9.いたもん(異端審問官)になるには ~チート勇者をぶっ倒せ!~
どうも、あっちいけだ。
おう、あれだ。めっきり秋だ。読書の秋だな。
っていうわけで特に言い訳なんてせずにとっとと始めっぞ。最近俺がどうしてたか、どうしても知りてぇ奴は活動報告でも覗いてこい。
それじゃあ早速。今日はどうでもよくない話からしようか。
この採掘日誌なんだが、前回の掲載から9カ月も過ぎている。うん、待たせすぎてすまねぇ。謝るのはこれで最初で最後にするぞ。
それでだな。前回感想を書いた夕立君の次はトマルン君の『俺と君達のダンジョン戦争』の番だったはずなんだがな。
……彼はどうやら旅立って行ってしまったようだ。いや、アカウントはあるぜ? 彼の小説は残っている。
作者不在の作品に、感想を残すことを俺はしたくない。待たせちまったのは俺だが、俺が目指しているのは切磋琢磨だ。刃と魂の研ぎ合いだ。
ここで俺は1つ、感想を求めてきた同志に恥を承知で頼みたい。俺の感想を読んだという一言だけでも、メッセージでも活動報告へのコメントでもなんでもいいから返してくれると嬉しい。それに付随する反応、怒り、悲しみ、反論は心の中に収めてくれてもぶちまけに来ても構わない。
女々しい頼みで申し訳ないが、頼む。繰り出した本気が、空振りに終わることほど恐ろしいものはない。
こっちも作品の感想を書き出す前に『お前の作品の感想を今から書く』とメッセージで宣言する。もし、このメッセージに返信がなく、且つ作品更新がなかったり普通に貰っている感想をスルーしているようだったら、悪いが一時順番を飛ばさせてもらう。
俺の本気に向き合う準備が出来たら。
自分の作品に再度向き合うことが出来たら。
その時、また声をかけてくれ。俺はすぐにでもお前の作品を読み、感想を本気で書く。
だから、トマルン君。お前がいつかこれを読んで、尚且つ自分の作品と俺の感想に向き合えると確信を持てたのなら名乗りを上げてくれ。(※感想欄じゃないぞ? 俺の活動報告にコメントするなり、メッセージ送ってくれるなりでいい)
10年以上創作を続けてきたお前が無事であること、何より心身ともに健やかであることを願っている。
閑話休題。
さて、今度は本当にどーでもいい話だ。久しぶりだから、話題が溜まっちまっててしょうがねぇ。
俺は今、メイン作品を大改稿している。それは現在進行形で約20万文字くらいまで来た。納得できる形に昇華させ、ひと段落がついたら再投稿をし始めようと思っている。
と、近況報告は置いといて。何が言いたいかっていうと俺のメインは吸血鬼であり、この日誌じゃねぇ。9カ月前はこっちの日誌にのめり込み過ぎて自分が本当に書きたい文体が戻ってこなくなっちまった。それで大分苦労したことは、俺の活動報告を見ている奴なら知っているだろう。
だから、俺は、この日誌の書き方をかなり緩くすることにした。ようするに書きなぐりだ。『読者を意識して読ませる』文体ではなく、『ただ書き殴る』形に変える。
だから、接続詞やてにをはがおかしかったり、キャラの統一感がなってなかったりするかもしれねぇ。今も『だから』って接続詞を連続して使っちまってるしな。
だから、いつもヒール役に徹しきってる俺だが、若干その縛りを緩めようと思う。そうした方が、この日誌の活動サイクルも上げられるだろうとも思っている。許せ。許されなくても俺は好きなように突き進むがな。
閑話休題。
さて、ようやく本題だ。今日の感想に移るぞー。
今回、まだ自分の番じゃないはずなのに急に指名されたのに、快く踏み台を差し出してきたのは同志、『樋口諭吉』君だ。
突っ込みどころしかねぇ名前だよなぁ? ちなみに先にいっておくがこいつは前任スコップが存命中だったころからの内輪だ。あだ名は『札束くん』だ。
というわけで俺はここでもいつものように彼のことを札束くんと呼ぶ。ああ、いや、やっぱりやめよう。
ってなわけで。旧札くんがエントリーしてきた作品については以下、募集要項からの引用だ。先に目を通してくれ。
――――――――――――――――――――――――
【作品名】
『いたもん(異端審問官)になるには ~チート勇者をぶっ倒せ!~』
https://ncode.syosetu.com/n7792ey/
【簡易的なあらすじ】
ろくでもないチート持ちの転生「なろう主」どもや、現地の化物共をぶっ倒す、体制側の治安維持職業者ファンタジー。内容は最強対最強、チート対チートの異能バトルだ!
【セールスポイント】
人間の醜さをとことん追求した、とんがった敵。一人称の利点を追求した臨場感とテンポ。頼れる仲間の安心感。
【フックポイントの話数】
第20部分 vs 爆発の勇者
「とんがった敵である勇者(なろう主)との最初の戦い」
『悩み』
序盤の引きの弱さ
【本気で書いているかどうか】
『いたもん』はいつか読んだ人を、「あっ!」と驚かす、俺にしか書けないものを書いてやるつもりで書いている。本気も本気、批判もすべて糧にしてやるぜ!
――――――――――――――――――――――――
引用ここまで。
さあ、また来たぞ。転生ものだ。(内容を読むと、異世界転移や異世界召喚に該当するものだと思われる)
俺の目と口は異世界転生・転移ものというだけで常より百倍くらい辛くなる。アレルギーが発症するからな。だから今立候補してる奴らの中でも異世界転生ものを挙げてる奴、覚悟しておけよ?
まあ、でもあらかじめ言っておくと彼もまた夕立君や今は亡き古城ろっく君と同じく内輪の奴だ。諸手を挙げて感想殴り込みに行くのも、常の十倍くらいはやりにくい。
そんなわけで常の十倍くらい辛口の感想が下に待っている、かもしれない。旧札くんも外野も、今から覚悟しておけ?
