10.ThebesWorldOnline
どうも、あっちいけだ。
前回の『いたもん』を上げてから3日後にこれを書き始めている。おう、投稿がいつになるかは知らんが、とりあえずはそんな間隔で感想書いてるぜーっていう報告的なアレだ。
ってなわけで、今回は特に余計な余談なんてなく、ちゃっちゃと始めるぞー。
さて、今回踏み台を差し出してきたのは同志、『海村』君だ。
特にツッコミどころのない名前だ。彼のことは捻りなく、海村君と呼ぶことにしよう。
ってなわけで、今回海村君がエントリーしてきた作品については以下、募集要項からの引用だ。先に目を通してくれ。
――――――――――――――――――――――――
【作品名】
『ThebesWorldOnline』
https://ncode.syosetu.com/n3972ez/
【簡易的なあらすじ】
最新のVRMMO-RPGテーベワールドオンラインに、遅れて参戦した男子高生、舞意祐二。ゲームの出来に驚愕する中、出会った少女は何やら問題を抱えているようで? 祐二は何とか彼女を笑わせたいと奮闘するが・・・。
【セールスポイント】
最高のグラフィックで、現実のそれと大差ない見た目の女の子が、所謂"ネカマ"だったとしたら?カミングアウトされた男性はどこまで現実を直視できるのか!?"ネカマキモイ"で終わらない、性差の葛藤を楽しみたいお方に!
【フックポイントの話数】
19~22話(だいぶ遅いですが;)
『悩み』
ヒロイン(?)の正体に向かって話が進んでいくんですが、それがラストであり、最大の謎となる為、所謂「ヒロイン視点」が一切ないまま主人公一人称でずっと来ています。緩急のない話になっていないでしょうか・・。
【本気で書いているかどうか】
これは自分がリアル中二だったころからの、厨二心そのもの。嗚呼きっと誰にも見せることなくこのまま記憶の中に埋もれていくんだろうなぁとかおもっていたら、ネットにこんな場所が!何とか形にして、この世に残したい!当時ノートに手書きで書いていたころにはできなかったことを今やろう。絶対完結させるぞー!
――――――――――――――――――――――――
引用ここまで。
さて、いつもならここで作者が内輪のやつなら紹介するんだけどな。
思い返せば、海村君とはこの日誌が始まってからの付き合いだった。それなのに何だかとっても内輪感。
……どうやらこの日誌が始まって以来、俺の交友関係は広がってしまったらしい。改めてそのことを感じてしまった。
内輪じゃないところでも切磋琢磨していこうぜ!っていう当初のコンセプトはもう叶わないかもしれない。ただ、それでも構わねぇ。
内輪だろうがなんだろうが、切磋琢磨していこうぜ、同志よ!
閑話休題。
酔っ払ったような小話はともかく、話を本題に戻そう。
さあ、この日誌ではモノクロ君の『クロステラ』以来となる、VRMMOものだ。(『いたもん』…? 残念ながらあれのVRMMO要素を俺はまだ認めちゃいねぇ)
ちなみに前回、『いたもん』の感想で「俺はVRMMOものも好き」と公言していたのだが……恥を忍んで言ってしまおう。俺が見知っているのは『ソードアー〇オンライン』と『オーバー〇ード』くらいだ。すまねぇ、実を言ってしまうとあんまりライバル作品のことを知らねぇんだ。
ただし、MMOは昔、すげぇやっていた。それこそ高校1年生から3年生の間、ずっとネトゲの中に入り浸っていた。(トリッ〇スターというゲームでな…何なら仮病で学校休んでやるくらい没頭していた。楽しかったなぁ…)
ってなわけで、俺はMMOからの発展形であるVRMMOものも、触れては面白いと思える読者だ。どんなゲーム世界が待っているのか、期待しながら読み始めた。
さあて、以下はそんな『ThebesWorldOnline』(以降、テーベ)の内容だが、いつもの如く。まずは読んでねぇ奴らの為に概要だ。
――――――と、いきたいところだが。
ここで1つ、事務連絡だ。今回、俺は従来とは感想の書き方を大きく変えたいと思っている。
その手始めとなる、まずは1つ目―――『いつもみたいなあらすじを、俺は書かない』
何故か? ……俺には海村君が書いたあらすじ以上にふさわしいものが書けないと思ったからだ。
もしどういう内容か知りたいって奴は実際の作品のところまで飛んで行ってくれ。上の方の引用部分にも記載したが、念のため↓にも記載しておく。
https://ncode.syosetu.com/n3972ez/ (←テーベのトップページ)
俺はここで1つ、海村君に負けた。このあらすじに、俺はどうしても惹きつけられてしまった。
なろうでは受けの悪い書き方だろうとは思う。けど、そうだ。俺はこういった書き方に、語り方に弱いんだ。
これを無視して、俺は違うあらすじを書けない―――そう思ったからこそ、今回、俺はあらすじを書かない。
そして、2つ目―――『感情グラフを出さない』
何故か? ……ほとんどの話数で55点以上をたたき出し、モチベーションは100のまま、ストレスは0のままのグラフなんぞ見せてもしょうがないだろう?
