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36.到着、レヴェンチカ

「目を覚ますとそこは謎の部屋だった」


 気絶から目を覚ましたぼくが見たのは、どこかの船室のようだった。

 真っ白なシーツ。変な器具。天井は高く、緑色の絵の具がふんだんに使われた絵画は名作な感じ。どっかの総合病院のVIPルームみたいって言えばわかりやすいかも?


 って言っても、ぼくが乗せられてるのはベッドじゃなくて、テーブルの上に置かれたまな板の上なんだけどね。

 ここはどこだろう? ぼくってば何をしていたんだっけ?

 

 ……。

 

 むむむ!? 思い出してきたぞ。ドラゴンを倒したあと、ぼくらはあの浮遊有船(ふゆゆせん)に戻ったんだ。そんでウィルベルが気絶して、それに前後してぼくも気絶。


「あら、目を覚ましたかしら?」


 と声をかけてきたのは、まさに船医って感じの白衣を着た女性。


 歳は20歳くらい? どこか気品を感じさせる健全な色気。ミディアムロングの髪の毛の先までキチっと揃えたクール・ビューティである。

 動物で例えるなら品のいいサラブレッドって感じ。


「もしかして、ずっとぼくらを看ててくれたの?」


 クール・ビューティの目の下にはちょっとだけクマが見える。

 どれだけの間、ぼくらが気絶してたか知らないけれど、頑張って看ててくれたのかもしれない。


 ぼくが尋ねると、クール・ビューティはやさしくにっこりと笑った。


「ええ。精霊の庭ではなくて、こちら側の世界で気絶する精霊がめずらしかったから。

 目を覚ましたのならちょうどいいわ。ちょっと電気ショックを流させてもらうわよ。起きてるときの反応も見たいから」


「え? 電気ショック? ちょっと何言ってるかわかんな――」


「スイッチオン!」


 ビリビリビリ!


「あばー!?」


 よく見ると、なんかぼくのボディに変な器具が色々ついてる! そこから電気でショックなやつがビリビリって流れてくる。あばばー!

 

「ふふふ。もう少し強くいくわよ? いいわよね? 大丈夫よね? 返事がないなら了承ってことで。えいっ!」


 ビリビリビリビリビリ!!


「ばばばばばばばーーー!!!!」


 やだー! この人マッドサイエンティストだーっ! ウィルベル助けて! へるぷみー!


「ぐーすかぴー」


 となりのベッドを見ると、おへそ丸出しでぐっすり眠るウィルベルの姿。

 おにょれ。精霊がこんな目にあっているのに、田舎丸出しな恰好で寝てるだなんて、ご主人様失格ではなかろうか!?

 

 なので。

 

「とりゃあ!」


「あびゃー!?」


 電気ショックを流されたまま、ウィルベルにのしかかる! そして仲良く感電!

 ざまぁっ! 人と精霊は、喜びも悲しみも共有しなきゃいけないからね。仕方ないね!


「ぐえー。口からネギトロが出そうなんよ……。でも、あと10分寝かせてー……」


 くそっ! 神経の鈍い脳筋ゴリラには電気ショックの効果はいまいちだ!


 仕方ないのでぼくはビリビリさせられたままウィルベルを腹ビレで揺り起こす。


「ウィルベル、早く起きなよー」


「うーん……もう少しだけ」


 このぐうたらご主人様め! このベッドがフカフカだから眠り続ける気だな!

 しゃーない。ここはウィルベルが飽きるまで付き合う――


「でも早く起きないと、遅刻で試験失格よ?」


「なんですとぉっ!?」


 効果は抜群だ! クールビューティーの言葉に、ウィルベルがガバっと腹筋だけで起き上がる。


「というか、ここどこぉっ!?」


「ここはグランカティオ号の医務室。わたしは船医の研修生、カッポレ・フーヴル。船はもうレヴェンチカに到着したけれど、あなたが起きるまで待っていたの」


 カッポレさんはぼくに電気ショックを流したまま、ウィルベルに状況説明を開始。


 ……ちょっと待って。その説明が正しいとしたら、ぼく、なんのために電気ショック流されてるの? おかしくない? 不条理過ぎない? ちょっと気持ちよくなってきたんだけど。


「そ、そんなことより試験って!?」


「いま、この船が停泊しているのはレヴェンチカの港の桟橋よ。そして今日はセレクションの当日。

 ウィルベルさんは、丸一日寝ていたの。みんなもう行っちゃったから早く追いかけた方がいいわ」


「ここがレヴェンチカ!?」


「の桟橋よ」


 そういや、あんまり気にしてなかったけど、エリオ君がレヴェンチカに行く船だって言ってたもんね。


 ウィルベルときたら、ここがレヴェンチカって聞いた途端に、花の大都会岡山にきたオノボリさんみたいなハイテンションに切り替わる。


「ミカ! ここがレヴェンチカなんよ!?」


 鼻息を荒くして、ぼくのお腹をベシベシ叩く姿は、まさしくドラミングをするゴリラである。ぐえー。口からネギトロがでちゃう。

 

「舞い上がるのわかるけど、ちょっとすとぉぉっぷ! それよりもカッポレさん。早く追いかけた方がいいってどういうこと?」


 ぼくの問いにカッポレさんはちらりと腕に巻いた時計を見た。


「ええと……そうね。開始まであと30分くらい? それまでに会場に着かないと失格ってところかしら」


「「ウエエエエーイ!?」」


 なんてこったい!

 こんなことしてる場合じゃないじゃん!


 それを聞いた瞬間、ウィルベルがぼくを掴んでコードっぽいのをブチブチブチと引きちぎり、船室を出ようとドアノブを引っ掴む。

 

「すいませーん! あとで弁償するんで、勘弁してくださーい!」

 

「はいはい。向こうのほうの第一グラウンドでセレクションの開会セレモニーやってるから、急いでねー」


 カッポレさんはそんなぼくらに怒るでもなく優しく手を振ってくれた。

【マグロ豆知識】

マグロといえば電気ショック! 電気ショックといえばマグロ!


マグロは暴れると身焼けという現象を起こすため、早く気絶させることが大切になります。


そのときに使用されるのが電気ショックです。

身の変質が起こらない程度にビリビリさせます。


元気のいいマグロであれば、ビクっとした瞬間に背骨が折れることも。(作中では地味に生命の危機だったわけですね)


ちなみに、養殖マグロは【かかるとわかっている】ので電気ショックのタイミングが早く、もっとも身焼けが少ないとされます。


※背骨が折れると内出血したりするので商品価値が下がります。

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マグロ豆知識補足はこちら
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