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邪鬼の刻印  作者: どんC
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 エピローグ

 ふと気が付くと。私はベンチに腰掛けていた。

 ここは? ああ。家の庭だ。

 庭師のトーマスさんが丹精込めた花々が咲いている。

 小鳥がさえずり。蝶々が飛んでいる。

 深呼吸。はあぁぁぁぁ~

 落ち着くわ。

 ふと気が付くと。隣に小さい男の子が座っている。

 パスティ王子だ。子供の姿をしている。


「良い庭だ。落ち着く」


「我が家自慢の庭です」


 咲き誇る花々向こうでトーマスさんが頭を下げた。

 何か言っているが、聞こえない。

 いつの間にか光が現れて。彼は光の中に消えていく。

 光の中から川の流れる音がする。


「家の庭師のトーマスさんだよ」


 次々と家のメイドやら侍従や侍女が頭を下げて光の向こうに行ってしまう。


「私の世話をしてくれたメイドのミルフィーに執事のセバスに……」


 私は次々と彼らの名前を上げていく。

 知らない人達も手を振ったり、頭を下げたりして光の中に消えて逝く。


「お父様……お母様……」


 お父様とお母様がこちらを見て微笑んでいる。

 唇が動くが声が聞こえない。二人は抱き合って私を見ている


 __ ごめんね。ごめんね。守ってあげられなくて。ごめんね。愛しているわ __


 お母様の声が聞こえたような気がした。


 __ お前は私とキャサリンの子だ。幸せになるんだよ __


 お父様の声が聞こえた気がした。


 さようなら。

 私は泣きながら微笑んで二人には最後の挨拶をする。


 __ お父様……お母様……助けてあげられなくてごめんなさい。育ててくれてありがとう。

 愛しています。愛しています __


 二人は光の中に消えていった。


「さて、僕も行かなきゃ」


「パスティさ……ま……」


 子供だったパスティ様はいつの間にか青年の姿に戻っていた。


「アリーヤと生きていきたかったけど……ごめんね。この国を良くしていこうと、約束したけど。もう君は好きに生きて良いんだよ。君は自由だよ」


 へにゃりと笑って。

 パスティ様の唇が優しく私の唇に触れた。


 さようなら……


 パスティ様も光の中に消えて行ってしまった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「爵位を返したんだって」


 スイが困った顔をして私に尋ねた。

 私たちが今いる所は、城の中庭だ。


「この国に天の邪鬼を呼び入れてしまった責任は取らねばならないのよ」


 それにここは思い出が多すぎる。

 天の邪鬼を倒した後。私は倒れて。気が付いたら一週間過ぎていた。

 パスティ様のお葬式も、お父様や皆のお葬式もすんでいて。

 私はセバスや侍女や侍従の身内に賠償金を払い。爵位や領地や館を王に返納した。

 王様や王太子様やイライザに引き留められたが。

 私の決意は変わらなかった。


「それでこれからどうするんだい?」


「まずは、イリス国に魔法兵団のみんなと一緒に帰って。イリス国王様にお礼と報告をして、お母様の遺髪を薔薇園に埋めて。それから……あ……ごめんなさい。【暁の船】の報酬もまだだったわね」


「いや。俺らの報酬はイライザ様の父上に貰ったし。イリスの国王様も報酬をくれるって。二重取でウハウハだ」


「ただの護衛がとんだ事に巻き込んじゃってごめんなさい」


「いや。アリーヤの役に立ててうれしいよ。あのな~お前さえ良ければ……」


「あっ。王妃様」


 私とスイは慌ててベンチから立ち上がり王妃様にカーティシーをする。

 もう貴族ではないが、いつもの習慣だ。王妃様の後ろにはイライザもいた。

 王妃様は悲しげに笑い。


「もう。行ってしまうのですね」


「パスティ王子を助けられなくて……申し訳ありません……」


「貴方のせいではないわ」


「でも……」


「貴女は国を救った英雄なのです。俯く必要はありません。胸を張り。何時でも帰ってきていいのですよ」


 王妃様は私の頬を撫でてそうおっしゃって下さいました。

 イライザが私の手を取って涙ぐむ。


「アリーヤ……」


「イライザ……何処に居ても何があっても私達は親友よ」


「アリーヤ……ありがとう……また会いましょう」


「ええ。今度は王太子様と貴女の結婚式に伺うわ」


 私達は抱き合い。再会を誓う。


「さようなら……イライザ」


「さようなら……アリーヤ」


 私と【暁の船】は魔行船が着陸している王都の外れに向かう。

【暁の船】は今度も私の護衛をしてくれると言う。


「なあ……アリーヤ。お前さえ良ければ俺たちと一緒に行かないか?」


「?」


「冒険者になって世界を見てみないか?」


 アリーヤは花が咲いたように笑って頷いた。


「あっ。それいいよね~」


 マリンがアリーヤに抱き着いた。


「僕も賛成!!」


 シャインも手を上げた。


「私も!! アリーヤのご飯が忘れられない」


 リースもアリーヤに抱きつく。


「……」寡黙な騎士は頷いた。


 そんな六人を暖かく見守っているライル神官とフント魔法兵団長。


「やれやれ。お姫様はお転婆だな」


「我が祖国を興した初代王も冒険者だった。白い髪もペリドットの瞳も勇気も受け継がれている」


「イギス王は彼女を迎え入れるつもりだが、かなり後になりそうだな」


「若いうちは世界を見るのもいい経験になる」



 その後、風の噂によると【暁の船】に一人の少女が加わり世界を駆け巡ったという。


 これは【暁の船】と白い髪の少女が、初めて出会った時の物語。

 彼らの冒険のお話はまたいつの日か語ろう。




         ~ Fin ~



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 2018/6/20 『小説家になろう』 どんC

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