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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第2章:無限煉獄
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第451話 地獄の蓋を開く時

「はぁ……はぁ……ようやく、追い詰めたぞ」


 約三十年前。第三階層は、今まさに突破されようとしていた。

 満身創痍のフルヘルガー。群れはほぼ壊滅。こちらも相応の被害を受けたが、ボスを仕留める中心メンバーは健在。正しく勝負あり、といった状況。


 ここまで来れたのは、綿密な計画と準備、そして何よりヴァンハイト最大手クラン『ハイランダー』を中心として、『象牙の塔』、『最大狂化マッドネスマックス』 を始めとした大手クランとの同盟。さらには『ライトニングアーマメント』など軍事企業のスポンサーに加え、なんとアストリア軍まで一部協力がなされている。

 これは迷宮都市ヴァンハイトの総力とも言える戦力が結集していた。負けるはずがない。これで攻略できなければ、第三階層突破は不可能だと。

 それほどの意気込みをもって、彼らは挑んだ。


「油断はするなよ。手負いの獣は恐ろしい」


 言われずとも、誰も油断はしていなかった。獲物を前に舌なめずりするような三流など、この場には一人もいはしない。

 フルヘルガー本体の討伐には、4人パーティが4組、合計16人で編成されている。

 まずは指揮をとる四代目クランリーダーが率いる、攻守共に優れた『ハイランダー』パーティ。

 次いで厄介なガス攻撃や強力なブレスなどに対抗するため、風と氷の魔術師を揃えた『象牙の塔』パーティ。

 体一つでボスを食い止め、食らいつく命知らずの全員前衛の『最大狂化マッドネスマックス』 パーティ。

 そしてパンドラ聖教から派遣された、メンバーの命綱となる優秀な治癒術士達と、アストリア軍から選抜された『射手』によって構成された後衛パーティ。

 16人全員が天職持ちかつ経験豊富な最精鋭である。


 そんな彼らは遺憾なく力を発揮し、長い激闘の果てにフルヘルガーを追い詰めた。

 全身の鎧が砕け散り、血濡れとなった巨獣が最後にとった行動は――――


「逃がすなっ、追え!」


 一目散の逃亡。己の巣があると思しき、煮えたぎる溶岩の湖まで、最後のガスブーストを使って大跳躍を果たした。

 どんな大技を繰り出すか、と警戒していたからこそ包囲を脱した。後衛の陣取る方へ向かって跳ばなかったのも、追撃の手が僅かに遅れる一因であったろう。

 無論、こんなところで逃がすまいと全員が追う。しかし焦りはしない。このフィールドは奥の方に逃げ場はない。必ずどこかで追いつける、と。

 しかし、その予測もさらに裏切られた。


「おいおい、まさか自殺ってワケじゃないよな……?」


 フルヘルガーは自ら、溶岩の湖へと飛び込んだ。

 これほど強力な火属性の力を宿すボスである。マグマに浸かったくらいで焼け死ぬことはないと思われる。


「まずいぞ、アイツもしかして泳いでどっかへ逃げたんじゃないのか」

「ええ、この湖の底が、どこかへ繋がっていてもおかしくはないわ」

「けど階層主が逃げ去ったってんなら、もうここは解放できるんじゃあねぇのか?」


 流石に溶岩の中まで追撃するのは不可能である。

 まんまと逃亡を許したが、一番の目的である第三階層突破は果たされたのでは――――そんな思いを全員が抱いた直後であった。


 グルルォオオァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


 けたたましい咆哮と共に、溶岩の湖の真ん中からマグマが大きな柱となって吹き上がる。

 灼熱のマグマの雨が降り注ぐが、そんなことよりも爆発的に駆け抜ける、強大な魔力の気配にこそ彼らは旋律した。


「そんな、まさか……」

「回復、したのか」

「いいえ、違う、これは――――」


 溶岩の湖からゆっくり陸へと上がったフルヘルガーは、再びその身に鎧を纏っていた。その姿は正しく騎士。狼ではなく、騎士だ。


