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第2話

2


本日の戦闘が終了すると、魔物も人間も自分の拠点へ戻っていった。もちろん、全てではなく消耗した隊と交代で別の部隊がまた、戦闘を始めた。

途中から参加した為、アビス率いる航空魔道班はそこまで消耗してはいない、だがアビスの判断で拠点に戻ったのだった。

アビスたちが下がった理由、それはとても簡単だ。軍からの命令違反を犯し、隊に損害を与えた騎士中隊隊長の詰問である。もちろんこういった場面では、尋問が相応しいことはアビスも承知しているが、上からの命令でそれを簡単に説明すると「もう処罰は決まっているが、一応相手の言い訳も聞いておこうと思うから、聞いておいて♪別に絶対じゃあないから、拘束したら適当にやっといて♪」と言ったものだ。


「それで、一応聞いておいておこう。ハヌマ2等騎士、何故このような時に、このような愚行を行ったのか?」

「…さきほどから何なんだ貴様は、いくら私が罪を犯し貴様がそれを言及するとはいえ、私は階級的にも貴様のじょ…」


ハヌマはそこまで言うと、アビスはハヌマの腹部を思いっきり蹴った。椅子に縛られていたハヌマは、そのまま後ろに倒れた。そしてアビスはハヌマに近寄ると、起こすわけでもなく仰向けにし、その小さな厚底ブーツでグリグリと中年オヤジの顔を踏む光景は、場所が場所ならば新手のプレイを連想させそうだった。まあもちろん違うのだが。


「上官?まさか貴様は罪を犯した自分が、上官として扱ってもらえるとでも思っているのか?今のお前は所詮、軍の命令に反した単なる罪人だ。どのような事を思っているのかは知らないが、お前もそしてお前自身のプライドも、今はもう糞ほどの価値もありはしないゴミ同然だ」


そう言ってアビスは、ハヌマの顔を蹴り踵を返しその場を離れようとすると、ハヌマは唇を噛みギリっと歯から音を立てると、口から少量の血を流した。


「取り消せ…」


ハヌマはボソッと言うと、アビスは立ち止まり振り返り「何?」と聞き返した。


「取り消せと言っている!私自身の事は良い、だが私のプライドや誇りを侮辱することは、決して容認することは出来ない!」


ハヌマの瞳は、心は決して折れてはいなかった。確かに今回の件で、彼の軍人への向いてなさは露見してしまった。だがしかし、彼のプライドがどれだけ高く絶対なのかはっきりした。



アビスはハヌマの言葉を聞くと、近くに立て掛けておいた自分の杖を逆さに持ち、ゴルフクラブの様にハヌマの腹部を思いっきり強打した。ハヌマは身を攀じることも出来ないまま痛みに苦しんだ。


「プライド?ハッ!」


アビスは吐き捨てように、半笑いで近くの椅子に座った。


「確かに、人間の尊厳やプライド、騎士の誇りや名誉、どれも素晴らしい物で捨ててはならない物ばかりだ。だがな、それを振り翳していいのは強者だけなんだよ。貴様の様な力も無く、指揮官として無能な奴が語っていい代物じゃあない!

どうやら貴様は本当に分かってないようだな。貴様の今回の敗因は!罪は!その意味も無い、下らないプライドや誇りなんだよ!それが原因で半数の騎士たちが無駄に命を失ったんだよ!」


アビスは立ち上がると、後ろを向き言いたい事は全て言った。とでも言うように、手を前後に振り「連れて行け」と告げると、今まで見守っていた兵士2人がハヌマを別の所へ連れて行った。


「お前、後で今回の事を書類として纏めておく、それを明日来るとだろう護送班に渡しておいてくれ」

「は、はい!」


そう言ってアビスは出て行った。

こうして、今回の一連の騒動は幕を閉じたのだった。

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