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第2章:11節 審理(under examination)前編


「そもそもどうして私がこんなことをしなくちゃいけないのだ・・・」


ツルギの太ももの先に取り付けられた義足の調整を行うユウコがぼやく。


「すみません。」申し訳なさそうには答えないツルギ。


「・・・これで終わり」


と言うとともに小さな平手を太ももに甲高い音がするほど振り下ろす。


痛覚をこらえる嗚咽をもらすツルギ。彼の目は涙することはない。


それとは反対の何か意志をひめた輝きがその目には秘められていた。


「あんたもバカね。こんな足付けてどうするのよ。」


その義足は本来医療の擬似生態が覆う生身にかぎりなく近いものではなく


完全に軍用、機械を保護するために黒ずんだ装甲が取り付けられた細く強固なものであった。


「・・・・・・」


「まぁいいわ。じゃあとは好きにしなさい。こないだはガキみたいに騒いでたのに」


見た目が10歳くらいの幼女の体で放つその言葉は皮肉以外のものではなかった。


ユウコのオリジナルは30歳過ぎの女性であること。すでにこの世にいないこと。


最高の天才にして、常識を度外視する彼女は表ざたには決してされていないクローン研究もしていたこと。


クローン研究と言っても、DNAレベルでの生物の複製は20世紀後半には確立されていたので、


彼女の研究は完全な複製。成人から成人をつくることはできず


成人から同じ遺伝子情報をもった赤ん坊をつくることにとどまる。


そこで彼女は20歳のとき自分のクローンの赤ん坊を作り


本来であれば環境・教育に応じて性格・考え方・知能指数に変化があらわれるのだが


そのクローンを8年間完全に隔離、端的に言えば培養して脳の大きさを成人のものと大差ないほどまで


成長させる。自らの脳内のニューロンネットワークをスーパーコンピューターに読み取らせ、


ナノマシンによってそれをクローンに書き込ませるという非常識極まりない研究を成功させていた。


その後年1回上書きすること2回、オリジナルは死亡し晴れてオリジナルとなる幼いユウコが


その人であった。


このことは簡単にリョウ達から聞かされいたのだが、やはりツルギにとっては


目の前の子供に上からものを言われている感覚になれてはいない。


「もうガキじゃない・・・もう逃げない・・・」


「あんた大丈夫??」


「ナオ、助けに行くからな・・・」ツルギが呟く。


それに対し呆れ顔を浮かべるユウコ


「敵さん助けてどうするのよ。あの子だって好きで司教になったんでしょ。」


ツルギを決意させたのは先日、衛星による全ネット配信による”主義者”の放送が初めてなされ


そこに写る、ナオの姿を確認したためであった。


「それに内容は各国への無条件降伏と使者の受け入れよ。どういう意味か解る??


抵抗せず、怪物たちの餌になれってことよ。」


「・・話合えば・・・いや騙されているんだ・・・」


「誰に??」


「・・・使者に・・・」


「もういいわ、バカらしい。この世界の真理、主義者、私達のことを教えてあげる


それでも行きたければ行けばいいわ。オリジナルもこんなにおせっかいだったのかしら」


身長には似合わない長い赤い髪をかき上げるユウコ。


次回:第2章:12節 審理(under examination)後編

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