうにログインしていなかったからこそ起こっている弊害についての話だ。


 俺の脳内なろう環境は1年9カ月―――ああ面倒くせぇからもう2年とするぞ。俺の脳内なろう環境は2年前から更新されていねぇ。つまりは今のトレンドが何であるかその詳細を知らねぇ。


 たしか―――あれだ。『もう遅い系』とかが流行ってるんだったか?あれ、これも古いのかな…?ん~、分からん!ってなくらいの知識量なわけだ。つまり言いたいことっていうのは俺が持っているなろうに対してのイメージ、なろう読者に対してのイメージは若干古いかもしれねぇってことだ。


 そこのところ、悪ぃが理解してくれ。一応ハイファンタジーのランキングを覗いてみて情報の更新を図ってみたが、昔通りの作品が並んでいるようにしか見えなかった。『異世界転生』にしろ『追放系』にしろ『もう遅い系』にしても本質が変わってないね。


 ってなわけで、正直、俺の知っている当時と今とで、なろう界隈におけるマジョリティー読者のマインドはそんなにずれてねぇんじゃねぇかなとは思っているが、もし俺がずれたことを言ってたら生暖かい目で見守っておいてくれ。そしてあわよくば教えてくれ。それを新たな価値観としてインプットしていくから。







 閑話休題。







 さて、そんなどーでもいい話を一個挟んで、早速本題に入っていくぞ。


 今回踏み台を差し出してきたのは『稲生景いなおけい』君だ。これは稲生が苗字で、景が名前的な扱いでいいのかね? それとも『否OK』(いな、おっけー)の語呂合わせだったりするのか? ちょっと活動報告を覗いてみたりしても由来は分からなかった。


 まあいい。きっと苗字と名前だろうと判断して基本的に君のことを稲生君と呼ぶことにしよう。本当は否OKから派生させて賛否両論君とかにしようと思ったけど原型とどめなさ過ぎだし、やめておいた方が無難だよな。うん。


 というわけで、そんな賛否両論君が今回エントリーしてきた作品については以下、募集要項からの引用だ。先に目を通してくれ。



 ――――――――――――――――――――――――


【作品名】:虫から始める魔王道

(https://ncode.syosetu.com/n5278cy/ )


【簡易的なあらすじ】:虫を愛する男が異世界でカブトムシに転生、自らを生み出した蟲の魔王の後を継ぎ、愛する虫達に囲まれて立派な魔王を目指す物語。


【セールスポイント】:主要キャラの大半を虫で構成しつつ、それぞれの虫達を個性的に書き、戦闘部分は強敵との熱き激闘を意識しました。


【フックポイントの話数】:22、23話だと思います。


『悩み』:虫が苦手な方でも読めるように書いているつもりですが、実際出来ているかどうかが知りたいのです。


【本気で書いているかどうか】:自分が愛する虫達への愛となろうで3年間書いてきて培ったものを全てつぎ込み、自分の書きたい小説を書いています。



 ――――――――――――――――――――――――


 引用ここまで。





 さて、すげぇ作品がエントリーされてきたぞ。まさかの虫だ。数ある転生物の中でも虫に転生―――それもカブトムシに転生するやってのは唯一無二の設定じゃねぇのか?


 しかもただ単に主人公が虫です!ってなわけではなく、稲生君は糞真面目にも主要キャラの大半を虫で構成しているときた。こいつはぁヤバイ匂いがぷんぷんするぜ。


 ちなみに、俺は虫が好きではない。特段苦手というわけでもない。目の前に虫がいたらげんなりしてしまう。そんなくらいの読者ステータスだ。果たして虫メインの小説なんて読めるんだろうか?


 しかし、稲生君は俺の不安を嘲笑うかのように『虫が苦手な方でも読めるように書いているつもりだ』と言ってきてくれた。うむ、それなら期待半分不安半分で読んでみようじゃないか。





 というわけでだ。いつも通り以下『虫から始める魔王道』(以下、虫から魔王)について概要だ。






 私は死んだ。昆虫採集のために入った森で蜂に刺されて死んだのだ。

 ああ、嘘だろ。こんな人間って簡単に死ねるのね。チーン。ああ、身体から魂が抜けて段々天に召されていく。今後生まれ変わるなら、昆虫に生まれ変わりたい~、ふわ~、臨終。


 ……そうして気づいたら、私はカブトムシになっていた。


「キュイィィィィィィィィィィィ!!」(やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)


 歓声を上げる私こと、カブトムシ。しかしカブトムシこと、私は生まれてすぐに声を掛けられる。


「おぬしに儂のスキルと名を継いでもらい、新たな魔王になってもらいたいのじゃ!!


 そう声をかけてきたのは巨大な姿。彼は虫の魔王ヤタイズナと名乗った。そして二つ返事で魔王となることを承諾した私は無事に初心者魔王と相成った!


