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52.ぼくらが得たもの(下)

「ウィルベルさんの相手、クァイスは今年、高等部3年生になる生徒のなかで第三席に位置している学生です」


 対戦相手のことを説明し始めてくれたのはギギさんだった。

 そういえばギギさんってちょっと前までレヴェンチカの学生さんだったんだっけ。


「学年で3番目ってこと? じゃあ……」


 そんなに強くないんじゃ?

 って言おうとしたぼくの言葉を否定したのは、やっぱりギギさんだった。


 ギギさんは首を横に振りながら、


「今年の高等部3年生の主席と次席は別格です。

 その2人は学園史上、最高傑作とも呼ばれており、高等部の学生であるにも関わらず、大学部まで含めたなかで最強と呼んで差し支えのないほどの実力者なのです」


「つまり、その次に強いクァイスって人は、例年なら主席クラスってこと? でも――」


 そんなこと言っても学生でしょ?

 そう言おうとしたぼくを遮ったのはやっぱりギギさん。


「高等部3年生の主席と次席の力量を簡単に説明すると……去年の時点でいまのわたしよりも優秀でした」


「ほぁっ!?」


 ぼくらがいままで見たなかでダントツで強いのがギギさんなのに、それよりも強いってどういうこと!?

 はは。危機感を煽ろうとしてそんなこと言ってるんだよ……ね?


 エリオ君たちに救いを求めるような視線を向けると、彼らは一様に「うん。あれはやばい」とうなずいた。まじか。


「なんでそんな化け物相手に試験やらなきゃいけないわけ!?

 合格させる気まったくないじゃん! そんなの絶対おかしいよ!!」


「は、はわわ……」

 

 さすがの脳筋少女(ウィルベル)もこれには戦慄を隠せない。

 そんなぼくの頭を「落ち着け、たわけ」と叩いたのはベルメシオラだった。

 

「逆に言うと、そのクァイスとやらはそれ以下なわけであろう?」


「技量だけで評するならば、その通りです」


「……なにか含みがある言い方であるな?」


 ギギさんは言葉を選んでいるようだった。

 たぶんだけど、ぼくらにこれ以上のショックを与えないよう伝えようとしてるんだろな。ギギさんって、なんていい人なんだろう。


 でもそういう丁寧な心配りが逆に怖いんだよね!


「いま言ったとおり、高等部3年生の主席と次席ははっきり言って別格です。同じ年代の他の者……大学部の生徒ですら追いつくのを諦めた正真正銘の化け物とでも申しましょうか。

 ですがそのなかで、たったひとりだけ諦めなかった者がいます」


「クァイスとかいう娘だな?」


「はい。クァイスの優れている部分を挙げるならば、その精神性でしょう。

 負けず嫌い。泥臭い。とでも言いましょうか。業火のような激情と不屈の魂の持ち主です。

 稽古や普通の試合ならまだしも、今回のような舞台となると……大学課程の生徒たちよりも厄介かもしれません」


 うへぇ……。すっごい厄介な人っぽいなんだけど。

 さっきも言ったけど、なんでそんな厄介な人相手に試験しなけりゃいけないんだろう?

 というか転生してからこっち、ずっと限界以上に戦ってる気がするんだけど、たまにはチョロイ相手をよこしてほしいよね。


 しかも、そんなこと言われちゃうと……チラっ。


(クァイスさんってすごい人なんやね! うち、ワクワクしてきたんよ!)


 あばー! ご主人様ってば、さっきまでほけーっとしてたのが嘘のように、闘魂をメラメラと燃え上がらせてらっしゃる!


「うー。こうしちゃおれん。どこかで運動できる場所を探して特訓せんと!」


 くそったれー! ぼくは異世界転生でスローライフでハーレムな展開を志望してるっていうのにー!

 強敵の出現にワクワクするような生活はノーサンキューなのにー!

 くそったれー! 我がご主人様はどうしてこんなにゴリラなんだー!!??

 

 そんなぼくの魂の叫びは誰にも伝わっちゃくれない。


「ウィルベルさんならそう言うと思ったよ」


 リーセル君がそう言って笑うと、エリオ君も呆れるように肩をすくめる。


「お前らがケチョンケチョンにやられて恥をかこうが構わないが、リーセルが放っておけないって言うから仕方ない。オレたちじゃ力不足かもしれんが、少しは鍛えてやるよ。お前は基礎ができてなさすぎだからな」


「それってスパーリングパートナーの立候補ってこと?」


「ああ。さっき学園のほうに問い合わせてみたんけど、快諾してもらえたよ。そのために一室貸してくれるって」


「学園側も、生誕祭のしょっぱなから虐殺を見世物にするわけにはいかないってわけだな」


 わーお。リーセルってば手際よすぎー。

 エリオ君のほうは「ひひひ」と意地悪く笑ってるけど、ツンデレな感じすぎて、むしろ好ましい。


 しかも、それだけじゃない。

 ベルメシオラが「ならば」とうなずく。


「ギギよ」


「はい。微力ですが、わたくしもお手伝いさせていたします。

 ベルメシオラ様のおりがない時間だけにはなりますが」


 なにこの豪華メンバー。

 この申し出にウィルベルさんってば感動しちゃって、


「みんな、ありがとう!」


 みんなをギューッと抱きしめた。

 あわわ。男の子に対してそれはいけない。


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