二年七組最強伝説
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
「またの、お嬢ちゃん」
闊達に笑って、蒼真爺さんは帰って行った。それを僕は蒼真兄妹と一緒に、三人でお見送り。
何ていうか、勘違い込みで突き進んだとこ含めて蒼真君の祖父だなって感じたよ。しかし年の功と言うべきか、僕を男と知っても笑い飛ばし、小賢しさを見込んですかさず道場に勧誘するのは、とても精神的な余裕に満ちていなければ出来ないムーブだ。
この辺、蒼真君は柔軟性に欠けるから、女装男子を本気で女の子だと思って間違えたら、ショックでしばらく落ち込んでそうだし。
まぁ、男を女と本気で見間違うことなど、世の大多数はまず経験することのない出来事だから想定するだけ無意味だけれど。
「何というか、迷惑をかけたな、桃川……」
「いやいや、気にしてないよ。とってもいいお爺さんじゃないか」
僕の文句を本気でちゃんと聞いてくれる辺り、非常によくできた人間だ。耳に痛い忠告を素直に受け入れ認めるのって、マジで精神力高くないと出来ないことだからね。
あれほど歳をとっていながら、こんなガキの言うことを真面目に聞いてくれるなんて、少なくともセルフレジにキレてる老害共には無理な芸当なのだから。
「けれど、随分と失礼なことを吹き込んでいたように見えましたが?」
兄離れを訴えた僕の言に大いに不満があるのか、桜ちゃんはあからさまに不機嫌そうな表情で言う。普通の接客では見られない、眉をひそめて冷たい眼差しをするユイトの姿にそれはそれで黄色い声が上がっていた。
無駄なところでイケメン力発揮すんのやめてくれる?
「ふふん、お爺さんが聞き入れた以上、一理はあったということだよ、桜ちゃん」
「くっ……お爺様は、いささか心配性なだけです……」
「そんな心配かけちゃいけないよ」
「ふん、私は別に、大丈夫ですから!」
プン、と絶対に僕の言い分は認めない、という態度の桜ちゃん。そんなんだからお爺さん心配しちゃったんじゃないか。
「なぁ、桃川は桜のことを何て言ったんだ?」
「えっ、蒼真君聞こえてなかったんだ」
「むしろ、なるべく話を聞かないよう意識していたんだよ」
なるほどね、でも嫁発言で流石に放っておけなくなったと。
ならば言ってしんぜよう、このメイド長桃子の諫言を。
「桜ちゃんはいい加減に兄離れした方がいいよって」
「桃川っ! 余計なことは言わないでください!」
言葉にするのも忌々しいとばかりに叫ぶ桜ちゃんだが、果たして兄貴悠斗の反応は、
「そうか……やっぱり、そうなのかもしれないな」
「そっ、そんな、兄さん!?」
「噓でしょ蒼真君、自覚あったの?」
「ついこの間まではなかったさ。けど学園祭の準備期間中は、別のチームになって離れたからさ。それで、桜がというよりは、俺自身の至らなさを自覚したこともあってな」
「ヤマジュンが忠告してくれたからね」
「ああ、それも大きいよ。確かに俺は自分の周りばかり見ていて、もっと外に目を向けるべきだったと。そして、そんな目の前しか見れていないような俺が、いつまでも桜を守る、と見つめ続けるのは……俺にとっても桜にとっても、良くないことだったかもしれない」
速報、蒼真君マジでちゃんと反省できていた件。
いやぁ、流石はヤマジュンの説得だ。他の誰でもここまで蒼真君に影響を及ぼすのは不可能だったろう。
「に、兄さん……そんな、そんなこと……」
まさか兄貴に裏切られるとは、とばかりに戦慄した表情の桜ちゃんだが、僕はニコニコ笑顔、をなんとか抑えて、意味深な訳知り顔を浮かべて言った。
「蒼真君がそこまで自覚できているなら、僕がお爺さんに言う必要はなかったね。もう立派に自分の至らなさを乗り越えたよって」
「ちなみに、何て言ったんだ?」
「身内に甘い、特に女の子に甘い」
「ぐうっ……認めたくないが、認めざるを得ないな……」
「違う、そんなはずありません! 兄さんは何も、間違ってなんていない!」
「桜……これは爺ちゃんも認めたことだ。俺はお前に余計な真似をし過ぎたし、桜ももう少し、離れるべきだったんだ」
「桜ちゃん、兄離れの時が来たんだよ」
「うっ、う、ううぅ……兄さんと桃川のバカぁあああああああああああああ!!」
あっ、泣いちゃった。
そして泣き出した勢いのまま桜ちゃんは教室を飛び出して――――おいおい、レイナに続きお前もいなくなるのかよぉ!?
