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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第8章:王の力
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第96話 土魔術士の力(1)

 ジュウジュウと肉の焼ける匂いに誘われたように、天道君はフラっと帰って来た。

「……なにやってんだ」

「あー、天道君、おかえりぃー」

「肉焼いてるんだよ、食べる?」

 語尾にハートマークがついていそうな、ジュリマリの台詞。だが、協力体制が約束された今となっては、そんな媚びた態度の二人も、どこか微笑ましく思える。

「何の肉だ」

「その変にいた普通の蛇だよ。食べても大丈夫ってのは、『見れば』分かるよね」

 ギロリ、と鋭い視線で僕と、手に持つちょっと不恰好なかば焼きを睨まれる。気にしない、天道君は元々目つきが悪いから、普通に見ただけでも睨まれたように感じるだけ。余計に恐れる必要はない。

「まぁな」

「ただの塩味だけど、焼き立てだから美味しいよ」

「悪いな、それじゃあ、貰うぜ」

 僕らが囲む焚火の輪に、どっかりと天道君が座った。

「はい、コレあげる!」

「大きいの、とっておいてあげたんだー」

「ああ、ありがとな」

 久しぶりに味わう肉の欲求には抗えないのか、差し出された蛇のかば焼きを大人しく受け取る天道君。

「……美味ぇ」

「でしょ」

 僕らはこの日、初めて五人集まって、食事をとった。まだまだ、気持ちはバラバラだけれど、きっと、傍から見れば、僕らは仲間に見えたことだろう。

 さて、天道君を肉で釣ったところで、僕は交渉に入る。

「天道君、ちょっと頼みがあるんだけど」

「素材はもうねぇぞ」

「素材はもう十分だよ。全然、違う件だから」

「言ってみろ」

「蘭堂さんの、土魔術士としての訓練を積みたい。少しの間、ここを拠点にして、育てる時間が欲しい」

 下水道の進軍を通して、僕は蘭堂さんの育成を決意した。いくら弱い天職だからといっても、そこで諦めてしまっては、無力な一般人のまま。初期スキルがクソ構成だったとしても、新たなスキルはチートかもしれない。成長の可能性に賭ける価値は、十分すぎるほどある。

 このままダンジョンを進み続ければ、いずれスケルトンやゴーマのような手頃な雑魚は全くいない、強力な魔物ばかりが住みつくエリアになるかもしれない。手遅れにならない内に、レベル上げをしておくべきだ。

 そうでなくても、すでにして蘭堂さんは他のみんなと、僕と比べたって、大きく遅れてる。遅れてるというか、完全に初期状態、つまりレベル1のままだ。一刻も早くその差を埋めなければ、結局はお荷物のままで、攻略が厳しくなってくれば、抱えることも難しくなってくる。そうなると、最早、仲間だ友達だ、なんて言ってられない。

 合理的だが、残酷な末路を迎えるだけ。そう、腹を刺されても、治してもらえず放置された、メイちゃんのように。僕は、蘭堂さんにそんな風になって欲しくはない。

「……できるのか?」

「できる。蘭堂さんは、必ず強くなる」

 僕だって、今やそれなりに強くなったのだ。あの、樋口と真っ向勝負しても、辛うじて勝利を拾えるほどに。

 蘭堂さんの『土魔術士』は、小鳥遊さんの『賢者』みたいにサポート前提の天職ではない。委員長の『氷魔術士』と同じように、その魔法でもって敵を撃ち、身を守る、立派な戦闘職のはず。

 あくまで初期スキルがハズレだっただけで、新スキル、あるいは、習熟した初期スキルが真の威力を発揮する可能性は極めて高い。

「好きにしろ。ただし、あんま長くは待ってられねーぞ」

「十分だよ、ありがとう」

 よし、最大の難関はクリアした。天道君は一度約束したら、それを守る男だと思う。律儀、なのではなく、ダサい真似はしない、カッコつけるだけのプライドがあるからだ。

 これで、全ての根回しは完了した。後は、蘭堂さんの頑張り次第。

「――というワケで、早速、蘭堂さんのレベル上げに行きたいと思いまーす」

「うぇー、マジでぇ……」

 妖精広場の入り口で、あからさまに蘭堂さんが嫌な顔。

「まっ、今までサボってた分、頑張んな、杏子」

 どこか晴れやかな笑顔で蘭堂さんの肩を叩くのは、ジュリマリのジュリの方、野々宮さんである。

 今回、蘭堂さんのレベル上げ編成は、言いだしっぺのパーティリーダーとして、僕、主役の蘭堂さん、そして、いざという時の護衛として、野々宮さんがついている。勿論、レムもいる。