「って初心者魔王ってなにー!? ってかなんか普通にしゃべれるようになってるー!?」

「それはじゃな、おぬしが魔王になったからじゃ」

「ってあなただれー!?」


 こうして初心者魔王となった私ことヤタイズナは、魔王継承の影響で極小サイズに縮んでしまった元魔王ことミミズさんと二人三脚で、真の魔王となるべく冒険の旅に出るのであった。






 うん、こんな感じだったような気がする。


 稲生君、いつも通りフィーリングで書いてみた。微妙に違うかもしれねぇが気にするな。どうしても気に喰わねぇってんなら感想欄で大いに暴れてくれて構わない。










 さて、それじゃあ早速この『虫から魔王』についての感想に移って行こう。まずは良いところから語って行くぞ。


 まずは何といっても主人公及びそのほか主要キャラが虫でほぼ統一されていること。これと異世界転生ファンタジーものをガチで組み合わせて書いている奴は恐らく稲生君を除いてほとんどいないだろう。抜群のユニーク性だ。しかも一発ネタ的に虫を起用しているわけじゃなく、作中で糞真面目に虫の解説をねじ込んでくるほどの虫ラブっぷりだ。


 やれこの虫のこういうところがかっこいい、この動作がたまらん、この子のこういうところが可愛くて好きだ。そう主人公に熱弁を振る舞われると『どれどれ、ちょっとどんな虫なのか調べてみようかな』という気にまんまとさせられてしまい、検索してしまっている自分がいた。その時点で俺は稲生君の術中であり、まんまと虫の啓蒙活動に乗せられてしまっていたのだ。悔しい!でもk(以下略



 また、想定しているだろう読者ターゲットに対して非常に取っつきやすい構成をしている。地の文は読む負担が軽くなるように極力削られ、目でさっと追っていきやすい。またスキルシステム・レベル性・鑑定スキル・ガチャ要素・『レベルアップしました』等のシステム音声などなど、なろう界隈で受け入れられている道具を存分に活用している。


 また良い意味で突飛なシナリオ展開(過度なシリアスや、主人公が精神的に追い詰められる等のストレス展開)がなく、読者が安心してストーリーを追っかけていきやすい構成になっている。


 想定しているだろう読者に対し、稲生君が十分な配慮をしていると感じた。


 以上。









 さて、今回は流れで気になったところももったいぶらず言っていこうと思う。感情グラフは訳あって最後に置いておくぞ。


 まず、気になったところの1つ目としては『ヒールの役者不足感』。本作では主人公の前に立ちはだかる敵が話の区切りごとに何匹か出てくるんだけど、そいつらを倒さなきゃいけない動機(例えば人里を攻めてくるとか、仲間を拉致ったとか)は明示されるもの、その敵を倒すことによるカタルシスが弱く、強敵を倒した時の喜びというか、主人公がやってくれやがった!感が薄いように感じた。具体的に言うと強敵を倒した際に『あ、倒したの?』といった感じのテンションに読者たる俺はなってしまっていた。


 それはひとえに『こんな凄い敵をどうやって倒すんだろう…?』とか、『こんな悪い奴やっつけてやってくれ!』とかっていうカタルシス前兆というべきものがないからではないかと思っている。


 どういうことかというと、大体主人公の前に現れる敵は会敵した初回で倒される(中には撃退しただけとか手加減されていただけとかもあるけど)。そしてそれらの敵の大体は主人公と会敵するまでのエピソードがない。つまり読者にとって初見さんなわけだ。こういった作品を読みに来る読者はカタルシスを期待していると思うので、そのための事前準備を挟んでおいた方がいいと思った。


 もちろん、すべての敵にそういったエピソードを用意しろとは言っていない。それはそれで鬱陶しいだけだし、同じ展開でマンネリ感を生んでしまうからな。


 要所要所のクライマックス的な敵がいるだろう? 例えば、女王蟻であればバノンさん以外の味方が食われるシーンを描写するとか、ローカスト戦の前に蝗害こうがい(←なぜか変換できない)に実際に遭って被害被っている人たちを描写するとか。そうした話を挟んでおくことで、主人公が見事彼らを倒してくれた時に『よくやってくれた!』と稲生君が想定しているだろう読者は喜んでくれるはずだ。


 そうした読者は恐らく、主人公たちが被害を受けることには強いストレスを受けるが、それ以外の有象無象が被害を受ける分にはきっとノンストレスだろう。存分に描写してやるがいい。


 それか、なんだろうな。よくあるのが「主人公を馬鹿にしてくる」とか。初回の接敵は特に戦闘もなく主人公集団が『的外れな感じで』(←重要)馬鹿にされるだけで終わるんだけど、その後実際の戦闘回の時に主人公の実力が判明して驚愕のままに死んでいく敵、みたいな展開もよくある。ほら、覚えがあるだろう?そして実際にそういう展開は受けがいいんだこれが。


 この作品にはメリハリがないと俺は感じた。主人公が圧倒的に強いわけではなく、接戦や逆転劇を演じることが多いはずなのに、「どうせ主人公が勝つんでしょ?」と戦闘の途中で感じてしまい、勝利するところまで読み飛ばしてしまいそうになる。


 主人公が優勢な状態から勝つ瞬間までを読んでて気持ちよくさせる為に、何かしら工夫がした方がいいのでは、と俺は思った。






 そして気になったところの2つ目として、『ヒロイン要素の露出の少なさ』だ。ああ、ここで言っている露出とは肌のことではないぞ? ストーリーへの参加具合のことを言っている。そしてここで言っている『ヒロイン要素』っていうのは、萌え要素なり女キャラ要素なり好きな言葉に変えてもらっていいが、『メインヒロインらしさ』ではないから注意だ。