「ちょっと桜ちゃん、まだ営業中……」
「すまない桃川、今は桜のこと、そっとしておいてやってくれないか」
「早速甘やかし発動してる!」
「いやこれは違う、違うだろコレは!?」
「もう、そういうところだからね、蒼真君!」
「ええぇ……」
ともかく、フィジカルエリートでもある桜ちゃんが全力疾走で逃げ出した以上、もう追いかけて捕まえるのは不可能だ。まだまだ客はやって来る。残った面子で、店を回すしかない。
「ふわぁ……悠くぅん、今何時ぃー?」
「やっと起きたか、レイナ・A・綾瀬……蒼真君、桜ちゃんの抜けた穴は、今までサボりにサボった綾瀬さんに埋めてもらうからね?」
「うっ、わ、分かったよ……」
席に縛り付けてでも接客させてやるからよぉ、覚悟しやがれ。
◇◇◇
なんだかんだで三十分くらいしたら、何故か女の子達に囲まれた桜ちゃんが帰ってきた。で、そのままお店にインして、今はユイトとして復帰。
すでに涙の跡はメイクで隠したか、麗しい微笑みを浮かべてお嬢様たちをキャアキャア言わせている。よし、これでエースの一角が無事に復帰してくれたな。
そう思っていた矢先のことである。
「おぉーい、ここが噂の店?」
「カワイイ子いるじゃーん!」
やけに騒がしく入ってきたのは、四人組の男。
いずれもそこそこの身長とガタイ。茶やら金やら髪は染めていて、ピアスもちらほら。目に見えて不良というほどの風貌ではないものの……コイツらは要警戒だな。
「ねぇ、早く案内してよ」
「君カワイイじゃん、なんでスーツ着てんの? メイド服着てよ、メイド服」
「きゃっ! あ、あの……」
運悪く入口で配置についていた執事役の木崎さんが、馴れ馴れしく絡んできた奴らに怯えた表情を浮かべる。
バレー部エースの木崎さんは身長こそ高いものの、男装メイクは控えめで可愛らしい顔立ちはそのまま。その上、女性としても恵まれた体型は男物のスーツを着こんだくらいでは隠しきれるものではない。
ナンパ男なら放っておかないほどには、魅力的な女子として見られるのは当然の結果であった。
「木崎さん、すぐに四番入って。かなり急ぎだから、早くお願いね」
「あっ、も、桃川君……分かりました、今行きます」
即座に僕がヘルプに入れば、木崎さんは不安気な眼差しを向けるが、すぐに意図は察してくれたのだろう。不自然にならない程度の間隔で返事をすると共に、駆け足で教室から去って行った。
四番はキャストを教室から退室させ、料理チームのいる家庭科準備室へ向かわせる符号だ。万一の時にそれとなくキャストを避難させるためのもので、「そんなの決めても使わないだろ」と蒼真君が楽観視していたくらい緊急用である。
僕もまさか使うタイミング来るとは思わなかったけど、黒服制度採用してるくらいだから、万全の備えはしておくものさ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「おおぉ、メイド! メイド来たよぉコレ!」
「なにコレめっちゃカワイイじゃん!」
「これだよこれ、やっぱこうじゃなくちゃ!」
「なぁ、俺ら四人いるからさぁ、もっと可愛い子呼んじゃってよ」
蒼真流師範の目さえ欺いた今の僕を前に、頭の軽そうな奴らが女装を見破れるはずもない。美少女が来たと信じてやまない彼らは、木崎さんを逃したことを気にする間もなく、このメイド長桃子に夢中だ。
「マジで超アタリでしょコレ。俺こういう小さい子好き!」
「ちょっ、ロリコン発言やめれ」
「言うてお前も好きじゃん」
「いやこのレベルだったら大体イケるでしょ」
「そうそう、撫でたくなるよなぁ?」
撫でたくなる気持ちは否定しないが、当店はお触り禁止でございます。
言いながら、無遠慮に伸ばされた手をスっと後ろに下がって回避。