さて、ここでまず、内輪の奴だった時恒例の作者紹介といこうか。
何を隠そう、旧札くんへは一度俺は殴り込みをしかけに行っている。前任スコップ時代にな。
まあ、ボロクソに書いたよ。端的にまとめると『何回も読もうと思ったけど1と2話目を読むのが苦痛すぎて無理です。挫折しまくりました。だからお薦めされた第2章から読みました。面白かったです』という内容だ。
ひっでぇよな? 作者からすると必要だから書いているはずの第1章を全否定されている内容だ。だけど、この意見は当時俺だけが抱いていたわけじゃないことを当時の感想欄が物語っている。
『情報量がえぐすぎる』―――彼の作品の弱点は、マジでその一言に尽きていた。
第1話で主人公が転生する。まあ、ここはよくある転生系の出だしだ。主人公が事故って死ぬ。起きたら異世界に転移っていうよくある話だ。さらっと読み流しても支障はない。
だが第2話で、旧札くんはえげつない情報量でもって読者をふるいにかけてくる。うろ覚えでしかないが、十数人の転生者や現地人の名前、外見の特徴、ざっくりとした能力説明が始まる。それもみんな、自己紹介で語っていくスタイルだ。
もう、読む目が流れる流れる。無理だろ、あんなの。誰も読む気が起こらんだろうよ。俺は心が折れ、読み飛ばした先で待っている第3話で『紹介が終わったから好きなようにキャラを動かしたれ!』と意気揚々と語っている旧札くんの姿が見えた瞬間にブラバをしていた。ごめん、あれは無理だ。
―――というのは過去の話。色んな奴に同じように指摘され、彼は改心した。大改稿の始まりだった。
俺は申し訳ないことに、その改稿後の作品を読んでいなかった。俺のとっておきの友人がこの作品を読みに行った時、『情報量そんなひどくなかったよ?』と言ってきたこともあり、俺は新生『いたもん(異端審問官)になるには ~チート勇者をぶっ倒せ!~』(以降、いたもん)を意気揚々と再度読みに行った。
さて、以下はそんな『いたもん』の内容だが、いつもの如く。まずは読んでねぇ奴らの為に概要だ。
俺の名前は楠木麟三! 冴えないアラサー男子ってやつよ、トホホ…って幼女が危ない! キキィー!ドドンッ!!
―――って、なんか気づいたら転生してるしヤッフゥゥウウウ! 女神様からチート能力貰ったし、しかも付き人が巨乳でかわいこちゃんなんてマジで俺の異世界生活始まってんじゃね!? ヤッフゥゥウウウ!
……って、なに? いたもん? なにそれおいしいの?
あ? いたもんは異端審問官の略だって? なにそれ怖い。魔女裁判でもするの?
あ、しないの? でも相手にするのは同じく転生してきた悪者チート能力者って―――なにそれ怖すぎっ!
手に入れたのは3つの能力。手で触れたものを何でも壊す『崩壊』、発動中受けたダメージの全てを無効化する『逆光』、時を止める『停止』。
ただしそれらは使用制限3秒且つリキャストタイム24時間という超燃費。尚且つ全ての能力の射程が3mしかないという超近接戦闘を余儀なくされる新設設計。
確かにチートだ! 決まれば強い!
だけどそれだけじゃあ生き抜けない! だって相手もチート持ちだもの!!
頭脳を使え、覚悟を決めろ。足を動かせ、そして決定打を叩きつけろ!
決まれば最強、手が届かなければどーしよーもない。そんな俺の、異世界いたもん生活はいかにーーー!?
「わ、私もリンゾーさまと一緒に頑張ります!」
ふぅちゃんマジ天使!!
―――レビューの内容には触れないでおこう。いつも怒られないかとひやひやしてるんだよ、これ。
さて、流れでこの作品の良いところを語っていこう。こっから先はネタバレ注意な内容のオンパレードだ、まだ読んでねぇ奴は注意しな。
まずなんといっても世界観だな。この『いたもん』は基本的には主人公である麟三の一人称で話が進む(たまに別の人の視点になったり、三人称になったりもする)んだが、安直な異世界転生物とは一線を画す奥行きが見える。
神がいて魔王がいて勇者がいて、役割の名前だけを聞くとわりかしありそうな世界なんだが、どの役割も一癖二癖ある。
最初に出会うユニークな設定は4話目で語られる邪神関連の話だな。読んでねぇ奴がいたらそこまで読んでみるといい。コミカル且つ現実味もあってユニークな設定がそこにある。なかなかに面白い。
次に悪役の描き方だな。これは本当に素晴らしいの一言だ。
旧札くんが自分でフックポイントに上げている爆発の勇者。彼は勇者として転生して即悪堕ちする。そして悪役として麟三たちの前に現れるんだが……
旧札くんは彼の一人称視点で語るポイントを設けている。そこが、本当に、素晴らしい。端的な言動、端的な思考しか描写されていないのにキャラが立っている。共感や協調とは違うんだが―――『憎めない敵』とか『見るからに雑魚』とかじゃないんだ。
正しく表現されているかは自信がねぇが、『等身大の架空的キ〇ガイ野郎』とでも言うんだろうか。
「こういう奴いるよね!」とか「分かる分かる!」とか「この敵かっけぇ!」とかじゃねぇんだ。一番表現として正しいのは「旧札くん、よくこんなキャラを書けたなぁ」という感心に近い。
全く描写されないそのキャラの背景や世界観に興味がそそられるキャラだった。俺が感心しちまったのはこの爆発の勇者と裸の勇者だな。そこから若干落ちてワキガ。
シリアスな場面の合間に物語の毒として、あるいは一服の清涼剤として出てくるコミカル・シリアルな敵キャラも『いたもん』の魅力だろうと俺は思う。
そして最後に、本作は能力ものを豪語しているだけあって主人公たちも能力者、敵も能力者という場面が多いんだが。
この敵どうやって倒すんだろう?とワクワクしていると、主人公たちの機転でわりとあっけなく終わったりする時がある。俺がそう感じたのはワキガの時だな。
こういったのは諸刃の剣でもあると思う。バトルで盛り上がるんだろうな!っていう読者の期待を肩透かしにしてしまう時もあるだろうけど、俺的にはアリだ。
その場にいるキャラたちが必死に考えた結果、最小のリスクでもって試せる方法があって、それを試したらクリティカルヒットしましたっていうのは現実味があってよい。宿命の対決みたいな土壇場でやられると萎えるかもしれんが。
実際に起きた現象や事前入手した情報から敵の能力を推測して、キャラが必死に対抗策を考えるのも能力ものの面白いところだよね!と感じた一幕だった。
―――さて。
それじゃあ行くぞ。こっからはいつもの俺の『本気』の感想だ。
とはいえ最初に申し上げた通り、キャラの統一は図ってねぇし読んでて面白い!ってところまでここの文章を昇華させるつもりもねぇ。
スコップの切れ味だ死屍累々だなんだと今まで言われてきたが、求められる悪役像に徹するのも今は気分が乗らねぇ。
分かるだろ? お前らだって作者なんだから。
書きたいように書く。悪役ぶりたい時は悪役ぶる。そうじゃない時だって、たまにはあらぁな。
だから、旧札くん。
批判も気にせず糧にすると豪語する、旧札くん。
その言葉に甘えて俺は今から極めてフラットな気持ちでボロクソに殴っていく。いいね?