 稲生君が想定しているだろう読者はより積極的に(←積極的な、ではないから注意だ)ヒロイン要素を求めている。主人公にべた惚れしたり、べたべたしてきたりツンツンしてきたりするヒロインだ。あるいは物理的な距離ではなくとも常に一緒にいてくれる、頼ってくれる、優しく接してくれるなどの精神的距離が近いヒロインでもいいと俺は思っている。


 さて、その観点からするとこの『虫から魔王』にはヒロイン要素が序盤に欠けている。これではいけない。ヒロイン要素はもっと序盤から入れるべきだと俺は思う。ちなみに、この話でヒロインらしい人が初めて登場するのは何話だろうか?第6話の部分でオリーブが登場するが独白めいた話だし、主人公との絡みもないからこれは除外しよう。


 次にヒロインらしいものが出てくるのは第10話のパピリオだ。うん、虫だけどね。いや、虫だけどヒロイン要素があってもいいと思うし、むしろこの作品ならそれをすることによって面白さとユニークさがグンと上がる気がしている。


 しかし残念ながらこのパピリオが実はメスだったと読者へ明示されるのは第38話の羽化の時点でだ。それまでとことん影の薄い存在であった彼女に対して、俺はオスであるかメスであるかもろくに考えずそこまでたどり着いてしまったので、そんな美味しいシチュエーションがあるんだったらもっと序盤から出しておいてよ!と思った(確かに途中で「きゃああ!」って悲鳴上げてたりしてたからヒントは貰っていたんだが……すまん、全然そのシーンで性別を意識してなかったわ)。


 オス4匹に囲まれながら暮らす紅一点のパピリオ―――序盤のどこかで彼女のメスなりの悩みを独白する話があってもいいと思うんだが! どうだろう? キャラ立ちもするし、ヒロイン要素もぶち込めるし、いいんじゃないかなぁと思う。


 まあ、そんなわけで第26話でウィズが落下してくるまでまともにヒロインめいたものが登場しないのは勿体ないと思う。ミミズさんという悪友ポジがいるんだから、ヒロインポジも序盤から出してやって両翼で作品を羽ばたかせてやった方がいいと、俺は思った。(どうせヒロインが増えたところでハーレムにするだけなんだから、主人公の一途さなんて必要ねぇだろ?とか言ってみたりする)






 そして3つ目に『キャラ立ちの弱さ』。特にしもべの虫たちのキャラが立っていない。


 彼らは基本的に同じ境遇から生まれてくるだろう? 主人公が生み出した『昆虫の卵』から生まれ、名前を決めて欲しい!と言ってきて、仲間になる。つまりは『主人公との出会いの場(初登場回と言い換えてもいい)』というキャラ立ちに強く影響する場面が全員画一的なのである。そこでまずキャラ立ちがどうしても弱くなる。


 そしてしもべになってからもさらに課題がある。稲生君の涙ぐましい努力の跡が各キャラの口調の違いとして如実に表れているのだが―――残念ながら口調だけによってキャラの差を出すことは出来ないのだ。もちろん、『うぐぅ』とか『にぱ~』とかみたいな奇声―――げふんげふん、独特な言葉を発していればそれだけでキャラ立ちしてるっぽく見えるんだろうけどさ。キャラ立ちってそういうのじゃなくない?


 例えば、もしかしたら読んだことないかもしれないけれど、主人公=主、仲間=しもべの似たような構成のなろう小説でオー〇ーロードっていう奴あるじゃない?まあ、俺はあれを単行本版とアニメでしか見た事ないんだけどさ。あれでいうと仲間であるしもべキャラは主人公が異世界に転移した段階で勝手にしもべになるのでほぼ初登場の仕方は画一的なんだけどさ、その後しもべの各キャラが主人公の言葉を独自に解釈し、各キャラの思考に基づいて色々しでかすってところにキャラ立ちを感じるわけだよ。


 そういう観点からみるとこの『虫から魔王』のしもべたちは行動そのものにキャラ差がない。何なら全員が一斉に同じような言葉を口調違いで発するような場面が頻出する。これ、しもべキャラがNPC化してないか?いや、たまにならいんだけどさ、基本的にこいつら虫としての外見特徴と戦闘方法と口調以外に何らキャラ差がないよな?と俺は感じた。


 例えばさ、スティンガーは毒持ちで子供っぽい天然口調なわけじゃない? 彼(彼女?)には『たまに予期せぬ毒を吐いてくる毒舌キャラ』みたいな感じにキャラをつけたりさ。もしくは味方には優しいけど敵が毒で悶絶するのを嬉々として眺めるみたいな幼い精神だからこそのサイコパスめいたキャラにしても面白いかも、な~んて思った。(あくまで俺の妄想だ。もし君の中でのスティンガー像を穢してしまったなら申し訳ない)


 他にもテザーとかさ。一見たどたどしい言葉遣いだけど仲間を助ける描写が多いじゃない? 彼なんかはわりと仁義を持っているやつでいくら敵とはいえ情けをかける場面もあって、それで改心した敵が『テザーの兄貴!』みたいに慕ってくれて、でもテザー的には自分を慕われるのは予想外で『俺、兄貴じゃない、言う…』みたいに困ってるシーンとかさ、あったりするとキャラ立ちするわけじゃない?!(これも俺の中での妄想だ)


