78.戦力おかわり入りました!
今回はちょっとサブキャラ視点です。
(……まずいわね)
アーニャ教室大学部2年生、騎士課程のアミティ・プルールアーは激しい風のなか、自分の唇をぺろりと舐めていた。
と言っても、へリングに勝てないというわけではない。
(ちょっと時間がかかりすぎかも)
ちらりと戦場の中央を見ると、ウーナ教室はすでに50%ほど作戦目標を達成しようというところだった。
正反対の左翼の状況も、若干遅れてはいるけれど似たようなもの。
だというのに、アーニャ教室が担当している空域ときたら、まだまだ群れの八割以上が戦意旺盛にピンピンしているのだ。
(あーもう! これじゃわたしたちの評価が下がっちゃうよ!)
これは演習。勝てばいいというものではない。
地上を見ると評価のためにペンを走らせている学園教師たちの姿が見える。
『アミティ、これから第二陣が出るぞ!』
モジャコからの通信でそんなことを伝えてはくるけれど、しょせん第二陣は高等部低学年を中心とした、いわば2軍。
この戦況をひっくりかえせるわけがない。
ただでさえ低いというのにこれ以上アミティの……いや、アーニャ教室の評価をこれ以上下げるわけには――
『おい、アミティ。余計なことを考えるな! くるぞ!』
言われて意識をハッとへリングに戻すと、そこにはさきほどまでの、風に揺蕩うような動きではなく、急激な方向転換をしたへリング。
「え? しまっ――」
アミティの飛行技術では、この群れに飲み込まれてはひとたまりもない。
へリングたちがその身を魔力で赤く輝かせ、アミティへの突撃準備を終える。
教室の仲間たちは――それぞれ、追いかけられていてこちらへの援護はできない。
「くっ……。フルール。風の壁を!」
地上戦の癖で腰の剣に手を伸ばしかけるが、こんなものを空で振り回せばバランスを崩してしまって逆に危険だ。
空中戦はあくまでも至近距離からの魔法による攻撃が鉄則なのである。
フォン。
フルール――アミティの操る風の精霊が身を守るために風の壁を展開してくれる。だが、おそらくこんなものは気休め程度だろう。
「ジャアアアアア!!!」
へリングの群れが真っ赤になってアミティに突撃してくる。
その数は約10000匹。
死にはしないだろうが、おそらく今回のコンクエスト中は復帰不能。
せめて高価なラムジュートボードを手放すまい、とぎゅっと落下防止の紐を握りしめ――
「そうは! させーん!!!!」
その瞬間。真上から一匹の魚と一人の少女が群れに突撃してきた。
※エリオ君はイワシ相手に完全防御してましたが、属性的な問題&彼は人口3000万人の国で、同世代トップの強さを誇る人間です。
ウィルベルとかリーセルみたいな勇者候補生が頭おかしいだけです。