第478話 双葉、クラン辞めるってよ(2)
「フタバさん、『勇星十字団』をお辞めになりなさい。貴女は、このクランに相応しくありませんわ」
それはまるで、昔の少女漫画にでも登場するような悪役令嬢が如き台詞であった。
純真な少女であれば、あまりのショックに泣き出してもおかしくないような言葉であるが……
「貴女、料理はお好き?」
「はい、大好きです」
「では、戦うことは?」
「それは……好きでやったことは、無い、かなぁ……」
少し言い淀んだが、それでも双葉さんはそう素直に打ち明けた。
それは記憶の改竄など無くとも、紛れも無い彼女の本心だ。双葉さんは戦いを楽しんだことも、自ら好きで望んだことも、一度たりともない。
彼女が戦う理由はいつだって、桃川を守るためだった。みんなで生き残り、仲間を助ける、そのためだけに彼女は『狂戦士』の力を振るってきたのである。
「そんな貴女に、好きでもない戦いを続ける理由がありまして?」
「辞めても、いいのかな……蒼真君も、委員長も、夏川さんだって、竜災を止めるために戦うのに」
「ええ、それは尊い勇者の使命ですわ。しかし、そもそも世の安寧を担う責務は王侯貴族にこそあるべきもの――――フタバさん、不運にもただこの世界へ迷い込んでしまっただけの貴女が、このアストリアの平和を背負う必要など、どこにもありはしませんわ」
以前の俺なら、否定していただろう。困っている人がいるなら、助けるのが当たり前だ。竜災などという、多くの人々の命が脅かされる脅威が存在し、それでいて自分にはそれを救えるだけの力を持つとなれば、俺はサリスに頼まれなくたって、喜んで大迷宮に挑んだに違いない。
けれど、今はとてもそんな風には思えない。
ヴィクトリアの言う通りだ。俺にアストリアの平和を背負う気などない。それどころか、『勇者』としての使命さえ、最初から果たす気など無いのだから。
だから彼女の言い分は、どこまでも正論なのであった。
「この『勇星十字団』にいる者には、誰しも戦う理由を持っておりますわ。自分のため、お家のため、故郷のため、理由は様々ですが、それは己にとって命と人生を賭けるに足るものに、違いはありません。けれどフタバさんにはソレが無い。当然でしょう、何故なら貴女は料理を心から愛するただの女の子だというのに、『狂戦士』だからと、ここにいるだけなのですから」
「……うん」
小さく頷くのみで、双葉さんに反論はない。あるはずもないだろう、全てその通りなのだから。
「貴女はもう、十分に戦った。何も後ろめたく思うことなどありません。ご自分のお好きな道を歩むのなら、早いにこしたことはありませんことよ」
「……蒼真君」
「いいんだ、双葉さん。ごめんな、全部ヴィクトリアの言う通りだ」
本当にいいのか、と言いたげな目を向ける双葉さんに、俺は頭を下げてそう言った。
申し訳なく思う気持ちと同時に、これは良い機会なのかもしれないとも感じる。
実際のところ、記憶の改竄の影響が見られる今の双葉さんに、サリス達『女神派』がこれ以上、何かを仕掛ける可能性は低そうだ。殺したいなら、勇者リリスが倒した時にどうとでもできただろうし。
ならば、すでに彼女の安全のために俺がすぐ傍にいる必要はない。そもそも記憶を失ったところで、『狂戦士』の力に衰えはない。最初から無用な心配だったとも言える。
それに今はもう、右も左も分からない、といった当初の状況とは違う。
アストリアはダンジョンもあるし魔物もいるが、発展した国だ。治安もそう悪くないし、全国の隅々まで『女神派』の監視が徹底されているワケでもない。
自ら進んでダンジョンに潜ったり、『女神派』の陰謀を暴こうと嗅ぎまわったりでもしない限り、命の危険も無さそうである。