 他にはソイヤーとか。彼なんかは結構忠義に厚い口調をしているけど、実際忠義の程では他のしもべも変わらず厚いのでいまいち口調がキャラ立ちには役に立ってないような気がするんだよね。そのせいか俺が各しもべキャラに妄想個性を付与させていった際にこいつは結構悩んだが、例えば戦闘になると戦闘狂になって、主人公の制止の声すら聞こえず単身突っ込んでいって、その後いつも後悔の念に駆られる、とか!(言わずもがな。これも俺の中での妄想だ)


 ってなわけでさ。めっちゃ脱線したけど実際のところ、今の『虫から魔王』ではほぼ仲間キャラの個性が皆無だと思ったんだ。だから上で語ってきたようにどんなキャラなんだろう?という妄想がしまくれてしまう。


 さて、それでいうと第41話でそれぞれのしもべの一人称視点が描かれている。ここが稲生君的には各しもべのキャラ立たせ回なんだろうけど、ぶっちゃけここでも個性は0だと俺は感じた。俺が個性を感じる為には圧倒的に理屈が不足している。彼らは一人称視点であっても『どうして主人公に尽くしているのか』の部分でオリジナリティーがない。つまりは、戦って仲間になったガタクを除いて『生み出されたから従っている』以上の理由がない(もしくは理由が極めて浅い)のだ。洗脳だったりNPCだったりと同じで心の動きが不足している。


 なんだろう、『生み出された時には無条件で好きになった相手なんだけど、その後のこういう言動でより好きになっている。だから僕/私/拙者は主人公の「そばにいたい/心を支えたい/主の刀となりたい」』とかさ。それぞれ根幹は主人公への想いで一致しているんだけど、より好きになった理由とか、好きだからこうしてあげたいという行動の差みたいなのがあって欲しいと思ったんだ。なのにここでは示し合わせたように『主人公の力になりたい!』とだけしか言っていない、ように俺には見えた。


 読めば読むほど『生み出されたから自動的に敬うよう精神へ呪いをかけられている』みたいに見えるくらい画一的な発言をしているから、ちょっと個性消滅しているような気がして引いたわ。いい話風だけどその実めっちゃ怖いことが書かれてる的な。







 あとは―――そうだな。一応言っておこう。気になったところの4つ目、最後のそれは『メタ要素満載の次回予告』だ。


 まあ、次回予告が受ける一定の層っていうのはいるけどさ、ちょっとさすがにあの文字数はないんじゃない? せめて2~3行くらいに抑えておいた方がいいと思うよ。しかも最初からやっているならいざ知らず、途中の第26話からやり始めるもんだから、いきなりでびっくりしたよ。


 ちなみに知らないひと向けの為に、以下引用してみようか。



 -----

「第一回、次回予告の道ーー!」

「……あのーミミズさん?」

「む? どうしたヤタイズナ?」

「いきなりどうしたの? 次回予告とか言ってさ」

「ふふふ……このコーナーは作者の思い付きで作られたコーナーなのじゃ!」

「いや作者って……世界観崩してどうするんだよ」

「安心せい……このコーナーは本編とは隔離された世界……すなわちどんなメタい発言してもオールオッケーなのじゃ!」

「いやメタい発言て! 色々と大丈夫かこのコーナー!?」

「さて、新キャラ登場と言う事で、これから物語をどんどん進めていくぞ!」

「そうだね、ついに巨大昆虫の卵が孵化したもんね」

「うむ! 実はこの昆虫の卵、出したのはいいんじゃが生まれてくる虫は何にするか作者はくそ悩んでのう……悩んだ結果ついにこの卵を孵化させることにしたのじゃ!」

「一体どんな虫が生まれるのか今から楽しみだなー♪」

「うむ! ちなみにこのコーナー、作者の思い付きで書いているので第二回がいつになるかは未定なのじゃ!」

「本当に色々適当だな……」

「む! いかんもう時間じゃ! では次回『綺麗な花には鎌がある』!お楽しみにじゃ!」

「次回のタイトル言っただけで予告全然できてないよ!?」

「「それでは、次回をお楽しみに!」」


 ・注意、このコーナーは本当に作者の思い付きで作ったので次の話のタイトルが変更される可能性があります。ご注意ください。


 -----


 引用ここまで。



 うん、まあ、作者が楽しんでいるのは分かるから、でもいきなり後書き部分でもなく本文内でこれをやられるとびっくりするから。


 まあ、作者が作品を書くことを楽しんで、それでモチベーションがアップして更新が早くなるんであれば別にいいんだけどね。うん、メタで面白いというよりも『くぅ~疲れましたw これにて完結です!』的な作者の内輪ネタ的なノリを感じて寒さを感じてしまったよ。





 以上、気になったところはおしまい。


 最後にお悩みコーナーに答えて今回の本文は終了にしようと思う。


 >『悩み』:虫が苦手な方でも読めるように書いているつもりですが、実際出来ているかどうかが知りたいのです。


 これについては、全然問題なかったように思う。少なくとも虫嫌いな俺でもまったく嫌悪感なく読めたからね。


 何となくだけど、触手がうぞうぞ動いていたり、昆虫のお腹のぶよぶよ柔らかいところだったり、ぐちゅっと潰れた時に変な色の体液が出てきたり、みたいなリアルっぽい描写をされると嫌かもしれない。それが俺の読んだところまでだと出てこなかったから、稲生君の狙った通りに虫嫌いでも読める作品になっていると思う。(ただし、虫嫌いな奴はタイトルだけで敬遠してしまうだろうがな…)


 そんなわけで以上だ。以下、恒例の2つだ。






 ※ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。






【PC版】


挿絵(By みてみん)




【スマホ版】


挿絵(By みてみん)







【作品名】虫から始める魔王道


【URL】https://ncode.syosetu.com/n5278cy/


【評価】2.5点




 さて、次は~裏切り者の悪魔たちを倒すため、人間になっても最強目指す~野郎の出番だな。


 うん。大丈夫だよ。大丈夫だけど……私も、だめ?











