表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/149

106.VSゴブリンキング

【マグロ豆知識】

犬殺しとはマグロの尾あたりの部位で、『犬も腰を抜かして死んでしまうほどおいしい』の意味となります。

(前にも書きましたが変な意味に勘違いされないよう、念のため…。)

 ともすれば漁船のほうへと向かおうとするゴブリンキング。


 モジャコから飛び立つ生徒たちの姿はまだ遠い。


 漁船のみなさんを守るためには、しばらくのあいだ、ぼくらが身を張ってゴブリンキングをひきつけなければならない。


「あんたの相手はうちらや!」


「ヌオオオオン!!!!」


 狙い通り、ぼくらを敵と見て取ったのか、腐った()の巨人は大きく腕を振り回すと叫び声をあげる。


 ぽこ。


 それが合図だったのか。

 小さな球体がゴブリンキングの体から分離したかと思ったら、あちこちから放出される。


 その数、約100。


 大きさは普通のゴブリンと同じくらいだけど、色はやっぱり腐ったような茶色で、表面には黒い嫌な感じのする魔力が渦巻いている。


 なんか匂いも臭い気がするけど、汚染ってそういうことなのかな?


 ゴブリンキングから分離した球体――ゴブリンの手下(ミニオン)はピューンとぼくらのほうへと飛んできて、


「ヌオン!!!」


 本体のものよりは威力は小さいけれど、魔力光線を放ってくる。


 もしかしてだけど、いわゆるビットとかそういう類の攻撃なのかしら?


「「「「ヌオーン!」」」」


「うひぃっ!」


 数が多い&共通の意識をもっているのか、連携っぷりがやばいんだけど!


 気分は弾幕シューティング。上上下下右左右左。ぼくの視界は(ビーム)(オール)


 本体よりも威力が低いって言っても、そこは災害レベル3。

 生身に直撃すればピチューンと即死しそうな魔力光線が、ウィルベルの体をかすめていく。


「でも、ぜんぜん余裕や!」


 前にも言った通り、視界の悪い水中を、凄まじい速度で泳ぐクロマグロの反射神経は人間の数十倍!

 さらにウィルベルの意識&視界共有を合わせれば倍率ドン!


 いまさらこんなのに当たるようなぼくらじゃない。

 VRMMO『マグロ・グランドフィーバー』のゲーム内じゃ、槍のように襲ってくるダツの群れとか稀によくあることだったしね!


「そぉいっ!!!!」


 空中制動を駆使してゴブリンミニオンの合間を一気に突っ切って、漁船のほうへと向かおうとしていたゴブリンキング本体に迫る。


「いくんよ、ミカ!」


「おうともさ!」


 ウィルベルが構えるは、バグ戦でも見せた技。

 尾ビレで加速させる、通称『犬殺しキック』(命名者ぼく)である。


 最近、みっちり鍛えた剣術ではなくて、あくまで格闘戦をおっぱじめるご主人様ってばほんと脳筋ゴリラ!


 でも、これなら、災害レベル3でも(ひる)むくらいはしてくれるはず。


「ヌオオオオオン!!!」


 間合いを詰められたゴブリンキングが熱光線を撃とうとする。


 でも遅い! 光線が放たれるよりも早く、そのがら空きの顔面に気合一閃、


「とうっ! 犬殺しキィィィィィック!!」


 ぼくの尾ビレで加速をつけたウィルベルがすさまじい速度で射出され、その足がゴブリンキングの顔面に――


 スカッ。


「ああああれえええええええ!?」


 手応えなし!

 顔面を撃ち抜いたはずの一撃は手応えなく貫通し、その速度のまま、


 ドドドドバシャアアアアアン!!!


「oh……」


 ウィルベルは水切りの石のように数十メートルほど水面で跳ねて、沈没。


 1分くらい様子を見てると、やがてドザエモンのごとく水面に力なくぷかーっと浮いてきた。


「あーん。うちのご主人様が死んじゃった!」


「い、生きとるし……」


 水面から「ぷはっ」と顔を上げたご主人様は顔真っ赤!


 そうだよね。どこからどう見てもヒーローがカッコつける場面だったもんね。せっかくの必殺技が不発しちゃったら恥ずかしいよね。


 でも、どうして不発したんだろ? 直撃したと思ったんだけど。


「ミカ。あれを!」


 後ろを振り返ったウィルベルと視界を共有すると、そこには真っ二つになったゴブリンキングの顔面。


 なーんだちゃんと倒してるんじゃん。――と思いきや、その断面がぐにゃっとなって、ぐにゅぐにゅし始める。


「どういうこと?」


 答えてくれたのは、戦場の空をのんびりと遊泳する正常なゴブリンたちだった。


『ぼくらは』『糸状体(しじょうたい)の集合体なのでー』『くっついたり切れたり余裕なのです』


 むむむ。あの断面でウニョウニョしてるのがゴブリンの最小単位ってことか。


 でもそうなると困ったな。基本的に物理攻撃しかない脳筋ゴリラ(ウィルベル)とめっちゃくちゃ相性が悪い気がする。


「ヌオオオオオン!!」

 

 やがてビデオが巻き戻るように断面を再生したゴブリンキングが空に吠える。


 もちろんノーダメージ。

 さっきの一撃なんて痛くも(かゆ)くもない、と言わんばかりに、すぐさま口に魔力を収束し始める。


 憎々しげに向ける照準の先は、


「あ。やば」


 もちろん、水面に浮かんだままのウィルベル。


「くっ……!」


 逃げることはできない。ぼくも間に合わない。


 ゴブリンキングの口腔から熱光線が撃ち出され――


「ふはは。今年の新入生はなかなかやるではないか!」


 その瞬間。


 豪放磊落(ごうほうらいらく)な笑い声が聞こえたかと思うと、天から一直線に落ちてきた炎が、ゴブリンキングの脳天を唐竹割(からたけわり)に斬り裂いた。

【マグロ豆知識】

マグロはサバ科の魚なので青魚に分類されます。

犬や猫など、ペットにあたえるときは量に気をつけてあげてください。

(とはいっても黄色脂肪症(イエローファット)の原因となる不飽和脂肪酸の含有量はイワシほど多くないので、毎日与えたとしても問題になることはほぼないと思いますが)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
\お読みいただきありがとうございます!/
kca6igro56nafpl9p7e8dm7bzjj_yhg_6n_78_1klike2.gif
マグロ豆知識補足はこちら
↓アクセスランキングサイトのバナーです(気にしないでください)
cont_access.php?citi_cont_id=448265494&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