第八章 鎖の封印
グロイのでダメな方は閉じてください。
柱の周りに薪がうず高く積み上げられていく。
イライザは粗末な服を着せられ、柱に括り付けられ。
迎賓席が設けられ。王族が椅子に座って火炙りが行われるのを待っている。
その王族の後ろでイライザの両親が立っていた。
その周りで人々が集まり、罵声を上げ。
「殺せ!! 殺せ!! 」
「魔女を殺せ!!」
「聖女様に仇名す者は滅びろ!!」
「邪な女を殺せ!!」
その場は異様な空気で満たされていた。
イライザは怯えた。
生まれてこの方むき出しの憎悪に触れたのは初めてだ。
普通の人々がまるで魔物の様に蠢いている。
人々の目は血走り口からは泡を飛ばし。まるで狂っていた。
「痛い!!」
バラバラと飛んできた石がイライザの額にあたり血を流す。
「お父様!! お母様!! デトラス様!!」
泣きながら叫べども。父も母も婚約者も人形の様に動かない。
その顔は無表情だ。人間だった感情がすべて抜け落ち。
人形がただ立っているだけのようだ。
「私はなにもしておりません!!」
イライザの声は誰にも届かない。
「さあ!! 火をおつけ!!」
王尺をイライザに向け。
まるで女王のようにミザリーは振る舞う。その頭には王の王冠が煌めく。
けばけばしいドレスを身に纏い。王が戴冠式の時に身に纏う豪奢な毛皮のマントを付け。
美しい顔は夢見るようにうっとりとしている。
王族はただ人形の様に突っ立て居るだけだ。
その異常さに誰も気が付かない。
黒い布を被った処刑人が松明を掲げ火をつける。
「待って!!」
いきなり空から声がして。
一人の少女が天使の様に空より舞い降りる。
王子妃教育に軍事訓練も入っていた為。これ位の高さから飛び降りることなど造作もない。
五人の人物も彼女に続いて魔行船から飛び降り。
燃え盛る薪を蹴飛ばしてイライザを守る。
アリーヤと冒険者【暁の船】だ。
火のついた薪を水魔法で消す少年神官と魔法使いの女。
燃え盛る薪が飛んできたので慌てて逃げ惑う人々。
錯乱する人々。水に火を消され、辺りが煙に包まれる。
魔行船から次々と解呪の魔法が次々と人々に打ち込まれる。
人々はその場に蹲り首筋を抑える。
その隙にアリーヤは縛り付けられたイライザのロープを切った。
「うう……」
呻きながら立ち上がる人々。群衆は正気にかえる。
「あれ?」
「ここ何処だ? 何でこんなとこにいるんだ?」
「なんでここに? 何してたの?」
「ママー。お腹空いたー。早く帰ろう」
ざわざわと人々は辺りを見渡し不思議がる。
そこには、さっきまで狂気に満ちた群衆はいない。
ミザリーは迎賓席からひらりと飛び降り。アリーヤに駆け寄る。
淑女にあるまじき行為だ。
「お姉様。お帰りなさい。嬉しい。私のために帰ってきてくださったのね」
「黙れ!! 化け物!!」
「まあ。お姉様ったら酷い~」
「私はお前を滅するために帰って来た!! 観念するがいい!! 天の邪鬼!!」
アリーヤは父の剣をミザリーに向けた。
「酷~い。私は何もしていないわ。助けて~パスティ様~」
ゆらりとパスティが椅子から立ち上がり迎賓席から飛び降り。
剣を抜き。アリーヤに向け。
ギクシャクと動く。まるで死人が動いているようだ。
いやもう彼は死んでいた。
ずるりと剣を持つ腕が抜け落ち。
ドロリと顔が溶け。ぐしゃりと体が崩れる。
ミザリーの術のせいで生きているように見えただけだ。
それも魔法騎士団の解呪のせいで術が解け本来の姿を現したに過ぎない。
「あらら……食べるのが早かったかしら?」
「パスティ様!! どこまで……どこまで……死者を愚弄するか!!」
アリーヤは叫ぶ。
「まあいいわ。お前達!!」
ミザリーはパスティの剣を拾うと呪文を唱え。剣を自分の影に突き立てた。
ミザリーの影から死人の大群が湧き出す。
「ううう~~なんで……なんで……」
「……あぁぁぁ。死ななければならなかったの……?」
「おおおぁぁぁぁ~何をしたと言うのだ……?」
「はうぉぉぉぉ~~痛い!! 痛い!! 苦しい……」
死人たちは、生者に対する恨み言を訴えるように手を伸ばす。
生に縋りつくように。温もりを求めるように。
死人はミザリーが魂を吸った者の抜け殻だ。
その中にはアリーヤの両親や侍女達や侍従や執事もいた。
「お父様!! お母様!! 皆!!」
その死人達の首には邪鬼の刻印が刻み込まれている。
死人帰り(しびとがえり)だ。禁じられたおぞましい呪術。
フラフラと動けない人々に襲い掛かる。
「ひやあぁぁぁぁぁ!!」
「化け物!! 助けてくれ!!」
「ママー!!」
「地獄の蓋が開いたー!!おお神よ!! お助けください!!」
