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第2章:7節 勇気(Who dares wins)中編


「ハルカさん、聞いてます?僕の話?」


高速で過ぎ去る両端の渇いた岸壁に、目配せしながら、<<プライベート>>の文字が上部に点灯しているポップウインドウに映るハルカに目を落とす。


 「あっ、ごめんなさい。ツルギ君・・・でなんだっけ?」


 「なんか変ですよ、今日の訓練。」


 「そう?射爆場の谷をぐるっと一周してるだけでしょ。推進剤を使った高速移動、左右の壁面にぶつからなければ問題ないわよ」


 横幅20m、深さ50mは有ろうかという、砂漠の谷。通称万華鏡。左右の壁面はレーザー兵器の試射を幾度も行ってきたため、


熱融解により、結晶化、ガラスの線が谷の上部から斜めに幾重にも伸びている。


谷底からの光景は太陽光を反射するキラキラと輝く線により、幻想的な万華鏡の様相を映し出すのである。


 「一周するだけなら問題ないんですが、やっぱりなんかおかしいですよ。」


 前方を砂煙を巻き上げながら巡航飛行する、白いマルス機に目をやる。巧みに左右の両足の大腿部以下に取り付けられた、


推進装置を操りながら、所々、左右に緩やかなカーブを描く谷底を行く。


その前には青いマルス・リョウ機・ゆらゆらとゆれる2機の間からは


赤いマルス・アカツキ機が薄らと見て取れる。バックミラーモニターには、


ツルギ機とハルカ機の3倍の距離をとった青いマルス・ナオ機が追従して来ている。


 「考えすぎじゃない?!というか、ナオちゃんのことが聞きたいから、通信してきたんでしょ♪」


 「いや、そんなつもりは・・・」


実際問題、ナオのことは色々気になることはあるが、この通信はそんなつもりはなかった。


本来、小隊単位で訓練を行い、検証し、改善する。異例はあるが4機編隊を基本とした小隊編成に中隊長である、


アカツキ教官が加わっていること。理由としてはレーダー機能を使うと、事前にAIが演算し、最適なルートを


示しほとんど自動運行に近い状態になってしまい、訓練にならないということで、レーダー機能の第1種ロックがかけられ、


アカツキ教官の後を視認で追従し、推進剤をいかに節約し、早く回れるかというブリーフィングを受けた。


 「好きなんでしょ♪ナオちゃんのこと・・・良いな~恋愛って♪♪」


 「何言ってるんですか・・・そんなわけないじゃないですか。」


 ナオの笑っている顔、ナオの泣いている顔、ナオの怒っている顔、ナオの喜んでいる顔、アルバムを開くかのように目に浮かぶ


 「動揺しちゃって・・・好きなら好きってちゃんと言いなさいよ。言いたい時に言わないと、後悔するわよ。」


 「・・・っ、・・・ハルカさんは後悔したことあります?」


 「う~ん、まだ、後悔はしてないけど、このままだったら後悔するかな?!」


 「それって、ハルカさんも今好きな人がいるってことですよね。」


 「ハルカさんも、ってことはツルギ君も好きな人がいるってことだよね~♪」


 「揚げ足とらないで下さいよ。ハルカさん。」


 「じゃ、こうしよう♪ツルギ君が言ったら私も言うわ。」


 「えっ、どうしてそうなるんですか?!」


 「隊長命令♪決定事項です。作戦決行時は、2200時ということで♪」


 「わかりました。」


 何故、このとき冗談半分のハルカさんの言葉を聞き入れたのか、恐らくあと一歩一押しの勇気が欲しかったからだと思う。


 「えっ、言うの?誰に」


 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたハルカは、明らかに赤面していた。


 「僕が言ったら、言ってくださいね、後悔しないようにね♪」


 「・・・うん、私も頑張るね♪じゃ、2200時に待ってるね。」


 「わかりました。じゃまた今晩。」


<<通信終了>>の文字が浮かびあがる。


 また、今晩・・・って、今日言うのか昨日からのあの気まずい雰囲気のナオに・・・


 ・・・待ってるって、誰がハルカさん・・・ナオのこと好き、違います・・・


 ・・・僕が言ったら言ってって・・・すごい嫌な予感が・・・イヤではないが・・・


 ・・・どうするんだよ・・・って勘違いかな・・・



※※※※※※※※※※※※※※※※※※


いくらレーダー機能を切っているとはいえ、漠然と続く砂漠の谷底の移動は退屈そのもので眠気まで襲ってくる。



入隊当初も同じような訓練があった、そのときはビーコン(直径1mほどの球体模擬標的)について行くのに精一杯だったな~。


調子に乗ってスピードを出しすぎて、ビーコンを追い抜いて迷子になったっけ。


その後、レーダーの第2種ロックを解除して基地に帰って運動場50周・・・・・・・


・・・第1種ロックって自主解除できない、上官であるアカツキ教官以外・・・


前方の白いマルス機の推進剤が一度大きく吐き出されたかと思うと、その場に沈黙した。


その刹那、機体が大きく上下し、着地ダイアログが立ち上がり、自動制御により着地する。


「何だよ、故障か?」リョウの声が響く、どうやら全機、推進剤が切れたようだ。


推進剤が切れた、どうして、常にメーターはチェックしていた。


推進剤のメーターに目を落とすと、約3分の1は残っている。故障か・・・と思ったその瞬間


<<<ロックされました>>>AI制御アシスト機能が働く。左右の足に電流が走る。

「えっ、どういうこと。」ハルカが呟く。


<<<ロックされました>>>AI制御アシスト機能が働く。右肩に電流が走る。


頭部左右前後についたサブカメラが崖の上にいる十数機の黒い影を捉える。


<<<ロックされました>>>AI制御アシスト機能が働く。左肩に電流が走る。


「やられた、先回りされた・・・」アカツキが嘆く


 ズームされた黒い影は姿をあらわにする。ダークナイト・・・


<<<ロックされました>>>AI制御アシスト機能が働く。胸に電流が走る。


「先回り、ロックって」ツルギは・・・


<<<ロックされました>>>AI制御アシスト機能が働く。後頭部に電流が走る。


恐る恐るバックミラーモニターに目を移と、


青いマルス機のライフルの銃口が眼前に写りこんだ。


「えっ・・・」


耳の後ろにつけた骨伝導スピーカーから、冷たくオモイ声が響く


「・・・ごめんね・・・・・・ツルギ、好きだったんだ・・・私」


「ごめんねって・・・」


××××××DOWN××××××キラキラと輝く万華鏡の中で銃声が鳴り響き続けた。


次回:第2章:8節 勇気(Who dares wins)後編

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