表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

第2章:1節 邂逅(Encounters)

第2章は第1章から約1年後のお話です。

神の使者は、地球人類の約半分を滅ぼすにいたり、その行いは殺戮というより捕食行動に近く、どこから来たのか、どういう生態をもっているかは未だ謎である。しかしながら、人類の科学の進歩は目まぐるしく、反重力物質の発明により人型機動兵器・戦術弾の実用化、それらによりグランドゲートの封鎖に至る。

人類の生存の執念により、均衡が保たれていた。

主義者達は表舞台に立つことはなく暗躍は続いている・・・


照りつける太陽、茹で上がる砂地、蒸しかえるコックピット


「あっち〜、このままだと戦う前に死んじゃうよ」


網膜投影式のレンズから眺める砂漠の地平線にゆらゆらと蜃気楼が浮かぶ


ツルギうるさい」甲高い少女の声が耳の付け根の骨伝道マイクから流れてくるとともに、


左上にポップウインドウが立ち上がりその声の持ち主である茶髪の小柄な少女が詰め寄ってくる。


「仕方ないだろ、暑いんだから・・・クーラーくらいつけてもいいよね、というか今何度だ??」


歩行の振動が微弱ながら伝う、シートを背に静感式のパネルを操作する。


「やめなさいよ、改めて数値で言われるとさらに暑くなるわよ。」頭を垂れ、ウインドウに移りきらない長い髪を振り乱しながら少女は言い放った。


直後、目の前に<外気温52度:内気温35度>と表記される。


「口に出したら、使者の前にぶっ殺すわよ!」ギロッと上目遣いで、髪の暖簾からこちらを睨みを利かせている。


「・・・・・・60度」ヒタヒタと滴り落ちる汗をぬぐいながら答えた。


「・・・・・・・・・」茶色い髪に隠されたなで肩が、ぴくっと動いたかと思うとピタッと止まってしまった。


「お〜い、ナオちゃん?!もしかして怒ってる??」


水素から変換した電力を動力に回しているため、エネルギー節約のためそもそもクーラーはついていない・・・


「・・・・・・ふっふっふっ」不敵な笑みをこぼすナオの声が伝わってくる これがいわゆる悪寒?!