両親の死人に首を絞められるアリーヤ。
「お父様……お母様……」
「アリーヤ!! お前は下がって居ろ!!」
大剣がアリーヤの両親の首を刎ね飛ばす。
【暁の船】のスイが大剣を振るう。
大剣に組込まれた術式が発動し、死人がバターの様に切り裂かれる。
マリンが呪文を唱え。炎が死人を焼き払い消し炭にかえる。
盾の騎士。ゴーリが盾を振るうと。盾に触れた死人はボロボロと崩れ落ちる。
盗賊のリースは死人の頭の上を飛び回り。死人の頭を鉈で潰す。
「術式解砲五ノ七式発動!!」
ボッ ボッ ボッ
魔導騎士団によって、次々と魔法陣が現れ死人の軍団に打ち込まれ。
次から次へと湧いてくる死人の軍団に裁きの光が降り注ぐ。
荘厳にして壮麗。光を浴びた死人は光の粒になって浄化され。
後には生者だけが残った。
「天の邪鬼は何処!!」
マリンが叫んだ。
「ちきしょう!! どさくさに紛れて逃げやがった!!」
「こっちだ!!」
盾の騎士ゴーリが皆を誘導する。
「あっ!!」
「どうした!!リース」
「あたしゴーリの声。三か月ぶりに聞いた」
「そう言えば僕も」シャインも答えた。
「寡黙な騎士なのよ」
「ていうか。喋れたんだ!!」
「お前らな~!! こんな時にそんな話してるんじゃない!!」
「「ごめんなさい~」」
スイに怒られて謝る二人。
それでもゴーリの後を追う。
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「ふん。死人と遊んでいるといいわ」
下町を走る華奢な影。
その影に立ち塞がるアリーヤ。
「もう逃がさないわ!!」
「あら?逃がしてくれないのね」
後ろを振り返ると。大柄な男が立ち塞がる。
「逃げられると思うな!!」
ライル神官が杖を構えた。
「あら? 誰だったかしら?」
「お前に滅ぼされた村長の息子さ」
「村? 覚えてないわね」
「余りにも多くの命を喰らい過ぎて忘れたか!!」
「私はヒロインなのよ!! みんな私を愛しているのよ!! この世界は私のために存在しているのよ!!」
「違う‼ 思い上がりも甚だしい‼」
ライル神官は風魔法をミザリーに向けて放つ。
ミザリーはひらりとかわすと空に浮き上がり。嗤う。
「お馬鹿さん。地べたを這いずっているのがお似合いよ」
ドン‼
ミザリーは爆炎と共に地面に叩き落とされた。
ゴロゴロと歪んだ王冠はライル神官の足元まで転がり。
豪奢なドレスも毛皮のマントも黒焦げで。美しかった銀の髪も焦げてばさばさだ。
女神だ!! 妖精だ!! 天使だ!! と褒め称えられた顔は怒りで歪み。
その本性をさらけ出す。アメジストの瞳は深淵の様に暗く澱んでいる。
「まあ。酷~い。」
それでも男に媚びるような声で喋る。
屋根の上には魔法兵団長のフントをはじめとする魔法騎士が剣や杖をミザリーに向けていた。
アリーヤは剣をミザリーに向ける。
「お姉様。妹の私に剣を向けるの?」
「私は一人子だ!! お前は私が五歳の時、我が家に入り込み皆を洗脳して、娘として振る舞っていたに過ぎない!!」
魔法騎士団は空中で円を組み呪文を唱え、ミザリーの周りに亜空間を作り出す。
「くっ……」
ドスッ!!
ミザリーの体から剣がはえる。
シェルナー伯爵の剣だ。
ぼたぼたと血が滴る。
「あ……がっ……アリーヤお前……」
「悪しき者よ!! 汝の住み家に帰れ!!」
アリーヤの口からも呪文が唱えられる。
じゃらららららららっっっ……!!
亜空間の中から鎖が出現してミザリーに巻き付く。
「いや!! いや!! 闇に帰るのはいや!!」
鎖がミザリーに巻き付きまるで繭の様になる。
「お前も一緒に来るんだ!! 一人でなど逝くものか!! 一人で不幸になるものか!! 私はヒロインなのよ!!」
ミザリーの手がアリーヤの腕を掴む。
「アリーヤ!!」
スイの剣がミザリーの腕を切り落とす。
「ぎいゃやややああああぁぁぁぁ!!」
ぼとりと落ちた腕にも鎖が巻き付き。
やがて鎖の繭は亜空間に飲まれていった。
「終わったの?」
ポツリとアリーヤが呟く。
「ああ……終わったんだ。悪夢は全て終わったんだ」
魔法騎士団から勝利の声が上がり。
スイの腕の中でアリーヤは気を失った。
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2018/6/15 『小説家になろう』 どんC
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最後までお読みいただきありがとうございます。
書いてる途中でデータが飛んだので多分後で書き直しします。