無許可で女の子を撫でていいのは、蒼真君並みのイケメンだけに許された特権だから。お前らみたいな大学デビューしちゃった系の陽キャモドキ風情が、やっていいムーブじゃねぇんだよ。
「おおっ?」
「避けられてやんのぉ」
「うっせ」
「ご主人様――――」
さて、許されないのはお触りだけじゃない。
僕に触れようとするほどにまで間合いを踏み込んだ拍子に、確かに感じた。
「――――お酒、飲んでいらっしゃいますね?」
若干の顔の赤らみは、テンション上がってるからでまだ済ませてもいい。だが、そのアルコール臭ぇ吐息は、誤魔化しきれねぇぞ。
ここは白嶺学園、私立高校だ。学園祭とはいえ、校内で飲酒なんて許されるワケがない。
生徒は勿論、一般客となる保護者や成人済みの関係者。そこに一切の例外はない。
アルコールを摂取したことが発覚した場合、即退場。運営の課した基本的なルールさえ守れない奴が垢BANされんのは当然だよね。
つまり、コイツら四人はお帰りになれないご主人様というワケだ。
「あ?」
「飲んでねーし」
「嗜む程度だから大丈夫でしょ」
「そんなことどうでもいいじゃん。早く案内してよ、俺ら客だよ客?」
「申し訳ございません。飲酒をされた方は学園祭の参加をご遠慮させていただいております。即刻、お帰りになってください」
「うっせぇな、飲んでねぇつってんだろ!!」
ガゴォン!
とけたたましい音を立てて、一人が教室の扉を蹴り飛ばす。いきなり威嚇行動すんなチンパンが、うるせぇぞ。
「他のお客様のご迷惑にもなります。速やかにお帰りください」
「ああ? テメぇ――――」
「まぁまぁ、落ち着けよ。折角ここまで遊びに来てんだからさぁ」
「メイドちゃん、あんまコイツのこと怒らせない方がいいよー」
「コイツ、キレっとなにすっか分かんねぇからさぁ!」
キレた一人を宥めるフリをして、コイツらまだ居座るつもりか。どこまで図太いんだ。
「君がちょっとサービスしてくれれば許してあげるからさ」
「そうそう、今ならまだ穏便に済むから、ね?」
「俺らもただ楽しくやりたいだけだからさぁ、分かるでしょ」
「お帰りください」
お前らいつまで自分達が上で、処分を決める側だと思ってんの? ここまで舐め腐った態度を取り続けるのを前にすると、滑稽に過ぎて笑いを抑えるのに苦労する。
馬鹿なチンパン共め。イキっていいのは勝ち確の時だけなんだよ。正しく今の僕のことである。
「飲酒をされた時点で、学園祭の参加は一切認められません。速やかにお帰りください」
「はぁ……マジ萎えるわ、そういうの」
「ははっ、俺らもしかして舐められてる?」
「いるんだよなぁ、自分が女だから殴られないとか思ってるバカ女」
「あーあ、キレちゃった。もうどうなっても知らねーぞ?」
これからどうなるかも分かってないから、お前らは馬鹿なんだよ。
酒が入って気が大きくなっている? そんな言い訳が通るかよ。全く、怖いねアルコールってのは。元から薄い自制心のアホでもガブガブしてもっとアホになって、取り返しのつかないことをやらかすんだから。
そう、例えば、
「んっ――――」
本当に手を出す、とかね。
無遠慮に伸ばされた腕が、僕の胸倉を掴み上げる。パンチじゃないから避けなかった。やっぱ女、殴らないじゃん。
まぁ、殴ってないからセーフかと言えば、そんなワケねぇだろ。余裕の一発アウト。テメぇらはもうこれでお終いだ。
「おいメイドぉ、お前今すぐ脱げよ。全裸土下座したら許してや――――」
「待っていたぜぇ、この瞬間をよぉ――――キャァアアアアアッ! 助けてぇえええええええええええ!!」
渾身のソプラノボイスで上げる悲鳴を聞け。いつまで経っても声変わりの来ない僕の悲鳴を舐めるなよ。今だけ完全に僕はピンチに陥った乙女だ。
さぁ、助けろよ!