 ―――さて。





 今回、俺からこの『虫から魔王』に対して送れる感想は以上、本文で述べた通りだ。恐らく今までの日誌の中でも一二を争うほど文字量が少なく、そして語気も荒くなかったと思っている。


 まあ、それも仕方ない。何故ならこの『虫から魔王』について、俺的に思うところは色々あったが語気を荒げてまで語ろうと思わかなかったからだ。


 そして本文で語ってきた内容以外にも、この作品に対して言いたいことはまだまだあった。だがそれを感想として送るのが見当違い甚だしいとも思い、本文では書かなかった。


 どういうことか?


 つまり、この作品に対して俺がもやもやを抱いている部分というのは、そのままこういう作品を書くにあたっての正解の1つでもあると、俺が知っているからだ。





 ああ、うまく説明できねぇな。どういうことかってここからつらつらと語っていく。だがここから先は日誌のコンセプト範囲外の、ただの飲兵衛語りみたいなもんだ。別に付き合わなくたっていいから帰りたい奴は帰りな。本文と同じくらい長ぇし、歯切れの悪ぃあとがきだからよ。


 付き合うだけ損かもしれねぇが、まあてめぇの好きにしな。





 さて、それじゃまず言っておくぞ。俺がこの『虫から魔王』に対して未だ抱えているモヤモヤポイントは以下の3点だ。


 ・レベル性と鑑定スキル(ステータス開示系スキル)

 ・仲間の無限増殖

 ・作者にとってのご都合主義展開オンパレード


 これらについて、1つずつどうして俺的にモヤモヤなのかと、どうして感想を送るのが不適だと思ったのか説明していく。






 まずは簡単に済む『レベル性と鑑定スキル』の話からだ。


 この2つについて、この日誌を読んでいる奴に改めてどういうものか説明する必要はねぇと思う。そしてなろう内に蔓延る粗悪(←俺的感性で)な異世界転生もののほとんどがこのレベル性と鑑定スキルを採用している、という偏見を俺は持っている。


 ああ、もちろん元々そういった世界観であるVRMMOものとかはレベル性とか鑑定スキルとかあって然るべきだと思うので除外する。それとレベル性というのがステータスではなく、ギルドランクにニュアンスが近い、本人の業績を示す傾向が強いタイプも除外だ。分かりやすいところで言うとフォーチュン○エスト的な(←古い?)。


 つまりはドラ○エ方式の、敵を倒せば経験値が入ってそれを元にレベルアップして、自動的にスキルが手に入っていくタイプのことをここでは槍玉に挙げている、と認識してくれ。


 さて、このレベル性というのは強さを表す指標として非常に優れている。レベル2と20の奴でどっちが強いかは明白だし、レベル20と21が衝突し合えばどっちが勝つのか手に汗握る展開になりそうだってすぐ想像できるだろ? 細かい描写をしなくてもレベルの数値を言うだけでそのキャラの強さだったりその戦闘への期待感を読者へ伝えられるんだ。非常に優れた道具だよ。


 そして鑑定スキルについて。地の文でそれとなく描写しつつ開示していかなくちゃいけない敵の情報を、主人公がスキルを使ってあっという間に箇条書きでまとめてくれる。超便利だ。地の文でたらたらと説明していたら『長くて読みにくい』と言われたり、キャラのセリフでそれとなく描写しようとしたら『説明口調おつ』と言われたりするのを、なんと箇条書きで羅列しても許されるのだ。改めて言う。超便利な道具だ。


 さて、その2つを使うとどうなるか? 別にどうもしない。ただ読者にとって非常に分かりやすくノンストレスな文章が仕上がるだけだ。何も問題はない。


 だから、ここで『レベル性と鑑定スキル』を挙げたのは、俺の超個人的な意見でしかない。単純に俺が嫌いなだけだ。その世界のこと、キャラのこと、それを親和性のない世界観で文章ではなく数値や箇条書きで書き表されているのが個人的に受け入れられないだけだ。


 いいんだよ、別に。それが一定の評価と支持を得ていることも知っているし、そういう文章こそ求めている奴らがいることも知っている。だから、あくまで言いたかっただけの超個人的意見だ。クソみたいなプライドが邪魔してそういうものを使えない作者の僻みやっかみと捉えてもらっても構わない。






 さて、どうも歯切れの悪いところから始まったが、続けていくぞ。次は『仲間の無限増殖』だ。


 これは、なぁ―――売りにできる部分でもあると思うんだけどよ、正直大量に出てくる仲間を御し切るのには相当な作者力が必要だ。そして俺が読んだ限り稲生君、『虫から魔王』では御しきれていないようにしか見えなかった。


 読んでねぇ奴に話しておくと、『虫から魔王』では主人公が昆虫召喚サモンインセクトというスキルでのガチャ召喚によって毎日1体ずつ卵を産んでいく。中にはハズレ要素として軍隊アリがあって、そいつらは軍隊アリらしく『軍隊アリ』という集団にすぐ埋もれていく為、別に気にする存在でもねぇ。だが、それ以外は基本的に名前ありのしもべとして扱われ、作中を普通に動き回る。


