第2章:10節 闘争(combative spirit)後編
「ツルギ、早く下がるんだ!!」
瓦礫の中からリョウの声が轟く。
その声を聞いたツルギは震える手足に激をいれ、ハルカを抱えさきほどの爆撃であいた窪地に飛び込む。
「もたもたするな!早くエンジェルキーを確保しろ!!!奴らの援軍がくるぞ」
グラン基地の制服を着込んだ大柄な男が叫ぶとともに、手で左右のダークナイトに指示を浴びせる。
砂煙を上げながら高速浮遊移でツルギたちを覆う。
「・・・来るな・・・・・・来ないでよ~~」
半べそをかくツルギに向かってその黒い巨人は手を伸ばす。
その刹那、瓦礫が轟音と共に飛散し、細かく砕けた岩が雨のように降り注ぐ。
「・・・!!?リョウ・・・さん??」
銀の長い髪をなびかせ、両の手を左右に広げ十字架にかけられたかのように、上空に浮遊するリョウがいた。
目は血走り、額には血管が浮き出ており、口元には薄ら笑いを浮かべていた。
その周りは陽炎のように銀のオーラをまとって・・・
「・・・コロス」
そう口走ると加速し弾丸のようにツルギに手を伸ばしている黒い巨人を貫く、
装甲がひしゃぎ、電流が暴発する音と共に黒炎をあげ、ダークナイトは金属の塊と化す。
銃を構えなおす3人の仕官達が発砲するより前に、リョウのかざした右手から
レーザーにも似た銀の光が無音のまま放たれる。
一間遅れて爆風と共にそこにいたであろう3人の人間は消滅していた。
残りのダークナイト機は一斉にリョウであろう男に向かってレーザーを照射する。
左手をかざすと目に見えるほどの蜃気楼のような空間の歪みが顕れそれらを反射する。
幾度となく、万華鏡は光を反射したのだろうか、無数の光が渓谷を包んだのち
そこにいたのは、銀の炎に包まれたリョウと後ろに立つ銀のマルス機、窪地でハルカを抱える脅えきったツルギ、
崖の上のアルキメデスのみであった。
頭上のアルキメデスからはガイの高笑いが響いてきた。
「これはおもしろい。」
「その声はガイ!!!!何故!!!!!!お前が生きている!!!!!!!!!!」
「そんなこと言うなよ、相棒。」
「なにが相棒だ!この裏切りものが!!!」
「おいおい、よく言えるな裏切りものはお前だろ。なぁ、サキ」
「・・・くっ、サキもいるのか。」
「元恋人とは話したくないそうだ。論理的にいけば、2対1でやはりお前が裏切りものだ。」
「・・・お前達が間違っている。」
「間違ってなんかいないさ、創造主に従うのが何故間違いなのだ。人は家畜なのだよ。」
「何が家畜だ・・・ふざけるな!!!!!お前らは、箱舟に、自分達が助かりたいだけだろ。」
「おお怖い、ウイザード相手だとこのポンコツではかなわないな」
はき捨てるように言い放つとともに、閃光が放たれる。
その先にはハルカとツルギが篭る塹壕があった。とっさに銀のマルスは機体をずらし
射線軸に飛び込むがすべてを塞ぐことができず砂塵を巻き上げる。
「・・・サキ」
リョウが呟く頭上にはアルキメデスの姿はすでにそこにはなかった。
次回:第2章:11節 審理(under examination)前編