 妖精広場では、天道君と芳崎さんが留守番となる。どうぞ、二人きりの時間をお楽しみくださいよ。

「天道君の話だと、この沼地には、ジーラとゾンビが出るらしい。この面子でジーラの群れを相手にするのは危険だから、ゾンビを狙っていこう」

「うぇーい」

「ほーい」

 どこまでもテンション低い蘭堂さんと、軽い野々宮さん。僕だけが張り切ってもしょうがないんだけど……でも、蘭堂さんだって自分の能力の使い道が分かれば、きっとヤル気も出るだろう。

「それじゃあ、出発の前に、蘭堂さんの土魔法を確認しておきたいんだけど」

「えー、それはさっき教えたじゃん。もー忘れたのかよ桃川ぁー」

「忘れてないよ。でも、実際に効果を見てみないと――って、グリグリしない!」

 何が不満なのか、蘭堂さんが僕の頭を拳でグリグリしてくるのだ。大して痛くはないけど、スキンシップするなら、もうちょっと気持ちいい方が……ともかく、真面目に説明しているんだから、邪魔しない欲しい。

「……分かった。んじゃあ、いくよぉー」

 気だるげに両手を前に突き出し、蘭堂さんが構えた。

「――『石盾テラ・シルド』」

 唱えた次の瞬間、彼女の手前の地面がボコっ! と音を立てて、盛り上がっていく。そうして、下からシャッターでもせり上がってくるかのように、四角い土の壁が現れる。

 たっぷり十秒ほど時間をかけて、高さ二メートル、幅一メートル、厚さ三十センチ、といったサイズの土の壁が完成していた。

「石じゃないっ!?」

「それは言うなし」

 魔法名は『石盾』なのに、出てくるのは、どう見ても土の壁。触ってみても、やはり土の感触だ。

「でも、結構しっかり固まってるし、それなりに防御力はあるんじゃない?」

「さぁ」

 他人事のような蘭堂さん。こんな立派な防御魔法があるというのに、どうして使ったことがないのだろう。

「桃川さぁ、こんなゆっくり出てくる壁があったら、ゴーマだって避けるって」

「なるほど、それもそうか」

 一瞬の油断が命取りになる戦闘。雑魚と名高いゴーマだって、人間並みに動きはする。十秒かけて二メートル、つまり、秒速二十センチでせり上がってくる壁なんて、無視するに決まってる。

 目の前に迫られた時に発動したのでは、遅い。

「あっ、もしかして、二つ目の土魔法も……」

「――『岩長槍テラ・クリスサギタ』」

 今度は名前の通りに、灰色の石で形成された、大きな槍が現れる。槍といっても、穂先と柄に別れた形ではなく、粗削りの円錐形といった感じ。人の胴体ほどもありそうな、硬く鋭い岩の槍が……やはり、地面から秒速二十センチほどの速度で、ズズズと隆起していく。

 十数秒後、そこには三メートルほどの高さの円錐柱が、立派に突き立った。

「ねぇ、これって真っ直ぐにしか立たないの?」

「斜めくらいにはできるけど」

 それは良かった。ただの柱にしかならなかったら、さらに使い道が限られる。

「やっぱり、致命的なのは、この発動速度か」

 どうして蘭堂さんが、早々に戦いを諦めお荷物化したのか、納得である。もしかしたら、僕の初期スキルよりも外れだったり――いや、この『岩盾テラ・シルド』と『岩長槍テラ・クリスサギタ』があれば、攻撃は難しくても、逃げる時に通路を塞いだりできる。最悪、妖精広場に駆け込んで、コレで入り口を塞いでしまえば、籠城作戦だって可能だ。