「俺は『勇者』だから、アストリアのために戦うよ。でも、これ以上、無理に双葉さんを引き留めることはしない。いや、今まで俺は君の強さに甘えてしまっていたんだ。本当に済まない……もう双葉さんには、戦う理由なんか無いと、分かっていたのに」
「ううん、いいの、それは気にしないで。私も他に、行くところも無かったし……みんなと一緒にいた方が、安心だったから」
「ああ、俺も双葉さんがいてくれて安心できたよ。けれど、もうここでの暮らしも慣れただろう。他にやりたいことがあるなら、始めてみてもいい頃合いじゃないかな」
「そっか……うん、ありがとう、蒼真君」
穏やかに、それでいてどこか晴れやかな笑みを浮かべて、双葉さんが言う。もう、心は決まったようだ。
そしてその日の内に、彼女は『勇星十字団』を退団した。
◇◇◇
双葉さんが退団してから、二週間ほどが過ぎた。
誰もが腹を空かせてくるお昼時、彼女は今日も『勇星十字団』のクランハウスへやって来た。
「いらっしゃいませー」
と、朗らかな笑顔の双葉さんの下へ、飢えた猛獣達が殺到してきた。
「チーズバーガーセットでオナシャス!」
「チキンバレル!」
「ナゲットとポテト、気持ち多めで!」
「頼む、このコーラってやつを樽で売ってくれ」
「コーラ美味いけど、実はコーヒーが逸品なんだよなぁ」
「オープンしたばっかなのに古参面すんな」
今日も双葉さんの屋台は大盛況である。噂が噂を呼んで、日に日に客が増えているようだ。ここはクランハウスの敷地内だから、客は団員しかいないはずなのに、この人数はほとんど全員集まっているのではないかと言うほどだ。
まぁ、それも仕方が無いと思えるほどの味なのだが。
双葉さんが始めたのは、屋台である。
最初は俺を含めて、みんなで資金を出し合って店を構えようかと話したのだが、まずは屋台から地道にやっていきたい、との希望でこうなった。
で、その屋台のメニューはハンバーガー、ポテト、フライドチキン、コーラ、等々、俺達にとって非常に馴染みのあるものだった。双葉さん曰く、大勢の人に売るなら、まずは定番で手堅く、とのこと。
確かにハンバーガーとフライドポテト、それに油で上げたチキン料理なんかはアストリアでも広く普及している。シグルーンを歩けば、街角ですぐにそういった店を見かけることができるほど。
それだけ広まっているなら、すでに人気店なども確立され、かえって難しいのではないかと思ったが――――双葉さんは勝算があったのだ。人気店にも真っ向から勝負できるほどの、味はすでに完成していた。
屋台の一番人気はチーズバーガーだ。シンプルかつ王道。しかし双葉さんのはバンズ、チーズ、パティ、どれをとってもこだわりの品質である。
美味い。溢れる肉汁ととろけるチーズが絡み合い、それでいて大口で食らいつけるボリューム。人がチーズバーガーを食べる時に求める、全てがそこに詰まっていた。
これはどう考えても安価で提供するチェーン店の味を凌駕しているのだが、そうなれば必然的に食材コストも跳ね上がるはず。実際、アストリアの庶民が手を出しやすいリーズナブルな路線がメジャーなバーガー業界において、双葉さんのは少々高値の設定となっている。
だがそれを差し引いても、味と値段の比率が見合ってないように思うのだが……そこは企業秘密だと言われてしまった。
とりあえず、ちゃんと儲けはでるよう仕入れているようなので、俺の心配など無用なようである。
で、そんな品質が全てのメニューに及んでいるため、どれを買っても外れはない。その味は舌の肥えた上流階級が多いはずの『勇星十字団』にあっても、彼女の屋台を喰おうと殺到している現状が、何よりの証だった。
「フタバさんの屋台は、今日も繁盛しているようですね」
「ああ、サリス。よく買えたな」