さて、いつもの如く、グラフを出しておくぞ。ほれ。
【PC版】
【スマホ版】
今回からは10点刻みで横線を入れることにした。分かりづらいかなって思ってな。
これなら50点なのか45点なのかも分かりやすいだろう。より俺が感じた機微のところを掴みやすくなっていると思っている。
あとは以前説明した通り、俺の中での採点基準を右に追記しておいた。ヨシコ君の『オーバーピース』の時に一度書いたきりだったから、分かりやすくするため今後つけようと思っている。
そんなわけで、まずは時系列に沿って感想を言っていこう。
最初に、『タイトル。あらすじ』から。
タイトルはまあ、可もなく不可もなく。特別感がありつつも特別惹かれるタイトルではない。何となく軽く読めそうだという感じが『いたもん』と『チート勇者をぶっ倒せ』から滲み出ている。ラノベだったりなろう系を読みたい人だったら手に取る、といった感じか。
あらすじについては、人それぞれなんだろうけど俺的には若干『う~ん…』寄りだった。『〇〇要素、〇〇要素あります』というのがあったせいで(どうせこうなんでしょ?)みたいになって、読んでる描写を真に受けられなくなってしまった。ハッピーエンド予定です!っていうのも、なんか改めて最初に書かれていると『じゃあ読まなくていいか』って天邪鬼的になってしまう。
ちなみに、俺はハッピーエンド至上主義者だ。ただ、それは『う~~~!!! ここでこんな展開かぁ!! この作品、この作者はここからハッピーエンドに持って行ってくれるのかぁ?! それとも……くぅぅ~!! どうなんだー! 先が気になるぜぇ~!!』っていうヤキモキがあってこそ、無事にハッピーエンドだった時にカタルシスが発生し、そのカタルシスが好きでハッピーエンド至上主義を名乗っている。
それが最初からあらすじで『ハッピーエンド予定です^^』みたいに言われたら……なぁ~……『はいはい、どうせハッピーハッピー』みたいな感じになっちまって、せっかくのハッピーエンドが台無しだよって俺は思っちまう。
でも、これは超個人的な感想だ。世の中には『ハッピーエンドの作品しか読みたくない!』って人はいる。そういう人に向けて訴求してるんであれば、アリだ。
旧札くんが読者をヤキモキさせたいのか、安心させて読ませてあげたいのか。それによって選んでやってくれ。
次に、2話と4話。ここで俺的に超ムッとする出来事が発生している。
これが今回、旧札くんに言いたいことの1つ。『主人公と読者の認識の乖離』について言及したい。
何が言いたいかというと、例外も異論も出るだろうが一人称視点の小説は主人公と読者が二人三脚で話を進めていく話だ。これは作者がどういう意図で書こうが、読者は(あるいは俺は)麟三と一緒に世界を知って、冒険をして、敵と戦っているつもりだ。
没入感とも言える。主人公の考えることに共感しつつ、たまに主人公SUGEEEというカタルシスを感じつつ、異世界の常識に一緒に驚いて、かわいこちゃんに一緒にメロメロになって。そんな一体感を得やすいのが一人称小説のメリットのはずだ。
ただ、お前はそれを2話目から4話目にかけて台無しにしている。
2話目は、そうだな。よくある転生もののスタートだ。細かいところは後でまた言及するが、読み飛ばしちまっても別段影響ないようなストーリーだ。
―――っと、すまねぇ。読んでねぇ奴に説明しておくが『いたもん』における1話目はエピソード0にあたる前日譚だ。主人公の麟三が転生してくるよりも前、転生先の世界でいたもんがどのように戦っているかをわりと真面目に書いている話で、主人公の一人称が始まるのは2話目からになる。
ってなところで話を戻すぞ。2話目で麟三が死んで、目の前に女神様が現れました。3話目はヒロイン視点で麟三が転生してくるのを待つ話。そいでもって4話になって、冒頭で主人公が異世界に降り立ちました。
はい、そこで出てきた会話を以下抜粋。(抜粋は4話から5話目にかけての一連の流れの中から)
――――――――――――――――――――――――
「日本語が通じるの?」
「通じます」
「……君は? 俺のことを知ってるの?」
もしかして、女神様が言っていた付き人って、この子のことかな?
なんでも、不案内な俺のために、女神様は異世界を案内してくれる、付き人をつけてくれるらしい。こんなかわいい子が付き人だったら最高なんだけどな。
「私は、りんぞーさまの付き人になる、雪代双葉といいます」
素直にめちゃくちゃ嬉しい。案内役がいてくれるだけで、人生相当イージーモードだよ? 俺、「女神様じるし」のチート持ちだし。しかもこの子、めちゃくちゃかわいい。多分、干支一回りぐらい年違うけど
(かなり中略)
「そうそう。ふうちゃん。俺は、『事象魔法』使いだよ。ファーメリア様は、もとは龍神が使ってた破格に凄い魔法だって言ってたけど知ってる?」
「『事象魔法』は、本来人間が持てるような魔法じゃありません。亜神霊クラスが使う魔法です。因果律に干渉して魔法の法則を捻じ曲げます」
曲げるポーズを表してるんだろう。ふうちゃんがラ○オ体操の「体を横に曲げる運動」みたいなポーズをとっている。
「魔法の内容は、時間を止める『停止』と、ものを消し飛ばす『崩壊』と、予めかけとくとダメージが無効になる『逆行』だ」
「えげつない力ですね。反則です。チートです」
「えげつないかなぁ? 射程3m、使用時間1日3秒のきっつい制限付きだけどね」
――――――――――――――――――――――――
引用ここまで。
これも、人に寄るんだろうけどさ。俺はいきなり麟三が自分の能力のことをしゃべり始めて『は???』ってなっちまったよ。
だってそうだろ? 死ぬ前から死んだ後まで一緒にやってきて、さっきまでゴーレムだったり異世界情緒に一緒に驚いていた麟三がさ、いきなり『女神さまから俺はこういう能力貰ってるんだけど』って当たり前のように言われてさ。
俺はどっか1話分くらい話をぶっ飛ばしちまったかと思ったよ。
一緒に女神さまからの説明聞かせてくれよ。そこってわりと重要なイベントじゃないの? 後で出てくる麟三の紹介文にも『転生の時のやり取りで女神に気に入られたから破格のチート能力を授けられた』みたいに書かれてたけどさ、そのやり取りのひとっことも! 俺には伝えられていないんだが???