「あぁーあぁ、困りますねぇ、お客さぁーん」
先頭に立ってやってきたのは、どこまでもチンピラムーブが板についている樋口だ。
困りますね、などと言いながらも、面白おかしいトラブル発生でワクワクが隠せない表情になっている。
「ウチの可愛い嬢に手を出されたとあっちゃあ、もう黙っていられないねぇ」
いつもの穏やかな微笑みを浮かべながらも、得も言われぬ威圧感を発するのは裏方チームリーダー兼黒服も兼ねる杉野君。
高校生離れした巨躯に纏った黒スーツは筋肉で膨れ上がり、さながらヤクザ映画に出てくる用心棒のようだ。
「はぁ……マジでこんなこと起こんのかよ」
「ビビんなって、楽しくなって来たじゃねぇか」
そんな雰囲気満点の二人の後ろに続くのは、身長とガタイだけでとりあえず頭数揃えるのに選ばれただけの野球部コンビ、山田君と高島君だ。
高島君は割と長身というだけ、山田君は背はそれなりだけどがっしりしたキャッチャー体型で、二人は決して威圧感のある風貌はしていない。けれどウチのスタリストたるギャル三人組がついでとばかりに、髪を整えたり、手持ちのアクセサリーをつけたりで、意外とそれっぽく仕上がっている。まぁ、身体だけ立派なら、揃って黒服にグラサンかければ雰囲気出るに決まってるか。
「あ? なんだよテメーら、ガキが喧嘩売ってんのかぁ」
「おいおーい、俺らここのOBなんだが? 後輩の教育がなってないんじゃねぇの」
「黒服なんか着ちゃってさぁ、それでビビると思ってんの?」
「あー、なんかマジでムカついてきたわ。俺もうここ無茶苦茶にするまで止まんねぇかもー」
出張ってきた黒服チームを前にしても、全く退く気はないようだ。むしろヤル気が上がってる。
まだ同人数だし、相手は年下のガキと舐めてるんだろうけど、もう高校生ともなれば筋力的なアドバンテージなどあるはずもないだろ。もっとも、ウチの黒服なら中学生の頃だったとしても、酔ってイキったパンピーなど余裕なのだが。
ともかく、引き際も判断できないアホ四人組は完全に臨戦態勢となっていきり立っている。これはもう後には引けないね。
あと、いい加減に僕を放せよ。胸元のフリルが千切れたらどうすんだ。
「ガキ共が調子に乗りやがって、ってメイドぉ、勝手に動くんじゃねぇ! テメーには後でしっかり奉仕してもらわなきゃ――――」
ガラガラガラ
と、いっそ呑気なほどに音を立てて教室の扉が開かれる。
誰だよ、とばかりに四人組も、僕らもまた視線を向ければ、
「――――汚ねぇ手で桃川に触んなよ」
一服から戻ってきた天道龍一は目に見えるほどの怒気を迸らせ、僕の胸倉を掴む男の腕を一瞬にして捻り上げた。
男の手首を掴んだ彼の握力は如何ほどなのか。少なくとも、その瞬間に僕を手放してしまうほどには強烈な力が加わったらしい。
ようやく離しやがったか。あーあ、胸元シワんなっちゃってるよ。
「痛ぃっ、イダダダダァアアアアアアアアアア!!」
秒で情けない悲鳴を野郎が上げたのが、合図となった。
「蒼真流――――『体崩し』」
純白のエプロンが翻った、と思った瞬間には男の一人が床に倒れていた。
完全に気配を消して間合いを詰めていた蒼真優斗は、天道君へと男達の注意が逸れたタイミングで、奴らの一人を急襲したのだ。
抵抗どころか、自分が投げられたという認識すら出来ぬままに、男の一人は蒼真君によって組み伏せられた。
