1たす1は
初投稿です。
読みにくい部分もあると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
昔、こんな夢を見た。
鍵のついたドアがあって、門番のような男がいる。
ドアはオートロック式のハイテクな作りで、蹴っ飛ばしたら開くなんてことはなさそうなドアだ。もはや金庫といってもよさそうなくらい。
門番の男は、恰幅の良い屈強そうな男で、警備服に身を包み、仁王立ちで俺たちの方を睨んでいる。
俺の他にも見知らぬ男女が4人いて、なぜかはわからないが、3人の男は俺の仲間だという自信があった。
そして、俺たちは理由はわからないが、どうしてもドアの向こうに行きたいらしいのだ。
(夢なのだから、理由が曖昧なのは許してほしい。)
俺は仲間の3人に目配せをし、敵である女1人を含めて5人で門番のところに向かった。
俺たちが門番の目の前に並ぶと、門番は俺たちを見て、こう言った。
「1たす1は?」
なんだ?暗号か?
取り敢えず正しい答えを言っておくか。
他の仲間の3人もそう思ったようで、俺たちは門番に見えないようにして4人で顔を見合わせ、同時に答えを言った。
「2」「2」「2」「2」「6」
ひとり、仲間じゃないやつが6と答え、俺たちは焦った。
やっぱり2じゃないのかよ!
門番は案の定、その仲間じゃないやつだけを通し、ドアを閉じた。
ドアからの光が遮られると同時に、俺たちの意識は闇に包まれた。
目を覚ますとまた例のドアの前にいた。
門番も、もちろんいる。
しかし、周りを見ると、おかしなことに、なぜかさっきの4人(俺を含んで5人)といっしょだった。
あれ?お前、ドアの中入って行かなかったっけ?
不思議に思いながら、ふと気づく。
もしかして、時間が戻ってる?
これはチャンスなんじゃないか?
さっきで俺たちは答えを知っている。
この考えが正しければ、ドアの中に入れるかもしれない!
俺以外の仲間たちも俺と同じだったらしく、無言で4人で頷きあう。
今度は6と答えよう。
再び5人で門番のところに向かう。
「1たす1は?」
門番は先程と同じ質問を繰り返した。
俺たちの答えは決まってる。
「6」「6」「6」「6」「2」
…は?
なぜ奴(仲間じゃない奴)は2なんて言ったんだ?
理由がわからず、ぽかんとしていると、門番は先程と同じく、仲間じゃない奴だけを通してドアを閉じた。
「え…!?なんで!?」
さっき間違った答えを言ってドアの向こうに行ったことに驚き、思わず口に出た言葉に対し、
門番は、
「4人スパイが来ることは知っている。お前らは4人同じ答えを言うだろう。だから、それ以外の答えを言った奴が仲間だ。」
くっそ、そういうことかよ!!?
そう思ったその時、俺の意識は闇に包まれた。
今度は失敗しない。
暗号の答えはない。
ならば、全員違う言葉を言って撹乱させれば、誰か1人は入れるかもしれない!
俺たちは4人でうなずきあい、またもや門番の元に向かった。
「1たす1は?」
門番が問う。
一斉に俺らは答える。
「1169」「91」「6」「124」「75」
うっお、さすが俺の仲間。
同時なのにみんなバラバラの答えだ。
門番は答えを聞き、一瞬目を閉じたかと思うと、やはり、先程と同じ奴をドアの向こうに通し、ドアを閉じようとした。
「おい待てよ!」
俺は叫ぶ。
「なんでわかったんだ!誰も正解なんて言ってなかった。なのに、なんでそいつが仲間だってわかったんだよ!?」
門番は何も言わない。
「もしかして、以心伝心?」
「言わなくても考えがわかっちゃうとか、そんなやつ?」
俺以外の仲間もぎゃあぎゃあ騒ぎ出す。
すると、仲間の1人がこう言った。
「もしかして、一目惚れ?」
次の瞬間、門番とドアの向こうの女の顔がボッと赤くなる。
え?
え?
…マジで…?
俺がもともとない脳みそをフル回転させている間にも、男と女の顔はますます赤くなって行き、ついには耳まで赤くなっている。
…そういうことかよ。
リア充爆発しろおおおおお!!!
もういっそのこと、末長くお幸せになりやがれ!
そう叫ぶと、だんだん意識は曖昧になって行き、眼が覚めると、そこは自分の部屋だった。
…これは後日談なんだけどさ。
3日後、こんな夢のことなんかちょっと忘れてたくらいの頃に、俺、合コンに行ってきたんだよ。
そうしたら、何処かで見たことある恰幅のいい男性と、何処かで見たことある女性がいてさ。
2人は会ったの初めてだったらしいんだけど、一目見たときに恋に落ちたらしくてさ。
俺、初めて見たよ、人が恋に落ちる瞬間ってやつを。
そんでもって2人はお付き合いを始めてさ、3ヶ月もしないうちに結婚したんだって。
こんなことも人生起こるんだって、ビックリしたよ。
…でさ、これはさらに後日談なんだけど。
この前、俺、自分が門番だった夢を見たんだ。
頑丈なオートロックの鍵のついたドアの前に立ってて。
その夢の中で出会った女の子と
付き合うようになった話、聞きたい?
私は、1たす1は、何にでもなると思います。