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29.レベル1の脅威

「ゴアアアアアア!」


 そう吠えるのは、ファンタジーにはおなじみ、でっかいトカゲことドラゴン。

 緑色の鱗。金色の目。大きさはシャチよりもちょっと大きいくらい。どっからどう見てもドラゴンである。


 ファンタジー世界にありがちな存在だけど……。

   

「ミカ。どうしたんよ? 不満そうやんね?」


 だってさぁ!


「ここまでマグロ、イカ、イワシってきたのに、なんでドラゴンなのさ!? 普通ここで出てくるべきは、シャチとかクジラとかメガロドンとか、地球で言うところの海の仲間なんじゃないの!? 平和で愉快なぼくのファンシースカイを返してよ!」

 

 ってこと!


「まったくもう! 爬虫類なんてお呼びじゃないから、おとなしく巣に帰りやがれ! ぶーぶー!! おまえのかーちゃんでべそっ!」


 トカゲにはヘソはないですが、臍孔さいこうというヘソに似た器官があります!

 ぼくがブーイングを浴びせていると、ドラゴンにも通じちゃったのか、

 

「ガアアアア!!!!」


 怒り心頭の模様。開いた口から見えるたくさんの牙がめっちゃ怖い。


「ごめんなさーいっ! 真黒(ブラック)ジョークだから! 本気にしないで!?」


 ぼくは真摯に謝った。

 井の中の爬虫類。大海を知らず。爬虫類には「太平洋のように広い心を持って」って言っても通じないからね。仕方ないね。


「ちなみに、あのドラゴンってどれくらいの強さなの?」


「うむ。あれはレベル1のスパチュラ・ドラゴンだな」


 ぼくの質問に答えてくれたのはベルメシオラだった。

 風圧にもだいぶ慣れてきたのか、ウィルベルに抱きついたまま偉そうに胸を張って答えてくれる。なんか抱っこちゃんみたいで可愛らしい。


「レベル1?」


 ぼくは首をかしげた。

 いままでEクラスだとかAクラスみたいなランク付けばっかりだったけど、違う基準があるのかな? レベル1ってことは見かけ倒しってこと?


 ぼくやウィルベルの疑問の視線に気づいたのか、ベルメシオラは「うむうむ」とうなずいた。

 

「そなたらくらいの平民は知らんかもしれんが、Sクラスを越えた魔獣には災害レベルというものが設定されておるのだ。

 そのクラスの魔獣になると、通常の戦士ギルドの連中では歯が立たぬから、その災害レベルをもって勇者へ救援を依頼するというわけだな。あのドラゴンはSクラスの1つ上の魔獣。つまり災害レベル1だ」


 ベルメシオラは平然というけど、


「あのドラゴン、クラス分けで言うとSSクラスみたいなもんってこと?」


「基本的にはそうなるな」


 あばば! クラーケンですらBクラスだったのに、いきなりSSとか無理過ぎない?!


 いやあああ! なんか転生してからずっとこんなんばっかりだよ! どうなってんの、この異世界!


「ギィアアアア!」


「くるんよ!」


 サーディンたちはドラゴンさんにパクっと食べられちゃったけれど、今度はドラゴンさんとのお空の追いかけっこが始まる。


 どうやらイワシじゃお腹が膨れなかったらしい。

 ドラゴンさんってば「おいしそう」って感じで、ぼくに視線が釘付け。モテるクロマグロはつらい。


 でも、いまのぼくらからしてみれば、ドラゴンなんてただのウスノロ。さっさとスピード差で突き放してや――


「ヴォオオオオ!!!」


 ドラゴンの口腔に真っ赤な光が生まれ、


「ヴォン!」


 ファイアブレス。

 ドラゴンの口腔から、マグマの塊のような質量のあるまん丸火球が吐き出された。


 めっちゃ熱そう。あんなのに当たったらこんがり焼き魚になっちゃうよ!


「でも、ひょいっとな!」


 加速&回転(バレルロール)で完全回避。こちとらゲーム内で戦闘機とだって追いかけっこしたこともあるっつーの! こんなのミサイル避けるより簡単だし!


 ふっ。災害レベル1の魔獣の攻撃すら余裕で躱せるこの身のこなし。我が天才っぷりが怖い。


「ガアァァァァァガアァァァ!」


 当たらないことにイラついてか、火の玉を連射してくるドラゴン。


 被弾こそしないけど、これじゃあ、流れ弾が危なくて浮遊有船のほうに戻れないよ!


「どうするウィルベル!?」


「えーと、えーと……。っ! そうだ! 気合でなんとかする!」


模範的(もはんてき)な脳筋ゴリラな回答ありがとう! 期待したぼくがバカだったよ!」


 まったくもう! ウィルベルってば脳みそまで筋肉まで出来てるんじゃないの!?

 これから学園にかよおうっていうのに、その脳筋ゴリラっぷりはまずいと思います!


「誰が脳筋ゴリラなんよ!?」


「あんただよ、あんたぁっ! なんで自覚ないのさ!?」


「ひどい! うち、これでもルセルちゃんに『ウィルベルはある意味賢い生き方してるよね。悩みがなさそうで』って褒められとったんよ!?」


「それ、褒められてねーよ!? めっちゃコケにされてるだけだよ!?」


 ぎゃーぎゃーわーわー。


「おい。貴様ら! いい加減にせんか!」


 怒られた。怒鳴ったのはウィルベルに抱きついたままのベルメシオラ。


 間抜けな姿なままベルメシオラは「はぁっ」とわざとらしい大きなため息をつく。

 なんかもうちょい取り乱すかと思ったけど、思ったよりも平然としてらっしゃる?

 

 女王っていう立場からくる虚勢? それとも単に神経が図太いだけ?

 と思ったので聞いてみた。


「ベルメシオラって、なんでそんなに落ち着いているの? もしかして恐怖を感じない系のアホの子なの?」


「誰がアホの子か!? 貴様のほうは貴様のほうで、脳みそにワタアメでも詰まってるかと思うほどスッカスカだな……。いつか不敬罪で斬首になるぞ? それはそうとしてだな……むっ! きた!」


 ベルメシオラが指さしたのは1キロほど先に見える、もともといたVIP用浮遊有船(グランカティオ)


 うん? 何が来たんだろう?


 むむむ。目を凝らすと、何か小さな点が3つ、こっちに向かってきてる? っていうか……。


「空飛んでる!?」


 なんてこったい! お空を飛ぶのは、ぼくだけのチートな特殊能力だと思ったのに!


「ふふん。あれは余の国で試験開発されたラムジュートボードだ。どうだ、すごかろう!」


 ベルメシオラがドヤ顔で言う間にも、そのうちの一つがすごい速度でぼくたちの方へと飛んでくる。


 サーフボードのような板に乗って、空気を切り裂くように、まっすぐに。


「そして、あれこそは我が国の誇る勇者『白雷姫(ホワイトロア)』ギギ・フラメラである!」


 横向きに乗っているのは真っ白な鎧――精霊の衣(エレメンタル・ローブ)をまとった勇者さん。

 鎧の上からでもわかる女性的なフォルム。


「ふはは! 見よ! 我が国の軍事力を! ギギ、やれぃ!」


 ベルメシオラがドラゴンに向かって親指を下に向けて叫び、勝ち誇るように笑みを浮かべた。


 んま! お下品!

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