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応対するなら、まず銃で  作者: 矢壱
6/12

ミーシャ

「ゲーセンなんて高校生以来だ」

 言いながら二〇〇円を投入し、ボタンを押す。狙う景品は全長二〇センチほどのアヒルのヌイグルミ。左右を合わせ前後を合わせると、アームが降りてアヒルを掴んだ。そのまま持ち上げるかと思いきや、一瞬にして滑り落ちた。


「まあ、一回では取れないか」

 続けざまに硬貨を投入すると、今度は放すことなく取り出し口までやって来た。

軽快な音楽と共に落ちてきたアヒルを取り出す。

「この調子なら、あと何個かは取れるだろう」

 三〇分かけて色違いのヒヨコ・クマ・キャラクターものを二つの四つを取り、残金が数百円になったところで止めた。


 ヌイグルミが詰まった袋を両手に持ちながら、月村と一之瀬を探すと二人は喫煙所に居た。

「おう、大量だな」

「悪いな。俺たちはこういうの苦手なんだ。金がいくらあっても足りねぇ」

「それは良いんですが、本当にコレ必要なんですか?」

 そもそもの疑問だった。言われた通りヌイグルミを取ったが、情報を買うのに何故必要なのか。

「今から会いに行く情報屋が大好きなんだよ」

「え!? そうなんですか? 現金とかじゃなくて?」

「現金も必要だが、機嫌を良くするならヌイグルミだな」

(ヌイグルミが好きな情報屋ってなんだ?)

 情報屋という存在すら刑事ドラマくらいでしか知らない。しかもその大半が、いかにもな風体の男性が定番だった。


 東の脳内では、強面の男性がヒヨコのヌイグルミを笑顔で抱きしめている絵面が浮かんだ。

「東のおかげで今回はスムーズに話が進みそうだな」

「今後はお前がヌイグルミ係な」

 煙草を灰皿に捨て、三人はゲームセンターを後にした。

 車に揺られる事一五分、一軒の古書店に着いた。店の前に車を停め一之瀬と月村が中に入っていく。


 東もゴクリと喉を鳴らして店の中に入る。ヌイグルミ好きな情報屋に想像を膨らませていると、奥のカウンターに老人男性が座っていた。

 ヌイグルミが好きそうには見えないが、強面ではない事に安心した。

「ミサは居るかい?」

 一之瀬が老人に話し掛ける。


「あぁ、ミサの友達の。あの子なら部屋に居るよ」

「そうか、じゃあ上がらせてもらっても?」

「構わないよ」

 それで会話は終了し、一之瀬と月村が店の奥へ上がって行く。背中を追いかける事に慣れた東も習った。


(みさ・ミサ・弥撒みさ

 東は頭の中でその単語を繰り返し、その人物の呼び名の意味を考える。

 階段を上り、ある一室の前。

「ミサ。俺だ。入っていいか?」

 一之瀬がノックと同時に声をかけ、返事がある前にドアノブを回した。だが、返事も無い上にドアにも鍵が掛かっているらしくガチャガチャと虚しい音だけが響いた。

「なんでだよ」

 不機嫌な一之瀬をどかし、月村がドアの前に立つ。

「ミサ。ヌイグルミを五つも取って来てやったぞ」

 そう言うが、鍵が開く様子が無い。

「おいミサ。どうした! いないわけじゃないんだろ!? おいミサ!」

「ミーシャと呼べーーーー!!!!!!」

 少女の声とともにドアの鍵が開けられ、鋭い蹴りが飛んできた。


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