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微塵

作者: 湯治

血色の悪い彼はこの世界でいう人間というものだが、実際は、体の部位から何まで温もりを感じはしない。


彼は私の頭を無造作に撫でた。彼からみたら犬である私を。

私も、所詮、彼と同じく鉄の塊にしか過ぎない。

そして、これは、私と彼だけに限った話でもない。


何時まで経っても、呆れるほどに、人間というものに縛り付けられているのだ、私達は。


________________



私は、彼女をそっと抱き締めて撫でてから会社に行くのが日課である。

どのような朝食を取るか、いかに、栄養バランスを整えるのかなんぞは、正直どうでもいいに分類される物事だった。

会社には沢山の憎悪が渦巻いているような気がして、息が詰まって正気を失いそうだった。

きっと、限界などあるはずもないのに何を言うかという目で、彼女は私を見ているのだろう。

どうして彼らはずっと、黒くて四角いキーの羅列を打っていられるのだろう。同じような作業ばかりなら、いっそ、工場でも建ててそこの機械で仕事を終わらせて楽をすればいいのに。

私達の先祖はどうして、いつもこうなんだ、何も変わってないじゃないか。

そもそも変わったことなんて、貯蔵庫が冷蔵庫に変わったり、下らない建物を次々と建てていったことくらいだろう。

決して、人は何も変わらないのだろう。

そんなことを、思い走りながら彼女を撫で続けていた。

そろそろ駅へ行かないと仕事に間に合わなくなるが、間に合わせる気も、そこに顔を出す気力も残ってはいなかった。いや、訂正しよう。私にとっては動力の無駄なのだ。

労働することを強いられているのが気に障るのだ。

しかし、私は機械的な動作を仕込まれているが為に、彼女と戯れる時間が終わり、渋々、急いで駅へと行くことになってしまった。

私の心は、枯れた植物や腐った魚達のように疲れ果てていた。きっと他の奴等もそうなのだろうけど、生憎、私は私自身のことにしか詳しくないのだ。


____________________


私は、電車を乗り終えて直ぐに会社へと向かって行った。

そして、また、ほんの8時間か12時間くらいの間、椅子に座って事前に言われている作業をするのだ。

つまらない一日になりそうだと、そう思うのも、日課になりつつある。これもまた、仕込まれていたことなのだろう。

カタカタと壊れたプロペラのように次々と文字を作り資料を完成させていった。私の仕事はもうじき終わる。

私自身の仕事が終わる度に、私は活動も停止する。

そう、永年、私といると言う彼女が教えてくれたのだ。しかも、達筆で。

つい、私は、その時のこと思い出し、笑いを堪えながら、作業を行った。


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