第3章:1節 在行(dream and wish in actualityand)
待望??の第3章・・・
『この世は、我らの主と、そのメシアのものとなった。』
旭が照らす崩れ去った巨大なビル群の瓦礫、
反響する彼女の声に神々しいさえ感じるツルギ。
だが、こんなことで諦められるはずもない。
ここまでここまで、来たんだ。・・・・・・すべてを犠牲にして・・・
「もうやめるんだ。もう、やめよう・・・ナオ!!」
足元のドス黒く濁ったコンクリートを眺め、
軋む膝を抑え、擦れかけの喉元から、声を、、、願いを搾り出す。
ナオと呼ばれた少女の両の足の間からは、
日の光を浴びる鋭くもあり鈍くもある鋼が輝きを放つ。
その光は彼女の背を通り、長い髪をすり抜け天に掲げられたその白い細腕に握られている。
「ツルギのこと、好きだよ・・・私」
鋼の巨剣に似合うことのない、屈託のない笑顔を浮かべる少女。
「俺もナオのことの・・大好きなんだ・・・だから・・・」
ツルギは、か細い太刀の柄を握る右の手に力を籠める。
「・・・だから?」先とは一変し冷淡に答える彼女
が、力がうまく伝わらない・・・
「・・・もう・・・」イヤだ・・・
「・・・もう?」
静寂の中に、瓦礫を踏む、華奢な音。幾度となく・・・
時間の感覚がなくなりそうになる。
静寂の中に、重い鉄の塊を引きずる音が近づいてくる。
「わたしのこと、好き・・・なんだよね・・・ツルギ」
柔肌をなでるようなやさしい声で語りかけてくる彼女。
「・・・お願いだから・・・」
地を映す視界に、艶かしい少女の足が入る。
「もう・・・」
「・・・もう?」僕は答える。
「・・・死んで!!」断末魔にも似た彼女の絶叫にハッと顔を上げる。
高らかに掲げられた巨剣が映る。
彼女は下唇をかみ締め、その巨大な塊を振り下ろす。
その泣き顔は、何故か天使の笑みにさえ見えた。
「君になら・・・」いいか。視界が暗闇に包まれる。
瓦礫がひしゃぐ音が荒廃したビル群を劈く
遠ざかる意識の中に、左の手の感覚だけがやけに鮮明に宿る。
暖かい、、、そう、ポカポカするような暖かさ・・・
懐かしい、、、そう、子供のころ感じた、母の・・・いや、もっと遠い昔に・・・
ナオの両の手は力なく垂れ下がる。
彼の者を引き裂いた巨剣から・・・
「・・・よかった・・・あなたと・いっしょ・・に・・・いけて・・・」
グロテスクな異形の左手は彼女の中心を貫いて いた