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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第2章:無限煉獄
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第447話 フルヘルガー攻略戦(1)

 第三階層主フルヘルガーの縄張りは、どんな素人でも迷うことなく辿り着けるだろう。火山神殿エリアに広がる市街地のような遺跡には、舗装された道路が割と綺麗な状態で残っており、その最も大きな道路を進めば、そこへと行き当たる。

 周囲には断崖絶壁の山脈こそ広がるが、その道の進む先はなだらかな坂が続き、原型を留めぬほど崩れ去った瓦礫が点在する地帯を抜けると、現れるのは開けた黒い荒地。そしてそこに赤々と煮えたぎる、大きな溶岩の湖だ。


 隊列の先頭を行く装甲牛車の四号車が、その溶岩湖を視界に捉えると、『奏者』の二人は黙ってその手にした楽器を弾いた。


 ギュゥウイィイイイイイイイイイン! ズドドドドドダァアアアアアアアアンッ!


 静まり返っていたマグマの湖畔に、突如として爆音が轟く。

 さらに音量を増大させた音響設備を積んだ四号車から、最高にロックなバフサウンドが広がる。

 その攻撃的な音色と音のデカさは、モンスター相手にもこの上なく分かりやすく伝わっただろう。俺達は、お前に喧嘩を売りに来たと。


 ウォオオオオオオオオオオオオオオン――――


 宣戦布告の爆音に応えるかのように、高らかに狼の遠吠えが上がる。

 溶岩湖の畔に、一際大きな魔獣の影。

 シルエットは狼のような、赤い毛の四足獣。しかしそのサイズは体高4メートル近く、鼻先から長い尻尾の先まで含めた体長は20メートルを超えるだろう。

 しなやかな狼の骨格だが、その身を包むのは白銀の光沢を放つ、金属の鎧。

 それはただの金属甲殻ではなく、人の手によって誂えたような造形を持つ。瀟洒な蔦のような文様に、小さな古代文字のレリーフも装飾として刻まれている。重騎兵が馬に鎧を着せるように、その身に明らかな人工物である白銀の鎧を纏っていた。

 炎のように真っ赤な毛皮と壮麗にして重厚な白銀の装甲を持つ巨狼。

 それこそが第三階層主フルヘルガー。

 正式名称『フルアーマーヘルガード』である。


 ウォンウォン! ギャォオオオオオウッ!


 フルヘルガーの遠吠えは、さながら王の号令。

 湖畔のそこかしこから、同じように白銀の装甲を身に着けた赤い狼が何匹も現れ、方々から駆け寄って来る。単に『ヘルガー』と呼ばれる取り巻きだ。

 第二階層からお目にかかる狼型モンスターと同じ程度のサイズだが、装甲を纏ったヘルガーは攻撃力も防御力も段違い。遠距離攻撃の手段も持つ、厄介なモンスターである。


 単独で強く大きなボス個体と、数百はいそうな群れ。この両方が合わさり、第四階層への扉は閉ざされ続けてきたのだ。

 だが、それも今日で終わりだ。

 強力なボスと多数の群れ。僕が選んだ攻略法は、基本に則った分断である。


「よぉし、犬共が来たぞぉ! 野郎共ぉ、走れ走れぇーっ!」


 四号車に乗り、『奏者』と共にステージに上がっている僕は、マイクのついた長杖を握りしめて叫ぶ。

 このポジションに、ギラギラした白いステージ衣装を身に纏った僕は、正にメインボーカルのように目立つ。

 若干恥ずかしいが、装甲牛車隊に命令を発するのはここがベストなのだ。


 殺意剥き出しのけたたましい鳴き声を上げながら、牙を剥いてヘルガーの群れがこちらへ襲い掛かって来る。

 ボスであるフルヘルガーは、群れの中央に陣取って、ゆったりとした足取りで前進を始めた。実に余裕たっぷりな動きだが、それでもヤツの鋭い視線がステージ上で叫ぶ僕に向けられているのは感じられた。