ああー、なんか腕が絡まるような感じに抑えられた上に、首も締まっている。苦しそうな呻き声がかすかに漏れるだけで、悲鳴さえ上げられないほどキマっているようだ。
そしてこのタイミングで仕掛けたのは、蒼真君だけではない。
「うっ、ぐぅ……は、離して……苦し……」
「うーん、なんだって? よく聞こえないなぁ」
杉野君も一瞬の早業で、流石は柔道部とばかりの見事な寝技を決めて男の一人を抑え込んでいた。
男もそれなりの身長体格だけれど、がっつり無差別級で鍛え上げられた杉野君には手も足も出ないといったところ。その様子はさながら、獲物を捕らえた熊である。
「い、痛いです! やめてください! やめてくださぁい!!」
「おい、男のくせに情けない悲鳴を上げるな。全く、こっちが恥ずかしくなってくる。罵倒の一つでも吐いてみせろ」
なんか的外れなことをドヤ顔でのたまっているのは剣崎明日那だ。
コイツも蒼真君と示し合わせたように全く同じタイミングで男の一人に掴みかかり、一瞬で引きずり倒していた。どうやら剣崎流は体術もイケる模様。
男女の絶対的な筋力差、とは何だったのかと思うほど見事に制圧しきっている。やっぱ武術ガチ勢って怖いな。
折れる折れる、痛い痛い、と惨めに泣き叫ぶ男を下敷きにしながら、剣崎の目には一切同情の色は見られない。うーん、これは野蛮な暴力女。そりゃ蒼真爺さんも桃子を嫁に推すわ。
「おいおいマジかよ剣崎ぃ、ソレ俺がやるつもりだったのに」
そんなバルバロイ全開の剣崎へケチをつけるのは、出遅れたせいで誰にも手を出せなかった樋口であった。
「ふん、こういうのは早い者勝ちだ」
「こーゆうのは黒服の仕事なんですけどー?」
「これだけの乱暴狼藉を働かれて、剣崎流剣士として黙っていられるはずもないだろう」
「自分がやりてぇだけじゃねぇか」
ヤクザ的な価値観をしたり顔でのたまう剣崎の後ろでは、超カッコいいアストの雄姿を見たお嬢様方がそれはもうキャアキャア盛り上がっているのだが、樋口はそれも合わせて呆れ全開の溜息を吐いた。
「んぐぅうう……てっ、テメぇ……俺らは、この学園のぉ……」
「テメーのことなんざ知らねぇよ。誰に手ぇ出しちまったか、後悔しながら逝け」
そして天道君は技などいらぬとばかりに、片手で相手の首を絞めて持ち上げる、バトル漫画の強キャラでしか見たことないパワープレイが炸裂。
野郎は苦し気に呻きながらもなんか言ってるが、全く意に介さず天道君はギリギリと締め上げた。これはあと何秒もしない内に落ちそう。よし、じゃあ今の内だな。
「そうだそうだ! よくも好き勝手やってくれたなぁ、このアルコールチンパンが!」
掴み上げられて身動きできないサンドバック状態の男を、僕はポコポコ殴りつけておく。おらっ、死ね! 桃川流猫パンチで死ね!
「桃川、お前なぁ……」
「ううぅ、桃子すっごく怖かった。助けに来てくれてありがとう、天道君」
「引っ付くな、離れろ」
僕のささやかな仕返しに呆れ顔を浮かべる天道君に、わざとらしいぶりっ子ムーブを食らわせたらすっごい嫌な顔された。
まぁまぁ、掴まれた僕を直接助けたのは事実なんだから、これくらいサービスと思って受け取ってよね。
ともあれ、これで暴れ猿4匹を無事に捕獲完了。後は、
「おい、喧嘩沙汰が起きているのは本当かぁ!」
通報を聞きつけてやって来た、白嶺学園の誇るゴリマッチョ体育教師陣と、金のかかった警備員部隊に引き渡せば、一件落着だ。