もちろん、これは非常に細かい指摘であり、人によっては気にしないところだろう。『まあ、女神様と会ったら能力貰うよね。そして主人公なら女神様に気に入られて破格の力を貰うまでがテンプレだよね』みたいな共通認識が、『エルフといったら長耳で弓や魔法が得意』みたいにあるんだったらいいよ。その認識を俺が受け入れられなかったってだけだ。
それでもな。それ以外のところでもこういう読者と主人公の認識のズレっていうのが起こっている。
他の部分、例えば第5話だ。以下引用するぞ。
――――――――――――――――――――――――
教会の受付に着くと、いたもんの仲間とサヤさんが集まっていた。俺とふうちゃんは、軽く自己紹介を済ませた。
「私は、ペリー・ペリシモ。いたもんの新人で、身長177cm。生前は大学生で、フェンシングの世界大会に出たことがあります。自由と銃の国出身で、嫌いなものは退屈。好きな言葉は正義。動物は猫が好きです」
「私はフィオラ。同じくいたもんの新人で、17歳です。フィオって呼んでください。ペリーの付き人として呼ばれてきました。土魔法と鍛冶が得意です。剣の研磨から、トーチカ作製まで、いろいろできます」
(中略)
狩りには、サヤさんがついてきてくれるそうだ。
「さて、そのまえにまず、スキルオーブで、皆さんのスキルを確認してみましょうか」
サヤさんが、受付の棚から、水晶のような玉を取り出した。
スキルオーブに手をかざすと、壁面に文字が浮かんできたぞ。
――、システム……承認。発行者 女神ファーメリア。
インサーキット・シミュレーター稼働中……、――
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
楠木麟三 LV3
異世界探訪者 LV1
事象魔法 LV1
格闘LV1
所有スキル
『崩壊』・『逆行』・『停止』(事象魔法)(リキャストタイム24時間)
異世界転移(リキャストタイム21日)
支配領域3RU
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
(中略)
俺と同様に、他のみんなが手をかざす。だいたいみんな自己申告のとおりだった。全員のスキル構成をざっくり把握したあと、俺、ふうちゃん、ペリー、フィオラ、サヤさんの5人で、狩りに行くことになった。
――――――――――――――――――――――――
引用ここまで。
この場面は初対面同士のいたもん同期が自己紹介した後、スキルオーブというアイテムで各自のレベルや能力を調べてみんなに見せあっている場面だ。
ここで、俺は、突っ込みたい。ステータスオープンはもうなろう系では様式美になっているだろうからあえて無視しよう。ペリーが何故か自分の身長を口頭で伝えているあたりも、どういう顔して聞けばいいのか分からなかったりしたがそれも無視しよう。
俺が言いたいのは、最後の行で麟三が言っている『だいたいみんな自己申告のとおりだった』という言葉。これは適切か?ということだ。
俺には、ペリーは出自と好き嫌いしか申告していないように見えるが、本当にその言葉は麟三に言わせて間違いじゃないのか???
これで5話目終わらせて、ペリーの能力が何なのか、全く!!読者に開示されないまま6話に行って、戦闘に入っていきなりペリーが時間停止の能力を使っててビビったぞ。
分かるよ。これはお前が過去にした大改稿の弊害だってことくらい。きっと自己紹介のセリフはそのまま持ってきて、その時にはその場でのステータスオープンはなかったか、もしくはその間に別の会話イベントがあったんだろう?
整合性が取れてねぇよ…さっき取り上げた麟三のセリフを読んだ時、『能力ものの作品なのに、俺は能力の記載を見逃したのか!? なんたる不覚!!』って躍起になって探しちまったじゃねぇか…
『主人公と読者の認識を合わせておく』、これは伏線だったり作為でない限り、一人称小説なら極力やっておいた方がいい。俺みたいな読み方をしている奴は、主人公が知ってて俺が知らないのは俺がどこか読み飛ばしちまったからだと疑ってしまう。本当に読み飛ばして読んでいる奴は引っかからないが、俺みたいにきちんと読もうとしている奴は100%引っかかるぞ。そんなの不幸以外のなにものでもないだろうが。
こういう、『主人公は知ってて読者にはまだ開示されてない情報』はさ、出すときに作法があんだろ?
