新人
律儀に四回のノックをして入室してきた。
「本日よりお世話になります。東辰己です。よろしくお願いいたします」
段ボールを抱ええたまま頭を下げる。
彼の身長は一七〇センチほどでがっしりとした体躯だが隆々(りゅうりゅう)という感じでは無い。
武闘派の応対課としては相応しい男に見えるが、唯一の違和感があった。
「スーツに着られてる感ハンパないな」
一之瀬が東を見てそんな感想を述べた。
パリッと折り目の付いたスーツ。それを着て動く事に慣れていないためか、ぎこちなさが目立った。
その事から、彼が新卒採用だとわかる。
「新人なんだから当然だろ。制服とスーツじゃ違うしな」
月村は報告書を仕上げながらそう言った。
「東君。僕が課長の犬飼孝嗣ね。君のデスクはソコね」
犬飼が指す先には空のデスクがあった。
東はそのデスクに自分の段ボール箱を置き、一息吐いた。
「新人、ここの仕事は気を抜くと簡単に死ぬぞ」
一之瀬は悪意ある笑みを浮かべ、新人をからかう。
「し、死なないように頑張ります」
顔を引きつらせながら東は答えた。
「一之瀬君、あまり東君をイジメないでね。何かあると僕の責任になっちゃうから」
困ったように笑う上司に、東は異動の二文字が頭を過ったが何とか堪えた。
「それでね。東君の教育係を誰かにお願いしたいんだけど」
犬飼のその言葉に一之瀬と神崎は勢いよく顔を背けた。如何にも関わりたくないという雰囲気を出す。
「仕方ない。じゃあ教育係は、月村君」
そのセリフに、一之瀬は安心したようにため息を吐いた。
「と、一之瀬君にお願いしようかな」
「なんでですか!? 月村だけで十分でしょう!?」
「上司命令ね。従わない場合は、命令無視で減給だから」
上司からの脅しは効果があったらしく、一之瀬は嫌な顔を見せたが、それ以上の反論はでなかった。一方の月村も、仕方なさそうに目を瞑っていた。