「蘭堂さん、魔力は大丈夫?」

「なにそれ?」

「魔法を使うために必要な力。魔法を使いすぎると、普通に疲れてくるんだよ。最悪、倒れて気絶する」

「ええっ、マジでっ!? なにそれ、ヤバくない!?」

「無茶な規模で魔法を使わなければ、いきなり気絶はないから」

 でも、一度くらいは魔力切れで気絶する経験はしておいてもいいかも。自分の限界を知っておくって、大事だよね。特に、魔力の概念すら知らなかった、蘭堂さんのような魔法初心者は。

「それで、どう? 疲れた感じする?」

「んー、全然」

「どれくらい魔法が使えるか、試したことはある?」

「えー、最初の頃、ちょっとだけ練習してぇー、でも全然速くなんないから、それきりかなー」

「あの時は、結構使ってたよね。この壁、百枚くらい出してなかった?」

「あー、出してた出してた。めっちゃ出して迷路みたくなったよねー」

「え、その時は、疲れたりしなかったの?」

「別に、何も感じなかったけど」

 もしかして、蘭堂さんかなりの魔力量だったりする? それとも、石になりきれてない土壁が、よほどコスパがいいのか。

「ねぇ、桃川、やっぱ三つ目も使った方がいいの?」

「うん、お願い。今出した、コレにかけてくれればいいよ」

「ほい、そんじゃあ行くよ――『永続エタニティ』」

 蒼真桜が使う『光の守り手ホーリーエンチャント』のように、白い光が、作り出したばかりの土壁と岩槍を包み込む。けれど、それも一瞬のこと。発光が治まった後は、何の変化も起こらない。

 そう、この変化を起こさないことこそが、『永続エタニティ』という魔法の効果なのだ。

 本来、魔法で発生させたモノは、ある程度の時間経過で消滅する。それは、委員長の氷魔法もそうだし、僕の黒髪縛りもそうだ。魔法だから、現象や物質はあくまで魔力で形成された疑似的なモノなのだろう。魔法が形を成したその瞬間から、魔力が霧散して、その内に構成を維持するだけの魔力がなくなり、最終的に消滅。まぁ、だいたいそんなところだろう。

 しかし、この『永続エタニティ』という魔法は、魔力で作った物質を、完全に本物の物質として変化させることができる。

 だから、何もせずにこのまま放っておけば、固い土壁も、立派な岩槍も、すぐにガラガラと崩れて、最終的には跡形もなく消滅する。でも、『永続エタニティ』をかければ、コレらはずっとこのまま。誰かがわざと壊すか、それとも長い時間の果てに風化するまで、変化は起こらない。なぜなら、これはすでに、本物の土で固めた壁と、本物の岩を削ってできた槍になっているのだから。

 考えれば考えるほど、摩訶不思議で、凄い魔法の効果だと思う。けれど、これが即座に戦闘で役立つかと言われると……

「うーん、即戦力というと厳しいけど、使い道は色々とありそうなんだけどなぁ」

 土壁百枚を連続で作っても、全く疲労を感じない蘭堂さんなら、そのまま並べて大きな防壁だって、時間さえかければ作れるだろう。岩槍と組み合わせ、最後に『永続エタニティ』をかければ、それなりに立派な防御陣地とかできそうだ。

 まぁ、ダンジョン攻略という性質上、相手を迎え撃つ戦い方をする機会は滅多になさそうだけど。

「とりあえず、後は実戦あるのみだから、行こう」

 さて、このゆっくり土魔法をどう活用するか。蘭堂さんをがっかりさせないよう、頑張って考えよう。




 沼地を散策すること五分、ターゲットはすぐに見つかった。

「あ、ゾンビいるじゃん」

「ねぇ、やっぱやめない? ゾンビとかキモすぎて無理なんだけど」

「臭いしキモいけど、すぐ慣れるから」

「うぇー」

 どこまでも女子高生らしい駄々をこねる蘭堂さんに、騎士として成長した野々宮さんが平然と諭す。確かに、僕も腐りかけの体に、生々しい傷跡が目立つゾンビは気持ち悪いと思うけど、いつかのエリアで必死こいて戦い続けたお蔭で、そのキモさにしり込みしないほどには慣れた。

