刀
「どこが何を売ったか判るか?」
「判るぞ。今のご時世、コンピュータを介さないで商品を売っている方が珍しいからな。売る方、買った方のどちらかはデータとして残してるだろう」
それを辿れば判るはずだ。とミーシャはキーボードを叩き出した。カタカタと凄い勢いで動く指。それを眺めながら男三人は話す。
「これで判明したら乗り込むんですか?」
「それは無理だな。何も武装してない」
「一度応対課に戻るぞ」
すると、早くもミーシャが探り当てた。
「丸山科学研究所に三つ運ばれてるな。仮面と絵画と刀だ」
「丸山科学研究所なら、神崎が破壊に成功してる。押収品か?」
「違う。研究所は二つある。破壊したのは第一研究所で、品物が運ばれたのは第二研究所だ」
金持ちの執念というものにウンザリしていると、ミーシャが続けた。
「ヤバそうなのはこの剣、刀? かもしれない」
曰く、この刀は妖刀として名高いものだった。持ち主は人を殺すことを躊躇わなくなるらしい。
「随分と面倒なモンを仕入れやがったな」
「一先ず応対課に帰って課長に報告だな。動くのはその後だ」
そして帰り際、先ほどゲームセンターで取ったヌイグルミをミーシャに渡した。
「おお! いいなヒヨコ。可愛いぞ!」
嬉しそうにヒヨコを抱えるミーシャ。
「次は犬系か猫系を頼むぞ。ヌイグルミ係」
そう東に向けて言った。
しかし、東はそれに疑問を持った。ヌイグルミ係はついさっき言われた係であり、ここに来てからは言われていない。何処で係の話を聞いたのか。
一之瀬と月村はもう部屋から出て行っている。
「さすが、耳が早い」
「日頃から月村の携帯を盗ちょ……。情報を集めているからな」
取り繕ってはいるが、明らかに盗聴という単語を言いかけていた。
「今、盗聴って」
「い、いや。情報と言おうとして噛んだんだ。気にするな」
一切目を合わせることのないミーシャ。問い詰めた方が良いのか考えたが、後ろから声がかかった。
「おい東、何してんだ? 歩いて帰るか?」
「すぐ行きます」
一之瀬にそう言ったからには、早くいかねばならない。
「早く行け。アタシは噛んだだけだ」
どうやら問答はできないらしい。それに、もしかしたら二人は既に気付いているのかもしれない。
「…………」
無言のまま部屋を後にする。車に乗り込むとすぐに車は発信した。
「月村さん。彼女に携帯端末を預けたことありますか?」
「うん? ああ、携帯の調子が良くないといったら、直してくれたな」
その時に何かしらの細工をされ、盗聴をされ続けているのだろう。その事を伝えようとした時、東の携帯が震えた。
登録されていないメールアドレスからだったが、件名にはミーシャと書かれていた。何故自分のメールアドレスを知っているのかは疑問にも謎にも思わない。
本文を見ると、『下手な事は喋るな。いざとなれば、お前の恥ずかしい過去の全てを探し、世界中の掲示板に張り付ける』とあった。
(盗聴の事は二人は知らないのか。下手な事を言うべきではないんだろうな)
そう考えていると、月村はバックミラー越しに東に話し掛ける。
「どうした? 俺の携帯がどうかしたのか?」
「いえ、彼女はそう言う事も得意なのかと思いまして」
適当な言い訳が通じるのかと不安だったが、運転中な事が幸いしたのか、あまり気に留められることなく終了した。