制服姿のサリスが俺の下へやって来る。彼女の白い手には、コーヒーカップとポテトの入った箱があった。
お姫様のサリスであっても、屋台で買う時は並ぶ。それがクランのルールだからだ。
「ユート様もどうぞ」
「ありがとう。今日はダメかと諦めてたところなんだ」
ポテトを進めてくるサリスの言葉に、俺は笑顔で答えて摘まんでいく。彼女の前では常にフレンドリーな演技をするので、少々息苦しい。けれど、揚げたてポテトの味はやはり絶品だった。
「双葉さんが辞めること、それに屋台の営業を許可してくれたこと、本当に感謝している」
「いいえ、私に彼女の行動を止める道理はありませんから」
双葉さんが『勇星十字団』退団の件について、俺がサリスに聞いてみれば、彼女はいつもの微笑みを崩すことなく、本当に彼女の自由を尊重するかのように、お許しを出した。
引き留める言葉の一つも無く。やはり、記憶改竄が働いている内は、双葉さんの行動を強く制限する必要性はないということなのか。
サリスの思惑はどうであれ、表向きには何の問題もなく、彼女の自由意志を尊重する形で、円満退社もとい退団と相成った。
それに加えて双葉さんの希望であった、クランハウス内での営業許可も、身内のよしみという形でサリスが正式に取ってくれたりもした。
「ヴィクトリアさんには、感謝しなければいけませんね。私も出来る限り、異邦人たる貴方方の意志に沿うようにと思っていましたが……」
「そこは俺も反省している。本当は俺の方から言い出さなきゃいけないことだったのに」
初対面で双葉さんの戦意の無さを見抜いたヴィクトリアは、人を見る目がずば抜けていると感心してしまう。
あるいはサリスもそれに気づいていながら、あえて自分から余計なことは言い出さずに放っておいたという可能性もあるが……結果的に、ヴィクトリアが言い出してくれたことで、双葉さんにとっては良い形に落ち着いた。
そして全く彼女の気持ちに気づかなかった俺は、本当にただの鈍感クソ野郎である。正直言って、双葉さんを当然のように戦力の頭数として見ていたからな。
団を抜けて屋台を始めた双葉さんを、サリスがどう思っているのか。それとなく探るような意識で会話を続けている内に、早々に完売となって店仕舞いをする彼女の姿が映る。
隣には、甲斐甲斐しく手伝いをするジュリアスの姿もある。
団を辞めても、吸血鬼を撃退したジュリアス班の面々は、双葉さんに強く恩義を感じているようで、順番に混雑する屋台の手伝いをしているようだった。ああいう姿を見ると、やはり俺なんかが世話を焼かなくても、双葉さんは彼女自身の人柄によって多くの人と関係が持てるのだと思い知らされる気分だ。
そうして屋台を引いてクランハウスを出て、それをジュリアスがわざわざ門まで見送った――――その時である。
「メイちゃん」
その声、その姿。我が目と耳を同時に疑う。
しかし、もう来たのか、やっと来たのか、という相反する思いも入り混じり、俺はただその事実を目にした衝撃で、言葉を失っていた。
「やっと見つけたよ」
桃川小太郎が、現れた。
◇◇◇
シグルーン。
アストリアの首都にして、完全攻略した大迷宮を抱える、世界的に見てもトップクラスに発展した、巨大な迷宮都市である。
古代遺跡を流用したり、一部技術を応用したことで、中心部には高層ビルが立ち並び、かなり近代的な印象を覚える。その一方で、歴史を感じさせる荘厳な教会建築なども沢山あり……最先端のダンジョン技術とアストリアの歴史的文化、どちらも両立共存した、実に見所のある大都市だ。
首都シグルーンにおいて、有名なランドマークは3つ。
アストリア王城、シグルーン大聖堂、エルシオン女神像、である。