 そのしもべキャラの多さよ。あれよあれよという間に増えていく。その為続々と出てきたキャラが後々名前だけの登場(外見描写なくの登場)をした時に、そのキャラが何の虫であったか咄嗟に思い出せないという現象がたまに起こる。まあ、こればっかりは俺がレベル性とか鑑定スキルとかで辟易しながら読んでいたから、集中力の欠如からくるものなのかもしれないが……


 そして、主人公が毎日召喚していくから理論上毎日仲間キャラが増えていくのだ。うん、苦痛だね。誰がどういうキャラであるのか深掘りされるよりも前に新しいキャラがどんどん出てくる。そして主人公のスキルの特性上、それはどこまで読み進めていってもその現象は止まらない。さらには感想のところにも載せた通り口調でしかキャラの差別化がされておらず実際の個性が皆無の為、『この口調誰だっけ?』という、非常に遣る瀬無い思い出し方でしかキャラに接せられない。


 1匹1匹の印象が根付く前に奔流してくる新たなキャラ達。その波は今後決して途切れない。それを理解した途端俺はそっとこの話を見切った。とはいえ一応は93話部分(だいたい25万文字分くらいか?)までは読んだけどよ。


 もういいか。もっと残酷なことを言っちまおう。上でつらつらと語ってきたけど俺の本音を言ってしまうと『こいつが誰なのか分からない』って悔しさじゃなくて、『こいつが誰であっても関係ねぇか』って諦めなんだ。結局主人公が誰と行動を共にしていても話の展開も変わらなさそうだし、行った先で固有のイベントがあるわけじゃねぇ。主人公の隣にいるキャラがスティンガーだろうがソイヤーだろうがパピリオだろうがガタクだろうがテザーだろうがカトレアだろうが、結局話の展開も変わらないしそいつの個性が見える展開があるわけでもない。


 っていうかぶっちゃけて言うとミミズさんがその重要なイベントシーンの大半を食ってしまっており、他キャラのキャラ立ちの邪魔になっているようにしか見えない。ミミズさん自体がすげぇ作者的に動かしやすいキャラだからこそ起こっちまってる現象なんだろうが、もうちょっとミミズさんを主人公から離した方がいいぜ。ミミズさんがいると結局しもべ達は「非常食ネタ」でしか発言しなくなって、よりキャラの画一化に拍車をかけることになってるから。


 そうして『ここにいるのが誰であろうと展開が変わらないだろう』と思ってしまうと戦闘シーンが糞ほども面白くなくなり、イベントシーンの見どころもなくなってしまう。『どうせ何かここでしか見られない特別なことがあるわけじゃないだろう』という意識が芽生えてモチベーションが激減する。女王蟻戦の前あたりまでは楽しく読めていたのに、そこらへんで上記の俺的真実に気づいてしまって、もうこの先この作品の何を楽しめばいいのか分からんくなってしまった。


 ただ、そういうことを思ってしまわなければこの作品は読みやすく、展開を追いかけやすいものになっているだろうと俺は思う。言い方は悪くなってしまうが、口調だけでキャラ差が出来てると思う読者なら、なんも気にせず読み進められるからな。


 つまり、そういった層を狙っているのであればこれは全然ありな戦略なのだ。うん、そう思う。









 そして最後、『作者にとってのご都合主義オンパレード』についてだ。今までの日誌の中でも、俺は『作者にとってのご都合主義』というワードを何回か使っている。登場人物にとってのご都合主義ではなく、『作者がこうしたいから』という意図が見え透きすぎていることを指して俺はそう呼んでいる。


 さて、世にある粗悪な(←重ねて言うが俺的感性でだ)異世界転生ものではこの『作者にとってのご都合主義』展開がよく起こる。残念ながら『虫から魔王』でもそれは同じだったように俺は感じた。


 いつもであればそれがどこであるのか、どうしてご都合主義だと思ったのか、そういったことをつらつらと俺は文句垂れていたと思う。しいて言うならウィズが登場してからのほとんどの展開が俺的にはげんなり要素だったわけだが、しかし今回はどうにも声を荒げて指摘しようという気にならない。


 何故か? それはきっと、稲生君がわざとそう書いていると思っているからだ。


 どういうことかというと、なろう界隈での異世界転生ものを読んでいる読者って、この『作者にとってのご都合主義』を望んで読みに来ているんだと思うわけさ。今後のシナリオの方針を急に決定づけてくるようなその突飛な言動やイベントは分かりやすく目立つし、目立つからこそ『あ、次はそういった方向の話なのね』と事前に読者も察することが出来て安心できるし、話の細かな整合性や流れなんかよりもわんこそばのように次々と展開がやってきてくれた方がそういった読者のフラストレーションがたまりにくいわけさ。


 俺は以前、なろう系異世界転生ものをそういった読者が求める様を『〇〇連中が餌を求めて口を開けて待っている』と揶揄したことがある。多少展開の持っていき方にごり押し感があっても、読者は口を開けて待っているだけなわけで、むしろそうやって押し込んでもらった方が楽なのだ。そこに細かい展開の流れとか整合性とかいった細かなマナーは求められていない。餌(=主人公SUGEEE)さえ突っ込んでおけば彼らは満足なのだ。