麟三視点の地の文で、『俺は死んだ後、神様に会って色んなチートな能力を手に入れた。ひとつは〜〜〜』とかさ、ペリーか能力使い始まる時に、『さっきの自己紹介の時に聞いたが、ペリーは時間停止か使えるらしい。俺と能力かぶってやがるグギギ…!』とかさ。
あとだしでも地の文で説明があったら納得するよ。それもなしにいきなりさも知ってて当然とばかりに麟三がその能力を受け入れていると、俺は没入感をなくす。
引っかかったら、前に戻って情報がどこか探す。手間が増える。読むのにストレスだ、やめてくれ。
さて、次だ。そして残りの言いたいことの大半がこれに尽きる。
『情報の出し方がえぐすぎる』。
お前の作品、登場人物がわりと初期から多いよな? いたもんの同期で6人。教官や先輩や知人やらで9人。前日譚たる1話、転生前である2話、ふぅちゃん(メインヒロイン)が独白するだけの3話は除こう。
4話~6話の中でお前はこの15人を全員登場させている。名前だけでなく、麟三の前に姿を現す形でな。
もうね、覚えきれないよ。いや、最初に読んだ時の方がえぐかったよ、もちろん。
今ではうろ覚えでしかないけど、
>『私は〇〇、出身は〇〇で〇〇の能力が使える。こうこうこういうこともするわよ。よろしく』
>彼女は赤髪で三角帽子をしていてうんぬんかんぬん。
>
>『俺は△△、~~~』
>彼は黒髪でうんぬんかんぬん。
みたいな、1人あたり数行にわたっての自己紹介と外見特徴が描かれていて、それが十数人くらい並べられていて、正直言うともうとても読んでいられない代物だった記憶がある。
今は違う。きちんと読める―――いや、流し読みできてしまう形になっている。
はっきり言おう。6話でバーベキューしているシーン。あの場で俺がきちんと誰が誰であるか認識できたのは、麟三、ふぅちゃん、ビリー、ブリジットだけだ。他に何人いた? 多分あと7人くらいはいたな。
前もって、麟三(読者)と一対一で長めの対話があったキャラである、ふぅちゃんとビリーはわりと早めに認識できた。ビリーにいたっては1話での語り部だしな。ブリジットは麟三が歌を聞いて感動しているシーンが記憶に残っていたから『歌姫ブリジット』という単語で想起できた。
他でいうと一緒にさっきまで戦っていたはずの(同じ6話内であるにも関わらず!!)ペリーもフィオもサヤもその他有象無象の中に紛れ込んだ。さっきまで一緒に戦っていたのはいたもん同期のはずだ。はて、名前がごちゃごちゃ出てきたぞ。ペリー、フィオ、アシュリー、ロバート、どれが一緒に戦ってた奴だったかな?ってな具合よ。
いきなり麟三の前にパッと現れてそのまま集団の中に紛れ込んでいく奴らの多さよ。確かに俺も他の人も『情報を散らせ』と言ったよ。でもさ、もうちょっと散らせない?これじゃあ全然散りきってない。
今名前上げた奴は全員主要キャラだろ? パッと出てすぐに退場するようなキャラじゃないはずだ。そういう奴らにはちゃんと麟三と面を向かい合わせて、『こいつはこういう奴だ』って主人公にも読者にも認識させてから行こうぜ。外見の特徴とか能力の話じゃないぞ? 『キャラ』だ。
もういっそ記号化させてもいい。アシュリーなんかが分かりやすいじゃないか、調教娘。何かしでかしたアシュリーに対して、麟三に心の中で突っ込ませればそれで読者に印象付けられるじゃない。麟三の中でのアシュリー像と読者の中のアシュリー像をすり合わせる効果もある。そういったことをやっていこうよ。
ああ、あと言い忘れてた。ここでもいきなりアシュリーとロバートと仲良くなってる麟三がいる。名前は確かに前々から出ていたが、こいつらここで初対面だよな? いきなり名前だけの登場で容姿も何も説明なく会話に参加してんぞ。
これも改稿の弊害か? マジで最初誰か分からんかったよ。
閑話休題。
話も途中だが、ちょいと休憩だ。小話といこう。
この旧札くん、前任スコッパーに『とあること』を指摘されていたんだが、内輪の奴ら覚えているだろうか?
改行位置がホラーな感じでされているという、謎現象だ。試しにやってみるぞ。
こういう訳分からん改行を、当時旧札くんはしていた。何故かというと彼は改行位置に
こだわりがあり(俺も俺なりにこだわりがある。みんなそうじゃないかな?)、彼の場合
は『自分で読んだ時に一番美しく改行されるように改行』していたらしい。PCやスマホ
など媒体ごとに一行に何文字詰めれるかが決められているかということを知らずに。
だから彼は長い間、このホラーな改行を続けていた。恐ろしいだろ?一話目から意味不
明なところで改行されている文章を読まされるのは。新規できた人も大抵、ブラバしてい
ったに違いない。
そうして彼は前任スコッパーに運よくそれを指摘され、いつもと違う媒体で見たところ
、自分が犯していた過ちに気づき、改行位置を改めるようになったとさ。めでたしめでた
し。
―――だが、実はその片鱗は今でも実は見れる。
彼は作品のあとがき部分に用語辞典みたいなものを載せているんだが、そこにまだ改行が変なやつがたまに混じっている。
恐らく、パソコンみたいに幅広の画面で見ていたら違和感がないと思う。スマホで見てみたら一目瞭然だ。
比較検証できない人のために、試しに比較画像をつけてみよう。見るべきは画面下のあとがき部分、用語解説以降のところだ。
【PCで見た場合】
【スマホで見た場合】
(写真は『いたもん』の第7話 あとがき部分からの転載だ)
こんな感じだ。今でこそあとがきにしかホラー改行は見られないが、当時はこの怪現象が全文にわたって繰り広げられていたんだ。
マトモな作者じゃないと思われていただろう。非常に不幸なすれ違いだ。これから作品を書く人も気を付けた方がいい。
そして旧札くん、申し訳ない。誤字報告機能はあとがきにまで手が届かなかった。この場を借りて、報告しておく。
閑話休題。
さて、本題に戻ろうか。
『情報の出し方のえぐさ』について、まだまだ言い足りねぇ。
第13話、先輩いたもん全員がぶるっちまうような赤龍との総力戦だ。第1章のクライマックス、見せ場だな。
ここでは新人いたもんたる麟三はじめ、ファーメル教国の異端審問官が全員総出で強敵と闘う。勇者とも共闘して、合計15人対赤龍という構図だ。
……誰が何やってるか分からねぇ。
いや、違うな。正確には『この攻撃を誰がしているのか理解が追いついていない』だな。
恐らく、旧札くんの中ではここで登場している15人は今までの話で紹介済みなのだ。どういう外見をしていて、誰とどういう関係を持っていて、どういう能力を持っていて、何に弱いのか。それを説明し切っていると思っているんだろう。
ただ、一読者たる俺は1週目にここを読んだ時、マジで誰が何をしているのか少しも理解したいと思わなかった。