「数は四……野々宮さん、他に潜んでいそうな気配はする?」

「んー、大丈夫じゃない?」

 盗賊の樋口や夏川さんには気配察知や索敵能力は及ばないけど、純粋な戦闘天職である騎士の彼女が、この中では最も敵を感知するのに優れているだろう。ここは、沼から少し離れた林になっているから、いきなり水の中からジーラが強襲、なんてこともない。

「どうすんの? あれくらい、アタシ一人でも余裕だけど」

「蘭堂さんがゾンビ倒さないと、意味ないでしょ」

「あ、そうだっけ」

 おいおい、大丈夫かよ野々宮さん。もしかして、敵を前にすると槍で刺し殺したくてウズズズしているとか、そういう性格になってたりする?

「ねぇ、桃川ぁー、ウチどうすればいいのさー」

 急かす蘭堂さんの声を無視して、僕はゾンビの立ち位置、周囲の地形、その他諸々を含めて、落ちついて考える。

「よし、蘭堂さん、ここから、あそこの木の間に、等間隔で槍を斜めに生やして」

「えー、どこぉ」

「この辺から、これくらいの角度で」

 僕が直接、欲しいポイントを鉄の槍で刺して教える。

「槍の長さって、変えられる?」

「知らなーい」

「じゃあ、やってみて。長さは一メートルくらい。えーと、伸びてる途中で、魔法を止めるようなイメージで」

「……おー、できたわ」

 蘭堂さんは、見事に『岩槍テラ・クリスサギタ』を短く生やすことに成功。委員長と蒼真桜の魔法を見る限り、魔法はある程度、術者の意思でサイズや威力をコントロールできていた。僕だって、当たり前のように呪術を色々と調節して使ってるし。

 だから、蘭堂さんも壁と槍のサイズ変更くらいはできると思った。大きくするのは難しいだろうけど、標準サイズよりも小さくするくらいなら、簡単なようだ。

「できたら、永続かけといて」

「ほい」

 次々と突き立ってゆく岩の穂先に、『永続エタニティ』の効果を示す白い光が灯る。

「これもお願い」

「なにこれ」

「僕の呪術、『黒髪縛り』だよ」

 木と木の間に、高さ三十センチくらいで、黒髪のロープを張る。多分、『永続エタニティ』は他の人の魔法にも付与できるはずだ。

「どう? これちゃんとかかってんの?」

「光ったから、大丈夫だと思う」

 永続の発光を確認して、準備完了。

「これから、ゾンビをこのトラップまで誘導して、倒す」

 仕掛けは単純明快。説明するまでもないだろう。

 僕らを追いかけて、ゾンビがここまでやって来ると、間抜けな奴らは必ず、この黒髪ロープに足をひっかけて、倒れる。そして、倒れた先に待ち構えているのが、蘭堂さんの岩槍というワケだ。

「ゾンビは目の前の相手を追いかけるだけの馬鹿だから、こんな見え見えの罠でも、必ず引っかかるはずだよ」

「えー、マジ? ダメだったらどうすんのさぁー」

「その時は、野々宮さんとレムで始末すればいいでしょ」

 そのための、護衛役でもある。上手くいかなった時に備えて、普通に強い人が片付けてくれれば、安全に試行錯誤できるというワケだ。

「僕と野々宮さんで、ゾンビを引きつけてくる。蘭堂さんは、ここで待ってて。万一に備えて、レムを護衛に残すから」

「は、早く戻ってきてよねー」

 ちょっとでも離れることが心配なのか、若干、震え声の蘭堂さん。

「よし、行こう」

「オッケー」

 僕は鉄の槍を、野々宮さんは鋼の槍を手に、ゾンビを呼ぶべく駆け出した。

 トラップ地点から五十メートルほど進めば、ゾンビどもが群れている。最初に見つけた時は四体だったけど、今は六体に増えている。まぁいい、許容範囲内だろう。

「へいへい、ゾンビ、ビビってるーっ!」

「やっほー」

 石を投げつけ、適当な声を出して、奴らの注意を引く。

「グッ、オオオ……」

「ウォオアアアアっ!」

 生きた人間という獲物を見つけ、ゾンビ共は一斉に駆け出す――って、思ったより速い!