面白かった―――そうだ、あれだけ『読むのは10万文字』と言っていた俺が(最近はそのルールも形骸化しがちだが…)、あれよあれよと読み進めてしまい、いつの間にか最新話たる37万文字のところまで読み切ってしまった。
その全てが大体50点以上、半分近くは55点以上だった。よって、感情グラフは意味をなさない為、今回は作らなかった。
そんなこんなで感想に戻って、まずは本作の良いところを挙げていこう。
残念ながら誤字は多かった。ただし、小説を書く際の作法については申し分なく、非常に読みやすいものであった。
この小説は主人公たる『舞意 祐二』(もしくはゲーム内キャラ名でいうところのユージン)視点で物語が進んでいく一人称小説なんだが。
よくある妥協した一人称(たまに別の人の視点になったり、時たま3人称になったりするやつ)じゃなくて、一貫してユージン目線から動かない一人称小説だ。今どき硬派だねぇ~と思わず口笛を吹いてしまいたくなるほど、完璧な一人称小説だった。
別に俺は完璧な一人称だろうが、なんちゃって一人称だろうが、作品が面白くなればそれでいいじゃん派なんだけどさ。
海村君はこの縛りプレイじみた完璧一人称視点でも描写不足と思わせることなく物語を書き進めている。う~ん、その時点で好感が持てる。素晴らしいね。
次に、世界観。これも素晴らしい。
現実の祐二たちが住んでいる世界は俺たちが住んでる現実とそう大差ないものだ。だが、そこに住んでいる祐二たちが出会うVRMMO『Thebes』。そのゲーム世界の設定がまあ、非常に練られている。
この『テーベ』というゲームには原作となる架空の小説『テーベ』があって、それを再現しているVR世界らしいんだが。
話のところどころに出てくるその原作テーベの話が相当に面白そうなのだ。日本のラノベ風ではなく、どちらかという海外ファンタジーに近いノリの作品だな。
むしろその話、本当にどこかの有名小説から引っ張ってきてない?と思わされてしまうほどに、物語の息吹と躍動感を感じる設定だった。劇中劇にしておくには勿体ない、と思わされてしまう。
そんな作品をもとにしたゲームなのだ。面白くないわけがない。
目の前に広がる広大なフィールド、リアリティー溢れる風景、そしてたんまりと込められた『それらしい設定』の数々に、主人公たるユージン達とともに読者はワクワクしながらページをめくり、世界へと浸っていく。
そして、キャラクター。こいつらもいいキャラしている奴らばかりだ。
ぶっ飛んだキャラってわけじゃねぇ。本当に一人一人大事にされているだろうなって感じるくらい、息吹を感じるキャラ達。VRMMOものだからこそ、そのゲーム内で成りきっているキャラである時もあれば、思わず素が出てきてしまう時もある。そういった人間臭さめいたものから、感極まって感情を露わにしてしまう瞬間まで、非常に丁寧に描写されている。一人称であるにも関わらず、だ。素晴らしいことである。
最後に、ストーリー。この作品はVRMMOものをうたっているが、話の主軸としては恐らく人間模様―――つまりはヒューマンドラマであろう。(ちなみにメインカテゴリはVRゲームになっている。まあ、カテゴリで分けると確かにそうなっちまうんだろうな)
主人公が抱える葛藤やら苦悩やら痛み、辛さ、現実逃避。和気あいあいとゲームを楽しんでいる傍ら、まざまざと描かれる人の業。それが主として置かれている為、ストーリー性はそこまで高くない。次はこうして、その次はああして、みたいな感じではない。
1つドシンと置かれた主題に対して、主人公がどのように相対し、結論を出し、すれ違い、あるいは仲直りし、どう他人と関係を進めていくのか―――そういった心のありよう、動きようを追いかけていく物語だ。
ちなみに、上で書いてきた内容はネタバレにならないよう気を付けて書いてきている。なぜなら、お前ら外野にも是非一度読んでもらいたかったからだ。
下からの感想は、大いにネタバレ要素を含んでいる。むしろ、読んでいない奴にはちんぷんかんぷんな話かもなって感じだ。
そんなわけで海村君。こっから更にディープな話をしていくぞ。
さて、ところで。
今回俺は非常に歯切れの悪い感想しか書けない予感をひしひしと感じている。
何故なら、上記でベタ褒めしているにもかかわらず、俺が最終的にこの作品へつけようとしている点数は7点だからだ。