1人1人にスポットライトを当てる為に、一撃を当てて離脱していくキャラ達。その人物がどうしてその攻撃をそのタイミングで仕掛けたのか、どうして一撃当てたのに次の瞬間に同じ攻撃をして更に赤龍を弱らせようとしないのか、どうしてこの人が相手の攻撃を防ぎにいかないといけなかったのか。
そういった流れや必然性・必要性みたいなものを掴めず、俺は茫然と立ち尽くしてしまった。(←3週目くらいになって読み込むと、ようやく必然性が見えてくる。それは、誰がどういう人か理解できた上で、事前の作戦会議の内容にも理解が及んで、それが腑に落ちたからだ)
混戦・乱戦っていうのは非常に描くのが難しい。それぞれにスポットライトを当てる為に、『不必要にキャラへヒット&アウェイを強いる』という構図を俺はいくつも見たことがある。ここの場面も、残念ながら俺にはそれと同じだなと思って(初見では)見てしまった。
ちなみに俺もこの場面を同条件(序盤でキャラの造形がまだ読者に刷り込まれていない状態での乱戦)でうまく書ける自信はない。その代わりに、初めて読んだ読者でも盛り上がってくれるかもしれない妥協案を1つ、旧札くんに投げかけたいと思っている。
恐らく。ここで旧札くんが総力戦にした目的は、大体以下の4つに集約されるのではないかなと思っている。
1、赤龍という脅威的な存在が出てきたらいたもんが総出で退治しに行かないとおかしいという『道理・必然性』
2、強敵と協力して戦うという『クライマックス感の演出』
3、今まで語れなかったいたもん仲間の『戦い方の紹介』
4、すごい強敵すらうまく能力を決めれば倒せる『主人公の能力の特筆性・特異性の演出』
だが、これらの要望を満たすために、以下のところが犠牲になっていると俺は思っている。
1、何を・誰を見ればいいのか。情報が多すぎる且つ事前情報が少なすぎて茫然としてしまう。
2、1の影響でせっかく赤龍を倒したのに読者が爽快感を得られない(いつの間にか終わっていた、みたいな)
3、仲間が大勢いるのに、その都度足を止めているキャラがいるんじゃないかと思ってしまうほど、動きが単独行動に見える。(戦い方の紹介の弊害)
これらのメリット・デメリットを加味して、俺ならメリットの3番を消す。つまり、仲間の紹介は別のところでしようって割り切ってしまう。
そうして麟三には作戦開始前に『ビリーから合図を受けた時に~~という行動をしろ。それまでは仲間がどれだけ被害を受けても決して助けようともせず、ただ赤龍の頭部だけを見据えておけ』という行動方針を与えておく。そうすることで、読者は麟三の動きだけに集中し始める。
そして戦いが始まる。麟三からすると戦いの様子は、指示を受けたから一応意識の外に置かなくちゃいけない。でも、気になって『少しだけ』見てしまう。吹き飛ばされる仲間、その中でもなんとか頑張っているみたいで翼は機能停止させた(←全て簡潔な描写。誰それがああしたみたいな細かいことは書かない)。
でも合図が来ない。まだか、まだかと焦れる麟三。レミンが掻き消える、もう我慢ならんと動き出そうとする麟三。それを止めるふぅちゃん(←ヒロイン力~!)。
諭され、覚悟を決める麟三。そうだ! この作戦の成否はお前の覚悟と手にかかっているんだ!(←と読者が盛り上がる)
そして来たる合図! 颯爽と駆け出す麟三! サポートにまわるふぅちゃん! 皆の希望を一心に乗せたその手は、果たして赤龍に届くのか~!!!?
ってな感じに、俺なら書きたい。
すまん、かなり個人的な意見だ。エゴが入っている。だけど本当に『読者の知ってる事前情報<その場で出てくる情報』みたいな構図になってる気がして、う~ん。ちょっと読み流しが入ってしまって、俺は盛り上がれなかった。
閑話休題。
少しだけ話数を戻そう。10話のゴブリン退治の部分だ。
ここは結構重要な場面だ。なにせゴブリンとはいえ他者を殺すことに麟三が忌避感を覚えていて、それをいたもんという責任感・使命感で乗り越えるという話だ。自分の今までの道徳を書き換えて、新たなステップを踏み出す、大事なシーンだ。
ここで、俺はちょっと物足りなさを感じてしまった。せっかくの一人称視点なのに、麟三の心の声があまりなかったからだ。
いつもならツッコミやらなにやらで脳内が騒がしい麟三であるのに、先輩いたもんのイシュカに諭されて粛々と言われた通りに覚悟を決める麟三の図に、少し、『吹っ切れるの早ぇっ!!』って思ってしまった。
今までの価値観や道徳観を覆すのって、すごい葛藤があると思う。そんな時に精神活動が行われず、ただ単に言われたままの言葉を返すのって、う~ん…言われたから覚悟を決めましたっていうおぞなり感があるなぁ、なんて雑念が俺の中で生まれてしまった。
穿った見方なのは分かる。俺に一万文字のダメ出しをしてきたとある友人に言わせれば、俺はそういったところを描きすぎるきらいがあると指摘された。だから真に受けない方がいいのかもしれない。
ただ、俺個人は、そういった時の精神活動、葛藤、苦悩にキャラの息吹を感じるんだよなぁ……と思った。
―――さて。
なんだかすげぇ書いた気がするなぁと思ってここまでの文字数換算したら14,000文字だってよ……
おかしいな。せひろ君に書いたサウセンへの感想がこの日誌の最長記録になるはずだったのに、このままじゃ超えそうな勢いじゃねぇか。
まあそんなのどうでもいいか。俺はこれからも重箱の隅から隅まで叩き割っていくぞ。そのスタイルは変わらねぇ。
そんじゃ続きといこうか。情報量云々については、これが最後だ。
後で言及すると言ってしばらく放置しておいた、2話目についてだ。これについても、俺は難癖をつけるぜ。
ここはわりとよくある異世界転生の流れだ。幼女を助ける→助けた時の怪我が原因で死ぬ→死後の世界っぽいところで女神様に会う。いかにも王道だな。
だが、ここで旧札くんは変にいろんな伏線を張り巡らせている。『変に』というのは、雑にという言い方にも代えられる。
よくあるなろう系が『キキィッ! ⇒ドドン、俺は死んだ』で導入を終わらせているのは勢い重視だからだろう。俺は嫌いだが、それが一定の効果と支持を得ているのは認めよう。
伏線を混ぜるものもあるだろう。転生先でも前世の因縁に引っ張られる。いいじゃないか、俺の大好物だぜ先生。
だがな。
そこに入れる伏線は非常に大事なものだろう? きっと、このいたもんでもそこの伏線は物語の根幹にかかわる部分のもののはずだ。
3話でも、ふぅちゃんがその伏線を太くするために更に伏線めいたものを張っている。すごく大事なもののはずだろう。
ところがどっこい、4話以降その話は音沙汰無し。読者に与えた情報を刷新させる機会はなく、追加させる情報もなく、放置放置で最新話だ。
転生前の麟三と、向こうの世界でのふぅちゃんに関係があるっていうのなら、もっと麟三にもその節を匂わせようよ~。ふとした拍子に『あれ、なんか覚えのある会話だな』とか、『既視感のある表情だな』みたいな!
