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75.突貫!

 ユーリアさんの掛け声に、モジャコのなかがにわかに慌ただしくなる。大学部の子を中心にして動き出すんだけど、そこはやっぱり学生さん。粗も多い。


 でも、それを完全に統率するのがユーリアさん。


「――ええ。それは出撃後でも大丈夫よ。ディア、優先順位を考えなさい。

 フラウト、今度こそミミ機関長に指令を出して。なに? 怖い? バカを言ってないでさっさとなさい。

 ああ、いけない。リレ、舵が予定とズレているわ。ウーナ教室から命令は来ているけれど、何も考えずに遂行(すいこう)しないで。全体指揮がどうして作戦の思惑も一緒に伝えてきてると思っているの? いまはそれでもいいのだけど、2年後に大学課程に進みたいのなら、そうはいかないわよ。

 ちょっとウェンディ。あなたは報告が多すぎるわ。自分に与えられた裁量(さいりょう)を理解なさい。何を報告すべきで、何を報告すべきでないか。それを考えるのも演習の目的なんだから」


 まるで先生みたい!

 たぶん、本職の船長さんでもここまで忙しくないんじゃないかな……。


 やがてすべての準備を整えたユーリアさんが、キャプテンシートから立ち上がり、バッと手をかざした。


「さあ、みんな。準備はいい!?」


『「あい、さー!」』


「では、魔法による一斉攻撃のあと、扶翼による切り込みを。切り込みのタイミングは――今回は担当に一任します。そろそろそういう仕事を覚える時期よ、アミティ』


『任せて!』


 伝声管から元気のいい返事の直後。


「魔法班、攻撃開始!」


 船内通信を担当している生徒が伝声管に向かって指示を発する。


『よーし。じゃあ、役割にあぶれた暇人たち、どんどん撃つのよ!』『はーい』『どこ狙えばいいの?』『暇人って言うな! もういい。適当に撃つぞ』


 ここまでの真剣な通信から一転。弛緩(しかん)した通信の直後、船体の左舷から、空に向かって一斉に魔法による攻撃が開始される。

 でも、あれ? ウーナ教室のと比べると、なんか練度低くない?


「こらっ! 新入生が見学にきてるんだから、そういうこと言うんじゃないの!」


 伝達を担当していた生徒が大きなため息をついて、新入生たちにむかって肩をすくめた。


「ごめんね。あの役割は演習とは関係ない学部の子たちの仕事なの……政治部とか経済学部とか」


 なるほど。でも、練度が低いとは言ってもそこはさすがレヴェンチカ。

 最低でもBクラス以上の精霊たちが織り成す魔法の波状攻撃は、確実に春告ヘリングの群れにダメージを与えていく。

 そして、充分に勢いを弱めたところで。


『第一陣、行くわよ。とつげきぃー!!!』


 モジャコからラムジュートボードに乗った生徒たちが射出され突撃していく。


 ばしゅっと生徒たちを射出するのは原始的なカタパルト装置。

 装置の前面にあるウィンチから伸びたロープをラムジュートボードの突起にひっかけ、ロープを巻き取ることで加速させていく。


 浮遊有船のデッキから、まるでグライダーのように優雅に空に飛び立つ生徒たち。その数6人! 先頭を駆るのは赤髪の女生徒アミティさん!


「なにあれ! かっこいい!」


 ちなみにウィンチのモーターは魔力で動いているらしく、生徒が精霊を召喚してなにやら操作してる。

 飛び立った生徒は通信用の道具を持っているらしく、艦橋にアミティさんの声が響く。


『みんな、新入生にいいところ見せようだなんて考えないで。いつも通りに』


 アミティさんを先頭に、大外(おおそと)から回ってヘリングの群れに攻撃を開始する。

 その恐れを知らぬ突撃に、新入生たちから「ひっ」と息を呑む声が漏れる。


 さもありなん。自由自在に飛んでいるようには見えるものの、彼女らのいる空の下は奈落。落ちたら死ぬしかない危険な場所なのだ。


「おお……。ああやって戦うんやね」


 いっぽう、ウィルベルは至近距離で行われる戦闘に釘づけだ。


 基本は、ターゲットの周囲を飛びながらの、近距離からの魔法による一撃離脱戦法なのかな?

 一応、全員が腰に剣を帯びてはいるんだけど、それを抜くような生徒は誰もいない。

 さっきのウーナ教室の生徒達もそうだったけれど、ギギさんやウィルベルのように空中で近接戦闘を敢行する命知らずはいないらしい。


 でも、そうは言っても、うーん? 基本的には遠距離魔法っていうのは威力不足なのかな?

 船からの魔法よりも、不安定でも近距離からの攻撃のほうがダメージを与えているように見える。


 第一次世界大戦における複葉機の機関銃によるドッグファイトに似ていると言えばわかりやすいかもしれない。

 そして、その戦い方は()()()()にシステマチックだ。


『おおお! かっくいいー!』


(でも、まだあんまり慣れてないような?)


(せやねえ)


 浮遊有船同士(ふゆゆせん)の連携の見事さや、個人技の熟練度に比べると、未熟な感じがぬぐえない感じ?

 そういえば、あのラムジュートボードってまだ開発されて間もないって言ってたっけ。ノウハウがまだ全然溜まっていないのかもしれない。


(というか、ウィルベル。そろそろ……)


(あ。そやね)


 ぼくは近くにいた新入生の接待役をしてくれている人に声をかけた。


「あのー……」


「どうしたんだい?」


「おしっこ行きたいんですけど、お手洗いどこですか?」


 みなさんご存知でしょうか。海の魚は尿意が近いのです。

【マグロ豆知識】

前の豆知識で、マグロはおしっこダダ漏らし生活というのは書いたので、今回は糖尿病とマグロの話。


地味に患者が多く、その対策が求められている糖尿病。

ちょっと前に、青魚(イワシ、サバ、ニシン)やマグロなどに多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸が糖尿病にいい作用を与えると話題になりました。

(そういえばn-3系不飽和脂肪酸についても前の豆知識で書きましたね)


ところが最近の研究ではn-3系不飽和脂肪酸の摂取群ではあまり有意差がなく、実は一緒に摂取されていたn-6系不飽和脂肪酸が効果があるということがわかってきたそうです。


ちなみにマグロはn-6系不飽和脂肪酸も豊富ですよ!

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マグロ豆知識補足はこちら
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