そう、7点―――10点満点じゃないんだ。
何故か? ……それは俺的に、この作品は10点満点の土俵に乗っている作品じゃないと思っているからだ。
この作品を読み始めた時、俺は非常にのめり込んで読むことが出来た。
VRMMOの世界に没入し、ゲームとは思えないほどのリアリティさ、自由度。それにワクワクしながら色んなことを試していく主人公が、やがてヒロインと出会う。
そのヒロインがネカマと来たもんだ。しかもネタ的な感じじゃなく、大真面目にこの作品はそれを題材にしていこうとしている。
どんな話になるのか、この2人は今後どんな世界と出会い、そこでどんな成長していくんだろうか。期待に胸を膨らませた。
世界を構成する設定も非常に胸躍るものだ。魔法の使い方・仕組みも非常にユニークだ。物語には緩急はない方であるが、読者を退屈にさせないように色んなネタを各所に散りばめ、飽きがこない構成になっている。
―――ああ、いや、やめよう。こんな風にこの作品を誉めるのは、いったんやめだ。
……海村君。
お前の作品を褒めるのは、いとも容易い。非常に素晴らしい出来の作品だ。
それでも、どうしてもお前の作品に対して抱いちまう雑念のような感想が、俺の中にある。
聞いてくれ。最後まで払拭できなかった俺の雑念。
それは、大きく分けて3つある。
まず1つ目。ユージンとマナの出会いからその後の過程を描くために、『テーベ』という世界観説明を余談として挟んでいるような気がしてならなかったんだ。
いや、これは非常に気持ちの悪い言いがかりだし、そもそも意味が分からないと言われるかもしれないのも承知の上だ。それでも、俺が感じたことを正直に書いていく。
この話が、『テーベ』でなくてならない理由が欲しかったんだ。『テーベ』の世界観が非常に作り込まれているからこそ、俺はそう思ってしまった。
今のままだと、ユージンとマナの仲を進展させていくにあたり、『非常にリアルなVRMMO』であれば事足りるわけであって、それがあの『テーベ』である必要性を、現時点で俺が感じ取れなかったんだ。
非常に、勿体ないことだと思ってしまった。あれだけ非常に作り込まれた世界観なんだ。それを活かして俺を唸らせてほしい…!と、俺は欲張りにも思ってしまった。
今のままだと、『テーベ』という固定舞台の上で、ユージン達キャラクターが動いているだけなんだ。それは非常に素直な作りであって、それはそれで構わないという意見もあると思うが。
俺は、ユージン達の為だけに用意された舞台の上で、動くユージン達を見たかった。抽象的な話で申し訳ないんだが、ストーリーとキャラクターと世界観がもっと必然性や運命性という名の糸で絡み合って、『ままならないなぁ』と思わせて欲しかったんだ。
そして2つ目。ユリシャ到着以降の、人間模様置き去りのストーリー展開。
それまでの人間模様を主とした雰囲気から一変して、キャラクターも一気に増え、ストーリー性が増したユリシャ編だ。
勿論、重要イベントも多くある。カ―――なんとかさんのことだったり、マナの暴走だったりな。
だけど、なんだかそれ以外にも色々あっただろう? 人間模様というよりも、普通のVRMMOものみたいな展開が。
やれ戦争だ、戦闘だ、作戦だ、勝った負けた。それまで頑として人間模様が主でゲーム内容は副菜みたいに扱ってきたのに、ここに来てその立ち位置が逆転してしまった、ように俺には感じた。
もちろん、それでも構わないかと最初は思った。だが、カ―――なんとかさんだったり色んなことがあった割には、ユージンとマナの仲に目立った進展はなかった、ように俺には見えた。
この戦争で語りたかったのはなんだったの? と俺は思ってしまった。もちろん、まだ戦争が終わったばかりでこの後ひと悶着があるのかもしれないけど、う~ん。それまでのところとちょっと異質な感じがしてしまった。
そして最後の3つ目。俺が最も語りたかったことだ。
海村君。俺はこの作品を読んでね、『この作品は小説という皮を被った、私小説か何かではないか』と思ったんだ。
どういうことか。
ユージンという主人公がいる。彼の皮を一枚剥いでみると、そこにはまんま海村君がいるんじゃないかと思うくらい、この作品は人間の業を直接的に表現している、と俺は感じた。