そうしたら、ちょっとまだ読者としてはその伏線がどう料理されるか分かってないけど、『そうだ、麟三! お前は転生前に日本のふぅちゃんと会ってるんだぞ! 思い出せ!(思い出したらなんか面白い展開があるかもしれない!)』みたいに期待感が持てると思うんだ。(俺なら)
伏線には2種類あると思う。1つは温めていくタイプ。もう1つは埋めておくタイプ。
今回で言うと俺はこの伏線、前者だと思っている。あからさまに読者へ突きつけている伏線だ。こういうのは要所要所で読者へ印象づけたり、情報を小出しにして少しずつ『あ、もしかしてこういう展開に…? いやいや、もしくは…?』みたいに期待・想像させるのが目的じゃねぇのかなと俺は思っている。
ちなみに後者は気づける人にだけカタルシスを与える効果だな。これは気づける人が少ないような絶妙な伏線ほど、気づいた人が得られるカタルシスは大きいと俺は思っている。
そんなわけで、あれだけ分かりやすくぶら下げられた伏線だったら追加で餌が欲しいと思う読者の意見でした。
もしくは、2話と3話ばっさり切っても問題なくね?とも思っている。多分、いきなり4話から読み始めて違和感ないぞ? むしろ変な伏線の情報がないだけ、それ以降の情報を素直に受け取れる。
そうして生活していく中、異世界と日本をふぅちゃんと一緒に行き来するうちに、麟三がふとした拍子に生前、最後に出会った少女のことを少しずつ思い出していく。麟三はそれがふぅちゃんに似ていると思いつつ……いやいやまさかなと否定する。読者も、どうなのかしら…?と答えを知らないからこそ麟三と認識が合う。俺的にはいい事尽くめだなぁと思っちまう。
まあ、こればっかりは完結した時にしか読者には良し悪しが分からん。現段階では、俺はそう思ったってだけだ。
―――さて。
俺が語りたい内容はあと3つある。まだ頑張れるか?
まあ、その3つはわりとあっさり終わる話だ。頑張ってついてきて欲しい。
さて、最後にまとめて語ろう。その3つ。
それは俺がどうしてこの作品のグラフを10万文字弱相当でキリのいい第2章完結の36話ではなく、次にキリのいい第3章完結の52話でもなく、ましてや最新話たる72話でもなく、中途半端な57話で終わらせたのかにも関係している。
それは、57話で俺の心が完全に折れたからだ。
3アウト。俺はそこから読者じゃなくなった。
(ここからは超絶ネタバレがあるから、未読の奴ら要注意だ)
まず1アウト目。34話目のところだ。
……まずその前に33話の話をしとこうか。
麟三たちは絶体絶命のピンチだ。どんな能力も届かない遠い空に、大量の龍が飛んでいる。その一匹一匹が災害を起こせるほどの強敵だ。
敵は作戦がうまくいったとほくそ笑み、麟三たちは龍たちの影で黒く染まっている空を眺めて絶望する。
そして明けて34話。良いシーンだったよ。ふぅちゃんの努力と今までまいてきた伏線が回収されて、絶対の窮地が最大の見せ場となる。最高のシーンだった。
あの前書きさえなければな!!!!
以下、34話の冒頭にある前書きから引用だ。
――――――――――――――――――――――――
図書館の伏線回収&カタルシス回です。スッキリしていってね! ( ̄ー ̄)b
さあ、皆さんご一緒に! 「撃てーーーーーッ!」
――――――――――――――――――――――――
引用ここまで。
てめぇ、ふざけてんのか? こちとら33話終わり際のハラハラを持ってやってきてるのに、冒頭でそんなこと言われちゃ『あっ、ふぅちゃんが何とかしてくれるのか』って分かっちまうだろうが。超絶ネタバレだよ。
なに作者自らネタバレしてんだよ。それでいいのか? お前は作品の中身でカタルシスを感じさせるんじゃなくて、冒頭の前書きで安心安全をうたっておいて、三輪車に補助輪をつけたような幼児に『これは安全なお話でちゅよ~』なんてよちよち読み聞かせて満足するような作家もどきで満足するのか???
ふざけるなよ。マジで。あとがきでいいだろ。マジで。
一緒に麟三とワクワクさせてくれよ。
ふぅちゃんがどんなことをしでかすのか期待させてくれよ。
最後の最後まで、倒せるのかどうかドキドキさせてくれよ。
これは、今まで見た中で最悪のネタバレだ。マジで、今まで33話かけて培ってきた作者と読者の信頼を裏切るなよ……
作品で魅せてくれ。頼むから。どや顔は後でいいから。
気を取り直して、2アウト目。53話、第4章の初めの話だ。
思えば、この作品を読み直し始めた時から嫌な予感はしてたんだよ。というか見て見ぬふりをしようと頑張ってきたんだ。
お前が描いたあらすじに、俺が45点をつけた本当の理由だ。
『この作品にはVRMMO要素が含まれます』って表記だ。これに非常に嫌な予感を覚えながら、俺は突き進んできた。その嫌な予感が現実になったのが53話だった。
分かってるよ。最新話まで読み終わった今、これがミスリードである可能性含めて、麟三たち含め誰も否定できないし、また真実であると断定もできない。
でもな、俺は『異世界に転生して、能力バトルしてる麟三たち』が見たかっただけであり、この世界がVRMMOである可能性の示唆はいらなかった。
確かに、プロファイルオーブとかはVRMMOっぽいよ。頭の上にアイコンが出るとかさ。でもそれは『そういうもの』として理解しようとしたし、現実、あらすじで示唆されたそれは何かの冗談であったり、日本に帰ってきた麟三とふぅちゃんがVRMMOに触れるとかそういう話かとも思ったよ。あまりにも俺の知っている『いたもん』と整合性が取れなさすぎているその要素を、俺は見て見ぬ振りをした。
まさか転生世界がVRMMOかもしれないと示唆されないだろうなと、恐怖を覚えながら読み進めたよ。(一応聞いておくが、前回読みに来たときはこんな表現、なかったよな?)
冷や水だよ。第3章の最後に、因縁の相手である竜騎の勇者をやっつけたぞー!ただ、彼女はただ振り回されただけの勇者だ。裏に暗躍している奴らはいっぱいいる。
さあ、この先どうなるー!?からのVRMMO示唆だ。テンションがた落ちよ。
俺は別にVRMMOものは嫌いじゃない。むしろ好きといってもいいジャンルだ。
それでもこれには相当萎えたね。もうちょっと書きようあるんじゃないの? だってさ、嘘かもしれないけど(嘘だって俺は信じたいけど)、色んな今までの要素だったりハル様の会話だったりがVRMMOを示唆しているじゃない?