王城はその名の通り、アストリア国王が住まう住居であり、政治の中枢。美しい白亜の城であり、鮮やかなブルーの屋根のカラーリングが、有名テーマパークの中心に建っていてもおかしくない、実にファンタジックなデザインとなっている。
当代の国王陛下はレオナルド・ゴッドランド・アストリア。
特に名君とも暴君とも聞かないけど……まぁ、アストリアは実質的には議会制だから、王様は象徴ポジといった感じだ。
というか、アストリア王家には勇者リリスというレジェンドが現役なので、どんな王様だろうと影が薄くなるのも仕方がない。それでも『聖女』としてサリスティアーネがいるので、リリスだけが特別なのではなく、アストリア王家そのものが女神エルシオンと深い関りを持っている、と考えるの妥当だろう。
シグルーン大聖堂は、パンドラ聖教の総本山であり、アストリア発展の礎たる大迷宮を管理する中枢部でもある。ある意味では、政治機関の王城よりも、国にとっては重要な場所だ。
大迷宮の一部である、高層ビルよりも高い神授塔に、アストリアで最大の豪奢な大聖堂と、見栄えも抜群。僕もあんなコトが無ければ、ゆっくり観光デートしたい場所だ。
そして自由の女神像ならぬ、光の女神像こと巨大なエルシオン像が、シグルーン西側の港湾地区に建っている。勿論、海に浮かぶ小さな島の上に。
光の女神像はアルビオン最下層の天送門に飾られていた像よりもさらに大きい。古い神殿様式の台座の上に、灯火の代わりに右手で剣を天高く掲げ、左手で本を抱えたポージング。大きな白翼は背で折りたたまれており、全開で広がっていないのは像として物理的な制約があったんだろう。
そんな感じで、地球人の僕から見ると、自由の女神像をそのまま天使風に丸パクりしたようなデザインに思える。
コイツは王城と大聖堂が建設されるよりも前、まだシグルーン大迷宮が完全攻略されていなかった頃に、竜災対策として街を守る広域結界用の儀式祭壇として利用されていたという。故に、ここはエルシオンの加護によって守られてきた、という歴史的事実も、強いエルシオン信仰の理由の一つとなっている。
今はすでにエルシオンの勇者リリスによって大迷宮を制したので、首都に関しては竜災の危険はない。なので結界用儀式祭壇としての機能も、今は過去のものだが……それでも首都を守って来た巨大エルシオン像は、今でもアストリアの象徴としてあり続けている。
とまぁ、有名所もそれ以外のところも、色々あるシグルーンだが、僕にとっては観光など二の次三の次。
この首都で最優先に果たすべき使命が、僕にはあるのだ。
「ついにこの日が来た――――メイちゃんを迎えに行く日が!」
本物の僕が首都シグルーンにやって来て、何を置いても真っ先に行うべき行動がソレである。
時は今、と言うのは他でもない。あの勇者リリスは今、ちょうどシグルーンからいなくなっているのだ。
誓願の儀とかいう地方巡業によって、リリスはしばらくの間は辺境にて勇者の使命という名のボランティア活動に従事する。これはアストリアにおける伝統的な年次イベントであり、リリスも欠かすことは無い。
アストリアが誇る最強勇者様は、今は遥か最北部ノースランドへと旅立った。2度と戻って来るな、とは高望みだが、精々ゆっくりしていて欲しい。
勇者の居ぬ間に、僕はシグルーンで出来る限りのことをやり尽くすつもりだ。
その最たるものが、メイちゃんとの合流。絶対的最優先事項だ。
準備は万端。ヴァンハイトの時と同様、すでに先行して分身を潜らせ、調査は済ませている。
だが、それが無くともメイちゃんの消息はすぐに掴むことができただろう。なにせ彼女は、アストリア最強のクラン『勇星十字団』のメンバーとして、そして新勇者たる蒼真悠斗の仲間として、大々的に迎えられ、広く市井にも喧伝されていたのだから。