それぞれ作者は作品に対して、モチーフやキーワードを持たせているだろう。書きたいことと言い換えてもいい。その『書きたいこと』は抽象的に描かれたり、あるいは具体的な『発言・メッセージ』となって物語に書き込まれる。そんなのが多いと思う。
だけどこの作品、その『抽象的』『具体的』の概念を飛び越え、業を持った主人公がそのままその業を無意識に語っているという、その業に思い当たる節のある人間が読むに、非常に辛い作品となっている。
俺は、その辛さにやられた読者だ。それはあるいは、海村君の術中なのかもしれないが。
どういうことかというと―――すまない。読んだ当時に感じたことを、客観的に書き表せられなかった。
だから、俺がこの作品を読んだ時に感じた衝動を、殴り書きしたメモがある。いつもならそれは感想を書く時のネタとして自分が見る用であって、こんな風に他人へ見せることはないんだが、今回はあえてそれを以下に載せる。
それでしか、その時感じた感情を伝えられないからな。
(先にいっておくが、殴り書きだからかなり雑な書き方になっている。てにをはだけは直したが、あとは何とか読み取ってくれ)
――――――――――――――――――――――――
読んでいるとマナに初々しさや萌えを感じるシーンもあるが、それよりも特筆すべきは危うさである。
ユージンとマナ、どちらかが少しでも良心を欠けさせれば、あるいはどちらかがタブーを犯せば、それだけで儚く散っていきそうな危うさが彼らの間にある。
彼らが一つ仲良くなっていくたびに、一つお互いの心に触れて近づいていくたびに、私は終わりを感じていった。それは、似たような経験を私もしたことがあるからだろう。
依存されるというのは恐ろしい。依存される相手がいつか成長し、自ら飛び立っていくのであればそれは良し。ただ、依存のまま変わりたくない者もいる。
依存されたまま関係を継続させるためには、自分も依存しなければならない。そいつがないと生きていけないと思ってやらないといけない。そうなると関係は変わらず、ますます泥沼になっていくだけ。
その危うさが、この主人公たちの関係性の中にも見える。彼はどういう判断をするのか。ヒロインのためを思って手を握り続けるのか、手放すのか、どうなるのか。それが気になって仕方がない。が、見守り続けるのに苦しさを覚えるのも事実である。
ユージンは『あんないい奴=マナが1人でいるなんて勿体ない』と思っており、マナは『ユージンが一緒にいてくれればそれでいい』と思っている。その想いは決して両立しない。どちらが折れるのか。
結局、ユージンはどれだけタブーであると自分を律しても、ふみこみすぎたとか自省しても、どこまでいっても『マナがひとりぼっちなんてダメ』という結論に帰結する。これは言外に、『ユージンさえいればいい』というマナの願いを拒絶している。
つまり、責任を取るといいつつ、極論、責任から全力で逃れようとしている。それも無意識の間に、だ。
マナからも途中で言われていたが、非常にずるい男なのだ。『ひとりよがり』、これはユージンの言葉だっただろうか。彼を現わすのに最適な言葉であろう。
自分の理想を他人へも強要してしまう。そしてそれをいいことだとして思い込んでしまう。そして、その自分が抱えているおこがましさに気づいた際には、なんとなーく思考をごまかしてしまう。他ごとへと無意識に意識を移してしまう。そうして自分が責任を取らなくてはいけないという結論から目をそらし続ける彼は、哀れなほどに人間臭い。
私からすればこのマナという人物、相当の地雷だ。それでもユージンは可愛さにやられてついつい甘やかしてしまいたくなるという。
私から見れば、それは現実逃避。どこまでも続く責任に対して、『萌え』とか『可愛さを愛でる』みたいなものを代償として貰っているという逃避に見える。もしくはそれで自分の思考にも目くらましをしているか。そうでなければ、自分の行動が正当化できなくなる。抱えている悩みに整合性が保てなくなる。
究極、彼は非常に人が良くて、人間臭い。まさしく、人がいい人が抱えている業をまざまざと見せつけられているかのような感じだ。そのせいで、私自身を責め立てられているような気がして、胸糞悪く感じる時もあった。
――――――――――――――――――――――――
以上、こんな独白にも似た形でもなければ、俺が感じた思いを伝えられなかった。
そして、上記の読み方をしてしまった俺は、こうも思ってしまったんだ。
