第2章:9節 闘争(combative spirit)前編
「ツルギ、落ち着いたか?」
医務室の扉が開き、白髪の男性が入ってきた。
「リョウさん、元気そうですね。」
天井の2筋の光を見つめながら答えた。
「すまない、つらい思いをさせてしまって。」
普段は束ねている白髪の髪を下ろしたリョウの口元から薄らと傷後が見て取れた。
「別にいいんです・・・なにがなんだか・・・」
足元が疼く・・・
「こんなときに本当に申し訳ないんだが、今後の話をしようと思って。」
「僕には、もう関係ないことですから。どこかの基地でおろして下さい。」
「そうだな、これ以上君を巻き込むわけにはいかないか・・・でも、基地では下ろせない。」
「どうしてリョウさんも僕に意地悪するんですか?」
上から覗き込むようにして話す、リョウに対して背を向ける。
「いや、そんなつもりは・・・ない。まぁこの件に関してはツルギ君が回復してからゆっくり話すよ。」
「・・・・・・どうでもいいです。」
「まぁそういわずに・・・あぁそうだ、紹介しよう命の恩人を」
そういわれて、銀色のマルス機が目に浮んだ。銀色というには少しどす黒く、ただレーザー反射幕の塗装前のようにも見えた。
しかしながら、キラキラと輝く万華鏡の光と太陽の光の反射により、まばゆい銀色に輝くマルスを・・・
「はじめまして、アイ・ルイスといいます。」
リョウの方を振り返ると、
そこには、リョウより頭一つ分低い、髪を一つに束ねたブロンドの清楚な女性がお堅い軍服に身を包み立っていた。
「・・・ありがとうございます。アイさん。」
本当は、有り難いとは一切思えなかった、あのとき死ねたほうが僕にとっては幸せだったのかもしれないのに。
==================
<強制射出>のダイアログと共にコックピットが開放される。
「出ろ、このクソ餓鬼。」額から流れ出る汗のような赤い液体で眼前が揺らぐが、拳銃を突きつけられ出るように急かされる。
「タシロ司教殿、もう一人生きてましたがどうしますか?」グラン基地の仕官の軍服着込んだ男が、インカムに向かって話す。
短波無線なのだろうか、途切れることなく返答が帰ってくる。
「とりあえず、連れてこい」
「了解であります」
コックピット外へでると、強い日差しとともに愕然とする光景が目に映りこんだ。
あたりは爆煙がたちこめ、少し遠くにはひれ伏した白いマルス機の周りを取り囲むように、ダークナイトが7機
左の崖の上には1機の黒い影。それは他のものと離れてるとはいえ、一回り大きく見えた。
「歩け!!」両手を上で組まされ、そのハルカ機を取り囲む黒い悪魔の集団に向かって歩く。
視界が徐々に開かれるにしたがって状況が把握できていた。
「ツルギ生きてたのか?」
白いマルス機の眼前でそのまま膝まつかせられると、横には血まみれのアカツキが同じように膝まつかされていた。
「アカツキ教官、これは訓練ですか?」
明らかに訓練には見えないが、気が動転し訓練であって欲しいという気持ちが強く出てしまった。
すこし苦笑したアカツキは訓練だったら良かったな。と言うと隠し持ったナイフで目の前の強屈な男の首元をきりつけると
「ハルカを連れて逃げろ!ツルギ!!」と叫んだ。
うな垂れた顔をあげると、そこには意気消沈しきり内股でヘタと地面に座りこんだ、ハルカがいた。
反抗の銃声とともに2人目、3人目と兵士に飛び掛るアカツキを尻目に、ツルギはやっとの思いでハルカの元に駆け寄る。
「ハルカさん、逃げますよ。ハルカさん?!」
うつろな目に、薄ら笑いすら浮かべ
「ツルギ君、ずっと好きだった、でもナオちゃんばっかりかまって。」
ツルギも予定調和にない事態に混乱し我を忘れていたが、ハルカの状況はさらに酷かった。
「何言ってるんですか。そんなことよりも・・・」
×××PAN×××渇いた音がこだまする。
その先を見つめると、腹を押さえうずくまるアカツキの姿が目に入ってきた。
「くぁ、お前らだけは許さない!!!」
はじめ地上にいた、6人の兵士は3人までに減っていたが、
「このクソ尼!!!!!いい加減にしやがえれ~!!!!!!!!」
アカツキは容赦なく銃弾が浴びせられ、狂ったダンサーのようにも見えた。
1機のダークナイトからレーザーが発射され、爆炎と砂塵とともにアカツキは蒸散した。
「あは♪アカツキ教官、いなくなちゃった。」
まるでショウをみた感想の述べるハルカ。
「当初の目的を忘れるな。エンジェルキーさえ回収すれば、他はようはない。」
そのダークナイトからスピーカーにて声が響く。
「早くその白いフェイタルスーツを着た女をつれて来い。」
ツルギは強く、まるで寂しいときに抱くぬいぐるみのように、ハルカを強く抱きしめ後ずさる。
次回:第2章:10節 闘争(combative spirit)後編