「立ってやがる……それがお前の、本当の姿かよ……」


 フルヘルガーは直立していた。人間のようにしっかりと二本の足で立ち上がり、体高の上がった遥か高みから、人間達を見下ろす。

 身に纏う鎧は直立形態に合わせた形状に変化しており、野太い両前脚には、騎士が携える剣のように、鋭いブレード状の凶器までもが増設されていた。

 さながら鎧兜の獣人騎士といった出で立ちへと形態変化させたフルヘルガーは、


「来るぞっ!」


 一片の情け容赦もなく、このヴァンハイトドリームチームを蹂躙した。

 かくして、第三階層主フルヘルガー討伐は、過去最大の損害を被る大失敗に終わる。これ以後ヴァンハイトでフルヘルガーへ挑む者は、三十年以上現れることはなかった。




 ◇◇◇


 グルルォオオァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


 狼の巨獣が転がるように逃げ出した。

 目立つリーダーに見せかけた、小太郎の分身である囮に釣られて、至近距離で大量のコア爆弾が炸裂。最早このままでの戦闘継続は不可能なほど、致命的なダメージを受けて、フルヘルガーがついに撤退を選択した。


 けれどその心に、悔いも恥もありはしない。自分をここまで追い込んだ三十年ぶりの強敵相手だ。己に残された最後の手段にして、最強の切り札を切ることに何ら躊躇は無い。

 鎧の纏い直しに二足への形態変化、これを使うに相応しい相手と認めて。


 彼らには、無様な敗走に見えるだろう。今しがた自分が釣られた囮のように。

 最も警戒するべき三人組は、溶岩の湖へと向けて一目散にひた走る自分を、警戒の目で睨むばかりで追いかけては来ない。ここで逃げに徹するなら、追撃は出来そうもないという判断か。


 だが安心しろ。俺は逃げない。俺の真の力でもって、お前たちから圧倒的な勝利をもぎ取る――――そんな心地で、フルヘルガーはかつてと同じく、溶岩の湖へと飛び込んだ。


「――――『腐り沼』」


 一度聞いた声音が耳に届いたのが、最初の違和感だった。

 次いで、宙に泳ぐ最中に、鼻を刺すような異臭が漂う。

 そして何より、赤々と輝いているはずのマグマの湖面が、赤黒く濁っていた。


 何だこれは――――明らかな異変を察するも、すでに自分の身は真っ直ぐ湖へダイブしている真っ最中。今更なけなしのガスを噴射したところで、湖から脱することも叶わない。

 結果、フルヘルガーは野生の本能が危険を訴えているにも関わらず、成す術なく不気味に濁った溶岩の渦中へと身を投じるより他はなかった。


 ギャァアアウゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!?


 襲い来るのは、想像を絶する激痛。

 予感はしていた。この不気味な赤黒いモノは、すでに一度見た毒だと分かっていたから。

 そうだ、牛の群れに乗った敵を追いかけた時に、己の群れを葬った溶ける毒の粘液。アレと同じモノだ。


 証拠はないし、目撃してもいないが、この『溶ける毒』を操っているのは、あの小さなボスだと、何故だかフルヘルガーは確信できた。

 逃げるボスは偽物だった。ならば、本物は一体どこにいるのか。

 初めての経験だ。自分が敵の群れのボスを見つけられないことは。


 苦痛の中に浮かんだ小さな困惑。ソレに応えるように、ガラガラと音を立てて、溶岩湖の畔に一台の装甲牛車が戻って来た。

 そこから降り立ったのは、黒いローブに身を包んだ、小さな人影。

 フルヘルガーは直感する。アイツが本物だ、と。


「ねぇねぇ、最後の切り札が封じられて、今どんな気持ちぃー?」


 その視線は苦しみにのたうつバカな犬を、遥か高みから見下ろす猫のような目であった。


 ォオオァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


 こんな屈辱は初めてだ。未だかつてない巨大な怒りの感情と共に、フルヘルガーは吠える。

 今日、俺は死ぬ。けれど、せめてアイツだけはこの牙にかけなくては――――ただ一心にその思いを抱えて、フルヘルガーは猛毒と化した湖を泳ぎ、嘲笑う小さなボスへ向かって行った。