『海村君が描きたかったことって、全てこれに集約されているんじゃないか?』と。
俺も昔、自分の胸の内にある何かを表現したくて小説という手段に手を伸ばした口だ。ここにいる同志も、みな似たような気持ちで小説を書き始めたんじゃなかろうかと思っている。
そんな中、俺が最初に小説を書いたときの原動をより詳細に言うと、『この胸の中にある面白い話を具現化させたい!』だった。
ただ、海村君のテーベを読んでいると、もしかするとこれは『この胸の中にある思いを誰かに聞いて欲しい!』の方が大きいんじゃないかと思ったんだ。
思いというか、思想というか、そういったものが先行して作られたのがこの『テーベ』じゃないかと思ったんだ。(もしかすると俺が想像するよりもそっちの方がずっとマジョリティーだったりするのかもしれんが)
少なくとも、今までこの日誌の中で上げてきた作品はみんな、『この作品を一番面白く書けるのは俺だ!』とか『今までにない面白い作品を書いてみせる!』とかっていうタイプが多かったと思うんだよ。
ただ、テーベは違う―――ように感じた。他の同志の作品は、一枚剥ぐと【設定】とか【プロット管理】とか【譲れない思い】みたいなもので武装している作者がいたのに対して、このテーベは一枚剥ぐと、何の装備もしていない裸の海村君がいる、くらいの赤裸々感を感じたんだ。
そうなると、この作品は小説であると同時にエッセイみたいなものだなと思ったんだ。海村君の中にもある業を煮詰めて煮詰めて、それを表現したのがこのテーベにおけるユージン。
―――ここで話を戻すが、この作品に俺がどう点数をつけるか、悩んだ時に10点は上げれなかった。10点とは、俺の中では『何度読んでも読み飽きない。何回も読みたくなるような作品』にこそあげたいと思っている。それでいうと、そこまでのリピート性はテーベにはなかった、
じゃあ9点は? 8点は? それも少し違う。読了時の俺はフィーリングでもって、『この作品は7点こそがふさわしい』と判断していた。
じゃあ、7点を8点にする為には、この作品はどうしたらいいと思う?と自分に問いかけた時、俺は詰まった。
この作品をより良くしようなどと思えば思うほど、俺はこの作品の良さがなくなっていくと感じた。つまりは、人間の業を直接的表現にて書いている限り、読むに辛い作品となり、『俺の中での点数』は上昇しない。
その業を取っ払ってしまうと、このテーベの面白味がなくなってしまう。それでは逆に『俺の中での点数』は下がってしまう。
つまり、俺の中のフィーリングの問題で大変申し訳ないが、この作品には7点満点という言葉がふさわしいのではないかと、俺が感じたという話だ。
非常に消化不良な感想で申し訳ないが、今回の俺はこんな感想しか書けそうにない。
この『テーベ』という作品。俺はとても、とても素晴らしい作品だと思っている。
それだけは伝えてから、恒例の2つをやって終わるぞ。
って、ああー!待て!
感想書くのに精一杯でお悩みコーナーに答えるのを忘れていた。
〉『悩み』
〉 ヒロイン(?)の正体に向かって話が進んでいくんですが、それがラストであり、最大の謎となる為、所謂「ヒロイン視点」が一切ないまま主人公一人称でずっと来ています。緩急のない話になっていないでしょうか・・。
今思えば、この悩みに対しての俺なりの答えは感想の中にあったな。
この物語、緩急は確かに少ない。ないとは言わないがな。
だけどそれは人間模様に主軸を置いて、あれだけ面倒な奴らを主役にしてるんだ、仕方ないところもあるだろう。必要経費だ。
しかし、海村君は一見すると退屈になりがちなその話に、テーベという世界観を付与して読者の退屈や飽きを解消しようとしている。ように見えた。
その策はバッチリと決まっている。よって、気にせずそのまま突き進むが吉だと俺は思っている。
少なくとも俺はテーベを読んでいる間、一回も退屈だとは思わなかったからな。
以上だ。以下、恒例の2つだ。
※ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。
【作品名】ThebesWorldOnline
【URL】https://ncode.syosetu.com/n3972ez/
【評価】7点
さて、次は魔剣野郎の出番だな。
ぼぉーーーんッ!!!!
(事務連絡:しばし、自分の作品にこもります)