 そうして動き始めた群れに対し、僕の号令一下、装甲牛車は走りだす。

 竜災の時に山田救出へ向かった時と同じように、装甲牛車が陣形を組んで発進。敵の正面突破……ではなく、背中を向けて逃げ出した。

 先頭を行くのは、どんどん演奏のボルテージが高まって行く『奏者』ステージの四号車。その背後を守るように、二号車と三号車、それから増産した四から七号車までが続く。

 僕が乗っている一号車は、一番右端に位置。今はまだ主砲たるリザも出してはいない。


「撃ち方ぁ、始めっ!」


 こちらが背を向けて逃げ出した姿を見て、さらに猛然と勢いをまして迫り来る群れが射程に入ったのを確認してから、攻撃命令を下した。

 装甲牛車から突き出た幾つものブラスターが、一斉にマズルフラッシュを瞬かせる。


 ドッドッドッ――――ズドォオオオオン!


 甲高いブラスターの射撃音に混じって響くのは、複数の爆発音。

 ヘルガーの群れは一塊になっており、グレネードをぶち込むには程よい感じ。開幕の景気づけにはちょうどいい。

 派手にぶっ放されたグレネードは複数体を巻き込んでヘルガーを吹き飛ばすが、装甲を纏った奴らは頑丈だ。直撃で致命傷を負って即死するのもいるようだが、大半は爆風に煽られ転がった先で体勢を立て直し、すぐに復帰して走り始めていた。


 こんなタフな奴らがこれだけデカい群れになって襲い掛かって来るのだから、それだけで攻略は難航するだろう。管理局で調べた限りでも、攻略失敗した戦いの記録では、やはりどれも上手く群れを処理しきれずにいたからね。

 そりゃ誰だって分断作戦くらいは思いつくさ。けれど、それを実現させるのが難しい。


 オォオオオオン!


 グレネードの一斉発射で群れが散らされたのを見て、フルヘルガーが一声上げる。すると群れは左右へ綺麗に分散するように広がって行く。

 相手が範囲攻撃持ちと知れば、即座に散開させる対応力。そしてボスの命令を正確に実行する群れ。

 ただでさえ強い上に、知恵も働くボスならば群れとしての強さはさらに跳ね上がる。


「まだまだ、もっと奴らを引き付けるぞ!」


 ブラスターの弾幕とグレネードの嵐を超えて迫って来たヘルガーから、いよいよ攻撃が飛んできた。

 奴らの両肩装甲には鋭いスパイクが生えている。日本一有名な敵の量産機が如き立派なショルダースパイクだ。

 タックルするだけで凶器となるのだが、奴らは自前の火属性魔力でソレを弾として飛ばしてくるのだ。そして着弾すると炸裂する。まるで榴弾だ。


 こちらの攻撃と向こうの攻撃。どちらも爆発する弾が飛び交い、にわかに戦場が騒々しくなる。盛り上がってきたじゃあないか。


「でも車輪の直撃だけは避けてね」

「任せてつかぁさい!」

「御子様に託されたこの車ぁ、完璧に転がしてみせますぜぇ!」


 牛車を操る御者、というより運転手も気合十分だ。元々、馬車に乗っていた経験者から選抜したけれど、本物の馬と、自由自在に動かせる『屍人形』では、やはり勝手は違ってくる。

 本物の馬を相手にするなら信頼関係が大事だが、意志の存在しない屍人形を操るならば、全ては自分のテクニック次第。それが彼らの運転魂を燃やしているらしい。

 装甲牛車の運転手達は、揃いも揃って屍人形捌きの追及に打ち込み、火牛を走らせることに関しては、とっくに僕の腕前を超えているだろう。プロってこうやって生まれるんだね。


 そんな彼らのドラテクによって、どれだけ強化を施しても弱点となってしまう車輪周りだけは、ヘルガーの榴弾が降り注いでも直撃を避け、トップスピードを維持したまま走り続けている。