 そして、俺が知っているなろう界隈ではそういった読者が結構数いることを知っている。むしろマジョリティーたる彼らに正しく料理を提供しているのは稲生君の方であり、言ってしまえばそれはなろう界隈に生きる作者にとって大正解なのだ。


 一方俺なんかは誰も通りはしない路地裏で寂れたラーメン店を開いていて、『俺は俺が美味しいと思うラーメンしか作らねぇ!』とか言って誰も見向きもしないようなラーメンばかり作って経営困難に陥っている莫迦なのだ。そして表通りで効率よく儲けている奴らを見て『あいつらはマナーがなってねぇ、ラーメン作る時にはよ、気をつけなくちゃならねぇ作法があんだろ!?』とかグチグチ言っている老害が俺なのだ。


 つまりはここまでつらつらと語ってきたが、俺のモヤモヤポイントを総括してしまうと、そこの部分を俺が指摘することはイコール老害の愚痴でしかないのだ。いや、今までの日誌も老害の愚痴みたいなものだったんだろうけどよ、それは読んだ際に俺が「作者はそう読まれてしまうことを想定していないはずなのに、作品の良さやコンセプトを貶めている部分がある」と思った時に声を荒げてきた。お前、どういうつもりだよ?!ってな。


 それが今回はどうだ?俺が『お前、ここが変じゃねぇか? ここの展開が急すぎだと思わねぇのか!?』と指摘しても『いや、それはわざとやってますから』といたって冷静に答えられること請け合いだ。心の中に抱えたモヤモヤがあるにはあるが、俺は今回声を荒げない。だって、それが稲生君なりの作品への向き合い方なんだろうから。


 ただ、そのモヤモヤがなぜ自分の中で生まれたのか。それを言語化しておこうと思った。それがこの長大な後書きってこった。


 自己満足な自己分析。そんだけの文だ。そして分析結果に満足した今、ひとまず締めとしよう。


 付き合って時間を損したやつ。悪ぃな。今の俺は外野を意識してねぇ。この日誌はあくまで俺の為のものだ。以上。






 さて、締めるといったが1つ話題を追加だ。投稿前に至って、まだモヤモヤしているところがあったから、それを引き続き言語化しておく。


 上記で俺のモヤモヤポイントを3つ挙げてきたがそれ以外のところでも細かいところで気になり続けていたところがあった。それも挙げておこう。この作品で見せたかったものは何なの?問題だ。


 俺は最初、この作品について『現実の虫に似通った魔物たちがファンタジー世界を跋扈していて、ファンタジーを読みながら現実世界の虫のことも知れる、1粒で二度おいしい作品』という認識をしていた。実際、途中まではそうだったように思う。現実の虫の動きや特性に沿ったスキルしか敵も味方も使っていなかった。実際にとある時点までであれば俺はこの作品を楽しく読めていたのだ。


 しかし途中からクワガタが真空波を飛ばし始めたり、女王蟻が酸のブレスを吐き始めたり、主人公が角に炎を纏わせてきたりしてきて現実の虫の生態から離れていってしまった、ように俺は感じた。ということは、そもそも上記の『ファンタジーしながら虫のことも知れる』というのが作品コンセプトだと思っていたが、それは俺の思い込みであったんだろうか?


 なんか、どっちつかずなんだよな。もし現実の虫に即した話じゃないなら『主人公がカブトムシに転生しました!』っていうのが出オチでしかなくなってしまう。ユニークなのはそこだけでそれ以降はよくある転生ものでした、みたいな。特にウィズが落下してきた26話以降。


 なんか惜しいなぁと思っちまったんだよなぁ。個人的に女王蟻を倒すために主人公がカブトムシらしい攻撃ではなくていきなり炎を纏って攻撃し始めたり、ご都合展開的に酸耐性をゲットしたりした時に気持ちが萎えて、その後ウィズが落下してきてからの展開を見て『あぁ、よくある転生ものと一緒じゃん…』ってなってしまったんだよなぁ……


 分かるよ。カブトムシがカブトムシらしい戦いをしているだけじゃ、強くなっていく様を表現していくのが難しかったんだろうなって。でもさ、それでカブトムシらしさから離れていくんだったらさ、もはやこの作品書く必要も読む意味もないよね?なーんて、俺なんかは思っちゃうんだ。


 カブトムシが主人公であれば、「うむ!これは主人公がカブトムシじゃないとダメな物語だ!」って読む奴を唸らせるストーリーに昇華できるまで、頭悩ませるべきじゃねぇのか?って思ったんだ。お前だって、例えばリアル世界の自転車レースの話を読んでていきなり時間停止の能力者が出てきたら「はぁ???」ってなるだろ?それと一緒で俺はカブトムシが炎操り始めたら「はぁ???」ってなったんだ。


 ウィズが落下してくるあたりまでは『虫たちが虫らしくわちゃわちゃ戦ったり生活していたりが見れる物語の芯がありつつ、おまけとしてなろう転生もの要素がある』といった感じで読めていたものが、突然『よくあるなろう転生ものが芯で、刺身のタンポポレベルで虫要素がくっついている』みたいにすり替わってしまったように感じたんだよなぁ……


