白嶺学園二年七組出席簿 終
白嶺学園二年七組・出席簿・四十一名
男子・二十二名
出席番号1番 死亡 東真一『召喚士』 男子クラス委員長
天道龍一と戦い死亡。
出席番号2番 死亡 伊藤誠二『盗賊』
オルトロス戦にて死亡。
出席番号3番 生存 上田洋平 『剣豪』 弓道部
GM小鳥遊小鳥により追放。
出席番号4番 死亡 大山大輔 『炎魔術士』 空手部
横道一により殺害。
出席番号5番 死亡 高坂宏樹 『騎士』 サッカー部
妖刀使いのボスゴーマ戦にて死亡。
出席番号6番 死亡 斉藤勝 『戦士』 弓道部
樋口恭弥により殺害。
出席番号7番 死亡 桜井遠矢 『射手』 弓道部
双葉芽衣子により殺害。
出席番号8番 死亡 佐藤裕也『風魔術士』
樋口恭弥により殺害。
出席番号9番 生存 下川淳之介 『水魔術士』
GM小鳥遊小鳥により追放。
出席番号10番 死亡 杉野貴志 『重戦士』 柔道部
双葉芽衣子により殺害。
出席番号11番 生存 蒼真悠斗 『勇者』『女神エルシオンの御子』 剣道部
天送門にて脱出。
勇者召喚計画:成功
出席番号12番 死亡 高島雄大 野球部
天職授与の負荷に耐え切れず死亡。
出席番号13番 生存 天道龍一 『王』『黒竜の契約者』
アルビオン大迷宮より脱出。
古代生物兵器『黒竜』の契約者:要警戒人物
出席番号14番 死亡 中井将太 『戦士』
ギラ・ゴグマ・ザガンと戦い死亡。
出席番号15番 死亡 中嶋陽真 『魔法剣士』 美術部
剣崎明日那により殺害。
出席番号16番 生存 葉山理月 『精霊術士』『闇の魔人』 バスケ部
蒼真悠斗により天送門で追放。
魔人化能力覚醒者:要警戒人物
出席番号17番 死亡 樋口恭弥 『盗賊』
桃川小太郎と戦い死亡。
出席番号18番 死亡 平野浩平 『剣士』 サッカー部
オルトロス二戦目にて死亡。
出席番号19番 生存 桃川小太郎 『呪術師』『呪神ルインヒルデの御子』 文芸部
アルビオン大迷宮のコアブロックを掌握、マスター権限保持者。『ダンジョンマスター』
GM小鳥遊小鳥を殺害し、勇者召喚計画を破綻寸前まで追い込んだ最大のイレギュラー。
呪いの御子:最重要警戒人物
出席番号20番 死亡 山川純一郎 『治癒術士』 演劇部
レイナ・A・綾瀬の霊獣による攻撃により死亡。
出席番号21番 生存 山田元気 『守護戦士』 野球部
GM小鳥遊小鳥により追放。
出席番号22番 死亡 横道一 『食人鬼』
桃川小太郎により眷属遺骸を呪物化。
『無道一式』:厳重封印指定
女子・十九名
出席番号31番 死亡 レイナ・アーデルハイド・綾瀬 『精霊術士』
桃川小太郎と戦い死亡。
出席番号32番 死亡 飯島麻由美 『剣士』
樋口恭弥により殺害。
出席番号33番 死亡 北大路瑠璃華『剣士』 料理部
横道一により殺害。
出席番号34番 死亡 木崎茜 『炎魔術士』 バレー部
自殺。
出席番号35番 生存 如月涼子 『氷魔術士』 女子クラス委員長
天送門にて脱出。勇者の仲間として保護。
出席番号36番 死亡 剣崎明日那 『双剣士』 剣道部
双葉芽衣子により殺害。
出席番号37番 死亡 佐藤彩 『射手』
ゴーマの群れとの戦いにて死亡。
出席番号38番 死亡 篠原恵美『水魔術士』 イラストレーション部
事故死。
出席番号39番 生存 蒼真桜 弓道部 『聖女』
アルビオン大迷宮より脱出。
勇者覚醒の鍵:最優先保護対象
ゲームマスター 呪殺 小鳥遊小鳥 『賢者』『女神エルシオンの使徒』
桃川小太郎の背神術式と魂魄浸食によって神代呪物化。
『小鳥箱』:最厳重封印指定
出席番号41番 死亡 長江有希子 『氷魔術士』 文芸部
横道一により殺害。
出席番号42番 生存 夏川美波 『盗賊』 陸上部
天送門にて脱出。勇者の仲間として保護。
出席番号43番 死亡 西山稔 『風魔術士』 吹奏楽部