「只今、体感温度マイナス値です・・・ごめんなさい、許して?!」


「許さない・・・」


「ナオ〜ちゃん、お願い・・・ナオ様ごめんなさい」


「絶対に・・・許さない!!!ツルギ覚悟しなさいよ〜!!!!」


警告音とともに右半身に微弱な電流が流れロックオンされたことを伝える。


視界情報で危険を伝えるとどうしても反応までにタイムラグが生じるため、


反射を用いている。そこにAIプログラムが介入し回避行動をとる。


被弾確率は格段に下がるが・・・


「・・・ぅわっ」時すでに遅し、左に飛びのいた際、砂地での蓄積データが搭乗機体にまだないため、砂に足をとられ


視界が傾く・・・その直後背中に強い衝撃が走る・・・


「イッて〜、何するんだよ」視界を上げると50mほど先に120mmライフルを構えた人型戦闘機動兵器、第二世代後期型マルスが飛び込んできた。


「あんたが悪いんだからね。この下手くそ。」


「この近距離でライフルを向けられ緊急回避プログラムが働けば誰だってひっくりかえるわ」


「あの〜お願いですから、ツルギ君もナオちゃんも訓練していただけませんか。」やさしい女性の声が耳元でささやく。


青いナオのマルス機とちょうど中間前方に視界を移すと36mmマシンガンを装備した白いマルスが映り込んだ。


「お願いします。お願いします。お願いします。」立ち上がったウインドウでは黒髪の20代前半の女性がペコペコ頭をさげている。


ハルカ隊長〜、ナオは悪くないんですよ、ツルギが文句ばっかり言って、さらに下手くそだから・・・」


「なんだよ、俺のせいかよ!文句は言ったけど、下手くそじゃないぞ!!『リカバー』」


音声コマンド+自動制御で姿勢を立てなそうとするが、左右の手足が砂にとられ立ち上がれない。


制御機器で唯一アナログなダイアルのつまみを一番右のオートから真ん中のセミオートを通り過ぎ左のマニュアルまで回す。


「そもそもクーラーが付いていないのが悪い!」


「暑さくらい我慢しなさいよ、あんた男でしょ!!!」今にも長い茶色い髪を伝って滴り落ちそうなくらい汗をかいた少女が答える。


「お願いですから、二人ともケンカしないで下さい。」うるうるした瞳を浮かべ厚い唇がへの字に曲げたハルカのウインドウが最大値まで強制的に拡大される。


「すみません、隊長すぐに立てなおしますんで。」


右足のペダルを踏み込み、左手のハンドルを引き込む。手足に砂のような感触を感じながら姿勢制御していく。


マニュアルに設定すると機体が感じとる感覚をフェイタルスーツにより搭乗者にフィードバックする。


とはいっても、あくまでも感覚を再現してるだけなので基本痛覚感覚機能はオフされている。


ある程度立ち上げが完了したところでセミオートに戻し、立ち上がった時点でオートに戻す。


「早くしなさいよ!!こんな暑いところもう居たくない・・・さっさと索敵訓練終わらせて帰るわよ!!」


「ほんとナオはうるさいな〜!そもそもお前がイラついてロックオンしなければ・・・」


「お前らいい加減にしないかー!!!」ハルカ機の対角に視界を移すと両肩に4連式のロケットランチャーを担いだ青いマルスが映り込んだ。


「オープン回線でケンカしやっがって、黙って聞いてるこっちの身にもなりやがれ、そもそも砂漠は暑いんだから


そんなことくらいでケンカするな。他の隊が聞いてたらどうするだ!この恥さらし目!!」


癖のある白髪を後ろで束ね、無精ヒゲをはやした20代後半の男のウインドウが立ち上がる。


「おっさん、うるさい!!!基地局通してのフルオープンじゃないんだから、誰にも聞かれてないわよ!」


「なんだと、このくそガキ!!ケツもまだ青いくせに大人に口答えするんじゃない!!!」


「あっ、言ったわね、それセクハラだよ、それに大人気ない、おっさん」


「なんだと〜!!!!」


「まぁまぁ、二人とも・・・落ち着いて・・・」


「「ツルギは黙ってろ!!!」」


ふとウインドウに目を落とすと最小表示になっているハルカ隊長が汗とも涙とも見分けがつかない光るものを瞳から流していた。


「ぅっ、ぅっ、ぅっ、ぅっ、ぅっ」どうもナオとリョウのおっさんは気づいてないみたいだな。


タッチパネルをいじり各機に最大ウインドウ、最大ボリューム(骨伝導+スピーカー)でっと・・・



「ぅっ、ぅっ、ぅっ、うわぁ〜ん、うわぁ〜ん」ハルカ隊長の年に似合わない大泣きがコックピット内に鳴り響く・・・


ナオとリョウは鳩が豆鉄砲くらたったような顔し、お互い見合わせ・・・


「「どうもすいませんでした!!」」


これでなんとかおさまったか・・・ハルカ隊長はまだ大泣き中・・・


二人がウインドウ越しに目で訴えてくる。


「どうもすいませんでした!!今後はこのようなことがないように気をつけます!!!」


直後、ピッたっと泣き声がやみ、


「ツルギ君よろしい、ナオちゃんもリョウ先輩も仲良くしてくれますよね?!」


「「もちろんです!!」」


やられた・・・


次回:世界(World of life) 環境が変わっても人は人間として生きていく。


「清く、正しく、可愛いく」BYナオ

「強く、正しく、カッコよく」BYリョウ

「旨く、正しく、美しく」BYハルカ

「・・・・・・・・・・・」BYツルギ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