「ちょっ、何だよアイツら、普通に走ってる!?」

「ここのゾンビは元気だねー」

 割とマジで焦ってる僕とは対照的に、野々宮さんは呑気なもんだ。

「ってか、桃川、足遅っ!」

「置いてかないでよ、野々宮さん!」

「アンタ、世話焼けるなぁ」

 身体能力が強化されてる戦闘天職と違って、僕は貧弱なままなんだよ!

 なんて、恨み言を叫ぶほどの余裕はない。

「ウガァアアア!」

「アア! ヘァアアア!」

 涎をまき散らしながら、ゾンビ共が全力疾走で追いかけてくる。僅か五十メートルの距離が、長い。

「桃川、頑張れー、追いつかれるぞー」

「はっ、はぁ……ああっ、クソっ! 黒髪縛り!」

 ゾンビ集団の先頭をひた走る奴が、本当に僕まで追いつきそうだったから、足だけ絡めて転ばせる。

「あーあ、ここで転ばせたら罠の意味ないじゃーん」

「僕が死ぬ方がもっと意味ないよ!」

 こんなことなら、レムに行かせればよかった。安易な決断を後悔しつつ、僕は残りの距離をどうにか走り抜けた。

 勿論、自分で仕掛けたロープに引っかかって、槍で串刺しなんて、間抜けなことはしない。

「ゴール」

「はぁ……はぁ……」

 汗一つかいてない野々宮さんと、ぜぇぜぇと息切れしてる僕。でも、のんびり休んでいる暇はない。罠の効果を見届けなければ。

「さぁ、かかって来いよ、この腐れゾンビ共っ!」

「グガァアアアア――ブボォオっ!」

 案の定、奴らは思いっきり突っ込んできた。眼の前に、明らかにヤバそうな岩の槍があるのに。足元に、こんなにはっきり黒いロープが張られているのに。

 人間という生肉しか見えていないゾンビは、目の前にある殺意の仕掛けをまるで理解することもなく――そのまま、僕の意図通り、静かに突き立つ岩の穂先へ飛び込んでいった。

「うわっ!? キモい、キモい! ヤバいって、うわぁああああ!」

「おおー、入れ食いじゃん」

 ゾンビの腐った体を、岩の槍が貫き通す。かなり太い岩槍だけれど、全力疾走の勢いもあってか、易々と胴体に大穴をあけて完全に貫通。

 後続のゾンビも続々とトラップに飛び込んできては、見事に串刺しの憂き目に合う。

 蘭堂さんも目の前の惨状に、さっきからキモい、ヤバい、と叫びっぱなしだ。

「オオッ、ガァアア……」

 岩槍は適当な間隔で並べただけなので、中には、肩や脇腹が抉れたくらいで、完全に突き刺さるのを免れた、運のいい奴もいた。自分の体の欠損などまるで気にせず、ゾンビは這うように、尚も僕らへと近づこうともがいていた。

「黒髪縛り」

 そんな奴らを、そのまま地面へ縫いとめる。

「蘭堂さん、岩槍を使って」

「え、えっ、でもぉ……」

「動かなければ、どんなにゆっくりでも、当たるでしょ」

「杏子、頑張れ!」

「う、うぅ……えーい、『岩長槍テラ・クリスサギタ』!」

 腹の下からズブズブとタケノコみたいに生えてくる岩槍に、僕の触手で拘束されたゾンビは成す術もなく、その身を貫かれて、完全に息の根を止められた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 真面目に説明しているんだから、邪魔しない欲しい 上手くいかなった時に備えて
[一言] 永続やってる事ヤバすぎる 消えるから許されてた物質創造を確たるものにするとか理を犯してるじゃん
[良い点] パワーレベリング! てか石盾100枚とか最初からちゃんと素質はあったぽいのね
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