それだったら最初から言ってくれよ~。そっち寄りにしてくれよ~。
いや、あらすじで言っているんだったな。それはすまん。鵜呑みにしなくてすまん。
だけど『異世界に転生したと思ったら実はゲームの世界でした』は夢落ちに通じるものがあるぜ……と、少なくとも俺は思ってしまった。
故に萎えた。2アウト目だ。
そして致命的な3アウト目。これはもうこの1点に限ってでもダブルプレーを上げたいくらいの爆弾だった。
56話と57話目だ。今まであんなに能力ものでやってきたはずなのに、いきなりロボットものへの方針転換だ。嘘だろ? マジかよ。俺はいつの間にオーバーピースを読んでいたんだ?(全然ロボのサイズ感が違うけど)
思えば54話目でベルがミリオタみたいに知識をひけらかしていたのが警鐘だったんだ。俺はてっきり『今度の敵はロボットかぁ』とか思っていたよ。まさか、主人公がロボットに乗るとは夢にも思っていなかった。
いや、いいよ? 一話や二話くらいはさ。おふざけで主人公がロボットに乗って、便利さと不便さ両方を知って、最終的に己が拳の方がいいわってなって捨てる話かなと思って読み進めたよ。
そんなんじゃなかったわ。完全に今後ロボットに乗り続ける話だわこれ。しかもこのロボット、別に搭乗するのが麟三である必要がない奴だわ。
たしかにこのロボットを強く出来た(チートなオーブで強化できた)のは麟三とふぅちゃん、あとはベルのおかげだ。ただそれ以降、別に麟三じゃなくても同様のチート能力を発揮できる機体になったよな?
これ、オーブで機能をインストールしたら別に中に乗っているのかベルでも麟三じゃなくてもいいよな?
むしろふぅちゃんに頼めば量産機が作れるんじゃないかとも思えた。
能力ものの良さが全て死んだよ。固有の能力、それなりの弱点。それをどうバチバチ戦わせるのか。今まで積み上げてきた魅力が全て死んだ、と俺は思った。
完全に心が折れたよ。俺はロボットものを見に来たわけじゃない。ああ、俺はこの『いたもん』にとっての読者ではなかったんだ。間違いない。
そうして俺はまともに読むことをやめて、流し読みで最新話まで読んだ。どこかで軌道修正されるんじゃないかと淡い期待を抱いて。
結果は、そのままだった。俺がそれ以降の話に点数をつけるんだったら全部0点だ。それならグラフにする必要もない。こうしてあの中途半端なグラフが出来上がったってわけさ。
……旧札くん。第4章になっていきなりロボットものにするくらいならもう少し『分かりやすい』伏線をまいておこうぜ。
度々出てくるゴレコンでそれを満たしているとかいうなよ? そんなに普及している技術であり、且ついたもんの戦闘にも実用可能なレベルの兵力を持てるんだったら、もっと早くから出ているはずだ。それこそ勇者が使っていたり、仲間のいたもんが使っていたりしてもおかしくない。それが旧型だろうがなんだろうがな。
出てくるのが遅すぎる。完っ全に『異世界ファンタジー』だと思っていたのが裏切られたよ。そりゃ、日本人から転生している人もいっぱいいたらそういう技術が発展するっていう可能性はあるさ。だけどさ、読者が思い描いていた世界観をそこまでメッタメタに崩して楽しい? それとも、崩れない想定で書いていたの?
どっちか俺には分からん。分からんが、正直、俺はそれ以降の話をマトモに読む気にはなれなかった。
ああ、でも、そうだな。そういえばあらすじにもう一つ書かれていたな。『この作品にはロボ要素が含まれています』って。
……お前さ、あらすじに書けばどんな後出しになっても許されると思ってるの?
違うよな? お前はそうは思わないはずだ。いや、思っていいはずがない。
何故なら、お前は散々プロローグから第1章まで、『情報を後出しにさせるわけにはいかない!!』って使命感帯びたみたいに情報を氾濫させている。それなのに世界観に直結する、しかもわりかし方向性が従来と異なる情報は後出しして、なんとも思わないわけ?
もうちょっと書きようがあんだろ。あれだけの情報は軟着陸させようぜ。あれじゃあ地面に激突して読者全員死んじまうわ、と俺は思った。
―――さて。これで俺の本気の感想は以上だ。ここからはお悩み相談のコーナーに行こう。
>『悩み』
>序盤の引きの弱さ
これは正直難しい問題だ。旧札くんにとっては恐らく、第1章に書きたいことが溢れている。だが、溢れすぎていて情報が過多だ。読者が大いにふるいにかけられる。
いっそのこと爆発の勇者のくだりから物語を開始したらどうかと思う。それより以前のことは麟三と仲間が酒飲みながら回想するとかそういう感じで(要所を絞りながら)。
正直、異端審問官が何をやるところなのか、第1章まででは全く分からん。あらすじとタイトルを読んだ感じでは『チート能力を使う無法者をやっつけろ!』的なものかと思っていたけど、ふたを開けたら魔物狩りだったからな。
まあ、麟三たちには必要なステップだと思う。それに読者を付き合わせるかどうか、トータルの物語から考えて決めたらよい。俺は現状見えている中で言うと、第2章から始めたらぐっと惹かれると思う。(もちろん、手直しは必要になるだろうけど)
さて、今回は最長記録だ、空白や改行含めずで二万文字。昨日最新話まで読み終わってから書き始めてこれだ。俺がいかに憤懣やる方ない気持ちになったか旧札くん、悟ってくれ。
もう一度言ってやる。お前の作品、第2章は面白かった。第3章も、クライマックスでケチがついたが面白かった。以上。
そいじゃ最後に恒例の2つをやって終わるぞ。
※ここで書かれている内容は全て個人的な意見であり、真に受けるかどうかは読み手に任せる。無視するも反論するもナニクソと思うも好きにしろ。
【作品名】いたもん(異端審問官)になるには ~チート勇者をぶっ倒せ!~
【URL】https://ncode.syosetu.com/n7792ey/
【評価】
第3章までなら3.5点
第2章限定であれば5点
最新話まで含めると0.5点
事務連絡だ。
もし今手を挙げている同志の中で、『時間が経って見て欲しい作品が変わった』って奴がいたら教えてくれ。順番はそのままで作品だけを入れ替える。
今、本気でお前が向き合っている作品に、俺も向き合いたい。以上だ。
さて、次は恋愛感情倒錯野郎の出番だな。
こいつはおとこ、こいつはおとこ!!