19.スキル
な、なにこれ!?
食べた魔力宝石とはちょっと違うんだけど!? 食べたやつは赤かったけど、頭に生えたこれは青いもん!!
(というか、さっきの変な声ってなに!? ウィルベルも聞こえた? 正体とかわかる?)
(うん。聞こえた。でも、何がなんだかぜんっぜんわからん!)
昼に聞いたレベルアップのファンファーレとも違う感じ。
こういうときにありがちなのは、マグロ・グランドフィーバーのシステムボイスって線だけど、そういう感じでもないし。
って、そんなこと考えている場合じゃない! エーリカちゃんが包丁持って戻ってくる前に早く解決せねば!
「さ、触っても噛みついてこーへんよね?」
「た、たぶん」
ウィルベルが恐る恐る額の宝石を触るけど、感触的には皮を触られているような感じ。痛くもないし、何も感じないってわけでもない。
「は ず れ ろー!」
ウィルベルが摘まんで取り外そうとしてもうんともすんともしない。
やめて! それ以上ひっぱると、つのトロ――マグロの頭のまんなかあたりからとれる希少部位――が出ちゃう!
「ぐ、ぐぬぬ! とれん!」
ウィルベルさんってばホント筋肉ゴリラ。指2本でぎりぎり摘まめる程度にしか出っ張ってないのに、頭骨からミシィって音が聞こえるんだもん。
やばい。早く解決策を考えないと、ぼくの頭骨が砕けちゃう!
……えーと。そもそも魔力宝石はアクセサリとして身につけてりゃいいわけで……
「ハッ!? めっちゃいいこと思いついた!
このままサケの干物みたいに、ぼくの頭に紐を通せばいいんじゃね!? そんでネックレスみたいな感じで首にかければ!」
ちょっと想像してほしい。荒縄でくくったマグロを首にかけて、ずるずると引きずりながら颯爽と街を歩く、可愛い女の子の姿。
うんうん。干物の銀鮭みたいでセレブなモード系ファッションって感じ。
・魔力宝石を加工しておく。
・身に着ける。
パンフレットに指示されている2つの要素もクリアしていて最強に見える。
「そんなん絶対イヤなんよ!?」
「くそっ! なんてワガママな娘なんだ!?」
「ぜんっぜんワガママじゃないんよ!?」
っていうか、よく考えたら、これってパワーアップイベントじゃね!?
そうだそうだ。そうに違いない! そうとわかれば話は早い。
ふはは! 見よ、異世界転生にありがちなチートになったステータスを!
「ステータス、出ろぉぉぉぉっ!!」
種別:精霊
レベル:2
攻撃:E
守備:B
魔力:E
攻撃補正:E
守備補正:E
魔力補正:E
スキル:なし
スキルポイント:1
総合ランク:E
所有者:ウィルベル・フュンフ
あばばばば! レベルが上がってるのに何一つとして変わってねええええ!?
っていうか、あんな死闘したのにレベル1しかあがってないってどういうこと!? クラーケンってBクラスって言ってなかったっけ!? こんなの絶対おかしいよ!
でっかい包丁をもって戻ってきていたエーリカちゃんとマーク君が空中に投影されたぼくのステータスを見て、呆れたように溜息をつく。
「……にしても、ほんとひどいステータス補正よね。これ」
「ああ、補正値がぜんぶEとか初めて見たぜ」
「うっさい、バーカバーカ! マグロはDHAとかEPAとかセレンとかがたっぷりなんだい! ステータスに出てこない部分を評価していただきたい!」
だいたい、全部Eじゃないし! 補正値じゃないけど、防御力だけはBだし!
ぜーぜーはーはー。
ここまで無呼吸で騒いだので、いったん深呼吸。
まったくもう! EとかBとか大雑把なのじゃなくて数値でもっと細かく見れたりしないのかな?
スキルポイントは0から1に増えてるのがわかるのにね。
……ってスキルポイント?
「あああああああ!!!」
「ど、どうしたの!?」
「そうだよ! スキル! スキルだよ! スキルがあればレヴェンチカまで行けるかもしれない!」
【マグロ豆知識】
化学物質が、生態系での食物連鎖を経て生物の体内に濃縮されてゆく現象を生態濃縮(生体濃縮)といい、本編のように食物網と関係しないときは、生体蓄積といいます。(蓄積というよりはダイレクトに反映されてますが)
水に溶けにくく、代謝を受けにくい化学物質が残留しやすいとされています。
これは人間も同じです。
例えばビタミンですが、過剰摂取OKかどうかはこの”水溶性”という言葉がポイントとなります。
ビタミンサプリを摂取してるのに、めまいや貧血、皮膚炎になってしまうという方は、対象のものが過剰摂取OKかどうか見てみましょう。
詳しくは↓のリンクのマグロ豆知識から!