 そうして結構な速度で逃げ回っているので、一度は見えた溶岩湖も、すでに背景の向こう側となってしまう。


 そろそろフルヘルガーの縄張りを抜ける頃だが、目に見えて獲物がいるなら、逃す道理はない。ボスモンスターとはいえ、明確に行動ラインが決まっているワケではないので、下手すれば火山神殿エリアの端まででも追いかけてきそうだ。

 つまり、面白半分で突いていい連中じゃない。だからこそ、これまで威力偵察もロクにできなかったワケだが……そういう命を捨てた偵察は、僕の得意とするところ。

 準備期間の間に、分身とスケルトンで何度もちょっかいかけて、お前らのことは調べ上げているんだ。


「そろそろいいかな」


 群れは十分に溶岩湖から引き離した。

 これ以上、逃げ続ければ群れの半分を連れてボスが戻っていく可能性もある。そうなると、派手に騒いで引き付けた意味がない。


「進路を右へ。トラップゾーンに誘い込む」

「了解!」


 敵が必ず追いかけてきてくれるなら、そりゃあ罠くらい張るさ。

 溶岩湖へと続く途中の、崩れ去った遺跡の残骸が点在する荒野のようなエリア。完全に平坦ではないものの、坂はなだらかな傾斜を描いているので装甲牛車の走破性なら走り回るのに問題はない。そしてほどよく散らばる残骸が、罠を仕掛けるにはちょうどいい。


 大きく舵を切るように、右方向へと装甲牛車の列が動く。それを見てフルヘルガーも声を上げ、さらに群れを分散させて、囲い込むような動きを命じていた。ヤツとしても、そろそろ囲んで足を止めさせ、仕留めに行きたいって感じだな。


「カウント5で罠を使う! 5ぉーっ!」


 地形、罠の配置、牛車の速度、敵の位置。ざっと眺めて確認し、カウントスタート。

 僕の声に反応して、どういう罠が発動するのか理解しているメンバー達は、素早くブラスターを引っ込めた。


 こちらがブラスターによる射撃を止めたことに、フルヘルガーが窺うような視線を向けている。僕が何か狙っていると勘付いているのだろう。けれど、単に弾切れでこっちの攻撃能力が失われた可能性も捨てきっていない。

 だから、今の奴はひとまず様子見でいいか、という態度に見える。

 まぁ、妥当な判断だろう。もっとも、僕の罠に気づいていたとしても、あと5秒で何とか出来る段階は過ぎているけれど。


「4、3、2、1」


 マイク付きの長杖を握りしめ、僕は高らかに振り上げる。

 この杖はただのマイクスタンドじゃない。見ろよ、この青々とした輝きを。

 結構、高かったんだぞ。この水魔法の杖『アクアサーペント』は。


「さぁ下川、僕らの友情合体魔法を見せつけてやろう――――『酸盾アシッド・シルド』」


 今回、ヘルガーを嵌める罠に選んだのは『腐り沼』だ。でもただの『腐り沼』じゃない。

 コイツは呪術と水魔法の合体技、『酸盾アシッド・シルド』である。


 今はもう懐かしいレイナ殺しの時に、霊獣を足止めするための罠として編み出した。あの頃は僕も下川もスキルレベルが低かった。僕なんて『双影』を習得したばかりで、分身一人動かすのに本体止まってたレベルだし。


 だからこそ『呪術師』として成長を果たした今の僕ならば、大規模な罠として単独で運用することもできる。今なら霊獣エンガルドだって腐り殺してやるよ。


 ギャゥウウウウウウウウウウウウウウウウン!?