オルトロス二戦目にて死亡。
出席番号44番 死亡 野々宮純愛 『騎士』 テニス部
ギラ・ゴグマ・ザガンと戦い死亡。
出席番号45番 死亡 雛菊早矢 『呪術師』 弓道部
リビングアーマーの矢を受け死亡。
出席番号46番 生存 姫野愛莉 『淫魔』
アルビオン大迷宮より脱出。
出席番号47番 生存 双葉芽衣子 『狂戦士』 料理部
アルビオン大迷宮に滞在。
『巨人殺し』と『天使殺し』、二つの試練を超えし者:要警戒人物
出席番号48番 生存 芳崎博愛 『聖戦士』 テニス部
GM小鳥遊小鳥により追放。
出席番号49番 生存 蘭堂杏子 『土魔術士』『大地の魔人』
アルビオン大迷宮に滞在。
魔人化能力覚醒者:要警戒人物
◇◇◇
「————以上が、今回の勇者召喚計画の最終報告となります」
「はい、ご苦労様でした、シド大司祭」
寂れた小さな礼拝堂に、対照的な二人の人物が相対している。
一人は男。黒髪黒目の暗い男だ。
長身痩躯に着込んだ純白の法衣は小奇麗で様になっているし、堀の深い顔立ちは彫像のように整っている。だがどこか生気の欠けた、ただ黒いだけではない光を失った目は、まるで吸血鬼のように重く暗い雰囲気を纏っていた。
もう一人は女。長い白銀の髪をした、光り輝く様な女だ。
真っ白いローブに全身を包み込み、目深に被ったフードの奥には、固く両目を閉ざすような厚手の白い目隠しがされている。
「お陰様で、勇者召喚計画は何とか成功いたしました。これも全て『女神の勇者様』のお力添えがあってのこと。教会を代表し、深く感謝申し上げます」
「いえ、私は何も。全ては女神エルシオンの御心のままに、ただ見守っていただけに過ぎません」
深々と頭を下げた大司祭に対し、女勇者は如才なく応える。
結果などとうに知っている。わざわざ伝えになど来なくとも、誰よりもよくアルビオン大迷宮で起こった壮絶なダンジョンサバイバルを彼女は『見て』いるのだから。
よって本来ならば、それ以上の言葉はない。このまま形式的な報告に過ぎない資料、『白嶺学園二年七組出席簿』の最終版を彼女に手渡し、それで終わるはずだった。
「ですが今回のことは、とても心苦しく思っています。貴方が自らの手で、同郷の子供達に過酷な試練を課すことになるとは。いくら世界のためとはいえ、何と残酷な……」
「いいえ、勇者様。仰る通りに、これは全て世界救済のためにございますれば。苦悩が全くないとは言えませんが、それでも私は司祭として、すでに女神エルシオンに全てを捧げる信仰心と覚悟がありますので。どうぞ、私のことなどお気に病まないでいただきたく」
シド大司祭、本名は紫藤。
前回の勇者召喚計画にて、ゲームマスター『賢者』として唯一生き残った男は、全く感情の籠らない能面のような表情で、きっぱりとそう言い切った。
果たして女勇者はその無表情に、閉ざされた目で何を見たのか。彼の言葉に、ただ静かに頷くのみ。
「それでは、失礼させていただきます」
今度こそ、これ以上に語る言葉はないと、シド大司祭は礼拝堂を後にした。
彼の後ろ姿を見送ってよりしばし、女勇者はゆっくりと長椅子に腰を下ろし、手渡された最後の出席簿を開いた。
その細く繊細な、およそ剣など握ったこともないような美しい白い指先が、そこに記された一つの名前をなぞる。
書かれている内容は、勇者として忌むべき言葉の数々。呪いの神より加護を授かった、一人の少年。
「ああ、ようやくお会いできるのですね————私の、勇者様」
2023年6月23日
出席簿、本当は最後にもちゃんと更新しようと思ってたけど、先週に掲載するの忘れてました(小声)
第一部最終話でもなく、第二部一話でもない、予告編的な話です。ここ読むだけで第一部の全てが詰まってる最大のネタバレ回でもありますね。
それでは、このまま外伝へどうぞ。




