第2章:5節 意図(just as one intended)
誤字脱字、矛盾がありますがご了承下さい。
×××実機シュミレーター終了×××
×××2021年7月6日グラン基地防衛戦×××
×××小隊撃墜数6502体、アント殲滅率38%×××
×××パターンF(限定条件 武器損傷率 高 援軍なし 弾薬MAX)×××
×××クリアランクE(小隊 マルス機4機全壊 小隊員4名死亡 グラン基地壊滅)×××
ツルギの目の前に、テロップが流れる。
「はぁ、はぁ、なんだこれ??!」
頭が混乱して事態がつかめない。
シュミレーターは、より実践に近い形で訓練を行えるよう基地のスーパーコンピューターが過去の
実践記録から仮想の電子空間を作り上げる。また、その情報を搭乗者の網膜投影式の視界に送り込むとともに
フェイタルスーツに、コックピット内に現象をフィードバックする。
近年に至っては、感情移入(移行)システムの確立により、シュミレーターに入る前の状況が整理、改変され、
あたかも現実のように搭乗者に感じさせる。
「生きてる・・・そうか、訓練か、訓練で良かった」ツルギは胸をなでおろし、一息つくと
コックピットの開閉スイッチを押す。
さまざまな色のLEDランプが灯る薄暗い閉鎖空間に前方から光が差し込む。
まるで倉庫のように高い天井には煌々と照らす白熱灯が整然とならんでいた。
あたりは、ツルギと同じように訓練中であろう、マルス機のコックピットを模した四角い箱が
いくつも、油圧ピストンに揺られてる。
「ツルギ〜!」声のするほうを向くと、少女が長い髪をなびかせ勢いよく飛びついてきた。
赤いフェイタルスーツに身を包んだナオは抱きついたまま、半べそをかいているようだ。
「ナオ、大丈夫?!」
「大丈夫じゃないわよ、本当に死んだかと思ったわ!」
ツルギは胸に顔をギュッと押し当ててくる少女に対し、どこに手を当てていいか解らず空をさまよう。
「ほっ、本当だね、・・・シュミレーターってここまでリアルなんだね」
「バカ、ばか、馬鹿、実践であんな無茶したら承知しないからね!」
「・・・いや、ナオが、助けてって・・・」
「・・・・・・」両肩がピッくと動く。
「・・・・・・」
「・・・・・・いつまでくっついてるの!離れなさいよ!!」
抱きついていた手を離すとツルギを突き放した。
「・・・いや、ナオが・・・」
「なによ、さっさとブリーフィングルームに行くわよ!!!」
突如、踵を返し、通路進み始める。
項垂れながら、ツルギはつぶやく。
「何が何だかさっぱりわけがわからない・・・」
「男のくせにぶつぶつ言ってないで、早く来なさいよ!」
こちらに振り返ったナオの顔は、涙のせいなのだろうか赤らんでいた。
<<ブリーフィングルームA−03>>
「あっはぁっはぁっはぁっ」リョウが腹を抱えて爆笑していた。抱腹絶倒とはまさにこのことを言うのだろう。
「私のナイト様、この地獄から私を連れ出して♪♪♪」
「ぅっさいわね、おっさん!!そんなこと言ってないわよ!!」
「はいはい、おっ丁度いいとこにナイト様のご到着だ、ほらナオ姫。」
遅れて入ってきたツルギをみたナオはうつむいたまま黙ってしまった。
その後、アカツキ教官からの説明で、今回の訓練はツルギとナオの装備の適正または連携を見るためのものだったらしく、
ハルカ隊長とリョウは感情移行システムはオンにしておらず、あえて撃墜されたことがわかった。
二人の必死な恋愛劇が、冷静そのもののリョウのつぼにはまったことはいうまでもなく、
ハルカ隊長にも、「いいな〜♪私も誰か助けに来てくれないかな♪♪」といわれる始末。
結局の所、ツルギ、ナオ両名はポジションによる戦闘規則を守っていないことに加え、
訓練詳細を前もって知っていたとはいえ、戦闘指揮を最低限ださなかったハルカ、
面制圧の際、故意に敵を討ちもらしたリョウの両名も責任を問われ、
明日よりの2日間の休暇取り消し、追加実施訓練が言い渡された。
<<司令室>>
「アカツキ入ります!!」
木造を模した扉を2回ノックし、中に入りキビキビとした敬礼を行った。
「ご苦労、ではさっそくだが報告を聞こう。」恰幅のいい男は深く椅子に腰を下ろしたまま答えた。
各中隊の取りまとめ役でもある彼女は訓練の進行具合、基地の備蓄率、各隊からの上申書を読み上げる。
「プロジェクト・グリフォンは順調かね?!」
「・・・特に問題はありません。」
「特に・・・・・・ねぇ。」男は、嫌味ぽく言葉を返した。
「装備、弾薬、改装、修理の上申書に関してはすべて通していい、休暇、シフト、配給に関してはすべて却下だ。」
「了解しました。報告は以上です。」
「ときに、娘は元気か?!」
「はっ、ハルカお嬢様は日々訓練に励んでおられ、お元気であります。」恐縮するアカツキ。
「で、」男は言葉を返す。
「はっ、司令のお言葉通り休暇を取り消し、グリフォン・シナリオ25特殊訓練を行います。
ですが、優秀なお嬢様一人だけでは取り消しは難しかったため、ハルカ小隊を訓練に参加させます。」
「・・・まぁいいだろう。計画には問題ない。下がってよい。」
「はっ、失礼します。」
アカツキが退室した後、薄暗い部屋で男はつぶやいた。
「キツネもなかなか、食えない奴だな・・・そろそろ尻尾をだすだろう・・・」
次回:2章6節 勇気(Who dares wins)