 仕掛けた『酸盾アシッド・シルド』が発動すると、そこかしこで巨大な『腐り沼』の塊が盛大に飛沫を上げて現れた。

 毒沼の塊は直径20メートルはあるだろう。よくある市民プールよりもちょっと小さめ、くらいのサイズ感で、結構な個数が展開されている。


 爆ぜるようにいきなり出てきた塊に、勢い込んで突っ込んでしまったヘルガーは、すぐに甲高い悲鳴を上げた。

 ボスより小さく薄いとはいえ、同質の硬い鎧を着込んだコイツらは、物理・魔法のどちらにも結構な耐性を持つ。これといった弱点はないのだが、自慢の金属鎧すら腐食し溶かすほどの毒液に頭から浸かれば、堪ったものではないだろう。


 高い防御があるから、ただの地雷のような罠では効果が薄い。拘束系も、奴らは短射程ながらもバーナーみたいな火を噴くので、縄のようなものではすぐに燃やされるし、チャチな鎖なら焼き切ることもできるだろう。

 そこで『腐り沼』の出番だ。


 僕は捨て身の威力偵察で手に入れた、ヘルガーの死体を持ち帰っては、白銀の装甲に『腐り沼』が通用するか試した。結果はご覧の通り。

 一滴でも付着すれば、シュウシュウと音を立てて反応する。コップ一杯分の量を垂らせば、ヘルガーの装甲には大穴が空く。

 頭っから突っ込んで、全身ジャブジャブになった奴は、哀れ、犬かきしながらどんどん溶けて、毛皮ごと装甲は剥がれ落ち、肉が腐り爛れ、骨が露出してゆく。グレネードよりも、効果は遥かに高い。


 お陰様で、それなりの数を展開しただけで始末できた。

 塊に飲まれた奴はほぼ即死。付近でザブーンと被っても、ほぼ戦闘不能だ。もうちょい遠くで飛沫がかかった程度の奴らでも、ジュウジュウ言って自慢の装甲が溶け出す様に、大慌てだ。


「心を込めて用意したんだ。みんな、もっと楽しんでいってよね」


 こんなもんで終わりじゃないよ。ただ大きく広げるだけなら、普通に『腐り沼』を儀式発動させればいい。


 設置地点には本物の僕が一滴一滴、心を込めて垂らした血を中心に、魔法陣と供物を用意した儀式祭壇。それからミレーネが手ずから水属性防御魔法『水盾アクア・シルド』の術式を刻んだ魔道具が仕掛けられている。


 残念ながら僕に水魔法は使えない。『水魔術師』の髑髏でもあれば話は別だけど、ソレも手に入らなかった。

 けれど、ただの一般人でも魔法を使えるようになるのが、魔道具の偉大なところ。

 アストリア中に着火や飲料水など生活用の魔道具は普及している。一般にも普及しているということは、それだけ発展している証。軍事技術として研究された戦闘用の魔道具ならば、どれほどの効果となるか。


 この『アクアサーペント』は、素人でも中級までの水属性魔法が扱える、魔法の武器だ。勿論、あらゆる水属性中級魔法が使えるワケではなく、あくまで杖に施された術式の範囲でしか行使はできない。

 けれど下川不在で合体魔法『酸盾アシッド・シルド』を発動させるには、十分な水魔法の制御力がある。

 で、僕がコイツを振るうと、


「逃げんなよ、お前も毒沼に沈めぇーっ!」


 巨大な塊となった毒沼がブルブル震えるように蠢くと、転がるように動いてギリギリ避けて通り抜けようとしたヘルガーを飲み込んだ。その姿はさながら、巨大スライムが獲物を捕食するようだ。

 それだけじゃない。鈍重に転がりながら、素早く周囲に振り回されるのは触手だ。


「これが『赤髪括り』の一番強い使い方だよね」


 やはり『腐り沼』から直接伸ばす『赤髪括り』が最も強力な効果を発揮してくれる。毒沼を巻き上げて野太い触手を何本も形成し、更なる獲物を求めて縦横無尽に振り回される。

 捕らえられれば、毒沼に飲み込まれてお終い。逃れたとしても、一巻き分でも絡まれれば、ヘルガーには致命的なダメージが入る――――そんな光景が、トラップゾーンのそこら中に広がっている。


 そしてここからが、わざわざ『酸盾アシッド・シルド』にした真骨頂。


「フルバーストだ――――『酸矢アシッド・サギタ』」


 毒沼塊から全方位に向けて発射される、腐食の弾丸。

 水魔法による制御力があるからこそ、シンプルに射出する攻撃魔法を発動させることが出来るのだ。

 触手も届かない範囲にまで毒液が飛んできたことで、いよいよ群れは悲鳴を上げる奴らの方が大きくなり、混乱が広がった。


 ウォオオオオオオオオオオオオオオ――――


 無論、それをみすみす放置するようなボスではない。

 そこらに広がった罠からすぐに離れるよう命を下すが、


 ギャウゥン! ギャワァアアアアアアアアッウ!!