つい最近では、『真血党』なる吸血鬼の集団を単身で返り討ちにしたという、武勇伝がすでに流れている。こちらに調べる気が無くても、自然と『狂戦士』双葉芽衣子の名は耳に入ってきたに違いない。
「やっぱり『狂戦士』の戦力が欲しかったか。馬鹿め、それがお前らの命取りになるんだよ」
メイちゃんが生かされた理由は、それが妥当なところだろう。自我の封印やら記憶の改竄やら、非人道的な賢者スキルの数々をつぎ込めば、忠実無比なエルシオンの兵隊にでも出来ると考えたのだろう。
馬鹿なのかな。天職の名前に堂々と『狂』の字を冠しているのを、コントロールしようなんて。狂戦士の神様を舐めているとしか思えない。まぁ、エルシオンなんてクソ女神を唯一神と崇めているから、建前でも舐めざるを得ないのだろうけど。
ともかく、奴らの思惑によってメイちゃんは蒼真悠斗、勇者の仲間として行動している。委員長と夏川さんも一緒だし、調べた限りでは、表向きは普通に『勇星十字団』の一員として活動しているようだった。
ひとまず、酷い目に遭うような生活をしていなくて安心した。もし裸で鞭を打たれる奴隷生活なんてしていたら、僕も後先考えずに殴り込んでは残虐の限りを尽くしただろうから。
「大丈夫だと思うけど、リザとジェラルドは一応見張りをお願いね」
「はい、坊ちゃま。どうかお気をつけて」
「ふふん、野暮なことはせぬから、さっさと愛しい女を迎えに行ってやれ」
そんなジェラルドのエールと、何時にも増して鋼のように冷めた表情のリザに周辺警戒を任せ、僕は勇んで敵の拠点とも言うべき『勇星十字団』のクランハウスへと向かった。
さて、今の僕は本物だし、堂々と顔出しもしている。恰好も最近すっかり着慣れたお坊ちゃま仕様の高級ブレザーだ。姿も顔も全く隠さずに、敵の本拠地たるシグルーンの表通りを練り歩けるのは、『女神派』が手を出してくる様子が無いからだ。
本物と分身の区別こそ奴らはつかないが、僕がシグルーンにやって来たことそのものは、とっくに捕捉されているはずだ。だってこっちで『黒髪教会』構える時に、あの大聖堂まで挨拶に行ったんだからね。勿論、その時は分身だったけど。
それで今日まで、本物の僕ソックリの分身が堂々と黒髪教会として活動をしてきたのだが、一切の手出しが無い。僕はこれを、泳がせるように意図的に無視している状態、と考えている。
ならばこちらもコソコソと無駄に隠れるようなことはせず、堂々とやりたいことをやるだけだ。いつでもリリスをけしかけてくればいいさ。今度こそ逃げ切ってやるし、シグルーンの街中で僕を襲って、この首都が無事で済むとは思わないことだ。
「僕がメイちゃんを迎えに来ても、やはり動きはナシ、か……」
本当に『呪術師』と『狂戦士』のコンビを脅威として見ているなら、今回こそ何かしらの妨害なり脅迫なりあるかも、と思っていたが、いよいよクランハウスを目前にしても、邪魔が入る様子はない。
ここまで来ると、敵の動きがどうこうよりも、久しぶりにメイちゃんに会うことにドキドキしてきてしまう。
ああ、やっとだ。やっとここまで来れた。
奴隷から農園を乗っ取り、ヴァンハイトで冒険者として一旗上げて、仲間も沢山できたけれど……やっぱり僕の隣には、彼女がいてくれなければ落ち着かない。
僕の守護神、『狂戦士』双葉芽衣子。最強の戦力にして、最愛の恋人。
「あっ――――」
見違えるはずも無い、その姿を僕はクランハウスの正門に捉えた。
真新しいポップなカラーリングの屋台を引く、大きな彼女の姿を。
「メイちゃん」
一度、その姿を見てしまえば、もう抑えは効かなかった。一も二もなく僕は駆け出し、彼女の前に立って、名前を呼ぶ。
久しぶりの再会に、メイちゃんも驚きで目を見開いている。
「やっと見つけたよ」
「えっと――――誰、かな?」