 でもさ、これって俺の非常に個人的な反感であって、この『よくある転生もの』ってマジョリティー側の作品なわけなんだよ。俺がなんと言ったところでなろう界隈ではそっちが王道なわけで、もしかしたら最初からそっちの方を目指して書いていたかもしれないやつに対して、それを否定しにかかってしまうのはどうかなぁって思っちまってよ、感想という体ではこんな話書きたくなかったんだよなぁ―――って、ああ、また話が盛大に逸れちまった。話を戻すぞ。


 それでつまり、俺がこの作品を途中まで読んで思ったのは、『結局稲生君はこの作品を通して何が見せたかったの?』ってことだ。単純に疑問を抱いたんだ。


 いや、高尚な話じゃなくていいんだ。言い換えれば『どうしてこの話を書きたいと思ったのか?』を知りたかったんだ。だって、『現実の虫がファンタジーしてるところを見て欲しい!』っていうのは、さっきも言った通りきっとそうじゃないんだろうなと思ってさ。もしかしたら最初らへんはそういう想いがあったかもしれないけれど、強さがインフレしていくにつれ「現実の虫らしさ」というのは鳴りを潜めてしまっていったと俺は感じた。


 じゃあ『俺TUEEEE』なのか? それもなんだか違う。そこまで一方的な強さは主人公にはない。接戦も多いし苦戦からの逆転もある。完膚なきまでに強い主人公と一緒に歩んでスカッとする感じの話ではない。


 それなら『主人公の生き様を見て欲しい』なのか? それもなんか違う気がする。これはそんな重たい話ではない。


 『披露したストーリーを単純に楽しんでもらいたい』―――ああ、恐らくこれなんだろうなと思う。いや、文句があるわけじゃない。別にいいと思う。


 だけど、俺は今までの日誌でも語ってきた通り、作品を通して作者を覗こうとしている。「こいつはどういう想いでこの作品を書いているんだろう?」とか「こいつはこのシーンのこのセリフをどういう気持ちで選んだんだろうか?」とかそういうのを妄想しながら読んでいる。そういう読み方をする輩からすると、『披露したストーリーを単純に楽しんでもらいたい』というのは無味に等しいんだ。言うなれば食事におけるご飯やパンなどの主食的なもので、『あって当たり前なんだけどそれだけじゃ満足できない』というものなんだ。コンセプトや想いといったおかずが欲しくなるんだ。


 ちなみに、今まで日誌に挙げてきた作品と同志は漏れなくそのコンセプトめいたものを感じることが出来た。感じたからこそ、そこで俺的に気に食わないところ(=コンセプトから外れて作品を貶めているように俺視点で見えた要素)があれば声を荒げて感想を言ってきた。中には的外れだったところもあっただろうが。


 シリアスでもいい、ギャグでもいい。ラブストーリーだろうがファンタジーだろうが、なんだって俺は作者の意図に付き合いながら作品を読んでいる、と思っている。スカッとするような転生ものであっても、そのスカッとさせる為の演出や事前準備に舌鼓しながら読んでいく。そういうところでいうとこの『虫から魔王』については、なんというか良くも悪くも作者に意図なんてなく常に書くテンションがフラットなように見えたんだ。


 『絶対に面白いと思わせてやる!!』という作者の熱気を感じることもなければ、『来い、来い、そのまま読み続けて来い。そうしたら面白いところまで引きずり込んでやるからな…』と虎視眈々と読者の背中を狙うような冷徹さもなく、常に精神がフラットであるように感じたんだ。『この作品を一番うまく書けるのは俺なんだ!』とか、『この作品は俺にしか書けねぇ!!』とか、そういった気迫めいたものも感じなかった。


 俺が穿った見方をし過ぎているのかもしれない。というか多分そうなんだろうけとさ。でも、もしかすると稲生君はなろう界隈に迎合した書き方をした結果、自分を出せる書き方を捨ててしまっているのではないかと思ってしまったんだ。だから、文に作者が表れてないなんて俺が感じてしまったんじゃないかなと思った。


 いや、すげぇオカルトめいたこと言ってる自覚はあるんだけどさ。ふと言語化してみたらその考えはすんなりと納得がいってだな。


 なろう界隈的にはいいんだろうけど、俺個人的に勿体ないなぁと思った。でも、作者の我が出てる文っていうのも鬱陶しいと思う人もいるだろうしさ。それはそれでいいんでないかな?って俺が思ったって話さ。


 ああ、1つ分かった。誰とは言わないがこの日誌で『作者の顔が見えるのは嫌だけど、作者の色が見えるのは良い』みたいなこと感想で言ってた奴がいたな。まさしくこれのことなんだろう。


 俺はやっぱり作者の色が見てみたい。お前にしか描けない色と線で物語を描いていって欲しいと、俺は思ったんだ。


 以上。



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― 新着の感想 ―
[一言] どうしようか迷いましたが、連投失礼します。 正直、まさか感想欄ででも、ここまでのガチ回答が返ってくるとは思ってませんでした……! 無意識に侮っていた……! 多分、認識にズレがあると言えばあ…
[一言] 内容とは若干ズレるかもしれない話で、どちらかというとオーバーピース時のほうが相応しいかもしれませんが。 今回読んで、『人外キャラに人外らしさって必要なんだろうか?』と考えさせられました。 …
[一言] 自分は虫、見ただけで逃げ出すほど苦手ですが、何故かこの作品は気になるところ。オリジナリティがあって良いなぁと思いました。 作者様には個性を大事に、これからも頑張っていただきたいです!(*´…
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