第六章 魔行船にて
謁見の間は重々しい空気で満たされていた。
無理もない。
再び邪鬼が現れたのだ。
若い世代にほぼ代替わりしているとはいえ。
邪鬼が及ぼした影響は計り知れぬ被害があった。
その話は恐怖と共に語り継がれている。
金銭面でも人命面でも荒廃した人々の心にしても。
王の横には王太子が控え。
周りには二十人ばかりの騎士団と十人程の貴族達がいる。
貴族たちはアリーヤの髪と瞳を見て騒めいた。
「やはりキャサリン殿はカルロス王の血を引いていたのか」
「でもキャサリン様はブラウンの髪に琥珀の瞳でしたわ」
「そうか……変化の魔法か……」
「カルロス王はキャサリン殿を異国に逃したのか? 父親の愛情か? 罪滅ぼしか?」
「どっちにしても哀れな」
「親子共々邪鬼に殺されるなんて……」
玉座につく王は苦々しい声で言った。
「面をあげよ」
アリーヤは大叔父と一緒に顔を上げた。
白い髭と髪が目立ち顔には皺が刻まれている。
もっとも王族は白い髪らしいから苦労していると言いずらいのかも。
王太子も白い髪に私と同じペリドットの瞳だ。
横にいる王太子妃はライトブラウンに琥珀色の瞳だ。
邪鬼が残した災いの事後処理にどれほどの月日が使われたのだろう。
王は痛ましげに目を細めた。
邪鬼に操られた哀れな祖父と人生を滅茶苦茶にされた祖母。
さらに邪鬼から逃した娘は邪鬼に寄生され殺された。
孫は祖母のように婚約者を奪われた。
どこまで食い物にすれば気がすむのか。
あの化け物め!!
「まことその髪と瞳。我が王家の血筋だ。顔はメアリーに似たのだな。すまぬ。邪鬼を取り逃がしたばかりにお前に迷惑をかけた。取り急ぎ国に帰ってバグルス王に邪気のことを告げよ。船と馬では一ヶ月以上かかってしまうから魔行船を貸そう!!」
「我々は邪鬼を血まなこになって探していました」
首相が語った。
「やっと妻の敵が討てる」
「貴方はもしかして……」
「はい。私は君のお祖父さんになるはずだった者だよ」
彼は悲しげに笑った。
「結局。誰も救えなかった。王も妻も子供も。情けない。しかし邪鬼だけは逃がさない」
彼は決意を固めた。
王は頷いた。
「今度こそ邪鬼を仕留める。アリーヤ‼ 君に魔法兵団と魔行船を貸し与える。直ちに国に帰り。邪鬼を駆逐せよ‼」
「はい!!」
私達はイギス国を後にする。
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ゴウゴウと魔行船が飛ぶ。
凄い速さだ。
船内は武骨ではあるが綺麗に整えられていた。
「凄いね!! まさか最新鋭の魔行船に乗れるなんて!! 噂以上だ!!」
「ふん。そんなにはしゃいで子供ね~」
【暁の船】のシャインをリースはからかう。
「そう言うけど。こんな機会、今後の人生であるかないかだよ!!」
「取り敢えず落ち着け」
リーダーのスイがなだめる。
そう言う彼もワクワクして落ち着かない。
無理もない。男のロマンが詰め込まれている。
盾の騎士ゴーリーだけは落ち着いていた。
様に見えたが、足が震えている。
高所恐怖症みたいだ。
「ドラゴン以外で飛ぶことになるとは。人生何があるかわ分からないもんだね」
「マリンさんは、ドラゴンに乗ったことあるんですか?」
「ふふ……昔ね。それにしても驚いたわ。まさか貴方が、シャインの師匠なんて」
長椅子に腰掛けてお茶を飲む人物にマリンは声を掛けた。
「本当だよ。お師匠様。僕ビックリだよ!!」
「魔物討伐の際に杖を壊して新しく作り直すために王都を訪れ。ついでに邪鬼の情報はないかと。マグリス家を訪れたらアリーヤ様が邪鬼の情報を提供してくれるとは。これも女神マシリー様のお導きに違いない」
コンコン
その時ドアをノックする音がした。
「はい。どなたですか?」
マリンはまだメイドの格好をしていた。
ドアを開けると数時間前に紹介された。
魔法兵団長のフント・ハーゼが、数名の部下とともに立っていた。
「こんにちは。アリーヤ様」
「こんにちは。フント様」
「私のことはフントとお呼びください」
「分かりました。では私の事はアリーヤとお呼び下さい」
「では、アリーヤ嬢。今後の予定を皆様にお話ししましょう」
「はい。お願いします」
「今後三日以内に海を越えます。そして最初にアリーヤ嬢の御父上にお会いして洗脳を解きます。それから王都に向かい。邪鬼を殲滅します。ただ……酷な事を言いますが、覚悟はしていて下さい」
アリーヤはギュッとドレスを握りしめた。
どれだけ救えるか?
どれだけ取りこぼすか?
誰を優先させて、誰を切り捨てるのか。
18歳のアリーヤには重い決断だ。
「はい……」
マリンはそっとアリーヤの肩に手を置いた。
ああ……
嫌な予感がする。
早く!! 早く!! 早く!! 着いて!!
彼女の脳裏に送り出してくれた親友の顔が浮かんだ。
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2018/5/10 『小説家になろう』 どんC
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