 その決死の姿を、やはりアイツは笑った。

 そういうの、悪足掻きって言うんだよ、と。




 ◇◇◇


「最終形態なんかに付き合ってられるか」


 ズタボロになるまで追い込んで、そっから形態変化で全回復してファイナルラウンドとか……普通にクソボスだろ。そりゃ『ハイランダー』だって諦めるわ。


 三十年前、フルヘルガー討伐に王手をかけた大規模討伐の記録。その内容は凡そ、僕が実行した作戦の拡大版。というか、僕が彼らのやり方をパク……参考にしたというだけのことだが。

 要は大人数で群れを引き付け、精鋭戦力でボスを叩くという構図。そしてそれは成功したが、フルヘルガー最後の切り札が、形態変化だ。


 その姿を見せたのは三十年前の一度きりだが、その強さはしっかりと記録に残っていた。天職持ち16人で固めたパーティを、それまでの戦いで消耗しているとはいえ、一気に形成をひっくり返して半分以上、殺して見せたというのだから。

 恐らくその強さは、通常形態の比ではない。

 最後の手段として使う以上、絶対に普段使いは出来ないほどの、大きなリスクなり副作用なりもあるのだろう。けれど戦いの最終盤で、勝利を確信した相手に逆転するほど凄まじいパワーがあるのは間違いない。


 これに真正面から対抗しようと思えば、メイちゃん級のスーパーエースが必要だ。最終形態フルヘルガーVSベルセルクXメイちゃん、なら十分に真っ向勝負できるだろう。

 でも、流石に僕もメイちゃん以外にベルセルクXを服用して戦ってくれ、なんて頼めない。アレはもう『狂戦士』として薬に適応できた彼女専用みたいなもんだし。

 だからフルヘルガー攻略の最適解は、最終形態にさせない、である。


「ありがとね、ルカちゃん。危ない仕事をしてもらって」

「何言ってんだ御子様、兄貴達が命張って戦ってんだから、こんなもんどうってことないやい」


 本当は女の子なのに、どこまでも勝気なクソガキみたいなことを言う。けれど、今は彼女のクソ度胸とクソ根性に感謝だ。


 装甲牛車一号車の運転手を務めるルカの仕事は、群れの引き付けが成功した後、溶岩湖まで僕らを送り届けること。

 運転手一人の牛車では戦力にならないので、早々に離脱させたが……そこからルカの次のお仕事が始まった。


 すなわち、本物の僕を乗せて、最終形態封じの下準備である。

 仕掛けは単純そのもの。奴の巣である溶岩湖を、『腐り沼』にすることだ。


 すでに実験と実戦を通して、フルヘルガーの鎧に『腐り沼』の酸は効果があることは実証されている。装甲の厚い無傷の状態なら、無理を押して毒沼に潜って耐えられる可能性はあるけれど……奴が最終形態に移行するのは、満身創痍となってから。

 鎧は剥がれ、体中傷だらけとなった状態で、『腐り沼』の酸はそりゃあしみるだろう。


「お陰様で、大成功だ」


 仕掛けは単純なれど、実行はなかなか困難であった。ただの水辺なら簡単に『腐り沼』で汚染できるけれど、流石に大量の溶岩となると話は別だ。

 ちょこっとマグマにぶちまける程度では、たちまち蒸発して毒ガスとなって立ち込めるだけ。毒性を気体として吸引するだけなら、元より火山ガスを体内に溜めて扱うフルヘルガーには、全く通じない可能性が高い。