 混乱は収まらず、群れは右往左往をし始めた。

 ボスの声が届くのは、すぐ傍に侍っている奴らだけ。散開してちょっと離れた群れの奴らは、まるでボスの声が聞こえていないかのように騒ぎながら駆けまわっている。


「情報伝達に優れているほど、ジャミングって効くよね」


 これも僕の研究成果。ヘルガーの鳴き声の周波数と魔力の波長を解析し、ボスの声が届きにくいよう、雑音を発している。

 その発信源は勿論、乗りに乗って来た熱い演奏を披露する『奏者』の二人だ。

 楽器にボスの鳴き声と同じ波長の音が鳴るように改造した。そしたら『奏者』の二人とも、新たなスキル『共鳴音波ハーモニクス』に目覚めて、さらに自然な音色に補正され、音量も増大、より広い範囲に拡散できるようになった。やっぱ天職って凄いね。


 このジャミング作戦の発想は犬笛だ。ピーピー鳴らすと、なんか犬が指示に従ってくれるじゃん?

 それじゃあ、ありとあらゆる命令を一斉に聞いた犬は、果たしてどれに反応するんだろうね。

 少なくとも、ヘルガー達は混乱した。


「カリスマ溢れるボスというのも、考えものだね。君は雑魚狩りを任せられる、サブリーダーを用意するべきだったよ」


 分身の僕がスケルトン軍団を連れて行っても、フルヘルガーはわざわざ自らお出迎えしてくれた。

 なので、コイツが群れに向かって指示を飛ばすボイスサンプルに、魔力の波長の計測は幾らでも出来た。

 まさか自分の声真似してくるヤツが出て来るとは思わなかったようだ。群れが言うことを聞かない理由は、トラップ発動直後から、四号車から発せられるノイズにあると察したようだ。


 ルルァアアアアアアアアアアアアアアッ!!


 よくも、とでも言うように怒り心頭の眼差しが飛んでくる。今更気づいても遅いんだよ。

 だが奴はそう思ってはいないようで、真っ直ぐに殺意の籠った目で僕が乗る四号車を睨みつけるが――――不意に、その頭を反対側へと向けた。


「門番がいないなら、勝手に通らせてもらうけど?」


 装甲牛車の隊列を離れ、一号車が混乱するヘルガーの群れを蹴散らして真っ直ぐに溶岩湖へと進路を変えた。

 その様子を目にしたフルヘルガーは理解する。アレは自分の最も大事な縄張りに、巣の中心へ向かっていると。


 だがしかし、自分の統率を乱す元凶は今もこの場で騒ぎ続けている。

 群れを取り戻すか。それとも巣を守るか。


 グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


 苛立ちが募ったような怒りの咆哮を上げて、ボスは踵を返して駆け出した。

 奴は群れよりも、自ら巣を守ることを選んだ。


「よーっし、分断成功だ」

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― 新着の感想 ―
相変わらず凄い戦術。準備期間与えた戦闘は呪術師小太郎の独壇場だな。凄い安定感。 これでまだメイン戦力を殆ど消費してないってのがヤバい。
今までの経験に裏打ちされた戦略の一端を垣間見た、といった所でしょうか。レイナやアリ達との死線が活きていて感慨深いです。 本当に焦れったい点としては、やはり双葉さん葉山くん天道くん姫野ら主力メンバーが誰…
さいっこうですね。呪術師の面目躍如というか、この作品の一番好きな養分を摂取できてる気分ですw
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