 十分な効果を発揮させるには、強い酸性を示す毒沼状態で沈めなければならない。


 だから一番苦労したよ、溶岩湖を『腐り沼』に変えるだけの儀式を成立させるのは。

 様々なモンスター素材や鉱物など、大量かつ高価な供物を取り揃え、樽に詰め込んで用意した。お陰で一号車の車内はギッチギチだった。

 本体の僕はリザに抱っこしてもらったから快適そのものだったけど、分身の方はテトリスみたいに体を折りたたんで隙間に詰め込んでたからね。


 メンバーを下ろした後は、フルヘルガーに気取られぬよう、儀式による大規模発動の下準備だ。ここを襲われたら、全てがお終いだった。山田が『アーマードクライ』というヘイト集中専用スキルを習得していなかったら、奴に気づかれ失敗していたかもしれない。

 ギリギリの綱渡り。僕の攻略計画、最大のウィークポイントだったが……無事にやり遂げた。


 ルカの巧みな運転で、無駄なく溶岩湖を一周し、各所に供物と魔法陣を描いた。

 準備さえ整えば、後は静かにフルヘルガーが最後の切り札を切る時を待つばかり。

 そうして今まさに、僕の策は成った。


 ォオオァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


 苦痛と屈辱、そして何より憤怒に染まった目で、狂ったような絶叫を上げて、フルヘルガーは姿を現した本物の僕へ向かって溶岩湖から引き返してくる。

 マグマと入り混じった『腐り沼』は十分な酸性を発揮し、奴に残された僅かな鎧を剥がし、傷だらけの毛皮がズルリと剥げ落ちた。

 すでにして満身創痍だったにも関わらず、強酸の毒沼にザブザブ浸かったせいで見るも無残な有様。死に体、という言葉を現すに相応しい姿となっている。


 それでも強靭な生命力のボスモンスターとして、最後の悪足掻きを仕掛けてくる。最終形態を封じた僕が憎かろう。真正面から戦った前衛三人組よりも、小賢しい策を弄し続けた、僕こそ憎くて仕方がないだろう。

 たとえ自分の命がここで尽きるとしても、コイツだけには、せめて一太刀――――その憎悪と執念は、よく分かる。

 だから最後まで、油断はしない。


「――――『巨神戦装ギガント・マキア』」


 溶岩湖から飛び出してきたその瞬間、フルヘルガーへと遅いかかるのは悪魔の巨人。『精霊戦士』の本領である巨人化・魔人化の力を発動させたリザが、鎧も甲殻も、毛皮さえも失った柔らかな胴体へ、巨大な角の槍を串刺しにした。


 ギィイイグァアアアアアアアアアアアアッ!!


 深々と大きな槍が貫通し、地面に磔となったフルヘルガーは凄まじい絶叫を上げる。

 危ない、やっぱり巨人と化したリザじゃなければ、食い止め切れないほどの勢いだったな。


 レムの巨人化は割と万能で、デカくなっても黒騎士の姿で武装できていた。巨人になる本体だけでなく、装備品も巨大化するのが重要なポイントである。

 やっぱりオーマは偉いよ。ちゃんと武器まで大きくならないとダメだってことを理解していたんだから。お陰でザガン達は巨人化しても、全員がしっかり武装してた。


 一方、ディアナの『巨神戦装ギガント・マキア』には、ちょっとした制約がある。装備品ごと巨大化できるが、金属はダメらしい。つまり、鋼の刀身を持つ剣や槍は、大きくなれないのだ。

 理由は恐らく、巨人化するための魔力と相性が悪いせい。魔力を宿す光鉄製でも、金属だから術式の対象外となってしまう。今のところ、実験を重ねても巨大化できる金属は見つかっていない。


 だからリザのメインウエポンである『ドレッドホーン』は、全て天然100%モンスター素材で作り上げたのだ。穂先にしたデッカい角、マジで高かった……でも悔いは無い。

 こうして、見事に僕へと牙を剥いたフルヘルガーを止めて見せたのだから。


「これで終わりじゃ、行くぞヤミーッ!」

「おうよっ!!」


 そして動きの止まったフルヘルガーへ、すかさず飛び込んでくるのが山田とジェラルド。

 それぞれ手にした武器に、自身が誇る最大威力の武技を宿し、その無防備に晒された首筋へと振るう。


「――――『紅太刀風』」

「――――『大断撃破ブレイクインパクト』」


 真紅の双剣が閃き、斧と槌が真っ赤に爆ぜる。

 ついに巨狼の首が落ちた。その巨躯故の大きな断面から、膨大な血飛沫を噴いて。

 ド派手に首を断ってみせたトドメの一撃は、正に偉業を成し遂げた英雄に相応しい。


「フルヘルガー、討伐完了だ」




 ◇◇◇


 フルヘルガー討伐成功に喜ぶのも束の間。僕にとってはここからが本番みたいなものだ。

 実はフルヘルガーって、ただこの場に住み着いてただけの野生モンスター説もあったのだが……どうやら、ちゃんとダンジョンの階層主として設定されていたらしい。

 倒した直後に、溶岩湖の底から塔が生えだして来て、その開け放たれたエントランスには見慣れたデザインの転移魔法陣が煌々と白い輝きを発していた。


「それじゃ、僕らが第四階層一番乗りだ」


 そうしてフルヘルガー討伐メンバーで、転移に乗った。

 飛んだ先はやはり、妖精広場。実家のような安心感である。


「よーしよし、これで第四階層の入口は僕のモノだ」


 このアルビオンダンジョンマスターの手にかかれば、正常に機能している妖精広場の掌握など楽勝だっぜ。流石は先進的な魔法文明の古代製。扱い方もしっかりと共通規格である。

 いつかどこかで独自規格のダンジョンあるんじゃないかと不安に思ったりもしたが、無限煉獄はその限りではないようで一安心だ。

 さて、無事に妖精広場の掌握にも成功したし、ここから先はもう急ぐ必要は何もない。ボス戦を終えた時よりも、ふぅーと安堵の息を吐いた僕の元へ、まずはジェラルドがやって来た。


「のう若様よ、そろそろ良いかの?」

「ああ、そうだね。こっちは終わったから、もういいよ」

「おおぉー、ついに、誰も見たことのない第四階層が!」


 ジェラルドと並んで、純粋なキラキラお目目のハピナが興奮気味に言う。

 まぁ、僕にとってはダンジョンの階層を進むことは慣れているけれど、ヴァンハイト育ちにとって、第四階層は誰にも辿り着けないとされていた未知の領域。その期待感は、人類が初めて月に行った時に匹敵するかもしれない。


「優先探索権は『ジェネラルガード』と『象牙の塔』にあるんだから、ちょこっと覗くだけだよ。いいよね?」

「勿論、それくらいのことで文句なんてつけないわ」


 涼しい笑みを浮かべて、『象牙の塔』の魔女であるミレーネもそう保証してくれた。

 ジェラルドやハピナほどではないが、彼女もやはり未知の第四階層の景色がどんなものか、興味はあるのだろう。

 そして彼女も全力ではないとはいえ、フルヘルガー討伐メンバー。最初に景色を目にする資格はある。


「いざ行かん、第四階層!」


 少年心全開のジェラルドを先頭に、僕らは妖精広場の扉を開き、第四階層のフィールドを拝む。

 果たして、目の前に広がるその光景は、


「うわ、これホントに地獄じゃん」


 禍々しい赤い空が広がる、黒い荒野。そして遥か彼方で世界の終わりみたいに大噴火をしている、煉獄の大山脈が突き立っていた。

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― 新着の感想 ―
×旋律 〇戦慄
狩りゲーの基本。逃走経路に罠を置く。彼の敗因はモンハンの未プレイだった事だな
これだけ苦労して階層主じゃなかったら、小太郎でもふて寝するよな。階層主で良かったな。 次の階層は、またヤバそげだな。どうなる小太郎!
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